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楽器における左利きの世界(19)梶野絵奈『日本のヴァイオリン史』から-週刊ヒッキイ第661号

2024-04-09 | 左利き
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)
【別冊 編集後記】

第661号(Vol.20 no.6/No.661) 2024/4/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(19)
 梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』からヴァイオリンの歴史」


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  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第661号(Vol.20 no.6/No.661) 2024/4/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(19)
 梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』からヴァイオリンの歴史」
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 前号では、<左利き用楽器>製作プロジェクトの一環として、
 イギリスの利き手・左利き研究の権威、マクマナスさんの著書の邦訳
 クリス・マクマナス『非対称の起源』 (講談社ブルーバックス)
 から、左利きと音楽家についての文章を紹介しました。

 今回は、引き続き、同様の趣旨で、図書館で見つけた本――

 梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史――楽器の誕生から明治維新まで』
 (青弓社 2022/9/26)
 から、ヴァイオリンの歴史を少し勉強してみます。

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 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆

 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

  梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』から ヴァイオリンの歴史
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*参照:

梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史――楽器の誕生から明治維新まで』
(青弓社 2022/9/26)



 ●初期のヴァイオリンには左右差がない?

まず最初に感じたことは、この点でした。

現代のヴァイオリンには、
正面から見て向かって左の下部に「顎当て」があり、
左右性が見て取れます。

ところが、この本の写真を見ていますと、初期のヴァイオリンには、
これがなく明らかな左右差が見られませんでした。

弦を張り替えれば、どちらで弾くこともできるように思えます。

前回のマクマナスさんの本『非対称の起源』のなかでも、
「両手利き」の楽器も少なくないとして、

 《ギターの弦の順序を逆に張りかえれば、
  左利きの奏者も弾くことができるのは、ポール・マッカートニーや
  ジミー・ヘンドリックスなどのミュージシャンを見れば明らかだ。
  ヴァイオリンやチェロ、コントラバスも、映画『ライムライト』の
  チャップリンが弾いたヴァイオリンのように、
  左利き用に弦を張り替えることはできる。》p.391

クリス・マクマナス『非対称の起源―偶然か、必然か』
大貫 昌子/訳 講談社ブルーバックス 2006/10/21


と記述されていました。
(実際には内部の構造に差があるのかも知れませんけれど。)

この本の中にはいくつかのヴァイオリンを手にした画像があります。
しかし、みな右弾きスタイルでした。

ヴァイオリンという楽器は、演奏がむずかしいといいます。
この本の著者も、「あとがき」のなかで、

 《ヴァイオリンはそもそも弾くのが難しい。
  三十代くらいまでは、このようなむずかしい楽器を
  どうしてこんな一生懸命に弾いているのだろうかという
  疑問が脳裏をよぎることもしばしばだった。》p.160

というほど。
確かに初めてヴァイオリンを弾く人の演奏は、
「キーコキーコ」という擬音で表現されますからね。

そういう楽器ですから、この楽器を弾く人はそれなりにエリートで、
「選ばれた人」だったのでしょう。
「右使いができる人」で、左手も器用な人というところでしょうか。


ちなみに、
ヴァイオリンは「擦弦楽器」と呼ぶようで、
弓や棒などで文字通り「弦を擦って鳴らす」楽器ということのようです。

こすって弾くというのは、いかにもむずかしそうですよね。

ほかの弦楽器には、下の二種類があるようです。

「撥弦(はつげん)楽器」――何らかの方法で弦を弾いて音をだす楽器で、
  抱えて演奏するギターなど、置いて演奏する琴など
「打弦楽器」――弦をたたくことで音を出す楽器で、ピアノなど


●ヴァイオリンとはどういう楽器?

