桒田三秀税理士

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無二庵

2012-05-03 07:07:25 | 日記
 あるお客様が、300坪の山林を買った。そこには陶芸家が持っていた庵が残っている。炊事も洗濯も出来、寝室だってある。仲間とどんちゃん騒ぎをしても近隣の民家はない。嫁さんと喧嘩しても一週間くらいは暮らせる。

 仮にY氏と呼ぶが、その場所をY氏はいたく気に入って周りの人すべてにお誘いの電話を架けているらしい。

 私も一度連れられて行った。県道から1キロ山の手に入ったところにそれはあった。その先は行き止まりで、ミカン畑があるだけだ。運が良ければ都合の悪いものを捨てても、白骨化するまでは見つからないだろう。

 Y氏がリサイクルショップで買った木版を持ち込んで来て、「無二庵」と墨書してくれという。

 何を隠そう私は書道七段だ。はっきり言って「税理士にしておくのは惜しい」と思う。

 これまでも、会社の理念やら社訓を頼まれたり、巻物に何やらありがたい呪文みたいなものを頼まれて書いたこともあった。いずれも紙なので10枚20枚と書いた中から、比較的マシなものを選ぶことができた。

 今度の相手は「木」なので一枚しかない。一発勝負だ。

 しかし依頼主からは「できるだけ下手に書いてくれ」というラッキーな依頼だ。何となく庵の雰囲気に合わせて「きちゃなく」書いてくれという趣旨らしい。

 なら自分で書けばいいのにと思いながら、しめしめ、上手に書いて「下手に書いておきました」と言えるではないかと思い直した。 

 で、書いて電話すると速攻で取りに来た。

 「下手に書いてくれと言ったのに、こんな達筆で書いてくれたらダメじゃ」と言われると思っていたら

 「いやー、わざと下手に書いてくれてすみません」だと。

 「わしゃ一所懸命、上手に書いたんじゃけど」と言いたいのを堪えて

 「わざと下手に書くのは難しいのう」とごまかすのだった。

コメント (1)
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