報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「再・学校であった怖い話」 〜御狐様〜

2017-05-01 18:35:11 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月3日01:00.天候:曇 東京中央学園上野高校 外部トイレ]

 稲生:「くそっ、どうすれば……!そ、そうだ!」

 稲生は文字盤に向かって、ある文言を言い放った。

 稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」

 こっくりさんが終了した際の呪文だ。
 こうすることで、降霊した幽霊に霊界に戻ってもらうという。
 だが、稲生は相手を間違えた。
 相手は幽霊ではない。
 スーッと10円玉が動く。

 か……え……ら……ん……『帰らん』

 稲生:「そんな……!」

 どうする?

 1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
 2:「ふざけるな!こっちは急いでるんだ!!」
 3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
 4:「に、逃げよう!」

 稲生:「あ、諦めるな。もう1度トライだ」

 稲生は1を選んだ。

 稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」

 か……え……ら……な……い……そ……゛……『帰らないぞ』

 稲生:「そんなぁ……」

 どうする?

 1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
 2:「僕はあの威吹邪甲の知り合いだぞ!」
 3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
 4:「に、逃げよう!」

 稲生は2を選んだ。

 稲生:「僕はあの威吹邪甲の知り合いだぞ!こんなことをすると、あなたはタダじゃ済まないぞ!」

 た……゛……れ……た……゛……そ……れ……『誰だ、それ?』

 稲生:「威吹の無名人!」

 威吹はけして妖狐の間では有名人ではなかった。
 どうする?

 1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
 2:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
 3:「に、逃げよう!」

 稲生は1を選んだ。

 稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」

 た……゛……め……た……゛……『ダメだ』

 どうする?

 1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
 2:「お願いします!どうか、ここから出してください!」
 3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
 4:「に、逃げよう!」
 5:勤行をする。

 稲生は5を選んだ。

 稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経〜。妙法蓮華経〜、方便品第二〜、爾……うわっ!」

 稲生の数珠が千切れ、経本が自然発火した。

 く……た……゛……ら……ん……『くだらん』
 ほ……゛……う……す……゛……は……き……ら……い……た……゛……『坊主は嫌いだ』

 稲生:「ええーっ!?法華経が効かない!?威吹は僕の勤行や唱題、嫌がってたのに!」

 お……ま……え……は……ほ……゛……う……す……゛……か……『お前は坊主か?』

 稲生:「ち、違う!日蓮正宗の信徒だ!」

 あ……わ……れ……あ……わ……れ……『哀れ哀れ〜っ!』

 どうする?

 1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」
 2:「お願いします!どうか、ここから出してください!」
 3:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……イオ!」
 4:「に、逃げよう!」
 5:「もう許してください!」

 稲生:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」

 わ……か……つ……た……『分かった』

 稲生:「おおっ!?」

 き……ゆ……う……こ……う……し……や……に……い……け……『旧校舎に行け』

 稲生:「何だって!?」

 10円玉が鳥居の中に吸い込まれた。
 稲生がシャッターを開けるのと同時に、トイレの照明が消えた。

 稲生:「ふぅ……助かった。法華経、何の役にも立たなかったなぁ……」

 稲生はトイレから脱出すると、その場に腰を下ろした。

 稲生:(もしかして威吹、人間界では強い妖怪だけど、妖狐の里じゃ弱いヤツだったのかも……)

 カテゴリーでは妖術使いとされる妖狐だが、威吹はあまり強い妖術は使わず、主に刀を振るっていた。
 その腕前は剣豪と呼んで当たり前のものだったのだが……。

 稲生:「それより、早いとこ旧校舎だ」

 稲生は未だに震える足や高鳴る心臓の鼓動を抑えながら、旧校舎に向かった。

 稲生:「あっ!?」

 まず、3階建ての旧校舎の入口に近づくと、その2階の教室辺りに何か小さな光が灯っているのが見えた。
 教育資料館として再生した旧校舎には、一応電気は通っている。
 だがその明かりは教室の照明ではなく、何かロウソクとかランタンの明かりのように見えた。
 あそこに誰かがいる。

 稲生:「ロウソクか……。誰かが魔法の儀式でもしているのかな?」

 稲生には魔法陣を描いて、その周りにロウソクを立てている魔道師の姿が思い浮かんだ。

 稲生:「あ゛……!」

 ここで稲生、二重のハードルにぶち当たる。
 1つは、ここの入口の鍵を持っていないことだった。
 中に誰かいるのなら、鍵くらい開いているかなと思ったのだが、そんなことは無かった。
 しかし稲生は今、魔法が使えない状態。
 魔法を行使するのに精神力を必要とするのだが、先ほどの恐怖が未だに消えておらず、呪文の詠唱を集中して行えない状態にあった。
 そして、問題はもう1つあった。

