古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)
【別冊 編集後記】
2024(令和6)年8月31日号(vol.17 no.15/No.372)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(3)新潮文庫・
小川洋子『博士の愛した数式』」
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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年8月31日号(vol.17 no.15/No.372)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(3)新潮文庫・
小川洋子『博士の愛した数式』」
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今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
<夏の文庫>フェア2024から――。
昨年同様、一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介しています。
第三回は、「新潮文庫の100冊 2024」フェアから、
小川洋子『博士の愛した数式』を。
【角川文庫の夏フェア】
「カドイカさんとひらけば夏休みフェア2024」特設サイト
https://note.com/kadobun_note/n/n94088457149e
集英社文庫『ナツイチ2024』フェア-
ナツイチ2024 言葉のかげで、ひとやすみ
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/
「新潮文庫の100冊 2024」フェア
https://100satsu.com/
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆ 2024年テーマ:夢か奇蹟の物語 ◆
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(3)
新潮文庫・小川洋子『博士の愛した数式』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●「新潮文庫の100冊 2024」フェア
【限定カバー】
「ヨルシカ×新潮文庫 コラボレーション限定カバー」
『文鳥・夢十夜』(夏目漱石)
「季節限定カバー 夏Ver.」
『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光
「プレミアムカバー 2024」
古典名作や人気作を中心に選定した全8種のラインナップで、
作品に合わせたこだわりのカラーをセレクトしています。
●宮沢賢治『新編 銀河鉄道の夜』
●中島敦『李陵・山月記』
●ルイス・キャロル/著 、矢川澄子/訳『不思議の国のアリス』
●谷崎潤一郎『痴人の愛』
●エーリヒ・ケストナー/著 、池内紀/訳『飛ぶ教室』
●夏目漱石『こころ』
●太宰治『人間失格』
●星新一『宇宙のあいさつ』
【ラインナップ】――既読および気になった作品のみ挙げておきます。
「愛する本」
川端康成『伊豆の踊子』、深田久弥『日本百名山』、
谷崎潤一郎『痴人の愛』、宮本輝『錦繍』、
シェイクスピア 、中野好夫/訳『ロミオとジュリエット』、
夏目漱石『夢十夜』、宮沢賢治『新編 銀河鉄道の夜』、
三島由紀夫『金閣寺』、赤川次郎・他『吾輩も猫である』
「シビレル本」
カミュ 、窪田啓作/訳『異邦人』、
スティーヴン・キング/著 、山田順子/訳『スタンド・バイ・ミー』、
沢木耕太郎『深夜特急1』、村上春樹『螢・納屋を焼く・その他の短編』、
司馬遼太郎『燃えよ剣(上下)』、星新一『宇宙のあいさつ』、
夏目漱石『こころ』、ヘミングウェイ、高見浩/訳『老人と海』、
ガブリエル・ガルシア=マルケス/著 、鼓直/訳『百年の孤独』
「考える本」
太宰治『人間失格』、河合隼雄『こころの処方箋』、
遠藤周作『海と毒薬』、
ドストエフスキー/著 、工藤精一郎/訳『罪と罰』、
ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、
ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』、
ヘッセ/著 、高橋健二/訳『車輪の下』、
サイモン・シン/著 、青木薫/訳『フェルマーの最終定理』、
土井善晴『一汁一菜でよいという提案』
