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鳥すき焼き、ぼたん

 今から約60年前の3月、東京は米軍による空襲を受けた。一晩で10万人が亡くなり、東京の三分の一が焼け野原になった。その空襲で焼け残った場所に神田須田町周辺がある。

 電気少年が秋葉原に遊びに行くと、食事はだいたい「肉の万世」の鉄板焼き定食だった。しかし年をとって、昼間から酒を飲んでも罪悪感を感じなくなってからは、そこからすぐ近くの須田町に足を伸ばすことが多くなった。昭和初期の建物が残っていて風情の有る界わいだ。

 実際、須田町界隈には「神田藪」、「まつや」などの蕎麦屋、あんこう鍋の「いせ源」など創業明治という店が残っていて、今も営業を続けている。

 しかも、須田町にはこうした老舗だけではなく、元気な新しい店も沢山有る。そういう店の一軒に燻製を売りにしている「けむり」と言う店があると聞いて出かけたのだが、すげなく満席と断られてしまった。すごすごと引き返していたら、目の端に「鳥 ぼたん」の看板。もう土曜日の夕方7時になっている。他を探すのも面倒なので、ここを当たってみるか。

 通りからちょっと奥まった玄関に下足番のおじさんがいる。「予約してないのですけれど」と聞くと大丈夫だと言う。靴を脱いで上がると、すぐに元気のいい仲居さんが出てきて、「二階にするか一階でよいか」と聞かれる。そんなのわかりませんがな。

鳥すき焼きの材料 一階の座敷に案内されると「飲み物はどうします」と聞かれたのでビールをお願いした。そしてビールが運ばれてくるのと同時に鳥すきやき二人前が運ばれてくる。この店では必ずこれを食べると言うことらしい。靴を脱いでからここまで3分。江戸っ子だねー、気に入った。

鳥すき焼き鍋 小さな四角い鉄製の鍋が炭火を入れた火鉢の上においてある。仲居のお姉さんがいろいろおしゃべりをしながら鳥鍋を作ってくれるのだが、ざっくばらんな江戸っ子の話し方、フレンチのホスピタリティとも中華の客あしらいとも違う独特の雰囲気である。

 着ている和服は自前だとか、お昼も同じ値段でやっているが、不景気なのか客が少なくなったとか、仲居さんと話が盛り上がり、箸も進む。「写真を撮りたい?二階のほうが雰囲気あるから二階を撮りなさいよ」と言うことで冒頭の写真は二階の座敷。
 
 ここの鳥すき焼きは一人前6700円と微妙な値段である。もちろん味は良いが、食事だけで見ればこれだけ予算があれば選択肢は広い。しかし、仲居のお姉さんや、隣のお客さんと話をしながら食事を楽しめる人には気持ちの良い空間である。


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