報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「北海道紀行」

2017-05-28 19:41:12 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月1日14:00.天候:曇 東京都内某所 某ラジオ局]

 ラジオ局でゴールデンウィークのイベントの告知をするMEGAbyteのメンバー達。

 結月ゆかり:「5月3日から札幌ドームで、『北海道ボーカロイドフェスティバル』が行われます!」
 Lily:「私達、MEGAbyteも参加させて頂きますので、皆さんよろしくお願いします」
 未夢:「楽しいイベントなので、是非来てくださいね〜」
 パーソナリティ:「MEGAbyteの皆さんも参加されるということですが、あえて五大ドームツアーでなく、札幌ドームのみでのイベントにしたのはどうしてなんでしょう?」
 Lily:「初音ミクさんなど、大元の開発メーカーが北海道にあるんです。言わば、北海道はボーカロイド発祥の地でもあるんです。それに因んだそうです」
 パーソナリティ:「そうなんですね。MEGAbyteの皆さんとしては……」

[同日同時刻 天候:曇 ラジオ局の外]

 ラジオ局の外に止まっている1台のクラウン。
 車内のラジオからは、今正にMEGAbyteが出演しているラジオ番組が受信されていた。

 鷲田:「明日から出発なのか?敷島社長」
 敷島:「ええ、そうですよ」

 敷島はリアシートに座って、運転席と助手席に座る鷲田警視と村中課長と話をしていた。

 鷲田:「いい加減、そろそろ無茶ぶりはやめてもらいたいものだね」
 敷島:「私はボーカロイド達の運用責任者としての責務を果たすだけですよ」
 村中:「はははっ!そう言うと聞こえはいいがね」
 鷲田:「ボーカロイドだけではないだろう?社長の秘書さんにも関することではないかね?」
 敷島:「どうですかねぇ……」

 車の外ではエミリーが周囲を警戒していた。

 鷲田:「私としては、まだ金髪の方が話が通じそうでいいと思うんだがね」
 村中:「そうですか?あのクールな人もいいと思いますよ」
 鷲田:「村中君!」
 村中:「おっと、失礼!」
 敷島:「北海道にはエミリーやシンディも連れて行きます」
 鷲田:「ほお?いいのかね?奥さんの方の護衛は……」
 敷島:「アリスは結構強いですし」
 村中:「はははっ!」
 敷島:「それに身の周りの世話の方はメイドロイドがいますし、警備に関してはあいつ自作のマリオとルイージがいます」
 鷲田:「なるほど。人間は信用できんということか」
 敷島:「あいにくと。ロボットをテロに使おうとする人間かいたのは事実です」
 村中:「ま、気持ちは分かる」
 敷島:「何かあったら連絡はしますよ?」
 鷲田:「そうしてもらいたいものだね。何しろ、KR団の首領らしい者をまだ検挙しておらん」
 敷島:「そうですね」

 するとエミリーがこちらを向いた。

 敷島:「すいませんが、そろそろ時間のようです」
 村中:「ああ。余計な時間を取らせて済まなかったね。とにかく、気をつけて」
 敷島:「どうも」
 鷲田:「会社に帰ったら、今回の旅行の行程表と日程表を送ってほしいのだが?」
 敷島:「ええ。ファックスにします?それともメール?」
 村中:「メールで」
 鷲田:「ファックスだ。メールだとどこで流出するか分からん」
 敷島:「分かりました」

 敷島がリアドアを開けた。
 スッと降りてすぐにドアを閉める。
 鷲田達が乗ったシルバーのクラウンは、スーッと都道を走り去って行った。

 エミリー:「社長、大丈夫でしたか?」
 敷島:「ああ。まさか、ここで警視庁の特別捜査班に職質食らうなんてな」
 エミリー:「MEGAbyteのラジオ出演がまもなく終わる予定です」
 敷島:「井辺君に教えてあげよう」

 敷島は自分のスマホを出した。

 敷島:「井辺君に急な別件が入ったもんだから、代わりに俺が来てみたものの、どうやらその必要は無かったみたいだな」
 エミリー:「はい」

[同日17:00.天候:曇 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 敷島:「どうかな?」
 整備士:「はい、特に異常ありません」
 敷島:「よしよし」

