瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

2017年、クリスマスには歌を歌おう♪その3

2017年12月23日 20時47分47秒 | クリスマス
はぁい♪ミス・メリーよ♪
いよいよ明日はクリスマス・イブ!
サンタクロースからのプレゼントが楽しみな日ね♪
優しくて子供が大好きなサンタクロースのお爺さんは、クリスマスの夜にトナカイが牽くソリに乗って、世界中の子供達にプレゼントして廻る…でもこれって実は、比較的新しいサンタクロース像で、初期のサンタクロース像は全然違うものだったって、メリーが以前ここで話したわよね?
初期のサンタクロースは、プレゼントをするだけでなく、子供を怖がらせる存在でもあったのよ。
「少年&青年漫画に登場するクリスマス・ストーリー」、3夜目に紹介するのは、本当は怖ろしいサンタクロース…なんちゃって、楳図かずお氏作『恐怖』シリーズより!

ホラー漫画界の巨匠、楳図かずお先生を御存知ない人は、多分居ないでしょうね。
子供の頃に先生の漫画を読んで、トラウマ植え付けられた人は多いと思うわ。
それにしてもサンタクロースが恐ろしいなんて想像つかない…って人、今夜紹介する楳図かずお氏著『恐怖』の2巻に収録されてる、『サンタクロースがやってくる』を読めば、クリスマス・イブに眠れなくなる事請け合いよ!
『恐怖』シリーズは、みやこ高校新聞部に所属するエミ子と夏彦が、実体験した恐怖を語る百物語的スタイル。

事の起こりはクリスマス・イブ…エミ子と友人達は、一男先生の家でのクリスマス・パーティーに招かれた。
そこで、先生のクリスマスに纏わる身の上話を聴いたの。

先生は物心つく前に両親を亡くし、元大工だったお爺さんに育てられたんですって。
幼かった先生を、お爺さんは目に入れても痛くない溺愛振りで、器用な手先で拵えた鳩笛を売ってはお金に換え、駄菓子や絵本を買って喜ばせる事を、楽しみにしていたそうなの。
両親の居ない先生は、そんなお爺さんに甘えるだけ甘えてた…朧げに残る記憶の中のお爺さんは、白い口髭を伸ばし、穏やかに笑ってる姿だとか。
祖父1人子1人の生活は、或る日、お爺さんが病に臥した事で、激変してしまう…2人きりだった生活の中に、おばさんが入り込み、世話をするようになったそうなの。
おばさんは、1日中お爺さんに泣いて縋る先生を厭い、2人を引き離したんですって。
意地悪なおばさんに睨まれ、お爺さんが寝ている部屋に入る事すら許されなくなった先生は、夜毎涙で枕を濡らしたんだとか。
時折、我慢出来なくなった先生が、おばさんの目を盗んでお爺さんの部屋を覗くと、寝たきりのお爺さんも同じ思いで居るのか、ジッと見詰めて来たそうなの。
その内、お爺さんは、おばさんに隠れて、何事かをしている様だった…容態が日増しに悪化し、遂に起き上がれなくなったお爺さんは、おばさんに大きな皮を持って来るよう頼むと、それで大きな袋を拵えたんですって。
お爺さんが亡くなる数日前の夜、先生がお爺さんの部屋を覗くと…お爺さんは枯れ枝の様な手で、玩具をいっぱい皮袋の中へ詰めていた…その光景があまりに異様に思えて、先生は大人になった今でも忘れられずにいるそうなの。
今際の際、お爺さんは、おばさんや親戚の人が席を外してる間に、先生に掠れた声で、こう言い残したんですって。

「一坊、爺ちゃんは、おまえと別れるのが一番辛いのじゃ…」

幼い先生の事を、お爺さんは「一坊(かずぼう)」って、呼んでたそうなのね。
お爺さんは先生に遺作となる鳩笛を渡し、「どうしても辛くて我慢出来ん時は、その鳩笛を吹くのじゃ」と伝え、玩具がいっぱい詰まった皮袋を胸に抱き、亡くなったんですって。
その日は12月25日…丁度クリスマスの夜で、雪が降ってたんだとか。
亡くなったお爺さんのご遺体は、遺言通り玩具が入った皮袋も一緒に埋葬され、幼い先生は意地悪なおばさんに引き取られる事になったんですって。
お爺さんを亡くしたばかりの頃、先生は悲しみに暮れて、泣いてばかり居たらしいの。
そんな先生を、おばさんは容赦無く折檻した為、恐ろしくて仕方なかったとか。
けれど一緒に暮らしてく内に、意地悪だと思ってたおばさんが、本当は涙もろくて優しい人だって事が解って来た。
成長するにつれ、お爺さんに甘えて我儘放題に育てられた自分の方が、間違いだった事に気付いたそうなのね。
次第にお爺さんの記憶は薄れ、活発な子供時代を過ごす間に、あの鳩笛を何処かへ失くしてしまい…結局、鳩笛を一度も吹かないまま、大人になった――というのが自分の、クリスマスに纏わる生い立ち話だと、先生は語り終えたの。
それから先生は、膝に抱いてた一人息子の「佳司」君を、エミ子達に紹介してくれた。
佳司君は、先生が言うには、お爺さんと一緒に暮らしてた頃の自分にそっくりらしいの。
幼い頃の先生同様、佳司君にもお母さんは居ない…でも先生は、お爺さんみたいに甘やかしたりしないとエミ子達に言い、「サンタクロースからプレゼントを貰いたいなら、早く寝なさい」と、佳司君に自室へ戻るよう諭したの。
まだ幼い佳司君は、サンタクロースが居るって信じてたから、先生の言葉に素直に頷いて、居間を退出したわ。