本書の概要を伝える「はじめに」の冒頭に、
「ヴァイオリン」の紹介があります。

 《ヴァイオリンは、十六世紀に北イタリアでその原型となる楽器が
  生み出されて以来、西洋の芸術音楽で中心的な役割を果たした...》

また、フィドル(英語―「ヴァイオリン」はイタリア語から派生した言葉)
と呼ばれて、アイリッシュ音楽やアメリカのカントリー音楽等、

 《多くの民族の人々に好まれて演奏され続けている。》

そして、

 《クラシック音楽に用いられるほかの弦楽器や管楽器と比べて
  守備範囲が広く...「楽器の女王」の異名を取る...》

さらに、

 《大きくて重いピアノとは違い、軽便で、低価格の楽器もあるため、
  ...場所をかまわず演奏されてきた歴史もある...》

といい、

 《人々の社会的ヒエラルキーをも超えた多様な文化と社会のなかに
  過去にも現在にも存在している。》

とあります。


日本でヴァイオリンが本格的に普及しはじめたのは、明治維新後で、
明治期のヴァイオリン演奏の担い手は、上は西洋音楽の学び手から、
ヴァイオリン演歌師、女学生や若き日本男児まで、

 《...ジェンダーもジェネレーションも超えて、
  時間の経過とともに人々の生活に取り込まれていった。》

と。

 《...今日の日本で、ヴァイオリンはクラシック音楽を演奏するための
  「楽器」という印象が強く、それ以外は邪道という感覚は広く
  共有されているだろう。...》

といいます。

こういう感覚が強くあれば、どうしても
「ヴァイオリンを左手で弾こう」という試みは、
あまり歓迎されえないのでは、という気がします。

しかし、

 《ヴァイオリンは演奏技術の習得が最も難しい
  といわれているにもかかわらず...》

高度経済成長期頃から、世界的な舞台で活躍するヴァイオリニストや、
名器ストラディヴァリウスを所有する個人や団体も増え、
アマチュア演奏家の人口も多く、趣味として楽しむ人もいる、といい、

 《ヴァイオリンを愛する人々の層の厚さに思いを馳せると、この楽器が
  いかに深く日本に根ざしているかを改めて認識させられる。》


このように日本でも、世界中でもヴァイオリンが、
民衆の音楽を担う軽便な楽器として存在してきた、
という事実を知りますと、
もっと自由に演奏者の「利き手に合わせた楽器」としての
「左用ヴァイオリン」も登場して良いのでは、という気持ちになります。


●ヴァイオリンの歴史――起源

ちょっと結論を先走ってしまいましたが、
本書からヴァイオリンという楽器の歴史についてみておきましょう。

 《ヴァイオリンの起源については諸説あるが、
  イタリアでヴァイオリンの原形が十六世紀に生み出されたというのが
  定説になっている。》「はじめに」p.21

これは不思議なことに、
日本に残っているヴァイオリン関連資料の最古のものと、
ほぼ同時期だといいます。

さて、ヴァイオリンの起源ですが、未だに解明されていないことが多く、
学者も決定的な言及を避けているそうです。

ただ、「原型」があって「完成」された、と説明されるといいます。

弓を用いる楽器は900年頃から彫刻や絵画に現れるが、
文字資料に残された名称に一貫性がなく、
異なる楽器に同じ名称が用いられている場合もあり、混乱しやすい。

 《明らかにされているのは、ヴァイオリン(その原型も含めて)が
  誕生したのは十六世紀前半で、
  北イタリアで進化したということである。》p.24

指揮者が原型と読んでいるものの例として、
1535年、ガウデンツィオ・フェッラーラ(Gaudenzio Ferrari)が
描いたサロンノ大聖堂(Saronno Cathedral)の天井のフレスコ画に
ある楽器、がそれだといいます(カラー口絵の図1)。
ただ、背面しか見えず、三弦で胴体にくびれがあることが確認できる。

 《ヴァイオリン属の楽器はすべて二五年から五〇年にかけて
  生み出された。ヴァイオリンはそのなかの一つである。
  ヴァイオリンを創案した人物は不明で、
  『ニューグローヴ世界音楽事典』で示された
  「一人の人物が成し遂げたことではないだろう」という見解に
  異論は唱えない。》p.25

とし、

 《...ヴァイオリンは、いうならばヨーロッパの擦弦楽器の
  長い歴史の末に生み出された、擦弦楽器の集大成なのである。》p.25

そのように作成された楽器はほかにもあったはずだが、

 《ヴァイオリンが最も成功した例だったのは歴史が証明している。》p.26

と。

 《...一五〇〇年頃前後にはヴァイオリンの原型[傍点]が世に現れ、
  現在の形のヴァイオリンが誕生したのは十六世紀中頃と考えていい。》
   p.26

現存する最古のヴァイオリンは、メトロポリタン美術館所蔵の
イタリアの製作家アンドレア・アマティ(Andrea Amati)の
1560年頃の作とされている。


(p.27に写真が掲載されている)

