報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「羽田空港出発」

2017-05-23 15:25:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月28日10:10.天候:晴 羽田空港国際線ターミナル]

 オレンジ色が目立つエアポートリムジンバスが、終点の羽田空港国際線ターミナルに到着する。

 ダンテ:「よし。着いたよ。降りよう」
 稲生:「はい」

 稲生達はバスから降りた。
 稲生がダンテから聞いたのは、ゾーイが用意した幻影から上手く脱出できたことに対する賛辞であった。

 ダンテ:「魔道書を読んで勉強するのもいいが、ああいう場所に監禁された際に、いかに機転と勘を働かせるのかも大事なんだ。しかし、キミは本当によく脱出できた」
 稲生:「スティーブンさんのおかげですよ。あの人がアドバイスをくれたからなんです」
 ダンテ:「ほお。確か、ジーナの配偶者だったかな。ジーナもねぇ、ずっと引きこもってばっかりの暗い子だったんだけど、今では別人のように明るくなったねぇ……」
 稲生:「そうなんですか」

 ターミナルの中に入る。

 イリーナ:「先生、もうチケットはお持ちなんですか?」
 ダンテ:「ああ。この通り」
 稲生:「ロンドンのヒースロー空港行きですか。……おっ、ファーストクラスだ。さすがは大師匠様ですね」
 ダンテ:「いや、ウェールズ商会のCEOがくれたものなんだが……」
 稲生:「え……?じゃあ、ホテルも?」
 ダンテ:「この仕事で有名になると、あちこち世界中から呼ばれるようになってねぇ……。いい加減、イリーナ達に引き継いで、私はバァルと一緒にゴルフにでも行きたいところなんだが……」
 イリーナ:「不肖の弟子で申し訳無いですね」
 ダンテ:「とまあ、こんな感じなんだ」
 稲生:「僕も頑張ります」
 ダンテ:「うん、頼もしい言葉だ。見送り、ありがとう。また日本に来る機会もあるだろう」
 イリーナ:「精進させますわ」
 ダンテ:「キミもするんだよ。差し当たり、弟子に起こされる前に自分で起きなさい」
 イリーナ:「はい……」

 ダンテは航空チケットを手に、ゲートの向こう側に行ってしまった。

 マリア:「師匠も怒られてましたね」
 イリーナ:「事実だから反論できないし……」
 稲生:「この後、どうされますか?」
 イリーナ:「もうやること無いから、家に帰ろうと思うけど?あなた達は何かやることあるの?」
 稲生:「いえ、特には……」
 マリア:「私もありません」
 イリーナ:「そう。だったら……」
 稲生:「ただ、帰りの電車かバスの予約をしないといけないので、それが取れるかどうか……」
 イリーナ:「どこに行く?」
 稲生:「取りあえず、JRの駅に戻りましょう。何にしろ、1泊くらいはしないといけないかもしれません」
 イリーナ:「ま、それはしょうがないね」

 稲生達は再び東京都心に戻ろうとした。

 マリア:「魔界との時差のせいか、そろそろランチにしたい気分です」
 イリーナ:「お腹空いた?」
 稲生:「何か食べてから行きます?」
 イリーナ:「それもそうね」

 というわけで、3人の魔道師はターミナル内のレストランにて早めの昼食を取ることにした。

 イリーナ:「ところで、ユウタ君はダンテ先生から昔の話をされた?」
 稲生:「はい。少しだけですが……」
 イリーナ:「何だか私のことを話していたみたいだけど、私の失敗談とか?」
 稲生:「まあ、そんなところです」
 イリーナ:「そんなところ、かぁ……」
 マリア:「師匠の失敗談なんか山ほどあるでしょう。何を今さらじゃないですか」
 イリーナ:「あのねぇ……。(本当に今となったら笑える話だけだったらいいんだけど……)」

[同日11:50.天候:晴 羽田空港国際線ターミナル→エアポートリムジンバス車内]

 昼食を取った後、マリアの希望でコンビニに立ち寄った。
 見ていると、ストッキングや生理用品を手にしていた。
 その間に稲生はバスのチケットカウンターで、新宿行きのバスのチケットを買い求めた。

 稲生:「一応、行き先はバスタ新宿です」
 イリーナ:「なるほど。そこで帰りのバスのチケットを買うってわけだね?」
 稲生:「最悪は……」
 イリーナ:「ん?」
 稲生:「帰りは電車でないとダメのような気がするんです」

 すると目を細めていたイリーナが目を開いた。

 イリーナ:「それはユウタ君の予知かい?私の占いでは、どちらでも特にトラブルに巻き込まれることはないってことになってるけど……」

 するとイリーナ、納得したようにポンと手を叩く。

 イリーナ:「そうか。ユウタ君はバスよりも鉄道の方が好きだもんね。あと、私と一緒だとグリーン車に乗れるからか」
 稲生:「あ、いや、そういう理由じゃなくて……」
 マリア:「ん?」

