とのさま不経済新聞 by 雲葉

「よるのとのさま」から改題(2013年2月1日)

境界侵犯

2018年07月25日 | とのさまの休日
  (日付は観に行った7月25日となっていますが、記事の公開は全公演終了後といたしました。ご了承ください)

  今まで新和座の舞台を要町へ3回観に行きながら今日は“浮気”をします。

  やはりツイッターで知り合った役者さんで、ご案内をいただいたなら一度は足を運びたいもの。場所は高田馬場ラビネスト副都心線西早稲田駅からが近そう。(冒頭写真

   西早稲田駅

  題名は「草苅事件」、第七回清田洞爺文学賞という架空の賞をめぐり、受賞作や候補作を巡る顛末のあれこれ。(リンク先に概要)

  脚本は受賞記者会見というスタイルで、観客にも「取材STAFF」と記されたカードを首から提げるよう求められます。

  受賞作は表題にもした「境界侵犯」、作者は草苅亜嵐なる正体不明の作家、そしてその代理人を名乗る女性占い師が現れ、受賞を辞退したいと申し出る。賞を受けるにふさわしくない作品だと。それについて集まった記者や選考委員たちの喧々囂々が繰り広げられる。

  しばしば長い独白が入り身の上話が多い。最初は冗漫にも思えたが、話が進むうちに意味に気づいてくる。人は知ってか知らずか他人の“境界”を侵食しながら生きているのではないか。男としての境界、女としての境界、はたまた職業のプライドだったり歳を重ねたことのプライド、若輩者であること、親子関係、男女関係etc.、様々なパーソナルスペースに入り込みながら生きている。時には踏み入れてはいけない領域もあったり。そんなことを気づかせてくれる。

  そして草苅亜嵐とは何者か、受賞候補の一人である五味川龍太郎が自分だと名乗り出る。これはよく見られる、作品をそれ自体でなく名前や肩書で評価してしまいがちな先入観や権威主義への挑戦だろうか。

  では「境界侵犯」とはどんな作品か。これも煙に巻かれたように誰も内容を正確に理解していない。「面白かったんだからいいじゃん」でけりをつけてしまうわけだが、美味しい料理を口にしたら言葉が出ない、そんな感じなんですかね。 完璧でなくていい、人間なんてテキトーでいい、個々の領域をどこまでテキトーに許せるか、そんなことも感じました。

  全体として楽しかったとか面白かったよりも、考えさせられたというのが率直な“総評”です。

  (※個人の感想であり、劇団、脚本、演出等の意図するところは全く考えておりません)


【今日の昼食】 
浅野屋(新宿区西早稲田3丁目27-4)
 ☆合せ天丼 1150円
   上演が15時、開場は30分前なので、その前にお昼、劇場の上(1階)にお蕎麦屋さんがあり、下見ついでに入りました。お蕎麦おいしい、天丼の種は海老、シシトウ、れんこんの3つ。ちょっと少なめかなと思うも食べてみれば適量でした。歳を考えると食べ過ぎないほうがいいかもしれません。

  

  初めての場所なので余裕をもって家を出たとはいえ、いささか時間を持て余すことになり、付近をぶらぶら。通りの向こうにコーヒーショップがあったので入ったもののあいにくと満席の由。では暑いけど散歩で潰すかと横道へ入ると古民家風の喫茶があり、拙者には珍しく入ってみます。なにせ酒というわけにはいかんのでして。

  

  店名は日本茶カフェ茶々工房、かき氷の文字が見えたので750円の白桃にしてみます。客層は近所のご常連さんといった風情の方ばかり。汗をかいた体に冷たい氷や添えられた水菓子がするすると入っていきます。お昼に“おでざ”まで付けて、すごい豪遊したな。

   

  今日びはこうしたカフェにもフリーWi-Fiがあるんですな。ありがたくタブレットを操作します。

  最後の最後にひとつ解き明かされなかった劇中の謎を。

  「境界侵犯」が(劇中とはいえ)実際に雑誌等に掲載され、公開された作品であるなら、その原稿料は誰が手にしたんでしょう?