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瀬戸際の暇人

今年も休みがちな予定(汗)

君と一緒に(ルナミ編-その14-)

2010年03月16日 22時02分43秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】




「なんだ、すぐ隣がホテルだったのか!」
「うん…地図で見るとその筈なんだけど…果たして入口は何処に在るのやら」

「解り辛いよねェ」と言って、俺に向い、指で場所を示す。
地図で見ると、今歩いてる通りの左わき一直線に並んでる建物は、全部ホテルらしい。
だったらどこから入ってもかまわねーんじゃないかな?俺達そのホテルに泊まる客なんだし。

「…と言って、カフェやレストラン通過して入るのは恥ずかしいじゃないのさ!」

チラリとナミが目を向けた角はきっ茶店らしく、ガラス窓の向うにお茶飲んでるやつらが見えた。
その横はかん板によるとレストランらしい、しかもバイキングの食べ放題だ!

「じゃーどこから入れば良いんだ?地図を見て俺を目的地に連れてくのはナミの役目だからな。ナミの言う通りに進むから、早く案内しろよ!」
「まったく清々しいくらい俺様気質な奴ねェ!…取敢えず、も少し先へ歩いてみましょ。最悪でも1周する頃には、きっと見付かるわよ」

入口を探すのに1周もしなきゃいけないのか、面どーだなァと思ったけど、道を半分位進んだ所でナミの足は止った。
地図を確認して、建物を見上げ、横に立ってたバス停を確認してから、奥へ続く通路をもぐってく。
どうやら入口はここらしい。

「ここがホテル・アームストロングかァ!」
「ホテル・アムステルダムよ!!何その寛ぎの欠片も感じられない名前!?」

うす暗いトンネルの中こだました俺の声をかき消すように、ナミのツッコミが響いた。
思った以上に大きく響いた自分の声が恥ずかしかったんだろう。
慌てて口をふさいで、さっさとトンネルを抜けて行く。
トンネルの終点わきには、サンタ帽をかぶった馬の像が立っていて、見つけたナミは無邪気にはしゃいだ。

「見て見てルフィ、馬サンタ!カワイ~♪写真撮ってよ♪」

俺の了解を待とうともせず、手の平にカメラが乗せられる。
しょーがなくカメラをかまえて、馬サンタに抱きつくナミの前に立った。
お決まり通り、「ハイ、チーズ!」と言ってから、シャッターを押す。
カメラを返す俺の背後に目を向けたナミは、お宝発見でもしたかのごとく、瞳をキラキラ輝かせた。

「後ろ見てルフィ!綺麗な庭園…!」
「おわっ!ホントだ!建物の中に庭が在る!おもしれー!」
「中庭、パティオって言うのよ。こういうのって」

そう言うとナミは、ハートや花の形をした花だんに近付き、観て回る。
赤レンガの外見からは考えられない世界だ。
白いかべで四角く囲われた庭の上には天井が無くて、紫色に染まった空がダイレクトに広がっていた。

「トンネルを抜けたそこは秘密の花園だった。クリスマスに合わせて花壇を主に緑と赤で纏めてあるのが、お洒落よね~♪」

よっぽど庭がお気に召したらしいナミは、チェックインするのも忘れて、しばらく動こうとしなかった。
細かく区切られた花だんの前に座ってはうっとり、中心の小さくて円い噴水の前に座ってはうっとり。
「レディは花が好きだ」ってサンジの言葉を、俺は思い出してあきれてた。
口に出したら怒られるから言わないけど、ナミもレディの一員だったんだなァ。

日が暮れて庭にライトが点くころ、さすがにがまん出来なくなった俺は、ナミの肩を揺さぶってチェックインを急かした。
ぼんやり赤く光る時計が屋根に付いてる建物、そこが玄関になってるらしく、扉の上にはクリスマスリースが飾ってあった。
ガラス扉を手で開けようとしたら自動ドアでビックリする。
けどホテルの中は、もっとビックリだった。

「うっわ!すっげ!神殿みてー!」
「と言うよりローマの聖堂の様な雰囲気、豪華ねー!」

2人そろって想像をはるかに超えるゴージャスさに目を見張った。
ギリシャにパルプンテとか何とか言う神殿が有るだろ?
あんな風に白くて太い柱が、広間を囲んで建ってんだ。
もんのすげー高い天井の一部には、宗教画みてーな絵が描いてあって、ダイヤみたいに輝く重たそーなシャンデリアがぶら下がってた。
でもって玄関の前には2階まで届きそーなほど、でっかいクリスマスツリーが飾ってあって、周りには沢山のプレゼントに熊のぬいぐるみが積まれてた。

