報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔道師達の宴会」

2017-05-26 20:45:10 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月28日18:00.天候:晴 東京都中央区築地 築地場外市場]

 稲生達はホテル前からタクシーに乗り、魚が食べたいというイリーナの希望を叶えるべく、築地の場外市場へと向かった。

 稲生:「この辺でいいかな……」
 運転手:「よろしいですか?」
 稲生:「はい。ここでお願いします」

 タクシー自体は入場が規制されている為、外周部の公道上で降りる。

 マリア:「魚臭い……」
 イリーナ:「何だか懐かしい匂いだねぇ……」
 マリア:「師匠はロシアの沿岸部生まれでした?」
 イリーナ:「そうかもね」
 マリア:「かもねって……」
 イリーナ:「この体の本当の持ち主が、そうだったかもしれないよ」
 マリア:「…………」
 イリーナ:「あなたも200年そこらでその体を別人の物と交換することになるんだから、細かいことは気にしない気にしない」
 マリア:(その境地に至るまで、あと何年掛かることやら……)

 稲生がイリーナのカードでタクシー料金を払い、最後に降りて来た。

 稲生:「じゃあ早速行きましょう。先生ご希望の魚がメインですが、肉も食べれる店を見つけましたので」
 イリーナ:「良かったね。肉もあるって。さすがはユウタ君だね」

[同日19:00.天候:晴 東京都中央区築地 某飲食店]

 マリア:「Excuse me!Japanese highball one!」
 稲生:「ま、マリアさん……?」
 イリーナ:「マリア、自動通訳(魔法)切れてるわよ」

 いつになくハイテンションになっているマリア。
 イリーナが日本酒を美味そうに飲んでいるのを見て、稲生が感嘆の声を上げたのが気に障り、自分もと1合飲んでから何かを間違えたようだ。

 稲生:「あっ、肉料理も来ますから」
 マリア:「肉もいいけど、酒も飲め!ユタっ!」
 稲生:「あ、さっきビール頼んで……」
 マリア:「日本人のくせに日本酒飲まねぇだとっ、ああっ!?」
 稲生:「いや、僕もそんなに酒強くないんで、アルコール度数10%以上のものはちょっと……」
 イリーナ:「あんたも日本酒1合だけでそのザマでしょ?」
 マリア:「分かりました!んじゃ、もう1合飲んでやります!」
 イリーナ:「やめなさい。もうあんた、顔と肌が真っ赤よ」
 マリア:「ユタ!アタシと一緒に飲め!そんでアタシの話を聞けっ!」
 稲生:「もう既に飲んでますけど……?」
 マリア:「だーかーらぁ!そんなビール、ジュース同然だろうが!Japanese sake・・・・・・・・・・(以下、解読不可能)」
 イリーナ:「ダメだこりゃ……」
 マリア:「暑いし!」
 イリーナ:「ちょっと!脱ぐなら、上のブレザーまでにしなさいよ!」
 マリア:「んじゃ、スカートならOKっスか?」
 稲生:「ブッ!」
 イリーナ:「OKじゃない!」
 稲生:(この人、あんま酒飲ませちゃいけない人だったーっ!)Σ( ̄□ ̄|||)

 屋敷では夕食おいて普通にワインまたはハイボールを飲んでいるくらいだから、日本酒も大丈夫だと思っていたのだが……。
 更に追加注文したハイボールをガブ飲みして、ついにマリアはテーブルに突っ伏して酔い潰れたのだった。

 稲生:(;゚Д゚)???
 イリーナ:「ゴメンねぇ。まさか、本当に日本酒飲むとは思わなかったから」
 稲生:「僕も想定外でした。ワインと日本酒って、アルコール度数が似たようなものだから、多分大丈夫だと思っていたんですが……」

 ただ、確かに稲生の中では、日本酒は悪酔いしやすい傾向があるというイメージは持っていた。
 それでもワインを飲んで平気なんだから、1合くらいなら大丈夫だろうと思っていたのだが……。

 イリーナ:「でもまあ、こうしてマリアを見ていると、何だか昔を思い出すわ」
 稲生:「そうなんですか?聞きたいです。先生の昔の話……」
 イリーナ:「そうねぇ……。半分失敗談、半分成功談の話でもしましょうか」

[今から数百年前のヨーロッパ某国]

 イリーナがダンテの直弟子であることは知られているが、更に知られているのが出戻り者であるということ。
 これは1度、修行を投げ出してしまった落伍者の烙印を押されたことを意味している。
 今でこそ大師匠ダンテは威厳に満ちた老翁といった感じ(もっとも、姿を現す時は50代くらいに若作りして登場する)だが、イリーナが修行を投げ出す直前のダンテは、イリーナから見れば、今でいうパワハラ上司みたいな感じであった。

 ダンテ:「イリーナ!課題の提出期限迫ってるぞ!まだ出してないのお前だけだぞ!!」
 イリーナ:「はい!もうすぐ出します!」
 ダンテ:「イリーナ!実験用魔法陣のデザイン間違ってるぞ!!」
 イリーナ:「はい!今直します!」
 ダンテ:「イリーナ!こっち手伝え!!」
 イリーナ:「はい!今行きます!」
 ダンテ:「イリーナ!フランス情勢の修正はどうなってる!?」
 イリーナ:「あー、まだっスねぇ……」
 ダンテ:「何をやってるんだ!?俺は何て言った!?今すぐやれって言ったよな!?すぐって言ったらすぐなんだよ!!」
 イリーナ:「ロシアの方もちょっと情勢が……」
 ダンテ:「口答えするな!いいか!?俺の予知じゃ、フランスはもうすぐ反乱が起こるんだ!俺達の活動費用を出してくれているルイ王朝が潰れたらどうするんだ!いいか!?何としてでも反乱を食い止めろ!分かったな!?」
 イリーナ:「優先順位的にはロシアの方が……」