レイチェル・カーソン/著 、上遠恵子/訳『センス・オブ・ワンダー』、
コナン・ドイル/著 、延原謙/訳『シャーロック・ホームズの冒険』、
芥川龍之介『羅生門・鼻』、
ゲーテ/著 、高橋義孝/訳『若きウェルテルの悩み』
「ヤバイ本」
中島敦『李陵・山月記』、H・P・ラヴクラフト/著 、南條竹則/編訳
『アウトサイダー―クトゥルー神話傑作選―』、
フランツ・カフカ/著 、高橋義孝/訳『変身』、宮部みゆき『火車』、
星新一『ボッコちゃん』、安部公房『砂の女』、
ルイス・キャロル/著 、金子國義/絵 、矢川澄子/訳
『不思議の国のアリス』、西村賢太『苦役列車』、
ロバート・L・スティーヴンソン/著 、田口俊樹/訳『ジキルとハイド』、
梶井基次郎『檸檬』、江戸川乱歩『江戸川乱歩傑作選』
「泣ける本」
エーリヒ・ケストナー/著 、池内紀/訳『飛ぶ教室』、
吉本ばなな『キッチン』、三浦綾子『塩狩峠』
小川洋子『博士の愛した数式』、
サン=テグジュペリ/著 、河野万里子/訳『星の王子さま』
――といったところでしょうか。
既読は他社版も含めて32点ぐらいです。
●小川洋子『博士(はかせ)の愛した数式』
で、今回は、小川洋子さんの『博士の愛した数式』を取り上げます。
★「新潮文庫の100冊 2024」フェア――
小川洋子『博士の愛した数式』新潮文庫 2005/11/26
《ぼくの記憶は80分しかもたない――
あまりに悲しく暖かい奇跡の愛の物語。
[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、
そう書かれた古びたメモが留められていた──
記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。
博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。
数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、
ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。
あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。》
いやあ、本当に、この言葉のままといってもいいでしょうね。
《悲しく暖かい、奇跡の愛の物語》です。
母子家庭の30前の派遣家政婦さんとその10歳の息子さんと、
派遣先の64歳の記憶に障害のある男性との三人の“友情”の物語です。
「泣ける本」に分類されていますが、ちょっと違うように思います。
何でも「泣ける」という形容詞でごまかすべきではない、と考えます。
これは「記憶」というもの「人間の存在」というものと、
三人のあいだに紡がれる友情について考えさせる物語です。
●ストーリー
過去に9人の派遣された家政婦さんたちが次々と辞めてしまった
という問題のお客様が、博士でした。
大学の数論の教師でしたが、17年前の交通事故で記憶に障害が発生し、
未亡人の義理の姉の住む家の離れに一人住んでいる。
義理の姉の話によると、
《頭の中に八十分のビデオテープが一本しかセットできない状態》p.11
で、それを上書き使用する状況……。
今日挨拶をしても明日にはまた初めての出会いになるといい、
会わせてももらえません。
初めて会ったとき、いきなり君の靴のサイズは? と聞かれ、
「24」と答えると、「潔い数字だ、4の階乗だ」(p.13)と。
「カイジョウとは何でしょうか」と問うと、
「1から4までの自然数を全部掛け合わせると24になる」と。
すべてこういう調子で話が進んでいきます。
言葉の代わりに数字を、それが
《他人と交流するために彼が編み出した方法だった。》p.14
それが相手と握手するために差し出す手であり、
自分の身を保護するためのオーバーだったのです。
誰も脱がすことができないもので、
とりあえず自分の居場所を確保する手段だったのです。
数学が二人の間を取り持つ言葉となり、
瞬間瞬間に生きる博士と「私」との
人間同士としての心の交流へと進んでゆきます。
博士は家にいるときも外出するときも、背広にネクタイのスーツ姿。
昔は美男子だったと思わせる面影が残り、
《彫りの深い顔つきには心惹かれる陰影があった。》p.16
しかしその背広には、多くのメモがクリップで留められています。
一番古そうなメモは、唯一「私」に読み取れるもので、
《僕の記憶は80分しかもたない》p.21
とありました。
あるとき、家政婦の「私」に10歳の息子がいると知った博士は、
「これはいかん」と、自分の夕食を作る「私」に
「明日からは学校が終わると直接ここへ来て宿題をし、一緒に食事を」
といい、《新しい家政婦さん》のメモに、