「すげーな、こんな高級ホテルに泊まるのか?」
「どうしよう…あんまり豪華過ぎて気後れしちゃうわ」
「けどここに予約入れたんだろ?だったら堂々と泊まりゃーいいじゃん」
「そんな事言ったって、今迄質素な倹約生活送って来た身には眩し過ぎるんだもん。もっとフォーマルな装いで来るべきだったかしら?ドレスコードなんて有ったらどうしよ~!」
「ドレスコード??ひょっとしてドレス着なきゃ泊れねーのか??男も??…意味解んねーけど、歩き廻って疲れたし、早く部屋に案内してもらって休もうぜェ」
「ルフィ、あんたの恐いもの知らずを見込んでお願い!私の代わりにフロントでチェックイン済まして来て――」

玄関前で立ち止まって会話してたのが耳に入ったのか、スーツ姿のホテルマンがニコニコ顔で近付いて来た。
「本日宿泊される予定ですか?」と、ていねいな口調で聞かれ、ナミがカチンコチンに固まったまま「ハイ」と答える。
答えを聞いたホテルマンは、にっこり笑うと右側のフロントへ案内してくれた。

フロント前に立った所で度胸がすわったのか、そこからはナミもスムーズに応対してるように見えた。
一通り説明を受けてる間、俺は後ろのイスに座って待つ事にする。

広いロビーの中央には2列に並んだテーブルセット。
俺達と同じくチェックインを待ってるのか、とっくに済ませてあるのか、そこには客が数人座ってくつろいでいた。

ぼーっと観察してた俺をナミが呼ぶ、説明が終り、部屋へ案内してくれるらしい。
ホテルの女…ホテルウーマンか?…を先頭に、階段上ってエレベーターの有る方へ向う。
エレベーターの前でチョロチョロ水が流れる音が聞こえ、見たら中心に向って水が落ちてく妙な銅像が置いてあった。
何だありゃ??と不思議に思ったと同時にエレベーターが閉まり、聞くタイミングを失っちまった。
手洗い用だろうか?外から帰って来たら手を洗えって意味で置いてあるのかも。
新型インフルエンザが流行ってるって言うしな。

1番上の階で俺達を降ろすと、女はまた先頭に立って歩いてった。

「…なんかさっきから良いにおいがしねェ?」

クンクンと鼻を鳴らしながらつぶやく。

「ポプリの香りを立ち込ませてるみたいよ。さっきエレベーターの前で、皿に入ってるポプリを見付けたし」
「ポプリィ??」
「乾燥させた花弁や果物の皮なんかを混ぜて作る香りの事!」
「へー、そんなもんが有んのかー」

案内役の女が振り返り、俺とナミが言い合う様子を、おかしそうに眺める。
ニコニコ笑いながら、どこから来たのかーとか、今日はどこを廻って来たのかーとか、たずねられた。
質問に答える途中で幼なじみだという事を知った女は、「どうりで仲が宜しいと思った!」と、合点がいったような笑顔を見せた。

「会話の全てが阿吽の呼吸、まるで長く連れ添った夫婦の様だなァなんてv」

女の言葉を聞いたナミが、俺の顔をチラリ見た後、顔を真っ赤にして下を向く。
俺も急に気恥ずかしさを感じて、窓の向うへ視線をそらした。
じゅうたんがしいてある長い長い廊下の片側には、窓がズラズラズララ~っと、奥へ見えなくなるまで続いてる。
窓から見下ろしたそこには、さっき見た中庭が有った。
上から見ると花だんがハートや花の形してるのが一目りょーぜんだ。
隣を歩いてるナミの肩を突いて教えてやると、俺と同様にガラスが白くくもるまで顔をくっ付けてのぞいた。

子供のころ、座席に並んでひざをついて、電車の窓から景色を眺めたっけ。
こーゆー時に見る顔は昔のまま、ちゃんとつながってるようで安心する。

案内役の女が急かさないのを良い事に、俺達はただでさえ長い廊下を、美術館でも廻るみたいに時間をかけて歩いた。






…写真は話に出したホテル・アムステルダムの中庭、隠れた花のスポットです。
春~初夏は特に華やかで綺麗v

すっかりほのぼのラブコメモードですが(汗)、これは自分の中のルナミに対するイメージが、ほのぼのだからと思われ。
んで話の続きは(書ければ)明日に上げます。
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君と一緒に(ルナミ編-その13-)

2010年03月01日 21時36分22秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回からの続きです。】




バスを降りたそこは、見覚えの有る場所だった。
運河の向うから流れて来る潮のにおいにひかれて、レンガ道のはじまでナミの手を取り走ってく。
目の前には昼飯食う前に観に来たヨットマリーナ…って事は、元の地点に戻ったわけか。
運河と海の境い目に、青いとんがり帽子を2つかぶったような、赤レンガの建物が建っていた。

「何のための建物だろ?」
「さあ…?ひょっとしたら水門かも」
「水門?」
「ほら、運河と海の境い目に建ってるし…ただ実際に水門の役目を果たしてるようには見えないけど」

謎の建物には屋根が有るけど、とびらが無い。
好きに入れて、m字型に開いた四方からのぞけるこーぞーになっている。
見晴らし台だろうか?