 しかし、ダンテの怒鳴り声が響く。
 そして、ついに……。

 イリーナ:「うるっせぇぇぇっ!!」
 ダンテ:「なにいっ!?」
 イリーナ:「こんな所もう辞めてやるよ!!」

 そして……。

 イリーナ:「おっちゃん、もう一杯!」
 店主:「はいよ」

 酒場で酒浸りになるイリーナ。

 イリーナ:「くそっ!あのクソオヤジが……。魔界にでも行って、大魔王バァルの椅子でも狙ってやろうかしら……」

 で、ワインの瓶片手に千鳥足。
 山に分け入ってしまい、山賊達に取り囲まれるも、魔法で一網打尽にしてしまう。

 山賊:「ね……姉ちゃんよ……!そっから先は危険だぜ……ああっ?……も……猛獣が出るって話だかんなぁ……ああっ?……ガクッ……」
 イリーナ:「猛獣?どっからでも掛かってこいやぁ!……ヒック!山はいいよねぇ!」

 完全に酔っ払いの千鳥足状態ながら、山賊団を一網打尽にできる魔法は使えたイリーナ。

 イリーナ:「……十九の青春♪道まよい♪キリストの道♪我往くと……ヒック!神なんかいねぇよ、ヒック!どこ行くんだよ、オラッ!」

 と、イリーナの行く手を遮る者がいた。

 イリーナ:「あーん……?誰だ、コラァ……?」

 酔っぱらって前後不覚になっているイリーナの視界に現れたのは……ドラゴンだった!
 ドラゴンは真正面にイリーナを見据えていた。

 ドラゴン:「……人間!どこからやってきた?ここは我の張った結界で入って来れないはずだ……!」
 イリーナ:「わぁい!ドラゴンだぁ〜!乗せて乗せてー!」

 イリーナはドラゴンの顔の上に抱きついた。
 だがドラゴンは、フンっと鼻息でイリーナを軽く吹き飛ばす。

 ドラゴン:「不遜な人間よ。直ちにここから去れ。さもなくば食い殺す……」
 イリーナ:「ねぇ。あんた、見たところ、魔界から流れて来た若いドラゴンでしょ?人間で言うなら、やっと大人になったかくらいの」
 ドラゴン:「なっ……!?」
 イリーナ:「まだ若いんだから、そんな堅苦しい話し方しないの。……で、その背中に刺さってる剣は何なの?」
 ドラゴン:「……お前に話すことなど無い。どうせ我も死ぬ。この背中の剣のせいで……」
 イリーナ:「んじゃ抜いてあげる」
 ドラゴン:「は!?」

 イリーナはドラゴンの背中によじ登った。

 ドラゴン:「おい、バカ!やめろ!その背中の剣、大きさを見れば分かるだろ!?ただの剣ではないぞ!これは魔界で大魔王バァルに刺された大剣で、一介の人間如きが触れただけでも滅されるものだぞ!?」
 イリーナ:「んなこと知らないし!魔王のクソジジィが何だって言うのよ!?皆してアタシのことバカにしやがって!んききききき……!!」

 イリーナはその剣を両手で掴んだ。

 イリーナ:「大魔王に神以上の力があるってんならぁ……!今すぐ課題提出日延ばしてみやがれぃ!ヒック!」

 ズボォォォッ!(剣が抜けた)

 ドラゴン:「ええええええええ!?」

 イリーナ:「飲めや!ドラゴン!そんでアタシの話を聞けぇっ!」
 ドラゴン:「す、すいませんでした。まさか、魔法使いだったとは……。本当に、何て御礼を言ったらいいか……」
 イリーナ:「んなことどうだっていいんだよォ!ヒック!さっさと飲めや、オラ!アタシだって鬱憤沢山溜まってんだ!!」

[同日22:00.天候:晴 東京都渋谷区 稲生達の宿泊しているホテル]

 ホテルの前にタクシーが到着する。
 酔い潰れたマリアは、イリーナが軽々と背負っていた。

 稲生:「まさか、大師匠様とケンカ別れしたのが原因で、リシーツァを使い魔にしたとは……」
 イリーナ:「あのコもバァルにコキ使われて、ついに爆発したみたいね。そしたら、バァルが逆ギレしたっていう……。ほんと、老害達は困るわねぇ。リシーちゃんったら、どうしても私に御礼がしたいっていうから、使い魔になってもらったの」
 稲生:「そうだったんですか」
 イリーナ:「せっかくユウタ君が大浴場のあるホテルを取ってくれたのに、勿体無いねぇ……」
 稲生:「まあ、大浴場は翌朝でも入れますから」

 エレベーターに乗って、客室フロアで別れた稲生達。
 稲生にとってはマリアの意外な一面が見れたが、別に幻滅はしなかった。
 むしろ、ハイテンションなマリアもそれはそれでいいと思ったものだ。
 しかも……。

 稲生:「あ、持ってきちゃった……」

 マリアの緑色のブレザーを持ってきてしまった。

 稲生:「ま、いっか。明日返せば……。うん、明日でもね」
コメント
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