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50歳からが人生の第二段階、中年の始まりです。より良き老後のために良き習慣を身に付けて新しい生活を始めましょう。

新社会人奮闘記ラノベ 渡瀬謙『新入社員ヒロと謎の育成メールの12ヵ月』

2011-03-04 | 左利き
(画像:集英社出版物折込チラシ)

★最初にグッときた言葉―
「プレゼントというのは、相手がビックリするくらいじゃなきゃ意味がないのよ」
p.42

渡瀬謙『新入社員ヒロと謎の育成メールの12ヵ月』集英社(2011.3.4)

まずは表紙を見てほしいですね。
ラノベ(ライト・ノベル)でしょ?
こういう表紙って、まあ、『もしドラ』以来のやり方と言ってもいいのでしょう。

集英社のビジネス書の一冊で、ビジネス系の自己啓発ラノベなんです。

出版社さんのこの本の売りとしては、
 
《仕事もマナーもダメダメ新入社員のヒロだが、
 昼夜を問わず届く謎の携帯メールが、
 ビジネスマンとしての心得、考え方のヒントを与えてくれる。
 涙と笑いでつづるサラリーマン自己啓発ストーリー。》


―ってことになってます。

実際に見た本屋さんでの風景は―
新刊や話題の本を並べているところの平台に、女の子のイラストが表紙の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』岩崎夏海(ダイヤモンド社 2009.12.4) と『新人OL、つぶれかけの会社をまかされる』佐藤義典(青春新書PLAYBOOKS 2010.9.29) と一緒に3冊ぐらい並べてありました。

アマゾンでもそうですが、全般にビジネス書扱いのようですが、元・町の「本屋の兄ちゃん」としては、どの棚に置こうかちょっと迷います

普通は、小説―文芸書の棚です。
でも、ビジネス書の棚に置いてみるのもいいかも

二冊以上あれば、分けて置いてもいいのですが、一冊だと迷います。
一か八か賭けてみるしかないですね。

文芸書の棚の方がより広く多くの読者の目に触れます。
一方、ビジネス書の棚に置くと、キャリアの向上を目指す人や新人教育に関わる人などの目には触れるでしょうけれど、一般の大学生や新社会人がそういう人ばかりとは限りません。

私の本屋感覚では、あくまでもラノベ扱いでいい、と思っています。
ビジネス書の棚に置いてもいいけど、ね、って感じで。

私が著者なら、主に新社会人に読んでもらいたい、って気持ちだと思うのです。
そこでわざわざ3月の初めに出しているわけでしょう。

新人教育担当者なども照準に入っているかもしれませんが、メインはそっちでしょう。

それなら、文芸書でいいと思います。


ジャンル分けの話が長くなりました。
本題に入りましょう。

作者は、ビジネス・ライターとして10冊ほどの実績のある人で、

 ◆「しゃべらない」営業の三著
・営業は口ベタ・あがり症だからうまくいく
・「しゃべらない」営業の技術 (PHPビジネス新書
・誰よりも売る! アポ取りの達人【法人営業編】 口ベタでも無理なく話せる

 ◆“内向型”三部作
・“内向型”のための雑談術―自分にムリせずラクに話せる51のルール
・内向型人間の人づきあいにはコツがある
・内向型営業マンの売り方にはコツがある―ムリに自分を変えないほうがうまくいく!

異色の本もあります。↓

●左利きの人々 (中経の文庫)


本書は、初めて書いた小説です。

小説としての評価でいいますと、まだまだです。
「新入社員の一年間を追い、その成長ぶりを描く」という枠組みがあるので、書けたんじゃないかなあ、と思います。


新人教育のためのビジネス本を書くために集めた資料を基に、大学生へのリサーチなども実施した上での執筆で、紆余曲折あっての作品だそうです。
それゆえか、
ストーリイは面白く、キャラクターも「いかにもこういう人いそう」と思わせ、結構イケてるのです。

だからスイスイ読んでしまいます。
それなりにカタルシスも得られます。

そうそう、これは触れておかなきゃいけないのでしょう。
新入社員としてのビジネスに取り組む姿勢ですとか、ビジネス・マナー的な知識も副産物として得られます


ただ、やはり小説としては処女作で、3年かけたとはいえ、まだまだ深みに欠けます。
だから私の中では、ラノベ扱いしています。

ストーリイの運びにしても、キャラクターの使い方にしても、時に唐突感があります
悪く言えば、梗概を読まされている?

描写が平凡です。
極端に言えば、説明だけで終わっています
この人らしいオリジナル感がありません。

文章も細部まで神経を配る必要があります。
これからもっと勉強して欲しい、といったところです。

小説は一行で、東京スカイツリーも建てられます。
一瞬で世界を滅亡させることもできます。
それだけに説明を越えたリアリティーを持った描写が必要ではないでしょうか。

とりあえず『ミステリーの書き方』(日本推理作家協会/編著 幻冬舎)でも薦めておきます。
小説の書き方の基本を学べます。
実作で詰まった時にも役に立つでしょう。


別に純文学を書け、というわけじゃないのです。
直木賞を狙うにしても狙わないにしても、第二作を書くためには、今一つレベルを超えないと…、という感じがします。


ただ、初のチャレンジでいきなり完成作を書けたこと自体が素晴らしいことなので、その点は大いに褒めたいと思います。

ラノベの新人なら充分と言えます。
そこで満足しないで、もう一歩踏み出してください
第二作が勝負です。


内容ですが、基本、小説ですので、重要な点にはあまり触れたくありません。

ただ、失敗続きの主人公を見ていると、私自身のことが思い出されます
失敗したことが数珠つなぎで思い出され、正直、落ち込んでしまいました。

特に、彼の失敗の責任を取らされてクビになったりトバされたりした担当責任者の上司のことに、彼が思いを致す場面では思わず涙が…。

まあ、最終的には、立派に社会人一年生を卒業して、新人を迎える立場になるのですが…。

改めて良くできたストーリイだと感心します。
―と、書いて締め括って置きましょう。

(2011.3.6 追記:初稿が気に入らないところがありましたので、一部書き直しました。)

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※本稿は、ココログ版『レフティやすおのお茶でっせ』より
「新社会人奮闘記ラノベ 渡瀬謙『新入社員ヒロと謎の育成メールの12ヵ月』」を転載したものです。
(この記事へのコメント・トラックバックは、転載元『お茶でっせ』のほうにお願い致します。ただし承認制になっていますので、ただちに反映されません。ご了承ください。)
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