建物の中にベンチが並んでるのを見つけたナミが、「ちょっと休んでこv」と言ってニッコリ笑った。
運河を向くベンチに海を向くベンチ、俺達が座ったのはもちろん海を向く方だ。
m字型に開いた窓から夕焼けにそまる海が見えた。
水平線の向うには、かすむ山。

「パノラマね」
「うん、絶景だな!」

チラッとナミの横顔をうかがってから、視線をそおっと前方へ動かす。
昼間観た時と変らず、石のご岸近くには、ヨットが沢山けーりゅーされていた。

「…大丈夫よ。風が大分治まって来たし、明日は乗れると思うわ」

ザブーンと建物に波が当たって、海面が白く泡立つ。

「夕焼けが綺麗な次の日は、大抵好いお天気になるの。だから…乗れると思う」

「ほら!」と言って指差した先には、街のうらっかわに沈んでこうとする夕陽。
にぶい青色した空の中で、その周りだけが金色に輝いてた。

見とれるナミの横顔に視線を戻す。

夕陽の色に似た髪が潮風にあおられ、後ろになびくのがきれーに思えた。
俺にジッと見られているのに気付いてるはずなのに、ナミはこっちを振り向きもせず何も言って来ねェ。
ちゃんと隣に居る事を確めたくて、俺はにぎってる手に力をこめた。

「どーしても、一緒に乗りたくね?」
「乗りたいんだけど、乗れないの」
「乗れるさ!俺が付いてんだから!」
「ありがと!でもやっぱり、あんた1人で乗って来て」
「俺が乗ってる間、ナミは何してんだ?」
「適当に店ひやかしたりして遊ぶ積りですから、お気にされずに楽しんで来なさいよ」
「せっかく一緒に旅行してんのに、バラバラで行動したら、つまんねーじゃんか!」
「しょーがないでしょ!あんたがどうしてもヨットに乗りたいって言うなら…!」

がまん出来なくなったのか、ついにナミがこっちを振り向く。
真ん丸に開いた目が、俺の顔を正面から見すえた。
ザブーンてまた、波が下に当たる音が響く。

「だから…どうして私を乗せたがるの?」
「だから言ったろ!俺独りじゃヨットに乗れねェ、ナミが居なきゃダメなんだ!」

ふぅーっとナミがため息を吐いた。
「しょうがないわね」って、母ちゃんか姉ちゃんみたいな笑い顔だ。
もう1度海の方を向いた後、ナミは金色の夕陽を指差して言った。

「あんたはあの太陽と同じ。…私が居なくたって、夢を叶えられるわ」

そうしてまた俺の方を向いて、さびしく笑って見せる。

「自力で輝ける太陽は、何もしなくたって星を引き寄せる。もしも私が軌道から外れたとしても、きっと代わりの星が現れて、あんたを助けるでしょうよ」
「太陽なんかじゃねェぞ、俺は!!」

にぎってる手を引っ張り、ナミを胸に抱きしめた。
ネコみたいにあったかくて柔らかい体が一瞬だけ強ばる。
それでも腕にますます力をこめて、ぎゅうぎゅうにしめつけた。
ほほにほほが触れる、息がかかるくらい顔を近づけて、目の奥までじぃっとのぞきこんだ。

「…何で離れるような事言うんだよ?」
「離れたくないけど…」
「じゃあ言うな!死んでも言うな!!今度言ったらバツとして1番高い店で飯おごれよ!!」
「…それだけは勘弁して」

ナミの体からは甘酸っぱいミカンのにおいがする。
子供のころから食い物のにおいに敏感な俺は、はぐれた時このにおいを頼りにさがし出した。
どんなに離れた場所に居ても、ナミのにおいは不思議と判るんだ。
おかげで俺の脳には「ミカン=安心するにおい」ってインプットされちまってる。
もしもナミが俺から離れたって、きっとにおいをたどって見つけ出してみせるさ。

抱きしめたまま、キスをしようと思った。
見下ろす俺の目を見て、気持ちをさとったんだろう。
ナミがゆっくり目を閉じて、くちびるを少し上に向けた。

これが初めてのキスなのかーって思うと、すげーきんちょーする。
ナミにならって目を閉じようとして、それじゃあポイント誤っちまうと考え直し、目を開けて挑む事にした。
もうちょっと上を向いてもらった方がやりやすいんだけどな。
あごを持上げようとした指が、思っ切し汗ばんでるのに気付く。
しかも震えてまでいるから、触れたらナミにきんちょーしてるのがバレちまうかも。

しかたなく手を使う事はあきらめた。
角度は悪くても、度胸一発決めるしかない。
深呼吸して再び顔を近付けた時だ。


『……!!!』


突然聞覚えの有る声が耳に飛び込んで来てぎょーてんした。

「ゾロ!?」
「…ぞろ?」

慌てて声がした方に体を向ける。
運河側から聞えたと思ったのに、そこに知ってる顔は見当たらない。
教会が建ってる広場からバス停の方へ歩いて来たのは、ヤツにちっとも似てない太ったおばさん1人だけだった。