A・アマテイの孫ニコロ・アマティ、
その弟子のアントニオ・ストラディバリ、
A・アマテイの弟子のアンドレア・グァルネリを祖父に持つ
バルトロメオ・ジュゼッペ・アントーニオ・グァルネリ、
通称グァルネリ・デル・ジェスといった名匠たちが次々と現れ、
彼らの製作した楽器が今日も頂点とされている、といいます。


以下色々と、他の古い楽器のことなどが語られています。
私にはよくわかりませんので、割愛します。

日本での歴史も語られてゆきますが、それもここではふれません。


 ●左利き用バイオリンについて

とにかく私の結論としましては、先ほども書きましたように、
西洋音楽に置いてポピュラーな楽器だということで、
それならギターのように、もっと使い手の利き手に沿った楽器――
左利き用の「左用ヴァイオリン」が現れてもいいのではないか、
ということです。


「左利き用バイオリン」で検索しますと、ネット上には、
SOLDOUTとなってはいますが、

「ストラディバリモデル」という
「GCV-800EL 左利き用バイオリン◆ストラディバリ [GCV-VN-800EL]」
https://kreislermusic.ocnk.net/product/1334







(画像:「左利きバイオリン」GCV-800EL 左利き用バイオリン◆ストラディバリ Soil III [GCV-VN-800EL-SOI] ネットより無断借用)

「Ma工房 左利き用・バイオリン・ファインレベル2ピースバック」
https://www.autumnvalley.net/product/1708


(画像:「左利きバイオリン」Ma工房 左利き用・バイオリン・ファインレベル2ピースバック ネットより無断借用)

といったものがでています。
必ずしも「存在しない」わけではありません。


次回、また取り上げますが、
ネットでは「左利き用バイオリン」に関するYouTubeの動画も
いくつかあるようです。

で、それらの発言を聞いていますと、
「なぜ左手でヴァイオリンを持ち、右手で弓を弾くのか」について、
「なぜ右手で箸を持つのか」「なぜ右手で字を書くのか」
といった疑問への、
昔よく聞かれた回答と同様の“あやまった見解”が認められます。

これらについては、次回改めて……。


 ●木琴を反対側から弾くと「左用」?

本書に「木琴」が登場しています。
北斎の絵も掲載されています。



思えば「木琴」も一種の鍵盤楽器といえそうですし、
この楽器は、逆方向、向こう側から弾けば、
左側が高音部で右側が低音部となり、「左用」になりそうな気がします。


[通常(右用)]
左側(低音部) → (高音部)右側
--------------------------------
ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド
--------------------------------
(右腕の自然な動き)→(右へ引いていく)


[逆から(左用?)]
左側(高音部) ← (低音部)右側
--------------------------------
ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド
--------------------------------
(左腕の自然な動き)←(左へ引いていく)


実際にはどうなのでしょうか。
また、もしそうだとして、そういう演奏の仕方はあるのでしょうか。

両手で弾く(叩く)ので、利き手の違いは関係ない、といわれそうです。

でも、本当にそうでしょうか。
逆弾きもあり、な気がしますが。

演奏法がよくわからないので、これ以上語ることはできません。

今思いついたのですが、私が持っているようなミニ電子キーボードなら、
反対側からキーを押すぐらいならできるので、
逆弾きもできそうな気もします。
試してみようかと思います。

 ・・・

今回はこの辺で。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(19)梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』からヴァイオリンの歴史」と題して、今回も全紹介です。

今回は改めてヴァイオリンについてのお勉強です。
実際に3歳の頃からヴァイオリンを演奏されている方のお言葉なので、これは間違いないでしょう。

演奏が難しいとされる楽器だというのことが改めて分かりました。
それゆえに、やはり演奏者の「利き手に応じた演奏ができる楽器」が必要なのではないでしょうか。


また、木琴についても少し書いています。
こういう楽器もあるのですよね。

『ウィキペディア(Wikipedia)』によりますと、「鍵盤打楽器」といった呼び名もあるようです。
文字通りという感じです。
これを逆方向から弾く(叩く)ことで、「左用」になるのかどうか、くわしいかたにお聞きしたいものです。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
楽器における左利きの世界(19)梶野絵奈『日本のヴァイオリン史』から-週刊ヒッキイ第661号
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