佳司君が出て行ってから暫く経った頃、先生と友人達とでトランプに興じていたエミ子は、「ホー」っていう奇妙な物音を聞いたの。
まるで鳩の鳴き声の様な…けれどエミ子の他は誰にも聞こえなかったらしく、友人達から「気のせいよ」と言われた彼女は、特に気にしない事にしたのね。
一晩中雪が降り頻りホワイトクリスマスとなったその日以降、先生の様子はおかしくなった。
道を歩いてる時も深刻な顔で何かを考え込んでいる様子…心配になったエミ子は「悩み事なら相談に乗りますよ」と申し出たの。
一旦は断った先生だったけど、数日後、思い詰めた顔でエミ子に打ち明けた。

あの日、クリスマスパーティーが終わった後で、先生は佳司君の部屋へ行き、こっそりプレゼントを置こうとしたんですって。
ところが、ベッドの側に吊るしてあった筈の靴下が床に転がり、中には玩具が入ってたそうなの。
一体この玩具を何処で手に入れたのか、先生が問い詰めても佳司君は「サンタのおじさんからもらった」としか話してくれなかったんですって。
古ぼけた玩具だったから、おおかた何処かで拾った物を、佳司君が自分で入れたんだろうって、無理矢理納得してたそうなの。
ところがクリスマスを過ぎても、玩具は毎晩1ずつ、佳司君の部屋に置かれるんですって。
それに…プレゼントが置かれる前には、決まって「ホー」という奇妙な物音が聞こえる…先生が言うには、その音は、昔お爺さんから貰った鳩笛を吹く音に、よく似ているらしいのね…。
エミ子は、クリスマスパーティーに招かれた夜、自分も同じ様な物音を聞いた事を打ち明けた。
不吉な予感に駆られたエミ子は、その夜、先生と共に、佳司君の部屋の隣で見張る事にしたの。
すると部屋の中から「ホー」っていう奇妙な物音が――確かに聞こえた!――直ぐに先生とエミ子は部屋に飛び込んだけど、佳司君の他は誰も居ない――でも先生は、佳司君が慌てて背中に何かを隠したのを見逃さなかったの。
先生が怒って渡すように言うと、佳司君は家の外へ飛び出してった。
走りながら「ホー」と笛を吹いた佳司君は、道に積もった雪で滑って転んでしまった。
追い付いた先生が佳司君の手から落ちた物を拾うと――それはやはり、先生が昔、お爺さんから貰った鳩笛だったのよ。

証拠品を押さえられたからには誤魔化せないと思ったんでしょうね、佳司君は先生とエミ子に訳をすっかり話したの。
或る日、佳司君は、押し入れを探索していて、古物の中から偶然鳩笛を見付け、クリスマス・イブに吹いてみたんですって。
すると、窓を閉めて鍵を掛けていたのに、部屋の中へ見知らぬお爺さんが入って来たそうなの。
きっとお爺さんはサンタクロースで、煙突から応接室に有る暖炉を通り、入って来たんだ――佳司君は、そう思ったんだって。
お爺さんは何故か佳司君の事を「かずぼう」と呼び、「また虐められたんだな、可哀想に…」と言って憐れんだんですって。
佳司君が、自分の名前は「けいじ」で、誰にも虐められてないと言っても、聴いてくれなかったそうなの。
「かずぼう(一坊)」は、幼かった頃の先生に、お爺さんが付けた愛称…もしや佳司君の元へ毎夜現れるサンタクロースの正体は、先生のお爺さんの幽霊…!?
それも、どうやらお爺さんは、佳司君の事を「一坊」だと思い込んでるみたい…エミ子の不吉な予感は益々強まったの。

クリスマスの夜、お爺さんは背負っていた袋から玩具を取り出し、佳司君にプレゼントしてくれた。
プレゼントを渡す時、お爺さんは、この事を誰にも言ってはいけないよと口止めした上、「爺ちゃんに会いたくなったら鳩笛を鳴らすのじゃ」と、佳司君に約束させたそうなの。
プレゼントが嬉しかった佳司君は、約束通り誰にもこの事を言わず、毎晩鳩笛を吹いては、お爺さんと会ってたんですって。
けれど今夜のお爺さんは、プレゼントを渡した後に、「袋が空になってしまったから、もう渡せない」って、佳司君に言ったそうなの…。

