とのさま不経済新聞 by 雲葉

「よるのとのさま」から改題(2013年2月1日)

ご近所探訪 ~「いずみや食堂」

2018年12月08日 | 酔いどれとのさま
  かなり前のこと、昼間に小杉から市バス杉40系統で中原に向かっていて、宮内交差点付近で車窓になんとも味わい深そうな店を見かけた。看板に「食堂」とあるがトタン張りにアルミの無機質な扉、町工場や住宅に囲まれた中でなんとも味わい深い。こういう店は手軽な値段で美味しい定食を出してくれそうだと思っていながら、なかなか機会に恵まれないでいた。

  そして先月上旬の金曜日、小杉で会社の健康診断があり、せっかくなので行ってみようと足を運んだ。

  ところが現地に着くとランチタイムのはずなのにシャッターが下りている。廃業した気配はなく臨時休業だろうか。帰ってからネットを繰ると今は夜のみの営業らしい。ちょうど仕事は休みだし翌土曜の夜に行ってみました。

  

  18時過ぎに行くと今度は明かりが灯りやれやれ。扉を開けるとご常連らしき面々で賑わっている。といってもV字型のテーブル配置に、厨房向きのカウンターが4人、背中合わせに壁向きに5人分の椅子があるだけで、キャパは国道より少ない。

  かなり年配の老夫婦で営んでいて、メニューはドリンクのほかにいくつかの定食と一品料理が。まずはと黒ホッピーを頼むとご主人が他の人と注文を取り違えてしまったらしく、お詫びにと女将さんがずいぶんなサービスをしてくださった。

   グラスの中は焼酎ばっかです

  聞くところによると、最近になってご主人が体調を崩してしばし休業、そのまま廃業を考えていたところ、ご常連の熱望もあって夜のみ細々と続けているらしい。たしかに動作がまだぎこちなく、スピードを求められるランチ営業は難しかろう。店の隅にはキープされた焼酎のボトル(というか一升瓶)やら割り材が置かれ、銘々が勝手に取って自己申告で飲んでいる。皆が皆協力的で、某高知県観光特使のテレビ番組でもここまでゆるゆるな雰囲気はなかなかお目にかかれないだろう。

  モツ煮が600円といい値段ながら、どんなものが出てくるんだろうと興味津々頼んでみると、これはもう1人前じゃないだろう。小丼で出てきた。でもうまい。小食な人ならこれで充分ではないかな。ホッピー(外)をお代わりすると、ご常連のひとりがお近づきのしるしにとキープしていたボトル(一升瓶)からお裾分けをくださった。それにしても女将さんといい、一見でそんなに酒飲みに見えたのだろうか。先にビの字を頼んでいなくてよかった。


  そして後、そうまでされては“返し”をせねばなるまいと思いながら、あっという間にひと月が経ってしまった。

  そうして今日も18時過ぎにのこのこと向かいます。暖簾をくぐると先月と顔ぶれは違えどご常連らしき面々で賑わっている。ずいぶん顔が広いんだなと思うも来年で40年らしい。流石にひと月も経てば顔は忘れられているようで「二度目の一見」であります。

  注文は今回も黒ホッピーってあのね…

  

  前回もですがホッピーを入れるスペースがないため、焼酎を一時退避させるグラスが登場したのです。

  しかしながら今回は注文取り違えのサービスではありません。

  

  残念なことに営業継続が難しくなったようで、早々に“閉店セール”です。

  行き届かないことがあると思うのか女将さんの口からはことあるごとに「おニイちゃんごめんね」としきりにこぼれてくる。とんでもない。こんな楽しい店をずっと指をくわえているだけで、最後になってのこのこ現れ、いい思いだけしていくんだから。

  ご常連からは口々に閉店を惜しむ声が漏れる。40年という節目を前に畳むのは甚だ不本意かもしれないが、皆さんの記憶の中にずっと残っていくのだろう。まだ来ようと思えば来られるけど、残った時間は長年のご常連に譲って去るとしましょう。

  (上述の事情から当記事の公開は閉店後といたしました)

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