[4月28日10:10.天候:晴 羽田空港国際線ターミナル]
オレンジ色が目立つエアポートリムジンバスが、終点の羽田空港国際線ターミナルに到着する。
ダンテ:「よし。着いたよ。降りよう」
稲生:「はい」
稲生達はバスから降りた。
稲生がダンテから聞いたのは、ゾーイが用意した幻影から上手く脱出できたことに対する賛辞であった。
ダンテ:「魔道書を読んで勉強するのもいいが、ああいう場所に監禁された際に、いかに機転と勘を働かせるのかも大事なんだ。しかし、キミは本当によく脱出できた」
稲生:「スティーブンさんのおかげですよ。あの人がアドバイスをくれたからなんです」
ダンテ:「ほお。確か、ジーナの配偶者だったかな。ジーナもねぇ、ずっと引きこもってばっかりの暗い子だったんだけど、今では別人のように明るくなったねぇ……」
稲生:「そうなんですか」
ターミナルの中に入る。
イリーナ:「先生、もうチケットはお持ちなんですか?」
ダンテ:「ああ。この通り」
稲生:「ロンドンのヒースロー空港行きですか。……おっ、ファーストクラスだ。さすがは大師匠様ですね」
ダンテ:「いや、ウェールズ商会のCEOがくれたものなんだが……」
稲生:「え……?じゃあ、ホテルも?」
ダンテ:「この仕事で有名になると、あちこち世界中から呼ばれるようになってねぇ……。いい加減、イリーナ達に引き継いで、私はバァルと一緒にゴルフにでも行きたいところなんだが……」
イリーナ:「不肖の弟子で申し訳無いですね」
ダンテ:「とまあ、こんな感じなんだ」
稲生:「僕も頑張ります」
ダンテ:「うん、頼もしい言葉だ。見送り、ありがとう。また日本に来る機会もあるだろう」
イリーナ:「精進させますわ」
ダンテ:「キミもするんだよ。差し当たり、弟子に起こされる前に自分で起きなさい」
イリーナ:「はい……」
ダンテは航空チケットを手に、ゲートの向こう側に行ってしまった。
マリア:「師匠も怒られてましたね」
イリーナ:「事実だから反論できないし……」
稲生:「この後、どうされますか?」
イリーナ:「もうやること無いから、家に帰ろうと思うけど?あなた達は何かやることあるの?」
稲生:「いえ、特には……」
マリア:「私もありません」
イリーナ:「そう。だったら……」
稲生:「ただ、帰りの電車かバスの予約をしないといけないので、それが取れるかどうか……」
イリーナ:「どこに行く?」
稲生:「取りあえず、JRの駅に戻りましょう。何にしろ、1泊くらいはしないといけないかもしれません」
イリーナ:「ま、それはしょうがないね」
稲生達は再び東京都心に戻ろうとした。
マリア:「魔界との時差のせいか、そろそろランチにしたい気分です」
イリーナ:「お腹空いた?」
稲生:「何か食べてから行きます?」
イリーナ:「それもそうね」
というわけで、3人の魔道師はターミナル内のレストランにて早めの昼食を取ることにした。
イリーナ:「ところで、ユウタ君はダンテ先生から昔の話をされた?」
稲生:「はい。少しだけですが……」
イリーナ:「何だか私のことを話していたみたいだけど、私の失敗談とか?」
稲生:「まあ、そんなところです」
イリーナ:「そんなところ、かぁ……」
マリア:「師匠の失敗談なんか山ほどあるでしょう。何を今さらじゃないですか」
イリーナ:「あのねぇ……。(本当に今となったら笑える話だけだったらいいんだけど……)」
[同日11:50.天候:晴 羽田空港国際線ターミナル→エアポートリムジンバス車内]
昼食を取った後、マリアの希望でコンビニに立ち寄った。
見ていると、ストッキングや生理用品を手にしていた。
その間に稲生はバスのチケットカウンターで、新宿行きのバスのチケットを買い求めた。
稲生:「一応、行き先はバスタ新宿です」
イリーナ:「なるほど。そこで帰りのバスのチケットを買うってわけだね?」
稲生:「最悪は……」
イリーナ:「ん?」
稲生:「帰りは電車でないとダメのような気がするんです」
すると目を細めていたイリーナが目を開いた。
イリーナ:「それはユウタ君の予知かい?私の占いでは、どちらでも特にトラブルに巻き込まれることはないってことになってるけど……」