 するとマリアのバッグの中から、ミク人形とハク人形が出てくる。
 ドヨドヨと稲生を睨みつけるように見ていた。

 ミク人形:「車内販売のアイス……」
 ハク人形:「車内販売のアイス……」
 イリーナ:「おやおや?」
 稲生:「今朝乗った“中央ライナー”、JRのサービスと車両の送り込み回送の都合で特急用車両を使っているだけで、車内販売は無いよって言ったら、物凄く不機嫌になってしまいまして……」
 イリーナ:「ああ。確かにあのアイスクリーム、美味しいもんね」
 稲生:「高速バスを選択したら、ボコられそうです」
 マリア:「高速バスだって、途中休憩のサービスエリアでおやつくらい買えるぞ?」
 ミク人形:「やー」
 ハク人形:「やー」
 イリーナ:「持ち主に似て、ワガママになっちゃったねぃ……」
 マリア:「私、ワガママですか!?」
 稲生:「というわけで、新宿駅に行って、取りあえず鉄道を選択してみます」
 イリーナ:「う、うん。その方がいいね」

 東京駅北口(鉄鋼ビル)から乗ったのと車種は違うが、同じ塗装をしたバス会社のバスがやってきた。
 後ろの席に座る。

 稲生:「ストッキング買ったんですね?」
 マリア:「うん。日本のは質がいい」
 稲生:「そうなんですか」
 マリア:「さすがに夏は暑いからはかないけど……」
 稲生:「東京は暖かくなりましたけど、長野はまだちょっと寒いですもんね。特に朝晩」
 マリア:「そうそう」

 発車時刻になってバスが出発する。
 尚、バスが賑わうのは国内線ターミナルの2つの乗り場からである。

 マリア:「師匠、寝ないんですか?」
 イリーナ:「うん。寝坊しない為には起きているのが1番だって分かった」
 マリア:「ほうほう」

 マリアはニヤニヤ笑って師匠の言葉に頷いた。

 稲生:(多分、結局は寝落ちするパターンだな……)

 と、稲生は何となくそう思った。
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“大魔道師の弟子” 「ダンテとの再会」

2017-05-23 10:40:26 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月28日07:42.天候:晴 JR中央線“中央ライナー”車内→JR東京駅]

 朝日を浴びて、“中央ライナー”は東京都心内を走る。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。お出口は、左側です。【中略】本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 稲生:「……おっ!」

 いつの間にか稲生も寝てしまっていたようだ。
 車内チャイムの音で目を覚ます。

 稲生:「そろそろ、先生を起こさないと……って、おっ!?」

 稲生が前の席に座るイリーナを起こそうと、立ち上がろうとした。
 すると、隣に座るマリアもうとうとしていて、しかも肘掛けの上の稲生の手を掴んでいた。
 稲生が起きたことでマリアも目を覚まし、さすがにその時には手を放したが。

 稲生:「そ、そろそろ先生を起こさないと……」
 マリア:「そうだな。『ミスター・ビーン』風に?」
 稲生:「思いっ切り嫌な予感がするので、やめておきましょう」
 マリア:「それならしょうがない。師匠、師匠。そろそろ着きますよ」

 時系列的に今から20年近く前のイギリスのテレビ番組を、どうしてマリアが知っているのかというと、日本に来てから観たらしい。
 日本でもテレビで再放送とかよくやっていたので。
 本場イギリスで大好評だった番組が日本でも放映されていたとは、と驚いていたそうだ。

 電車が1番線に到着する。

〔とうきょう〜、東京〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 稲生:「特急車両で東京駅まで乗って来たの、初めてだなぁ……」

 稲生が感想を独り言で呟いていると、イリーナが顔を覗かせた。

 イリーナ:「そうかい?さすがはユウタ君だね。おかげ様で、よく眠れたよ」
 稲生:「いえいえ。先生ともあろう御方を、ああいう満員電車にお乗せするわけにはいかないので……」

 稲生は2番線から発車していった快速電車を指さした。

 イリーナ:「昔は荷馬車に便乗したり、貨物船に便乗したりしたから、別にいいんだよ。ちゃんと人を乗せる乗り物なんだから」

 稲生:「いやあ、それでもですねぇ……。それより、もうホテルへ行っちゃっていいんですか?」
 イリーナ:「おっ、そうだね。少し早めに行って、ダンテ先生を起こしてあげよう」
 稲生:「まだ寝てらっしゃいますか?」
 イリーナ:「多分ね。だから、ドッキリ番組みたいに、『おはようございます』と小声で言いながら部屋に入って……」
 稲生:「後で怖い事になりそうな気がします。(てか、何でこの組の人達はテレビや映画に感化されやすいんだろう?)」