 稲生:「懐中電灯、落としてきちゃった……」

 先ほどのトイレの中に、懐中電灯を落としてしまったようだ。
 だが、せっかく脱出できたというのに、もう1度取りに行く度胸は無い。

 稲生:「どうしよう……」

 その時、稲生の背後から何か光が近づいてくるのが見えた。

 稲生:「!?」

 何かまずいと思った稲生は、近くの植木の陰に隠れた。

 警備員:「ん?誰かいるのか?」

 それは巡回中の警備員だった。
 昔はここの教職員が宿直で泊まり込んでおり、その教職員もまた怪奇現象の被害者になったという話を稲生は聞いたことがある。
 珍しいことに、1990年代まで、この学園では教職員自らが泊まり込んだ宿直制度が行われていたという。
 他の学校では、遅くとも80年代までには警備会社への委託に切り換えられている。

 警備員:「……気のせいか」

 警備員は人の気配を感じた辺りを懐中電灯で照らしたりしたが、稲生を見つけることはできなかった。
 その後で旧校舎の正面入口の施錠を確認し、あとはその周りの巡回を行う。
 今では夜間における旧校舎内の巡回は、警備会社に委託後も行われなくなったという。
 それほどまでに、この中は危険なのだ。

 稲生:「……そうか!」

 ここで稲生、ハッと気づく。
 警備員が夜間巡回に行っている間、新校舎内の機械警備は切られている。
 今なら大丈夫かもしれない。

 稲生は新校舎に向かった。
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“大魔道師の弟子” 「離れ離れ」

2017-05-01 10:29:29 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月3日04:00.天候:曇 東京中央学園上野高校 教育資料館(旧校舎)]

 何故か旧校舎にいる稲生。
 稲生の目の前には、まるでハロウィンのカボチャのような顔をした仮面を着けたセーラー服の女子生徒が佇んでいる。
 そのセーラー服は、昔の東京中央学園の旧制服と酷似していた。
 この教育資料館として再生した旧校舎にも、学園の歴史を伝える教室の中に展示してあるから稲生は知っている。
 で、どうしてこんなことになってしまったのか。
 話は数時間前に遡る。

[4月3日00:30.天候:雷 同学園新校舎4F]

 他の階では姿見のある所、4階にはそれが無い。
 その理由は明らかではないが、そこには掲示板があった。

 稲生:「あれ!?」

 ところが、今その掲示板は無くなって、青白く光るドアが1つあっただけだった。

 イリーナ:「この学校の設計者、もしかして魔道師に近しい者だったりしてね。まあ、いいわ。このドアの向こうが、本当の幻想郷たる魔界の入口よ」
 稲生:「なるほど」

 稲生はドアノブに手を掛けた。

 稲生:「あれ?」

 だが、ガチャガチャ回してもドアが開かない。

 稲生:「先生、何だか鍵が掛かってるみたいです」
 イリーナ:「そんなはずは……」

 イリーナは魔法の杖片手にドアノブを回した。

 イリーナ:「!? 閉まってる!?」
 アンナ:「誰かが妨害している?」
 エレーナ:「ちょっとどいてください」

 エレーナが代わりにドアの前に立ち、やはりドアノブを回したが開かない。

 エレーナ:「うりゃっ!」

 そして、ドガッとドアを蹴破った。
 向こう側に開くドア。

 イリーナ:「エレーナ……」
 マリア:「オマエなぁ……」
 稲生:「ハハハ……」
 エレーナ:┐(´д`)┌「ま、先どうぞ」

 イリーナはコホンと咳払いをした。

 イリーナ:「じゃ、とにかくついてきてー」
 アンナ:「はーい」
 稲生:「レディファーストです。先どうぞ」
 エレーナ:「ちゃんと意味分かって言ってる?」
 稲生:「一応……」
 マリア:「いいから早く行くぞ」