「『ゾロ』ってバイト先の先輩の事?あんた以上に計り知れない方向オンチだっていう」
「おっかしーなー、確かにゾロの声が聞えたんだけど…」

わざわざナミの体を離して、5本の道が合流するバス停まで道を戻り、キョロキョロ見回したものの、たずね人は出て来なかった。
タヌキにでも化かされた気分だ。
首をひねりながらベンチに戻った俺に、ナミは調子を合わせてか、真剣に考えこむしぐさを見せた。

「ルフィを凌ぐ方向オンチだってなら――東京から此処まで迷って出て来てもおかしくないわね」
「どーゆー意味だよ、そりゃあ!?」

ジロリにらんだとたん、ナミはプッとふき出した。

すっかりムード台無しだ、どうしてくれんだよゾロ!?
見付からないって事は空耳だったんだろうけど、初めてのキスを邪魔された怒りは、りふじんを承知でヤツに向う。
もしも本当に目の前に現れたら、碇を巻きつけてから海に沈めてやる。

人の気も知らずにナミはベンチに座って笑い転げるばかり。
その時パッと建物の中に明りが点った。
いつの間にか日が沈んで、空がうす暗くなってる。

「え?やだもう5時近いじゃない!早くチェックインしなきゃ!」

腕時計を見たナミが、ベンチから体を起して、広場の方へと急ぎ足に向う。
横切る途中で聞えよがしに「あー首が痛い」とつぶやいた。

街のうらっかわを残して、だんだんと青が濃くなる空と海。
くっ付いてるようで1つにならないのが、俺とナミに似てるなーって何となく思えた。

ともかく帰ったらゾロのヤツぶん殴ってやるんだ!
拳をギュッと固めてちかった俺は、回れ右してナミの後を追いかけた。






…3月は後2回…上手くすれば3回続きを書けるかも。
でも何時上げるかは言えない、2月末の時みたく、上げると言って、その日に上げられなかったら気まずいんで。(汗)
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君と一緒に(ルナミ編-その12-)

2010年02月16日 22時57分50秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】





キララの出口までの通路は、模型を使った実験コーナー(?)になっていた。
1階から他の客に混じって下りて来た俺とナミは、外へ出る前に一通り観て行く事にした。
模型はハウステンボスの仕組みを解説する為に作ったらしく、話は難しくて理解出来なかったけど、すげー工夫をしているふんいきはつかめた。

コーナーにはハウステンボスのジオラマも展示されてて、初めて全体を立体的に知る事が出来た。
俺とナミがガラスのしきりに貼りついてる前で、ジオラマを照らすライトがだんだん赤く変ってく。
と思ったら今度はだんだん暗くなってって、代わりに模型の明りが点いた。
そしてまたライトがだんだん明るくなってく、朝が来たらしい。
「この街の1日を表現してるのね」と、ナミが感心したように言った。


しばらく遊んだ後、外へ出た。
目の前には運河が流れてる、とそこへ入口ゲートの側で見かけたカナルクルーザーが、ゆーっくり俺達を横切り、右岸に当たる手前でカーブした後、橋をくぐって行っちまった。

「良いなー…俺も乗りてェーなァー…」

船外に出てた乗客と目が合った俺は、うらやましくて、つい、つぶやいちまう。
ボーっと追いかけながら見送ってる内、気が付いたらナミの姿が見えなくなってた。
あわてて船がくぐってった橋の手前でナミの名を大声で呼ぶ、けど返事がどこからも聞こえない。
ひょっとして橋渡って別のエリアに1人で行っちまったのか!?
1歩渡りかけたその時、「こっち!」と後ろから声がかかった。
振り向いた俺の視線と、赤レンガの角からのぞいてたナミの視線が、1本につながる。
全身から力が一気に抜けるほどホッとした、直後腹ん中が怒りで一気にわき立った。




「おまえな!!気に食わないからって居なくなるなよ!!心配すんだろ!!」
「ゴメン、今は心から反省してる」
「いつも人の事ガキ扱いしといて、そっちの方がよっぽどガキみてーだぞ!!」
「そうね、大人気無い真似だったと、自分でも呆れちゃうわ」

赤レンガの角から続くレンガと石だたみの道をナミと歩いてく。
両わきにはレンガ造りの家がせーぜんと並んでてきれーだった。
通り過ぎるグループ客と、サンタ帽をかぶって掃除してる女が、歩きながら激しく言い合ってる俺達を、遠巻きに観察してる気配を感じた。
もっとも俺にしかられてるナミは、珍しくも素直に頭を下げている。
はたから見て、俺が一方的に責めてるだけに思えたろうな。
けど他人の目なんかどーでもいい、言われっ放しなんてナミらしくねェよ。
わめいてる内怒りは不安に変って、俺の声は次第に静かになってった。
ナミはまだションボリ頭をたれたままで居る。