全てを聴き終えた先生は、佳司君の部屋で寝ずの番をする事にしたの。
エミ子も先生に付き合う事を決め、万一を考えて同じ新聞部の夏彦さんも呼び、その夜は3人で佳司君を守る事にした。

雪が静かに降る夜更け…すやすやと眠る佳司君の傍で、先生は幼い頃の自分を呼ぶ声を聞いた。
部屋には何処から入ったのか、蒼白い顔のお爺さんが立ってたの。
その姿は正しく、幼い頃の自分に優しくしてくれた、お爺さん――そのお爺さんが、「可哀想に一坊…また虐められたんだな…」と言って、佳司君の方へ近付いて来る。
先生は眠る佳司君を抱き締め、「一坊は私で、これは息子の佳司だ!!」と叫んだ。
エミ子も、夏彦さんも、先生も、恐怖を感じて、逃げようとしたけど、体が金縛りに遭ったように動かない。
お爺さんが、枯れ枝の様な腕を伸ばして、佳司君の頭を掴んだ――その力は、骨皮だけの腕とは思えぬ恐ろしい強さで、頭を掴まれた佳司君が「ぎゃあああ…!!!」と金切り声を上げる――メリメリッ…ボキッ…!!!と嫌な音を響かせ、頭と胴体が別れ別れになってしまった…!

お爺さんは佳司君の生首を袋の中へ仕舞うと、「これからはずっと爺ちゃんと一緒だ」と言って、ドアの向こうへスーッと消えてしまったの…。
先生の腕の中には、佳司君の首無しの亡骸が残されており、夥しく滴る血で床は真っ赤に染まってた。

クリスマスからずっと降り続く雪は、今夜も止みそうにない……


……身の毛もよだつって、こういう話を言うんでしょうね~~。
孫を可愛がってくれたお爺さんが、その孫の一人息子を惨たらしく殺してしまう理不尽さ。
祖父の孫への愛着が生んだ悲劇…メリー読んだ後、ショックで放心してしまったわ!
…口直しにクリスマス・ソングを紹介するわね――第3夜目は「Santa Claus is coming to town(サンタが街にやって来る)」よ!
ヘヴン・ギレスピー作詞、フレッド・クーツ作曲、日本ではジングルベルに並ぶ知名度ね。
けど元の英歌詞は、愉しげな曲に似合わず、結構恐いの。
クリスマスにやって来るのは、本来サンタクロースではなく、自然の精霊や祖先の霊だった。
今夜、貴方の元へやって来るのは、何かしら…?

歌はこちらを参考にしてね♪
また明日、メリーと楽しくクリスマス・ソングを歌いましょう♪



【Santa Claus Is Coming To Town(サンタが街にやって来る)】




You better watch out♪
You better not cry♪
Better not pout, I'm telling you why♪
Santa Claus is coming to town♪

He's making a list♪
And checking it twice♪
Gonna find out Who's naughty and nice♪
Santa Claus is coming to town♪

He sees you when you're sleeping♪
He knows when you're awake♪
He knows if you've been bad or good♪
So be good for goodness sake♪

You better watch out♪
You better not cry♪
Better not pout, I'm telling you why♪
Santa Claus is coming to town♪

Santa Claus is coming to town♪



【訳】

気を付けるんだ
泣くのはダメ
ふくれっ面もダメ
何故かって?
それはサンタが街にやって来るからさ

サンタはリストを作って
2回もチェックしてる
誰が良い子か悪い子かを
サンタが街にやって来る

君が寝てる間もサンタは見てる
君が起きてる時も知ってる
良い子か悪い子かをみんな知ってるんだ
だから良い子にしていなよ!

気を付けるんだ
泣くのはダメ
ふくれっ面もダメ
何故かって?
それはサンタが街にやって来るからさ



…こんばんは、びょりです。
楳図かずお氏著『恐怖』シリーズは、月刊「平凡」にて1966~1970年迄連載された作品との事。
かなり古い作品な為、掲載雑誌が少女向けか少年向けかも、判らないんですよ。
「月刊平凡」で検索すると、平凡社が出版してたアイドル雑誌が上がるのですが…果たして当たりかはっきりせず。(汗)
もしアイドル雑誌に掲載されてた場合、少年&青年向けに含めるのは誤りって事になる。
しかし後に楳図かずお氏が少年&青年向け作家にシフトした事から、無理矢理男性誌側に含めて今回紹介させて頂いた。
…要するに掟破りしてでも、なるだけ早くに挙げたかったのだ。(笑)
史上最恐のサンタクロースっつうか、自分が選ぶトラウマ漫画ベスト10入りです。
因みにこのベスト10に、楳図かずお氏のホラー漫画が、3作はランクインしている。
ホラー好きな自分でも、この方の漫画を枕元に置いとくのは、とても勇気が要る…。

今夜の写真はJR上野駅、中央改札口出た所に飾られてた、「パンダフル・クリスマス」なデコレーションの数々。
今年は上野動物園に待望の子パンダ、「シャンシャン」が誕生。
「サンタ」ならぬ、「パンダ」が街にやって来た。
今、上野の街はパンダ一色です…いや、パンダだから二色か?

 






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