 稲生が1番最後にマリアの後に続いて入ろうとした。

 稲生:「うわっ!?」

 突然勢い良くドアがバタンと閉まった。
 締め出された稲生。
 そしてドアは何事も無かったかのように消えてしまい、そこにはまた元の掲示板があるだけだった。

 稲生:「先生!?マリアさん!!」

 稲生は掲示板に向かって叫んだり叩いたりしてみたが、何も起こらなかった。
 しかも……。

 稲生:「うわっ!?」

 その掲示板に貼られている掲示物の上から、血文字のような字体で何か文字が浮かび上がって来た。

 『外部トイレに行け』

 稲生:「こ、これは……!」

 その文字からは霊気のような冷たさを感じた。
 霊気は冷気。
 魔道師達が放つ魔力とは違い、幽霊が放つものだ。
 先ほどの男子生徒のように。

 稲生:「くそっ!」

 稲生だけを引き離して、何か企んでいる者がいるようだ。
 もし本当にそうだしたら、見事してやられた感じがして稲生はムカついた。
 だが、いつまでここで待っても何か起こるとは思えない。
 罠かもしれないと思いつつも、稲生は指定された場所に向かうことにした。

[同日00:45.天候:曇 外部トイレ]

 このトイレは基本的に閉鎖されている。
 稲生が知っている話では、ここには動物霊が出るからだそうだ。
 それに纏わる怪談話も聞いたことがある。
 入口にはシャッターが常に下ろされていて、入ることができないはずだった。
 稲生が向かうと、閉まっているはずのシャッターが開いている。

 稲生:「……!」

 稲生は左手に見習用の魔法の杖を手にし、右手には懐中電灯を持って中に入った。

 稲生:「!?」

 すると懐中電灯なんか要らないよとばかりに、天井の照明が点いた。
 まるで人感センサー付きのトイレみたいだ。
 しかしそれでも古いトイレなので、照明は天井の蛍光灯だけの申し訳程度の明るさだ。
 中に入ってみて、ふとトイレの壁を見ると、びっしりと文字が書き並べられているのが分かった。
 それはひらがな等の羅列。
 だが、しっかりと50音順に並んでいる。
 そこで稲生は、このトイレに纏わるもう1つの怖い話を思い出した。
 何年前だかは不明だが、このトイレに取り憑いている動物霊の正体を明かそうとした無謀な男子生徒がいたらしい。
 稲生が知っているのは狸の霊だが、どうも狐の霊もいたようだ。
 稲生が現役生だった頃、威吹が関心をあまり示さなかったので、その時は気にしていなかった。
 そもそも、その頃も閉鎖トイレで、シャッターが開いているのを見たことが無かったからだ。
 いずれにせよ、狐の霊に取り憑かれたとされた男子生徒は、本当に『狐憑き』のような状態となってしまい、壁一面にこのような落書きをして、このトイレで首を吊って死んだという。
 変死したにも関わらず、この男子生徒が幽霊となって現れたという話は聞かない。
 そして、あるオカルトに詳しい者が見れば分かるという。
 この壁の落書きは……『こっくりさん』のものだと。

 稲生:「あっ……!」

 そこでまた稲生は思い出した。
 1995年頃、この話を知った男子生徒2人がこのトイレに入って、そのまま行方不明になったことを……!

 稲生:「!?」

 入口のシャッターが勢い良く閉められた。

 稲生:「しまった!やっぱり罠か!?」

 こっくりさんの最上部中央にある鳥居のマークの所には、いつの間にか10円硬貨が張り付いており、それが勝手にスーッと動いた。
 それが文字の上を辿って行く。

 な……ん……の……よ……う……た……゛……『何の用だ?』

 稲生:「新校舎の4階で、ここに来るように言われたんだ。何か知らないか?」

 し……ら……ん……『知らん』

 稲生:「何だって!?」

 やはり罠だったのだろうか。

 稲生:「知らないならいい。失礼する」

 稲生はこっくりさんから目を離さないように、シャッターに近づいた。
 だが、シャッターを上に開けようとしても開かなかった。

 ど……こ……へ……い……く……『どこへ行く?』

 稲生:「何かの間違いだったかもしれない。あなたが知らないというのならしょうがない。もう1度出直してくる。ここを開けてくれ」

 に……が……さ……ん……『逃がさん』

 稲生:「何だって!?」

 ここで稲生の取るべき行動とは?

 1:「こっくりさん、こっくりさん、どうかお帰りください」(こっくりさん王道パターン)
 2:「卑怯なマネをするな!とっとと出てこい!」(恫喝という名の虚勢)
 3:攻撃魔法を使う。
 4:「僕は威吹邪甲の“獲物”だった者だぞ!」(狐の威を借りる人)
 5:逃げる。

 もちろん、選択肢によってはバッドエンド直行がありますw
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