[4月3日01:00.天候:曇 東京中央学園上野高校 外部トイレ]
稲生:「くそっ、どうすれば……!そ、そうだ!」
稲生は文字盤に向かって、ある文言を言い放った。
稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
こっくりさんが終了した際の呪文だ。
こうすることで、降霊した幽霊に霊界に戻ってもらうという。
だが、稲生は相手を間違えた。
相手は幽霊ではない。
スーッと10円玉が動く。
か……え……ら……ん……『帰らん』
稲生:「そんな……!」
どうする?
1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
2:「ふざけるな!こっちは急いでるんだ!!」
3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
4:「に、逃げよう!」
稲生:「あ、諦めるな。もう1度トライだ」
稲生は1を選んだ。
稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
か……え……ら……な……い……そ……゛……『帰らないぞ』
稲生:「そんなぁ……」
どうする?
1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
2:「僕はあの威吹邪甲の知り合いだぞ!」
3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
4:「に、逃げよう!」
稲生は2を選んだ。
稲生:「僕はあの威吹邪甲の知り合いだぞ!こんなことをすると、あなたはタダじゃ済まないぞ!」
た……゛……れ……た……゛……そ……れ……『誰だ、それ?』
稲生:「威吹の無名人!」
威吹はけして妖狐の間では有名人ではなかった。
どうする?
1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
2:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
3:「に、逃げよう!」
稲生は1を選んだ。
稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
た……゛……め……た……゛……『ダメだ』
どうする?
1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
2:「お願いします!どうか、ここから出してください!」
3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
4:「に、逃げよう!」
5:勤行をする。
稲生は5を選んだ。
稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経〜。妙法蓮華経〜、方便品第二〜、爾……うわっ!」
稲生の数珠が千切れ、経本が自然発火した。
く……た……゛……ら……ん……『くだらん』
ほ……゛……う……す……゛……は……き……ら……い……た……゛……『坊主は嫌いだ』
稲生:「ええーっ!?法華経が効かない!?威吹は僕の勤行や唱題、嫌がってたのに!」
お……ま……え……は……ほ……゛……う……す……゛……か……『お前は坊主か?』
稲生:「ち、違う!日蓮正宗の信徒だ!」
あ……わ……れ……あ……わ……れ……『哀れ哀れ〜っ!』
どうする?
1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
2:「お願いします!どうか、ここから出してください!」
3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
4:「に、逃げよう!」
5:「もう許してください!」
稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
わ……か……つ……た……『分かった』
稲生:「おおっ!?」
き……ゆ……う……こ……う……し……や……に……い……け……『旧校舎に行け』
稲生:「何だって!?」
10円玉が鳥居の中に吸い込まれた。
稲生がシャッターを開けるのと同時に、トイレの照明が消えた。
稲生:「ふぅ……助かった。法華経、何の役にも立たなかったなぁ……」
稲生はトイレから脱出すると、その場に腰を下ろした。
稲生:(もしかして威吹、人間界では強い妖怪だけど、妖狐の里じゃ弱いヤツだったのかも……)
カテゴリーでは妖術使いとされる妖狐だが、威吹はあまり強い妖術は使わず、主に刀を振るっていた。
その腕前は剣豪と呼んで当たり前のものだったのだが……。
稲生:「それより、早いとこ旧校舎だ」
稲生は未だに震える足や高鳴る心臓の鼓動を抑えながら、旧校舎に向かった。
稲生:「あっ!?」
まず、3階建ての旧校舎の入口に近づくと、その2階の教室辺りに何か小さな光が灯っているのが見えた。
教育資料館として再生した旧校舎には、一応電気は通っている。
だがその明かりは教室の照明ではなく、何かロウソクとかランタンの明かりのように見えた。
あそこに誰かがいる。
稲生:「ロウソクか……。誰かが魔法の儀式でもしているのかな?」