 明日に備えてボーカロイド達の整備は怠らない。
 もっとも、平賀が専属整備役として同行してくれることになっている。
 最後の整備をしていたのは、巡音ルカ。

 敷島:「ルカ、どうだ?調子は?」
 ルカ:「あ、はい。特に異常ありません」
 敷島:「明日から、よろしく頼むな?」
 ルカ:「はい、お任せください」

 もっとも、明日は移動だけで、実際はその次の日からである。

 敷島:「ん?」

 ボーカロイドが発声練習(という名の調整)を行う部屋は、ちゃんと防音が施されている。
 それでも鉄扉の外には聞こえるものだ。
 初音ミクの声がした。

 敷島:「この歌は……?」

 敷島は鉄扉のドアを開けた。

 初音ミク:「……騒ぐな海鳥♪波よ♪船を揺らすな〜♪今夜は〜♪ぐーっすりと〜♪寝ぇかせてーおやりよ〜♪今夜は〜♪ぐーっすりと〜♪寝ぇかせてーおやりよ〜♪」

 歌い終わった後で、ミクがハッと後ろを振り向く。

 ミク:「たかお社長!」
 敷島:「調整は上手く行ってるみたいだな」
 ミク:「はい、おかげさまで」
 敷島:「いつ聴いても、お前の歌は素晴らしい」
 ミク:「ありがとうございます」
 敷島:「何度も言うように、お前は兵器じゃない。歌を聴いた人間を幸せにするボーカロイドなんだからな。何も気にせず、持ち歌をきちんと歌えばいい」
 ミク:「はい!」

 敷島は社長室に戻った。

 敷島:「明日1日のことは、矢沢専務にお願いしたし……。あとは大丈夫かな?」
 エミリー:「はい、大丈夫です。……あっ、井辺プロデューサーが戻られたようです」
 敷島:「そうか。井辺君も明日から北海道まで来てくれることになっているからな、ちょっと話をしてこよう」

 敷島は今度は隣の事務室へ向かった。

[5月2日05:32.天候:曇 東京都江東区東雲 TWR東雲駅]

 敷島:「朝早いな。今日は1日、移動だけだ」
 エミリー:「そうですね」

 敷島とエミリーは始発電車を待っていた。

 エミリー:「社長、タクシーで東京駅まで行っても良かったんですよ?」
 敷島:「いや、無駄な金は使いたくない。都営バスの始発が6時半くらいだとは……」

〔まもなく2番線に、電車が到着します。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕

 東雲駅は高架駅であるが、屋根の無い場所で待っていると、首都高を走る車の喧騒な音で放送の声が聞こえにくい。

〔2番線の電車は、各駅停車、新木場行きです〕

 りんかい線の車両が入線してくる。

〔しののめ、東雲。2番線は、各駅停車、新木場行きです〕

 まだガラガラの始発電車に乗り込んだ。
 途中駅のせいか、発車メロディが僅か数秒しか鳴らない。

〔2番線から、電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 ドアチャイムの音と共にドアが閉まる。
 ガラガラの車内でもエミリーは座席には座らず、敷島の横に立つだけである。
 尚、大きなキャリーケースを持っているが、エミリーにとっては空のダンボール箱のようなものである。

〔「次は新木場、新木場、終点です。JR京葉線、東京メトロ有楽町線はお乗り換えです」〕

 電車はほぼ直線の線路を東へ向かってグングンと進む。
 昇り始めた朝日は雲間から僅かに覗く程度であるものの、けして幸先は悪くないスタートだった。

 敷島:「ボーカロイド達は直接、東京駅に行くんだったな」
 エミリー:「そうです。井辺プロデューサーもです」
 敷島:「うん」
 エミリー:「シンディは大宮駅から、平賀博士は仙台駅から乗られます」
 敷島:「予定通りに行くといいな」
 エミリー:「はい」

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1 コメント

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あとがき (雲羽百三)
2017-05-28 21:45:21
 最後のエミリーのセリフからもお分かりの通り、敷島達は鉄道で北海道に向かう予定であります。
 飛行機だとロイド達は客席に乗れない為、荷物扱いとなり、その手続きが猥雑であるのが大きな理由です。
 これは説明はされていませんが、1980年代に放映されたアニメ“鉄腕アトム”第2期でも描かれています。
 天馬博士と共にアメリカへ向かう際には船舶(それでも本来、ロボットは乗れない決まりだったらしい)、御茶ノ水博士と共に帰国する際は科学省専用飛行機を使用しており、例えアニメであっても現実に即して考えて、商業便には乗れないということなのでしょう。
 因みに現実問題として実際にあったのが、Pepper君を新幹線で運べるかで揉めたらしいです。
 あれ一体、結局どうなったことやら。
 ま、敷島エージェンシーはしっかり新幹線でロイド達を輸送する気満々のようです。
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