[同日08:00.天候:晴 東京都千代田区丸の内 シャングリラホテル東京]

 東京駅と隣接する高級ホテルに到着する。

 イリーナ:「あら?ダンテ先生」
 ダンテ:「やあ、やっぱり来たようだね」

 ロビーには既にダンテがソファに座っていた。

 イリーナ:「せっかくお起こしに参りましたのに……」
 ダンテ:「いやいや、起床くらい自分でするよ。キミも弟子達に起こされてばかりいないで、自分で起きなさい」
 イリーナ:「たまには自分で起きていますから大丈夫です」( ・´ー・`)
 ダンテ:「ドヤ顔で言うセリフじゃないだろう。たまには、じゃなくていつも自分で起きるの。分かった?」
 イリーナ:「はぁい……」

 弟子達の前で大師匠に叱られる小師匠。

 マリア:「大師匠様は、何ゆえ日本に?」
 ダンテ:「『業務』さ。日本海(※)近辺がちょっと今、騒がしいだろう?」
 稲生:「確かに……」

 ※あ?何だって?『日本海じゃねぇ!東海(トンヘ)だ!』?アホか!取りあえず、沖縄の美ら海水族館さんは日本海の表記の横にある「東海(トンヘ)」の表記を消すように!

 ダンテ:「でもどうやら、僕の出番は無さそうだ」
 稲生:「ということは……」
 ダンテ:「東亜魔道団が動いている。彼らに任せておけば良いだろう」
 マリア:「あいつらにですか」

 マリアは眉を潜めた。

 ダンテ:「まあ、そう言いなさんな。名前の通り、彼らの方がこちら側に詳しいし、太いパイプもある。そして何より、彼らもまた日本海情勢が悪化されると困る人達ばかりだから、間違いなく『何とか』するだろうね」
 稲生:「大師匠様がそう仰るのでしたら……」
 ダンテ:「これからイギリスに行くんだが、まだちょっと時間がある。ちょっと、休憩してから行こう」
 稲生:「はい」

[同日08:15.天候:晴 鉄鋼ビルティング]

 イリーナ:「あの、稲生君?」
 稲生:「コーヒー、注文してきますよ。トールサイズでいいですか?」
 マリア:「師匠には『満員電車は失礼だ』としておきながら、大師匠様には普通のコーヒーショップで、しかも羽田空港までのアクセスが『別の意味のリムジン』とは……」
 稲生:「すぐ乗り場、目の前ですよ?」
 ダンテ:「ハハハハ!実に面白い!」
 イリーナ:「……後で説教しておきます」
 ダンテ:「いいからいいから。コーヒーとサンドイッチをもらおうかな。内容は稲生君に任せる」
 稲生:「了解しました」

 こうして稲生がまとめて買って来る。

 ダンテ:「それで、どうだったかね?魔界の方は……」

 ダンテがコーヒーを啜りながら稲生を見た。

 稲生:「は、はい!初めてのドラゴンは、とても圧巻で壮観でした」
 ダンテ:「まさか一介の魔道師がドラゴンを従属させているとは意外だっただろう?」
 稲生:「イリーナ先生は大魔道師でありますので、確かに何でもアリって感じではあるんですけど、ドラゴンはちょっと想定外でしたね」
 ダンテ:「うんうん、そうだろうそうだろう。この私ですら想定していなかったんだから、当たり前だね」
 稲生:「そうなんですか?」
 ダンテ:「普通、ドラゴンを従属させる魔道師なんていないから」
 稲生:「ですよねぇ……」

[同日09:15.天候:晴 鉄鋼ビル内バスターミナル]

 ここから羽田空港行きのエアポートリムジンバスが出発する。
 いつも通り、オレンジ色が映えるバスが横付けされると、早速乗客達が乗り込んだ。

 稲生:「そういえば大師匠様は、大きな荷物はお持ちでないんですね?」
 ダンテ:「僕の場合は、全部ローブのポケットに入るからね」
 稲生:(四次元ポケット!?)

 いつもならダンテとイリーナ、稲生とマリアで座るのだが……。

 ダンテ:「申し訳無いが、彼と話をしたい。今回だけはいいかね?」
 マリア:「は、はい!」
 稲生:「僕とですか!?」
 ダンテ:「うむ。……ああ、キミは窓側でいい。ちょっと今回、キミがトラブルに巻き込まれたということで、代表者としてフォローしたい」

 ダンテの見た目は50代の精悍な壮年といった感じなのだが、もちろんこれは魔法による仮の姿だろう。
 魔法で見た目を自由に変えられるほどの力を持つ大魔道師の代表が、一体新人の稲生に何を言うつもりだろうか。
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