稲生には魔法陣を描いて、その周りにロウソクを立てている魔道師の姿が思い浮かんだ。
稲生:「あ゛……!」
ここで稲生、二重のハードルにぶち当たる。
1つは、ここの入口の鍵を持っていないことだった。
中に誰かいるのなら、鍵くらい開いているかなと思ったのだが、そんなことは無かった。
しかし稲生は今、魔法が使えない状態。
魔法を行使するのに精神力を必要とするのだが、先ほどの恐怖が未だに消えておらず、呪文の詠唱を集中して行えない状態にあった。
そして、問題はもう1つあった。
稲生:「懐中電灯、落としてきちゃった……」
先ほどのトイレの中に、懐中電灯を落としてしまったようだ。
だが、せっかく脱出できたというのに、もう1度取りに行く度胸は無い。
稲生:「どうしよう……」
その時、稲生の背後から何か光が近づいてくるのが見えた。
稲生:「!?」
何かまずいと思った稲生は、近くの植木の陰に隠れた。
警備員:「ん?誰かいるのか?」
それは巡回中の警備員だった。
昔はここの教職員が宿直で泊まり込んでおり、その教職員もまた怪奇現象の被害者になったという話を稲生は聞いたことがある。
珍しいことに、1990年代まで、この学園では教職員自らが泊まり込んだ宿直制度が行われていたという。
他の学校では、遅くとも80年代までには警備会社への委託に切り換えられている。
警備員:「……気のせいか」
警備員は人の気配を感じた辺りを懐中電灯で照らしたりしたが、稲生を見つけることはできなかった。
その後で旧校舎の正面入口の施錠を確認し、あとはその周りの巡回を行う。
今では夜間における旧校舎内の巡回は、警備会社に委託後も行われなくなったという。
それほどまでに、この中は危険なのだ。
稲生:「……そうか!」
ここで稲生、ハッと気づく。
警備員が夜間巡回に行っている間、新校舎内の機械警備は切られている。
今なら大丈夫かもしれない。
稲生は新校舎に向かった。
稲生:「くそっ、どうすれば……!そ、そうだ!」
稲生は文字盤に向かって、ある文言を言い放った。
稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
こっくりさんが終了した際の呪文だ。
こうすることで、降霊した幽霊に霊界に戻ってもらうという。
だが、稲生は相手を間違えた。
相手は幽霊ではない。
スーッと10円玉が動く。
か……え……ら……ん……『帰らん』
稲生:「そんな……!」
どうする?
1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
2:「ふざけるな!こっちは急いでるんだ!!」
3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
4:「に、逃げよう!」
稲生:「あ、諦めるな。もう1度トライだ」
稲生は1を選んだ。
稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
か……え……ら……な……い……そ……゛……『帰らないぞ』
稲生:「そんなぁ……」
どうする?
1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
2:「僕はあの威吹邪甲の知り合いだぞ!」
3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
4:「に、逃げよう!」
稲生は2を選んだ。
稲生:「僕はあの威吹邪甲の知り合いだぞ!こんなことをすると、あなたはタダじゃ済まないぞ!」
た……゛……れ……た……゛……そ……れ……『誰だ、それ?』
稲生:「威吹の無名人!」
威吹はけして妖狐の間では有名人ではなかった。
どうする?
1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
2:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
3:「に、逃げよう!」
稲生は1を選んだ。
稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
た……゛……め……た……゛……『ダメだ』
どうする?
1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
2:「お願いします!どうか、ここから出してください!」
3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
4:「に、逃げよう!」
5:勤行をする。
稲生は5を選んだ。
稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経〜。妙法蓮華経〜、方便品第二〜、爾……うわっ!」
稲生の数珠が千切れ、経本が自然発火した。
く……た……゛……ら……ん……『くだらん』
ほ……゛……う……す……゛……は……き……ら……い……た……゛……『坊主は嫌いだ』
稲生:「ええーっ!?法華経が効かない!?威吹は僕の勤行や唱題、嫌がってたのに!」
お……ま……え……は……ほ……゛……う……す……゛……か……『お前は坊主か?』
稲生:「ち、違う!日蓮正宗の信徒だ!」
あ……わ……れ……あ……わ……れ……『哀れ哀れ〜っ!』
どうする?