「俺が船を見るだけでも許せないのか?」

ストレートに聞く、そのとたん、ナミの頭が水飲み鳥みたいに、勢い良く上がった。

「そうよ許せない!…だって、デート中に彼が他の女のコ見て、嫉妬しない彼女は居ないでしょ?」
「はっ???」

予測してなかった返しに、思わず言葉がつまる。

「女のコって…船だぜ!?」
「知らないの?英国では船の代名詞が『she』、女扱いされてる物なのよ。ちなみに海も英語で『sea』だから女、『母なる海』って言うでしょ?」
「だ…だいめいし??しーだから…女??何だァァァ???」

わざとらしくムクれたナミの顔が、舌をペロリと出した瞬間笑顔に変る。
俺はといえば意味が全く解らず、こんがらがった頭を抱えるばっか、ただナミに上手くはぐらかされた事だけは解った。
本音を吐かせなきゃケンカにもならねェ、一体どうすりゃ良いんだ?
悩んでる俺の気も知らずに、ナミはすぐ左横の建物の前で足を止めると、甘えた声で誘った。

「ここ、トリックアート館だって。入ってみようよ♪」
「トリックアート?」

ナミが指で差した家のかべには、はい登る男の絵が描いてある。
一瞬本当の人間と見間違えるほどリアルな絵だ。
興味をひかれた俺は、悩みをいったん頭の隅にどかし、ナミと一緒に中へと入ってった。

トリックアート、つまり「だまし絵」って事は知ってる。
中は美術館みたく、沢山の絵が展示してあった。
けどふつーの美術館みたいにすましてねーんだ。
向きを変えて見ると違う絵に化けたり、実は飛び出してたり、床に穴が開いてると思ったら無かったり、鏡かと思ったら違ったり。
俺とナミは色んな絵の前で写真をいっぱい撮った。
後でゾロ達に見せてだましてやるんだ。

2階のはじまで絵を見た後、トリックアート館を出て、今度は隣の「マジックミラーメイズ」に寄った。
白黒模様の迷路からウサギの足跡を追って、奥へ進んだそこは鏡の迷路。
まるで森がどこまでも続いていて、俺とナミが何人も居るみたいだ。
ジッと見てる内、背筋がゾクゾクして気持ち悪くなった。
昔から出口の見えない迷路って苦手なんだよな。

「『白黒模様』は表現としてあんまりじゃない?あれはチェス盤をイメージした柄なのよ」
「チェス?」
「ほら、『ふしぎの国のアリス』の…と言うより、続くシリーズ2作目の『鏡の国のアリス』のイメージなのね」

ナミからそう説明されても「ふしぎの国のアリス」しか知らねー俺には、さっぱり解らなかった。
「ふしぎの国」だって、ナミから聞かされた「ウサギを追って変な国に迷いこんじまうアリス」ってあらすじしか知らねェ。
なんか女向きってイメージがして、読む気がしねーんだよなァ。

「女の子向けなのは確かね。だってあの作品は、作者のルイス・キャロルが愛するアリス・リドルの為に、彼女を主人公にして書いた物語だと言われてるもの」

進む度に頭をゴチゴチ鏡にぶつける俺は、いいかげん不機嫌モードになっていた。
イライラから「女向け」と突き放す俺にかまわず、ナミは笑顔で「アリス」の説明を続ける。

「『アリス』のモデルになったと言われてるアリス・リドルとキャロルは、年が20も離れてたらしいけど、キャロルは本気でアリスを愛していて、まだ少女だった彼女にプロポーズをしたって噂まで残されてるの」
「よーするにロリコンか!」

ズバリな俺の言葉にナミが苦笑う。
苦笑った後、鏡の中に続く森に向き直って、更に話を続けた。

「…でも自分の思い描いた空想世界で、好きな女の子を遊ばせるキャロルは、相当ロマンチストだったんだと思うわ。
 作品を書いた時のキャロルの気持ちとしては、こうだったのかも――僕の世界には君が居る」


――ぼくの世界には君が要る、頭の中で勝手に変かんした言葉に、心臓がドキリと跳ねた。


鏡に映ったナミの顔はうっとり夢見る乙女で、ふだん姉の顔を見慣れてる俺には新鮮だ。
果てしなく続く鏡の森の中、重なり合って映る俺とナミ。
無性に抱きしめたくなり、背後から忍び寄った所で、鏡の中の目と合った。
パッとナミが振り返る、あせって後ろ向きで離れた俺は、足をすべらせななめ後ろの鏡に頭を激突させちまった。

「痛ェェ~!!!」

悲鳴と一緒にゴチーン!!という衝撃音が迷路にこだまする。
反動で起した頭が今度はななめ前の鏡に激突した。
再び迷路にこだまする俺の悲鳴と衝撃音。
すると側の鏡の中にウサギがボワワンと現れ、「やったね♪ぼくを見つけたから、今日は良い事が有るよ♪」という、のー天気な声が響いた。

どこがだよ!??

