報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「新校舎の中は異界」

2017-05-02 20:51:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月3日02:00.天候:曇 東京中央学園・新校舎]

 稲生は警備員が巡回に出ている隙に、新校舎に向かった。
 新校舎の入口はイリーナ達が開けてくれている。
 案の定、警備員はまだこちら側を巡回していないのか、施錠されていることは無かった。
 昔は宿直室だった部屋を今は警備室に改築し、警備員が巡回に行く際はその横の通用口から出ることは知っていた。
 稲生は中に入ると、ある部屋に向かった。
 それは職員室。
 鍵は警備室の他、職員室にもあることも知っている。
 今は機械警備に変わり、警備員も常駐しているということもあって、職員室には鍵が掛かっていない。
 警備員が戻って来るまでの間、早いとこ欲しい物を失敬しなければならない。

 稲生:「あった!」

 まずは稲生、キーボックスを見つけた。
 中を開けると、各教室の鍵がぶら下がっている。
 その中に、旧校舎入口のドアの鍵があった。
 かなり古い鍵だ。

 

 稲生はそれと懐中電灯を探した。
 これもすぐに見つかりそうだったが……。

 稲生:「!?」

 と、外から光が入って来た。
 警備員が旧校舎の巡回から戻って来たのだ。
 今度は新校舎の周りを回っているらしく、新校舎の窓を時折懐中電灯で照らしている。
 その光が職員室の中に差し込んで来たのだ。
 稲生は慌てて机の陰に隠れた。
 昇降口の鍵は施錠しておいたから、外から確認された際に開いていて騒がれることは無いはずだった。

 稲生:「よし、今だ!」

 稲生は何とか懐中電灯を見つけ出すと、それを持ち出して、そっと職員室の外に出た。
 そのまま昇降口に行こうとすると警備室の前を通ることになるので、別の出口から出ようと考えた。
 もちろん非常口はあるから、そこから出ようかと稲生は考えた。
 警備室とは反対方向に向かう。

 稲生:「ん?」

 その途中にトイレがあるのだが、何故かそのトイレの明かりが点いていた。
 よせばいいのに、稲生はそのトイレを覗いてみた。

 

 ???:「助けてくれ……苦しい……!」

 中から声が聞こえる。
 何だか、聞き覚えのある声だ。

 ???:「ユタぁ……助けてくれぇ……!ホンマ、しんどいわぁ……!」
 稲生:「大河内君!?」

 それは大河内という名の稲生の同級生だった。
 現役時代は軽音部に所属し、バンドユニットも結成していたほどのバンドマン。
 しかしながら霊感も強く、稲生と一緒に魔界の穴を塞いだ戦友でもある。
 だが今は、もうこの世の者ではない。
 稲生が大河内の声がした方を覗くと……。

 

 和式トイレの便器の中から上半身だけを出した金髪・短髪の大河内が苦悶の顔を浮かべて稲生を見ていた。
 その上半身も気体のようにウネウネとうねっている。

 大河内:「ユタぁ……何で俺だけこんな目に遭わなアカンねん?マジ、キッツいんやわ〜」
 稲生:「大河内君、大丈夫かい!?」
 大河内:「ユタぁ……助けてくれたら何でもするねん。この手を引いてやな、俺を引きずり出してくれぇ……」
 稲生:「わ、分かった」

 だが、稲生は意やな予感がした。

 稲生:「キミ、本当に大河内君かい?」
 大河内:「ユタ、俺を忘れたんか?一緒に旧校舎で戦ったやんかー」
 稲生:「う、うん……」

 稲生は魔法の杖を差し出した。

 稲生:「これに掴まるんだ」
 大河内:「アカンわ。俺もう死んどるから、それに掴まれへん。ユタ、お前の手が頼りや。な?ホンマ頼むわ」
 稲生:「死んでることは自覚してるんだね?」
 大河内:「死んでも死に切れんのや。何で俺があんな死に方せなあかんねん」
 稲生:「確かに大河内君にあっては、あれは残念だったけど……。パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ」
 大河内:「な、何を……!?」
 稲生:「ニフラム!」
 大河内:「わああああああ!……キサマ、何故偽者だと分かった!?」

 大河内の姿は、見る見るうちにおぞましい化け物の姿へと変えて行った。
 腐った死体のような姿から、ついにはガイコツの姿となり、便器から這い出て来た。

 稲生:「幽霊にしては明確に喋り過ぎだし、姿もきれい過ぎる。多分これは他の化け物が、たまたま大河内君の姿と記憶をコピペしただけだろうと思った。あとそれから、僕はニフラムまだ使えないからw」

 ニフラムの効果は『ドラクエ ニフラム』で検索w

 魔物:「おのれ!図ったな!!」

 稲生は急いでトイレから飛び出した。
 ガイコツも追い掛けて来る。
 魔物からの逃走モードに入っている時は、警備員とはエンカウントしないようだ。
 警備室の前を突っ切り、昇降口の前も突っ切る。

 魔物:「待ぁてぇぇぇぇぇぇっ!」
 稲生:「誰が待つか!!」

 そして稲生、1階の姿見の前を通過する。
 ガイコツも何の疑いも無く通過したのだが、その姿見の中からガイコツそっくりのガイコツが出て来た。
 稲生を追い掛けて来るガイコツが本当に人間の骨みたいな色をしているのに対し、姿見の中から出て来たのは緑がかっていた。

 魔物:「何だ、キサマ!?……おい、やめろ!」

 姿見から出て来た緑色のガイコツは、稲生を追い掛けている白いガイコツに襲い掛かった。

 稲生:(あの姿見の中の魔物は、2番目に映った者の姿形を借りて、それに襲い掛かるという性質があるんだってさ)

 稲生は魔物達が同士討ちをしている隙に、昇降口のドアを開けて外に飛び出した。
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