実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

再び 伝言館 実戦教師塾通信七百六十五号

2021-07-16 11:38:19 | 福島からの報告

再び 伝言館

 ~知らないこと、忘れてしまうこと~

 

 ☆初めに☆

福島県・楢葉町の宝鏡寺を再び訪ねました。読者は覚えておいででしょうか。前回は、震災から10年を刻む日まであと三日という時でした。記念碑も建物も未完成で、ご住職はもちろん火の車でしたが、今回はゆっくり話が出来ました。

 

 ☆境内☆

この時期だからでしょう、境内の階段を青大将が上ってるところに出くわしました。突然の失礼をわび、写真は撮りませんでした。

四十世宝鏡寺早川篤雄住職は、この日も「死ぬまでやり遂げねばいけないんで」と、反対運動の記録を書き綴っていた。ご住職は80歳、耳が少し遠くなっている。

新緑は、濃くなり始めてて、夏の予感です。静かなたたたずまいの中、池には鯉が泳いでいます。

 

 ☆反対運動の始まり☆

少しご住職の事に触れておこう。ご住職の原点は「第五福竜丸事件」である。1954年、太平洋のマーシャル諸島にあるビキニ環礁で、アメリカが行った水爆実験に巻き込まれたマグロ漁船「第五福竜丸」のことだ。映画化された5年後、学校で観に行くように言われ、みんなで観に行った。5年生のことだ。太陽が西から昇ったように見えたという、当時の漁師の言葉、そして至近距離で放射能を浴びて亡くなった久保山さんのことを覚えている。この事件が「オレの原点だ」と、ご住職が言うのである。

「私が教員をやってたと言ってもね、当時よく言われた"デモシカ先生"ってやつ、先生デモやるか、先生シカねえなっていい加減なきっかけで教員になったんでさ」うず高く積まれた書類の奥から、ご住職が話した。

ご住職直々に、お茶を淹れていただいた。美味しいのです。

「いやあそんなわけで、二足の草鞋(わらじ)を履(は)くって言っても、教員も坊さんもいい加減だったんだけどね。原発建設の話が持ち上がって、住民たちと反対運動を始めたんだよ」

「すぐに科学者が支援の声をかけてくれた。それが東大原子力工学の第一期生・安齋育郎先生だったんだ」

原子力工学は、もちろん原発を建設するに際し、立ち上げられたものだ。

伝言館発足を二週間後に控えた今年の2月下旬、国際平和運動に貢献したことが評価され、安齋氏はユネスコから「地球市民賞」を贈られました。東大では万年助手だった。つまり、大学が目指す方向とは別なものを目指したことを意味するのです。

境内にともされた広島と長崎から引き継いだ「火」。復習しておきます。上野の東照宮から楢葉の宝鏡寺が「非核の火」を引き受けるに伴い、伝言館の建設が始まったのです。前回はロウソクがともされてましたが、ガス灯になったようです。

「我々が歴史上初めて原発の公聴会、それも全国公聴会を要求したんだ。実現のあかつきとなったのは1973年。ところが、公聴会とは名ばかりの、東電の『説明会』になっちまった」

この時はおそらく、ご住職も安齋氏も20代を終える頃だ。国の総力をあげてのプロジェクトに立ち向かうのは、並々ならぬ勇気と努力が必要だったはずだ。そして、信じられない悔しさが待っていたはずだ。でも今回はまだ、そこまで立ち入れなかった。

 

 ☆式典☆

式典の様子を伝える情報誌『げんぱつ』

「非核の火」をともす式典呼びかけ人には、玄雄宗久を始めとする人たちが列をなしている。その中の福島県元知事・佐藤栄佐久の名を見落としてはいけない。楢葉町の第二原発プルサーマル計画当初の1998年、計画を了承したが、その後東京電力によるトラブル隠しが発覚し、了承を撤回し東電管内の原発稼働を拒否した佐藤栄佐久である。そしてなぜかこの直後、実弟(本人ではない!)の競争入札妨害が発覚、責任をとって辞職を求める動きが県議会で起こる。本人とは関係のない出来事なので、追及したのは、あくまで「道義的な責任」なのだ。しかし辞職した佐藤栄佐久である。収賄で起訴されるも、地裁から高裁へと、無罪にこそならなかったが、量刑は軽くなっていった。このことは忘れてはいけない。原発には魔物が潜んでいる。

「電源交付金なんて金がさ、原発の不安から目をそらすためのもんだってことぐらい、住民は分かってるよ」

「今、楢葉のあちこちに建てられている大きな施設だって、結局昔と同じことをやってる」ご住職の言葉は、静かだった。

「これ無ければこれ無し」

は、寺の教えだと言います。

 

 ☆後記☆

白鵬と照ノ富士だけで、隆の勝へのエールはないのか、と聞かれます。 う~ん、隆の勝ですがね、場所を追うに従い、上体だけの相撲になってるんですよ。残念です。以前は慌てた時に両足がそろうという「悪い癖」にとどまってたのですが、今や重心がすぐに高くなるんです。そこに気づかないと、稽古をしても結果は出ません。残念。

でも大相撲、目が離せません。白鵬はやっぱり格が違いますね。照ノ富士はもう立派な横綱です。

あと、オオタニさーんはもちろん(藤井君も)ですが、ホンダが4連勝って、なんかセナ以来のことが続いてますよね。いいニュースって、やっぱりいいですね!

 ☆☆

最後は楢葉の渡辺さん家から見える海。分かりづらいけど、真ん中の屋根の向こう、隣の家の木を伐採した後に見えるようになったそうです。

子ども食堂「うさぎとカメ」、明日ですよ~ フードバンクからお土産で、スヌーピーのタオルもあるからね。

もう夏休み気分だよね~ お疲れ様でした!