悲劇はくり返されるもんで、またもや反らせた頭が後ろの鏡にぶつかり、起した頭が前の鏡にぶつかる。

ゴチーン!!ゴチーン!!ゴチーン!!ゴチーン…!!

「痛っっ!!痛っっ!!痛てっっ!!痛てェ~~…!!」

まるで鏡地獄、痛みの無限スパイラルじゃねーか。
見かねたナミが笑いながら止めてくれるまで、俺の悲鳴と衝撃音は迷路内にひっきり無くこだましていた。




ミラーハウスを脱出する頃、俺の頭にはコブが10個位出来てた気がする。
後1つ体験してないアトラクションが有ったけど、疲れた俺達はバスに乗って泊まるホテルに向かう事にした。
ニュースタッドに降りて最初に寄ったチョコレートハウスの前に戻る。
来た時は腹が限界まで減ってて気が付かなかったけど、店の前に立ち並んだ木には赤くて小さな実がどっさり生っていた。(ナミは気が付いてたらしい)

「食えんのかな?」
「解らないけど…多分無理じゃない?美味しかったらこんなに生るまで放っておかないもの」
「なんだ。美味くねーんなら興味ねーや!」
「まったく浪漫の無い奴め!綺麗なんだから良いじゃない!緑の葉っぱに赤い実、まるでクリスマスツリーみたいだわ♪」

そう言ってうっとりながめるナミの言う通り、緑と赤がくっきり浮立って見える木は、クリスマスツリーのイメージぴったりだった。
弱々しくなった日の光が、冬なのに緑色にしげった葉を透かして、石だたみに影を作ってる。
腕時計を確認したら、とうにチェックインの3時を過ぎていた。







…写真は話の中に出したチョコレートハウス前の「クリスマスの樹」。
正式名はクロガネモチだそうだけど、毎年クリスマスシーズンが来ると赤い実を付けるので、そう呼びたくなってしまう。


いや~~~…本編の展開が凄過ぎて気分が重いったら。(汗)
一方でくっだらねー話を考えたくて仕方なく。
なんかまだ信じられなくて泣けんです。
戦争編が終って色々はっきりしてから、涙が零れ落ちるかも…。
もう今迄のルフィじゃなくなるんだろうなぁと思うと切ない。
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君と一緒に(ルナミ編-その11-)

2009年12月28日 23時01分55秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】





「本当に居たんだって!」
「そんな事言われたって、私は見なかったもの!」

アトラクションが終った後、俺達は建物を出て、広場で休けいした。
広場の真ん中には、はだかの女達のちょーこくで飾った噴水が有って、その周りには休けいするのに良さげなパラソル付きのテーブルが、いくつか置いてあった。
テーブル席近くに、食い物飲物を売る店も出てる。
中でも興味を引かれたのは、バスのよーな電車のよーな形をした店(車?)だった。
売ってる食い物も、フライドポテトにホットドッグにクレープに、色々有ってうまそうだ。
ナミと俺はこの店で軽い食い物と飲物を買い、店前のテーブル席に持ち寄って、一休みする事にした。

食い終った俺は、さっきのアトラクション中に見た、「もう1人のナミ」について話した。
けれどナミは「見なかった」と言い張る、当然だ、ライトが点いて、俺が指を差した時には、消えて居なくなってたんだから。

映画館から出る前に、「もう1人のナミ」が座ってた席を調べてみたりもした。
ほら、幽霊が消えた跡はビッショリぬれてたって、よく聞くだろ?でもさわってみたら、別にぬれちゃいなかった。

「失礼ね!!じゃーあんたの見たそれは、私の生霊か何かだって言いたいわけ!?」

とたんにナミがフグみてーにほおをふくらまして怒鳴った。

「けど確かに見たんだぜェ?金髪をオールバックにした男と仲良くしゃべってやがってさ!」
「金髪でオールバックの男の幽霊なんて、私の知り合いには居りません!」

そう言うと心持ち不機嫌な顔でクレープをかじった。
ここらで話を引っこめた方が平和と知りつつも、納得のいかない俺は見たシーンを頭の中で何度も再生する。



エンディングが流れた所で左右のかべが上がり、3つに分かれたフロアが1つにつながってた事に気が付いた。
俺達が居た中央の1番後ろの席から見て、「もう1人のナミ」は右サイドの、通路をはさんだななめ前に、金髪オールバック男と並んで座ってた。
俺がナミの名前を叫んで立ち上がった事で、金髪オールバック男はこっちに気が付いたように思えた。
ナミが男に右肩をつつかれ、こっちを振り向こうとした次の瞬間ライトが点いて――まばたきしたら居なくなってた。



「月並みな答だけどさ、きっと暗くて見間違えたのよ」
「俺がナミの顔見間違えるか!!あれは確かにお前だった!!」
「そんな月並みに断定されてもねェ…じゃあ此処に居る私は偽者だとでも?」
「いや、どっちも本物にしか思えねーけど…ひょっとしたらドッペルゲンガーってヤツじゃね?」