《と、その息子10歳》と書き加えます。
《本当に私が警戒心を解き、博士を信用するようになったのは、
博士と息子が出会った、最初の瞬間からだった。》pp.43-44
そして、次の冒頭の一節に帰ってきます。
《彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。そして博士は息子を、
ルートと呼んだ。息子の頭のてっぺんが、
ルート記号のように平らだったからだ。/
「おお、なかなかこれは、賢い心が詰まっていそうだ」》p.6
初めて会ったその瞬間に、彼はルートを抱擁するのです。
《その両腕には、目の前にいるか弱い者をかばおうとする、
いたわりがあふれていた。》p.44
そんな息子の姿を見てしあわせに感じ、自分もまた
そのように博士に迎えられたい、という気にさえなる「私」でした。
なぜなら、息子は「私」が高校生の時に出会った大学生の子で、
妊娠を知ると逃げてしまったという無責任男が父親だったからで、
「私」も母子家庭の娘で、母親は男と出て行ってしまい、
息子は孫としても幸せな時間を過ごすことが少なかったからでした。
●博士という人
博士には、意外な趣味や好みがあるようで、
だんだんと明るみに出てきます。
一つは野球カードを集めていたこと。
阪神タイガースの江夏投手の大ファンだったようで、
理由の一つは「28」という数字にあったようです。
「完全数」だそうで、
「私」 《「28の約数を足すと、28になるんです」》p.62
「博士」《「完全の意味を真に体現する、貴重な数字だよ」》p.63
《「完全数は連続した自然数の和で表すことができる」》p.71
28=1+2+3+4+5+6+7
ルートは阪神タイガースのファンで、
阪神タイガースが町にやって来るというので、
「私」はチケットを手に入れ、三人で試合を見に行くことにします。
ルートがねだるので売り子さんからジュースを買おうとすると、
博士が「いかん」と止めます。
《「ジュースを買うのならば、あのお嬢さんからにしなさい」》p.141
《「あちらのお嬢さんが、一番可愛らしいからです」/
博士の審美眼は間違っていなかった。ざっと見回したところ、
彼女が一番美人で、一番感じのいい笑顔を振りまいていた。》
pp.141-142
彼女が近づいてくると、博士が「はいっ」と勢いよく手を挙げ、
ルートにジュースを買ってくれます。
それだけではなく、頼んでもいないのに、
ポップコーンやアイスクリームまで買ってくれたのです。
博士が球場のジュース売りのお姉さんに恋したエピソード、でした。
また博士は、不意に目の前に現れ、腕を組み、
じっと食事の用意をする「私」を見つめています。
《「君が料理を作っている姿が好きなんだ」》
というのです。
「私」は、息子のルートが小さかった頃、
雇い主にいじめられて泣いていたときに慰めてくれた言葉
《「ママは美人だから大丈夫だよ」》p.84
にもあるように、どうやら美人らしいのです。
博士という人は案外、……なようです。
●友達
阪神戦の観戦の夜、博士は熱を出し、
義姉から母屋には出入りするなと言われていた「私」は、
一晩つきっきりで看病します。
ところが、これが悪くとられ、クビになります。
さらに、ルートはお友達になっていた博士のもとを勝手に訪れ、
それがまた悪く取られます。
《「どうして辞めた家政婦さんの子供が、
義弟のところにやって来る必要があるのでしょうか?」》p.183
義弟を丸め込んでお金を取ろうとしている、というのです。
さすがに「私」は反論します。
《「友だちだからじゃありませんか」/私は言った。/
「友だちの家に、遊びに来てはいけないんですか」/
「誰と誰が友だちというのですか?」/
「私と息子と、博士がです」》p.186
《「義弟に友人などおりません。一度だって友人が訪ねてきた
例(ため)しなどないのです」/
「ならば、私とルートが最初の友だちです」/
不意に博士が立ち上がった。/
「いかん。子供をいじめてはいかん」》p.187
そう言うと博士はポケットからメモ用紙を取り出し、数式を一つ書いて、
席を立ちます。
《あらかじめ、そうすべきことが決まっていたかのような、
毅然とした態度だった。そこには怒りも混乱もなく、
ただ静寂だけが彼を包んでいた。》p.187
《もう誰も余計な口をきかなかった。(略)彼女の瞳から少しずつ
動揺や冷淡さや疑いが消えていくのが分かった。
数式の美しさを正しく理解している人の目だと思った。》p.188
こうしてまた「私」は博士宅の家政婦に戻ります。
理由は定かではないままでした。
「私」はこの数式について町の図書館で調べます。
偶然目を惹いたフェルマーの最終定理の本に、この数式を見いだします。
では、なぜ博士はあのときこの公式を書き付けたのか?