するとイリーナ、納得したようにポンと手を叩く。
イリーナ:「そうか。ユウタ君はバスよりも鉄道の方が好きだもんね。あと、私と一緒だとグリーン車に乗れるからか」
稲生:「あ、いや、そういう理由じゃなくて……」
マリア:「ん?」
するとマリアのバッグの中から、ミク人形とハク人形が出てくる。
ドヨドヨと稲生を睨みつけるように見ていた。
ミク人形:「車内販売のアイス……」
ハク人形:「車内販売のアイス……」
イリーナ:「おやおや?」
稲生:「今朝乗った“中央ライナー”、JRのサービスと車両の送り込み回送の都合で特急用車両を使っているだけで、車内販売は無いよって言ったら、物凄く不機嫌になってしまいまして……」
イリーナ:「ああ。確かにあのアイスクリーム、美味しいもんね」
稲生:「高速バスを選択したら、ボコられそうです」
マリア:「高速バスだって、途中休憩のサービスエリアでおやつくらい買えるぞ?」
ミク人形:「やー」
ハク人形:「やー」
イリーナ:「持ち主に似て、ワガママになっちゃったねぃ……」
マリア:「私、ワガママですか!?」
稲生:「というわけで、新宿駅に行って、取りあえず鉄道を選択してみます」
イリーナ:「う、うん。その方がいいね」
東京駅北口(鉄鋼ビル)から乗ったのと車種は違うが、同じ塗装をしたバス会社のバスがやってきた。
後ろの席に座る。
稲生:「ストッキング買ったんですね?」
マリア:「うん。日本のは質がいい」
稲生:「そうなんですか」
マリア:「さすがに夏は暑いからはかないけど……」
稲生:「東京は暖かくなりましたけど、長野はまだちょっと寒いですもんね。特に朝晩」
マリア:「そうそう」
発車時刻になってバスが出発する。
尚、バスが賑わうのは国内線ターミナルの2つの乗り場からである。
マリア:「師匠、寝ないんですか?」
イリーナ:「うん。寝坊しない為には起きているのが1番だって分かった」
マリア:「ほうほう」
マリアはニヤニヤ笑って師匠の言葉に頷いた。
稲生:(多分、結局は寝落ちするパターンだな……)
と、稲生は何となくそう思った。
オレンジ色が目立つエアポートリムジンバスが、終点の羽田空港国際線ターミナルに到着する。
ダンテ:「よし。着いたよ。降りよう」
稲生:「はい」
稲生達はバスから降りた。
稲生がダンテから聞いたのは、ゾーイが用意した幻影から上手く脱出できたことに対する賛辞であった。
ダンテ:「魔道書を読んで勉強するのもいいが、ああいう場所に監禁された際に、いかに機転と勘を働かせるのかも大事なんだ。しかし、キミは本当によく脱出できた」
稲生:「スティーブンさんのおかげですよ。あの人がアドバイスをくれたからなんです」
ダンテ:「ほお。確か、ジーナの配偶者だったかな。ジーナもねぇ、ずっと引きこもってばっかりの暗い子だったんだけど、今では別人のように明るくなったねぇ……」
稲生:「そうなんですか」
ターミナルの中に入る。
イリーナ:「先生、もうチケットはお持ちなんですか?」
ダンテ:「ああ。この通り」
稲生:「ロンドンのヒースロー空港行きですか。……おっ、ファーストクラスだ。さすがは大師匠様ですね」
ダンテ:「いや、ウェールズ商会のCEOがくれたものなんだが……」
稲生:「え……?じゃあ、ホテルも?」
ダンテ:「この仕事で有名になると、あちこち世界中から呼ばれるようになってねぇ……。いい加減、イリーナ達に引き継いで、私はバァルと一緒にゴルフにでも行きたいところなんだが……」
イリーナ:「不肖の弟子で申し訳無いですね」
ダンテ:「とまあ、こんな感じなんだ」
稲生:「僕も頑張ります」
ダンテ:「うん、頼もしい言葉だ。見送り、ありがとう。また日本に来る機会もあるだろう」
イリーナ:「精進させますわ」
ダンテ:「キミもするんだよ。差し当たり、弟子に起こされる前に自分で起きなさい」
イリーナ:「はい……」
ダンテは航空チケットを手に、ゲートの向こう側に行ってしまった。
マリア:「師匠も怒られてましたね」
イリーナ:「事実だから反論できないし……」
稲生:「この後、どうされますか?」