1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
2:「お願いします!どうか、ここから出してください!」
3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
4:「に、逃げよう!」
5:「もう許してください!」
稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
わ……か……つ……た……『分かった』
稲生:「おおっ!?」
き……ゆ……う……こ……う……し……や……に……い……け……『旧校舎に行け』
稲生:「何だって!?」
10円玉が鳥居の中に吸い込まれた。
稲生がシャッターを開けるのと同時に、トイレの照明が消えた。
稲生:「ふぅ……助かった。法華経、何の役にも立たなかったなぁ……」
稲生はトイレから脱出すると、その場に腰を下ろした。
稲生:(もしかして威吹、人間界では強い妖怪だけど、妖狐の里じゃ弱いヤツだったのかも……)
カテゴリーでは妖術使いとされる妖狐だが、威吹はあまり強い妖術は使わず、主に刀を振るっていた。
その腕前は剣豪と呼んで当たり前のものだったのだが……。
稲生:「それより、早いとこ旧校舎だ」
稲生は未だに震える足や高鳴る心臓の鼓動を抑えながら、旧校舎に向かった。
稲生:「あっ!?」
まず、3階建ての旧校舎の入口に近づくと、その2階の教室辺りに何か小さな光が灯っているのが見えた。
教育資料館として再生した旧校舎には、一応電気は通っている。
だがその明かりは教室の照明ではなく、何かロウソクとかランタンの明かりのように見えた。
あそこに誰かがいる。
稲生:「ロウソクか……。誰かが魔法の儀式でもしているのかな?」
稲生には魔法陣を描いて、その周りにロウソクを立てている魔道師の姿が思い浮かんだ。
稲生:「あ゛……!」
ここで稲生、二重のハードルにぶち当たる。
1つは、ここの入口の鍵を持っていないことだった。
中に誰かいるのなら、鍵くらい開いているかなと思ったのだが、そんなことは無かった。
しかし稲生は今、魔法が使えない状態。
魔法を行使するのに精神力を必要とするのだが、先ほどの恐怖が未だに消えておらず、呪文の詠唱を集中して行えない状態にあった。
そして、問題はもう1つあった。
稲生:「懐中電灯、落としてきちゃった……」
先ほどのトイレの中に、懐中電灯を落としてしまったようだ。
だが、せっかく脱出できたというのに、もう1度取りに行く度胸は無い。
稲生:「どうしよう……」
その時、稲生の背後から何か光が近づいてくるのが見えた。
稲生:「!?」
何かまずいと思った稲生は、近くの植木の陰に隠れた。
警備員:「ん?誰かいるのか?」
それは巡回中の警備員だった。
昔はここの教職員が宿直で泊まり込んでおり、その教職員もまた怪奇現象の被害者になったという話を稲生は聞いたことがある。
珍しいことに、1990年代まで、この学園では教職員自らが泊まり込んだ宿直制度が行われていたという。
他の学校では、遅くとも80年代までには警備会社への委託に切り換えられている。
警備員:「……気のせいか」
警備員は人の気配を感じた辺りを懐中電灯で照らしたりしたが、稲生を見つけることはできなかった。
その後で旧校舎の正面入口の施錠を確認し、あとはその周りの巡回を行う。
今では夜間における旧校舎内の巡回は、警備会社に委託後も行われなくなったという。
それほどまでに、この中は危険なのだ。
稲生:「……そうか!」
ここで稲生、ハッと気づく。
警備員が夜間巡回に行っている間、新校舎内の機械警備は切られている。
今なら大丈夫かもしれない。
稲生は新校舎に向かった。