《ただ一つ間違いないのは、彼の一番の心配はルートであった、
ということだ。自分のせいで母親たちが争っているとルートが
思い込んでしまわないか、怖れていた。だからこそ彼独自の、
自分にできる唯一の方法で、ルートを救い出した。/
今振り返っても、博士が幼い者に向けた愛情の純粋さには、
言葉を失う。それはオイラーの公式が不変であるのと同じくらい、
永遠の真実であった。》pp.199-200
●ルートの11歳の誕生日と博士の一等賞お祝いパーティー
季節は巡り、いつしか博士の記憶のタイマーが狂い出します。
博士が何日も苦しんで解いた数学雑誌の懸賞問題で一等賞を取ったとき、
「私」とルートが喜びたいので、お祝いをしようと提案します。
9月11日のルートの11歳の誕生日と一緒に、というと、
やっと関心を示します。
11に対して、
《「美しい素数だ。素数の中でもことさらに美しい素数だ。
しかも村山の背番号だ。素晴らしいじゃないか、君」》p.238
博士へのプレゼントとして江夏の野球カードを、と二人で決めたものの
たいていはすでに博士の持っているものでした。
《「途中止(や)めしたら、絶対正解にはたどり着けないんだよ」/
それがルートの意見だった。》p.250
やっと見つけたカードは、限定版の江夏のカード。
そして、パーティーの最中にちょっとしたトラブルが起きます。
博士の記憶が“時間切れ”となりますが、貼ってあったメモのお陰で、
なんとかパーティーを続けることができました。
ルートは、少年野球用の本格的なグローブを貰います。
それは未亡人の義姉が博士の希望を聞いて買ってきてくれたものでした。
●記憶と記録
最後まで紹介するのはやめておきましょう。
ここまででもいくつかのエピソードを省いてはいますけれど。
はっきりしたことはわかりませんが、
未亡人の義姉と博士のあいだには、
どうもある秘密が隠されているようです。
それもおもしろい謎ではありますが、
ここまでではっきりしていることは、
とにかく博士と「私」とルートのあいだに、ある友情が育まれたこと、
特に博士が子供に対して抱いている優しさというものが、
非常に心に残る作品でありました。
この三人の交流はまさに「奇蹟」の一つだったのかも知れません。
《私たち三人にとって、夕方は貴重な時間帯だった。
朝、初対面の者同士として出会ってから、
わずかでも博士の緊張が和らぎだし、そしてルートが帰ってきて
無邪気な声を振りまくのが、夕方だったからだ。》p.96
《私とルートは決して、「その話はもう聞きました」と言わないよう、
固く約束し合った。江夏について嘘をつくのと同じくらい、
大事な約束だった。たとえどんなに聞き飽きていても、
誠意を持って耳を傾ける努力をした。こんな幼稚な私たちを
数論学者のように扱ってくれる博士の努力に、ルートと私は
報いる必要があったし、なにより彼を混乱させたくなかった。
どんな種類であれ混乱は、博士に悲しみをもたらした。私たちさえ
黙っていれば、博士は失ったものの存在について知ることもなく、
何も失っていないのと同じになるのだ。そう考えると、
「その話はもう聞きました」と言わないでいるくらい、
たやすく守れる約束だった。》p.96
このお話には、数学的な美しさといったものと同様に、
人の心の美しさというものも描かれているように思いました。
人を思う気持ちというものは、何物にも代えがたいものであり、
それはたとえ人の記憶が失われたとしても、
永遠に続き、残るものなのではないでしょうか。
そして大事なことは、記録するという行為です。
ちょっとしたメモでもいい、何かしら書いたものを残しておく。
それをたどることで、記憶が甦ってきたり、
何かしら印象が残っていることに気付く。
そういうことが大きく言えば、人類の遺産となるのでしょう。
そんなこんなを考えさせられたお話でした。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(3)新潮文庫・小川洋子『博士の愛した数式』」と題して、今回も全文転載紹介です。
当初図書館本で済ますつもりでしたが、あまりに気になる部分が多く、抜き書きしておくのも大変で、本屋さんで買ってしまいました。
今年は、角川文庫の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』も買った本なのですけれど。
通常は、昔買った本を再利用したり、図書館本で済ますことが多いですね。
でも、最近は新たな作家さんを開拓しようと、その年のフェア本で初めて登場したような作品を買うことがあります。
今年一番気になった本は、やっぱりよく売れているという、ガブリエル・ガルシア=マルケス/著、鼓直/訳『百年の孤独』ですね。
これを取り上げて見ようかと思ったのですが、ちょうど売り切れていたりして……。
新潮文庫は、フェアの本を買うと、「ステンドグラスしおり」というのを一冊につき一枚もらえるそうで、書棚をバックにしたものを選びいただいてきました。