イリーナ:「もうやること無いから、家に帰ろうと思うけど?あなた達は何かやることあるの?」
稲生:「いえ、特には……」
マリア:「私もありません」
イリーナ:「そう。だったら……」
稲生:「ただ、帰りの電車かバスの予約をしないといけないので、それが取れるかどうか……」
イリーナ:「どこに行く?」
稲生:「取りあえず、JRの駅に戻りましょう。何にしろ、1泊くらいはしないといけないかもしれません」
イリーナ:「ま、それはしょうがないね」
稲生達は再び東京都心に戻ろうとした。
マリア:「魔界との時差のせいか、そろそろランチにしたい気分です」
イリーナ:「お腹空いた?」
稲生:「何か食べてから行きます?」
イリーナ:「それもそうね」
というわけで、3人の魔道師はターミナル内のレストランにて早めの昼食を取ることにした。
イリーナ:「ところで、ユウタ君はダンテ先生から昔の話をされた?」
稲生:「はい。少しだけですが……」
イリーナ:「何だか私のことを話していたみたいだけど、私の失敗談とか?」
稲生:「まあ、そんなところです」
イリーナ:「そんなところ、かぁ……」
マリア:「師匠の失敗談なんか山ほどあるでしょう。何を今さらじゃないですか」
イリーナ:「あのねぇ……。(本当に今となったら笑える話だけだったらいいんだけど……)」
[同日11:50.天候:晴 羽田空港国際線ターミナル→エアポートリムジンバス車内]
昼食を取った後、マリアの希望でコンビニに立ち寄った。
見ていると、ストッキングや生理用品を手にしていた。
その間に稲生はバスのチケットカウンターで、新宿行きのバスのチケットを買い求めた。
稲生:「一応、行き先はバスタ新宿です」
イリーナ:「なるほど。そこで帰りのバスのチケットを買うってわけだね?」
稲生:「最悪は……」
イリーナ:「ん?」
稲生:「帰りは電車でないとダメのような気がするんです」
すると目を細めていたイリーナが目を開いた。
イリーナ:「それはユウタ君の予知かい?私の占いでは、どちらでも特にトラブルに巻き込まれることはないってことになってるけど……」
するとイリーナ、納得したようにポンと手を叩く。
イリーナ:「そうか。ユウタ君はバスよりも鉄道の方が好きだもんね。あと、私と一緒だとグリーン車に乗れるからか」
稲生:「あ、いや、そういう理由じゃなくて……」
マリア:「ん?」
するとマリアのバッグの中から、ミク人形とハク人形が出てくる。
ドヨドヨと稲生を睨みつけるように見ていた。
ミク人形:「車内販売のアイス……」
ハク人形:「車内販売のアイス……」
イリーナ:「おやおや?」
稲生:「今朝乗った“中央ライナー”、JRのサービスと車両の送り込み回送の都合で特急用車両を使っているだけで、車内販売は無いよって言ったら、物凄く不機嫌になってしまいまして……」
イリーナ:「ああ。確かにあのアイスクリーム、美味しいもんね」
稲生:「高速バスを選択したら、ボコられそうです」
マリア:「高速バスだって、途中休憩のサービスエリアでおやつくらい買えるぞ?」
ミク人形:「やー」
ハク人形:「やー」
イリーナ:「持ち主に似て、ワガママになっちゃったねぃ……」
マリア:「私、ワガママですか!?」
稲生:「というわけで、新宿駅に行って、取りあえず鉄道を選択してみます」
イリーナ:「う、うん。その方がいいね」
東京駅北口(鉄鋼ビル)から乗ったのと車種は違うが、同じ塗装をしたバス会社のバスがやってきた。
後ろの席に座る。
稲生:「ストッキング買ったんですね?」
マリア:「うん。日本のは質がいい」
稲生:「そうなんですか」
マリア:「さすがに夏は暑いからはかないけど……」
稲生:「東京は暖かくなりましたけど、長野はまだちょっと寒いですもんね。特に朝晩」
マリア:「そうそう」
発車時刻になってバスが出発する。
尚、バスが賑わうのは国内線ターミナルの2つの乗り場からである。
マリア:「師匠、寝ないんですか?」
イリーナ:「うん。寝坊しない為には起きているのが1番だって分かった」
マリア:「ほうほう」
マリアはニヤニヤ笑って師匠の言葉に頷いた。
稲生:(多分、結局は寝落ちするパターンだな……)
と、稲生は何となくそう思った。