話してる内に自信が無くなって来て口ごもる。
聞いてるナミもしまいには困ったような顔で笑い出した。

「…もしもドッペルゲンガーなら、遇わなくて良かったわ!自分自身と出くわしたら死ぬって言うし」
「えっ!?そうなのか!?何で!?」
「ドッペルゲンガーはその人の体から抜け出した魂で、本人の前に姿を現す事で死を知らせるって、昔から言い伝えられてるの!」
「って事は……ナミ!お前、もうすぐ死ぬのか!?」
「なに不吉な事言ってんのよ!!まだ花も恥らう年だってのに死んでたまるか!!」

広場中にナミのひときわかん高い声が響いた。
その声で、レンガにベタッとうずくまって日向ぼっこしてたハトの群れが、驚いていっせいに屋根の上へ飛んでく。
残ってたクレープを一口で食べ終えたナミは、包み紙をクシャクシャにつぶし、俺が出したゴミと一緒に、近くのゴミ箱へ捨てに行った。

「はー、美味しかったvクレープで600円も取るなんてボッタクリーなんて思ったけど、皮はモチモチ、甘いキャラメルソースに苦いエスプレッソコーヒーがアクセントを効かせてて、お値段納得の満足感だわv買って良かったーv」

戻って来たナミが、イスの上でうーんと伸びをしながら言う。
その顔はまるでキャットフードのCMに登場するネコそっくりだった。

「そんっなにうまいクレープだったのか?」
「うん!んまかったv」
「なら俺にも一口食わせてくれりゃー良かったのに!」

うらめしくつぶやいたら、すかさずナミにかみつかれた。

「あんたね、そーゆー事ヌカすなら、先ず自分から一口食べさせなさいよ!チョコフォンデュの時フルーツ2/3は奪っといて、今目の前でたこ焼にホットドッグにワッフルを食うわ食うわ…」
「あれ、ワッフルじゃなくて、モチで焼いた『モッフル』っつうらしいぞ」
「ああそっ!それで、その『モッフル』は美味しかったの?」
「うん!味はまんま焼モチだけど、うまかったぜv」
「あんたこそ偶には彼女に一口位分けてやるよな優しさ見せたらどぉなの!?今迄付き合って来た歴史の中で、私、あんたから食べ物貰った経験、1回も無いんだけど!」
「悪ィ悪ィ♪いつかまた今度な♪」

笑ってごまかす俺を許さず、ナミがつめ寄る。
厳しく刺さる視線を避けて顔を下に向けたその時、ナミの白いセーターの胸が目に入り思い出した。

「…そうだ、あのナミ、白いワンピース着てた…!」
「は???」

顔はそっくりそのままナミだったのに、少し違和感残った事が、ずっと気になってたんだ。

目の前のナミはオレンジ色の短いコートの下、白い毛のセーターに、赤と緑のチェックがらのミニスカートを着てる。

けど映画館で目撃したナミは、半そでの白いワンピースを着ていたように覚えてる。
それに髪をポニーテールにしてたような…。

「それこそ有得ない!あんたじゃあるまいし、冬に半袖着るほど私は変人じゃないわ!」
「でも確かに着てたんだ!」



隣の男の方はイスのかげにかくれて服までは判らなかった。
けどナミは俺のななめ前の位置に座ってて、通路をはさんでいたから、しょうがい物無く見れた。
暗くても白い服だったから、浮き上がって見えたんだ。

「もういいじゃない、居たら居たで!世界には自分のそっくりさんが3人は居るって言うしさ!そんな事より残らずアトラクションを制覇して、パスポート代分元取らなきゃ!」

立ち上がったナミに話を打ち切られ、俺はしゃくぜんとしないながらも、言う通りに次のアトラクションへ向った。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




次に体験したのは「グラン・オデッセイ」館の隣に建つ「フライト・オブ・ワンダー」だ。
ガイドに書いてあった紹介によると、「小さな魔女と一緒に空を飛び、北風の城に棲む悪い魔女を倒す」ってアトラクションらしかった。
ここのテーマパークで唯一のライドだって言うから、俺はてっきりジェットコースターみたく、ものすげースピードで飛ぶもんだと思いこんでた。
でなきゃホラーハウスみてーにおっかねーふんいきを体験するタイプかなって。
けどその期待は裏切られた。
はっきり言って女のガキ向け、メリーゴーラウンドが回る夢いっぱいの世界を、キラキラ光るライドに乗って旅するだけだ。
それでもナミはけっこー恐かったらしい。

「だってガタゴト揺れるし、何故か私達しか乗ってなかったし」
「それってこのアトラクションが古いのと、人気が無いのが理由じゃね?」
「パッと炎に包まれるシーンなんか、急直下するんじゃないかって、思わず身構えちゃった」
「落ちたら楽しかったろうになー」
「嫌よ!そんなスリル!」