思えばこういう経験は初めてでしたね。
たまにはいいものですね。
よその文庫を買ったときにはそういう「必ずもらえる」というものがなかったのか、もらったことがないですね。
フェアの冊子だけは必ずもらうようにしているのですけれどね。
・・・
*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』
『レフティやすおのお茶でっせ』
〈メルマガ「楽しい読書」〉カテゴリ
--
『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
<夏の文庫>フェア2024から(3)新潮文庫・小川洋子『博士の愛した数式』-楽しい読書372号
--
【別冊 編集後記】
2024(令和6)年8月31日号(vol.17 no.15/No.372)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(3)新潮文庫・
小川洋子『博士の愛した数式』」
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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年8月31日号(vol.17 no.15/No.372)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(3)新潮文庫・
小川洋子『博士の愛した数式』」
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今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
<夏の文庫>フェア2024から――。
昨年同様、一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介しています。
第三回は、「新潮文庫の100冊 2024」フェアから、
小川洋子『博士の愛した数式』を。
【角川文庫の夏フェア】
「カドイカさんとひらけば夏休みフェア2024」特設サイト
https://note.com/kadobun_note/n/n94088457149e
集英社文庫『ナツイチ2024』フェア-
ナツイチ2024 言葉のかげで、ひとやすみ
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/
「新潮文庫の100冊 2024」フェア
https://100satsu.com/
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◆ 2024年テーマ:夢か奇蹟の物語 ◆
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(3)
新潮文庫・小川洋子『博士の愛した数式』
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●「新潮文庫の100冊 2024」フェア
【限定カバー】
「ヨルシカ×新潮文庫 コラボレーション限定カバー」
『文鳥・夢十夜』(夏目漱石)
「季節限定カバー 夏Ver.」
『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光
「プレミアムカバー 2024」
古典名作や人気作を中心に選定した全8種のラインナップで、
作品に合わせたこだわりのカラーをセレクトしています。
●宮沢賢治『新編 銀河鉄道の夜』
●中島敦『李陵・山月記』
●ルイス・キャロル/著 、矢川澄子/訳『不思議の国のアリス』
●谷崎潤一郎『痴人の愛』
●エーリヒ・ケストナー/著 、池内紀/訳『飛ぶ教室』
●夏目漱石『こころ』
●太宰治『人間失格』
●星新一『宇宙のあいさつ』
【ラインナップ】――既読および気になった作品のみ挙げておきます。
「愛する本」
川端康成『伊豆の踊子』、深田久弥『日本百名山』、
谷崎潤一郎『痴人の愛』、宮本輝『錦繍』、
シェイクスピア 、中野好夫/訳『ロミオとジュリエット』、
夏目漱石『夢十夜』、宮沢賢治『新編 銀河鉄道の夜』、
三島由紀夫『金閣寺』、赤川次郎・他『吾輩も猫である』
「シビレル本」
カミュ 、窪田啓作/訳『異邦人』、
スティーヴン・キング/著 、山田順子/訳『スタンド・バイ・ミー』、
沢木耕太郎『深夜特急1』、村上春樹『螢・納屋を焼く・その他の短編』、
司馬遼太郎『燃えよ剣(上下)』、星新一『宇宙のあいさつ』、
夏目漱石『こころ』、ヘミングウェイ、高見浩/訳『老人と海』、
ガブリエル・ガルシア=マルケス/著 、鼓直/訳『百年の孤独』
「考える本」
太宰治『人間失格』、河合隼雄『こころの処方箋』、
遠藤周作『海と毒薬』、
ドストエフスキー/著 、工藤精一郎/訳『罪と罰』、
ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、
ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』、
ヘッセ/著 、高橋健二/訳『車輪の下』、
サイモン・シン/著 、青木薫/訳『フェルマーの最終定理』、
土井善晴『一汁一菜でよいという提案』
レイチェル・カーソン/著 、上遠恵子/訳『センス・オブ・ワンダー』、
コナン・ドイル/著 、延原謙/訳『シャーロック・ホームズの冒険』、
芥川龍之介『羅生門・鼻』、
ゲーテ/著 、高橋義孝/訳『若きウェルテルの悩み』
「ヤバイ本」
中島敦『李陵・山月記』、H・P・ラヴクラフト/著 、南條竹則/編訳
『アウトサイダー―クトゥルー神話傑作選―』、
フランツ・カフカ/著 、高橋義孝/訳『変身』、宮部みゆき『火車』、
星新一『ボッコちゃん』、安部公房『砂の女』、
ルイス・キャロル/著 、金子國義/絵 、矢川澄子/訳
『不思議の国のアリス』、西村賢太『苦役列車』、
ロバート・L・スティーヴンソン/著 、田口俊樹/訳『ジキルとハイド』、
梶井基次郎『檸檬』、江戸川乱歩『江戸川乱歩傑作選』
「泣ける本」
エーリヒ・ケストナー/著 、池内紀/訳『飛ぶ教室』、
吉本ばなな『キッチン』、三浦綾子『塩狩峠』
小川洋子『博士の愛した数式』、
サン=テグジュペリ/著 、河野万里子/訳『星の王子さま』
――といったところでしょうか。
既読は他社版も含めて32点ぐらいです。
●小川洋子『博士(はかせ)の愛した数式』
で、今回は、小川洋子さんの『博士の愛した数式』を取り上げます。
★「新潮文庫の100冊 2024」フェア――
小川洋子『博士の愛した数式』新潮文庫 2005/11/26
《ぼくの記憶は80分しかもたない――
あまりに悲しく暖かい奇跡の愛の物語。
[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、
そう書かれた古びたメモが留められていた──
記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。
博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。
数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、
ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。
あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。》
いやあ、本当に、この言葉のままといってもいいでしょうね。
《悲しく暖かい、奇跡の愛の物語》です。
母子家庭の30前の派遣家政婦さんとその10歳の息子さんと、
派遣先の64歳の記憶に障害のある男性との三人の“友情”の物語です。
「泣ける本」に分類されていますが、ちょっと違うように思います。
何でも「泣ける」という形容詞でごまかすべきではない、と考えます。
これは「記憶」というもの「人間の存在」というものと、
三人のあいだに紡がれる友情について考えさせる物語です。
●ストーリー
過去に9人の派遣された家政婦さんたちが次々と辞めてしまった
という問題のお客様が、博士でした。
大学の数論の教師でしたが、17年前の交通事故で記憶に障害が発生し、
未亡人の義理の姉の住む家の離れに一人住んでいる。
義理の姉の話によると、
《頭の中に八十分のビデオテープが一本しかセットできない状態》p.11
で、それを上書き使用する状況……。
今日挨拶をしても明日にはまた初めての出会いになるといい、
会わせてももらえません。
初めて会ったとき、いきなり君の靴のサイズは? と聞かれ、
「24」と答えると、「潔い数字だ、4の階乗だ」(p.13)と。
「カイジョウとは何でしょうか」と問うと、
「1から4までの自然数を全部掛け合わせると24になる」と。
すべてこういう調子で話が進んでいきます。
言葉の代わりに数字を、それが
《他人と交流するために彼が編み出した方法だった。》p.14
それが相手と握手するために差し出す手であり、
自分の身を保護するためのオーバーだったのです。
誰も脱がすことができないもので、
とりあえず自分の居場所を確保する手段だったのです。
数学が二人の間を取り持つ言葉となり、
瞬間瞬間に生きる博士と「私」との
人間同士としての心の交流へと進んでゆきます。
博士は家にいるときも外出するときも、背広にネクタイのスーツ姿。
昔は美男子だったと思わせる面影が残り、
《彫りの深い顔つきには心惹かれる陰影があった。》p.16
しかしその背広には、多くのメモがクリップで留められています。
一番古そうなメモは、唯一「私」に読み取れるもので、
《僕の記憶は80分しかもたない》p.21
とありました。
あるとき、家政婦の「私」に10歳の息子がいると知った博士は、
「これはいかん」と、自分の夕食を作る「私」に
「明日からは学校が終わると直接ここへ来て宿題をし、一緒に食事を」
といい、《新しい家政婦さん》のメモに、
《と、その息子10歳》と書き加えます。
《本当に私が警戒心を解き、博士を信用するようになったのは、
博士と息子が出会った、最初の瞬間からだった。》pp.43-44
そして、次の冒頭の一節に帰ってきます。
《彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。そして博士は息子を、
ルートと呼んだ。息子の頭のてっぺんが、
ルート記号のように平らだったからだ。/
「おお、なかなかこれは、賢い心が詰まっていそうだ」》p.6
初めて会ったその瞬間に、彼はルートを抱擁するのです。
《その両腕には、目の前にいるか弱い者をかばおうとする、
いたわりがあふれていた。》p.44
そんな息子の姿を見てしあわせに感じ、自分もまた
そのように博士に迎えられたい、という気にさえなる「私」でした。
なぜなら、息子は「私」が高校生の時に出会った大学生の子で、
妊娠を知ると逃げてしまったという無責任男が父親だったからで、
「私」も母子家庭の娘で、母親は男と出て行ってしまい、
息子は孫としても幸せな時間を過ごすことが少なかったからでした。
●博士という人
博士には、意外な趣味や好みがあるようで、
だんだんと明るみに出てきます。
一つは野球カードを集めていたこと。
阪神タイガースの江夏投手の大ファンだったようで、
理由の一つは「28」という数字にあったようです。
「完全数」だそうで、
「私」 《「28の約数を足すと、28になるんです」》p.62
「博士」《「完全の意味を真に体現する、貴重な数字だよ」》p.63
《「完全数は連続した自然数の和で表すことができる」》p.71
28=1+2+3+4+5+6+7
ルートは阪神タイガースのファンで、
阪神タイガースが町にやって来るというので、
「私」はチケットを手に入れ、三人で試合を見に行くことにします。
ルートがねだるので売り子さんからジュースを買おうとすると、
博士が「いかん」と止めます。
《「ジュースを買うのならば、あのお嬢さんからにしなさい」》p.141
《「あちらのお嬢さんが、一番可愛らしいからです」/
博士の審美眼は間違っていなかった。ざっと見回したところ、
彼女が一番美人で、一番感じのいい笑顔を振りまいていた。》
pp.141-142
彼女が近づいてくると、博士が「はいっ」と勢いよく手を挙げ、
ルートにジュースを買ってくれます。
それだけではなく、頼んでもいないのに、
ポップコーンやアイスクリームまで買ってくれたのです。
博士が球場のジュース売りのお姉さんに恋したエピソード、でした。
また博士は、不意に目の前に現れ、腕を組み、
じっと食事の用意をする「私」を見つめています。
《「君が料理を作っている姿が好きなんだ」》
というのです。
「私」は、息子のルートが小さかった頃、
雇い主にいじめられて泣いていたときに慰めてくれた言葉
《「ママは美人だから大丈夫だよ」》p.84
にもあるように、どうやら美人らしいのです。
博士という人は案外、……なようです。
●友達
阪神戦の観戦の夜、博士は熱を出し、
義姉から母屋には出入りするなと言われていた「私」は、
一晩つきっきりで看病します。
ところが、これが悪くとられ、クビになります。
さらに、ルートはお友達になっていた博士のもとを勝手に訪れ、
それがまた悪く取られます。
《「どうして辞めた家政婦さんの子供が、
義弟のところにやって来る必要があるのでしょうか?」》p.183
義弟を丸め込んでお金を取ろうとしている、というのです。
さすがに「私」は反論します。
《「友だちだからじゃありませんか」/私は言った。/
「友だちの家に、遊びに来てはいけないんですか」/
「誰と誰が友だちというのですか?」/
「私と息子と、博士がです」》p.186
《「義弟に友人などおりません。一度だって友人が訪ねてきた
例(ため)しなどないのです」/
「ならば、私とルートが最初の友だちです」/
不意に博士が立ち上がった。/
「いかん。子供をいじめてはいかん」》p.187
そう言うと博士はポケットからメモ用紙を取り出し、数式を一つ書いて、
席を立ちます。
《あらかじめ、そうすべきことが決まっていたかのような、
毅然とした態度だった。そこには怒りも混乱もなく、
ただ静寂だけが彼を包んでいた。》p.187
《もう誰も余計な口をきかなかった。(略)彼女の瞳から少しずつ
動揺や冷淡さや疑いが消えていくのが分かった。
数式の美しさを正しく理解している人の目だと思った。》p.188
こうしてまた「私」は博士宅の家政婦に戻ります。
理由は定かではないままでした。
「私」はこの数式について町の図書館で調べます。
偶然目を惹いたフェルマーの最終定理の本に、この数式を見いだします。
では、なぜ博士はあのときこの公式を書き付けたのか?
《ただ一つ間違いないのは、彼の一番の心配はルートであった、
ということだ。自分のせいで母親たちが争っているとルートが
思い込んでしまわないか、怖れていた。だからこそ彼独自の、
自分にできる唯一の方法で、ルートを救い出した。/
今振り返っても、博士が幼い者に向けた愛情の純粋さには、
言葉を失う。それはオイラーの公式が不変であるのと同じくらい、
永遠の真実であった。》pp.199-200
●ルートの11歳の誕生日と博士の一等賞お祝いパーティー
季節は巡り、いつしか博士の記憶のタイマーが狂い出します。
博士が何日も苦しんで解いた数学雑誌の懸賞問題で一等賞を取ったとき、
「私」とルートが喜びたいので、お祝いをしようと提案します。
9月11日のルートの11歳の誕生日と一緒に、というと、
やっと関心を示します。
11に対して、
《「美しい素数だ。素数の中でもことさらに美しい素数だ。
しかも村山の背番号だ。素晴らしいじゃないか、君」》p.238
博士へのプレゼントとして江夏の野球カードを、と二人で決めたものの
たいていはすでに博士の持っているものでした。
《「途中止(や)めしたら、絶対正解にはたどり着けないんだよ」/
それがルートの意見だった。》p.250
やっと見つけたカードは、限定版の江夏のカード。
そして、パーティーの最中にちょっとしたトラブルが起きます。
博士の記憶が“時間切れ”となりますが、貼ってあったメモのお陰で、
なんとかパーティーを続けることができました。
ルートは、少年野球用の本格的なグローブを貰います。
それは未亡人の義姉が博士の希望を聞いて買ってきてくれたものでした。
●記憶と記録
最後まで紹介するのはやめておきましょう。
ここまででもいくつかのエピソードを省いてはいますけれど。
はっきりしたことはわかりませんが、
未亡人の義姉と博士のあいだには、
どうもある秘密が隠されているようです。
それもおもしろい謎ではありますが、
ここまでではっきりしていることは、
とにかく博士と「私」とルートのあいだに、ある友情が育まれたこと、
特に博士が子供に対して抱いている優しさというものが、
非常に心に残る作品でありました。
この三人の交流はまさに「奇蹟」の一つだったのかも知れません。
《私たち三人にとって、夕方は貴重な時間帯だった。
朝、初対面の者同士として出会ってから、
わずかでも博士の緊張が和らぎだし、そしてルートが帰ってきて
無邪気な声を振りまくのが、夕方だったからだ。》p.96
《私とルートは決して、「その話はもう聞きました」と言わないよう、
固く約束し合った。江夏について嘘をつくのと同じくらい、
大事な約束だった。たとえどんなに聞き飽きていても、
誠意を持って耳を傾ける努力をした。こんな幼稚な私たちを
数論学者のように扱ってくれる博士の努力に、ルートと私は
報いる必要があったし、なにより彼を混乱させたくなかった。
どんな種類であれ混乱は、博士に悲しみをもたらした。私たちさえ
黙っていれば、博士は失ったものの存在について知ることもなく、
何も失っていないのと同じになるのだ。そう考えると、
「その話はもう聞きました」と言わないでいるくらい、
たやすく守れる約束だった。》p.96
このお話には、数学的な美しさといったものと同様に、
人の心の美しさというものも描かれているように思いました。
人を思う気持ちというものは、何物にも代えがたいものであり、
それはたとえ人の記憶が失われたとしても、
永遠に続き、残るものなのではないでしょうか。
そして大事なことは、記録するという行為です。
ちょっとしたメモでもいい、何かしら書いたものを残しておく。
それをたどることで、記憶が甦ってきたり、
何かしら印象が残っていることに気付く。
そういうことが大きく言えば、人類の遺産となるのでしょう。
そんなこんなを考えさせられたお話でした。
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本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(3)新潮文庫・小川洋子『博士の愛した数式』」と題して、今回も全文転載紹介です。
当初図書館本で済ますつもりでしたが、あまりに気になる部分が多く、抜き書きしておくのも大変で、本屋さんで買ってしまいました。
今年は、角川文庫の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』も買った本なのですけれど。
通常は、昔買った本を再利用したり、図書館本で済ますことが多いですね。
でも、最近は新たな作家さんを開拓しようと、その年のフェア本で初めて登場したような作品を買うことがあります。
今年一番気になった本は、やっぱりよく売れているという、ガブリエル・ガルシア=マルケス/著、鼓直/訳『百年の孤独』ですね。
これを取り上げて見ようかと思ったのですが、ちょうど売り切れていたりして……。
新潮文庫は、フェアの本を買うと、「ステンドグラスしおり」というのを一冊につき一枚もらえるそうで、書棚をバックにしたものを選びいただいてきました。
思えばこういう経験は初めてでしたね。
たまにはいいものですね。
よその文庫を買ったときにはそういう「必ずもらえる」というものがなかったのか、もらったことがないですね。
フェアの冊子だけは必ずもらうようにしているのですけれどね。
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
<夏の文庫>フェア2024から(3)新潮文庫・小川洋子『博士の愛した数式』-楽しい読書372号
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