とか言ってナミは大人気無く震えてたけど、俺の要望としては、もうちっとスピード感が欲しかった。



続いてその隣のポセイドン…じゃなくって、「ホライゾン・アドベンチャー・プラス」ってのを体験しようと思ったけど、これはナミに断固きょひされた。
「800tもの本物の水が客席を呑み込む」って売り文句を聞かされ、本気で顔色を失っちまった。
俺としてはアトラクションの中で最も楽しみにしてた物だったから、内心すっげ残念に感じた。
でもここに来たのはナミと一緒に楽しむ為だからな。
ナミが楽しめないなら行かなくていい、って言ったら、「ヨットもそんな風にあっさり諦めてくれれば良いのに」なんて、皮肉っぽく笑われた。



気を取り直して奥の離れた所に建ってたキラキラ?……え~と……「キララ」か!――そこへ向った。
サンタ帽かぶってとびらの前に立ってた女に聞いたら、「中へ案内するまで5分ほどお待ち下さい」と言われて少し待たされた。

ただ待ってるのも退くつだから、建物左横のスペースに在ったミニ遊園地で遊ぶかとナミを誘ったら、流石に小さい子向けで恥ずかしいと断られた。
でもガキが遊んでるの見てると、けっこー面白そうなんだけどな、ミニ機関車とかミニジェットとかミニ観覧車とか、童心に帰って遊ぶのも楽しいんじゃねーかって思うけど。

そんな事考えてる内にとびらが開いて中に案内され、俺達以外にも客が何人か集まって来た。
通された広間は暗くて、床とイスが透明だった。
ガラス製らしくツルツルすべる、俺とナミはおっかなびっくり、真ん中列中央のイスに座った。
正面にはでっかいスクリーン、ここで映画を見せるらしい。
開始時間が来た所でアニメが始まり、登場した博士とマスコットみてーな月が、月の誕生や地球におよぼす影きょーについて説明してくれた。
月のおかげで地球の文明が発展してく様子を早送りしたり、もしも月が無ければ世界はどうなるかを見せたり。
それによると月が無ければ地球はすごいスピードで回転し、怪獣が激突をくり返すスリルいっぱいの世界になるらしい。
それならそれで楽しそうだから別に良いかとつぶやいたら、隣のナミに「馬鹿ね!そんな世界だったらあんたは生れてないのよ!」としかられた。

途中でカーテンが開いて左右のかべもスクリーンになり、それがガラスの床に映って反射して、ますます迫力を感じられた。
津波に襲われるシーンでは、ナミの体がビクンて震えるのが解ったから、俺は少しでも安心するように肩を抱いてやった。



波に呑まれたのは俺もだけど、そのせいで母ちゃんを失くしたナミは、よけいに傷が深いんだ。
解ってて連れて来て、ヨットに乗せようとするのは、自分でも残こくだと思う。
思ってもナミに海を嫌って欲しくない、いやナミが海を嫌うはず無いんだ。
だってナミの名前は、あの海が好きだった母ちゃんが、「運命の波に負けるな」って意味で付けたものだから。



クライマックスは天井までオープンして、客席は海に包まれた。
イルカやクジラが泳ぐ宇宙の向うに、月と地球が浮んだ所で映画は終った。







…これで今年の連載分は最後だと思う…いや正月中に後1話位書きたいけど。(どうかな~)(汗)

「フライト・オブ・ワンダー」、プロデュースした人の思惑を外れて、ホラーな楽しみ方が出来るような。
独りで乗ると、あれ、マジで恐いですぜ。(笑)

ルフィの言う電車のよーなバスのよーな店はナッシュマルクト、詳しくはまったりさんの記事で。

そして写真は巨大万華鏡的アミューズメント、kirara館で御座います。
アミューズメント施設の中では個人的に1番気に入っている。
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君と一緒に(ルナミ編-その10-)

2009年12月16日 23時20分19秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】




チョコレートの滝をはさんで左側は売り場、右側はレストランだった。
そこで俺達は窓際のテーブル席に向い合って座り、ようやく昼飯を食う事が出来た。
俺は帆船模型の飾ってあるカウンター席が良いって言ったんだけど、ナミがだんことして嫌がったんだからしょうがねェ。

チョコレート専門の店は、レストランのメニューもチョコレートばっかだ。
何を食べるか真剣に悩んだすえ、俺はビーフカレーとアイスチョコレートのセット、ナミはウーロン茶、そして2人でチョコレートフォンデュを注文する事にした。

「チョコフォンデュにチョコドリンクって甘過ぎない?」
「そー思ったからカレー頼んだんじゃねェか。ナミこそチョコレートフォンデュだけじゃ腹減るだろ?」
「そうかしら?どうせ道歩きながら何か食べる積りだし、充分な気がするのよね」
「俺はここで食べて、歩きながら食うつもりでもいるけど」
「あんたのお腹がブラックホールなのは承知してるけど、財布は違うんだから、自重しなさいよ」
「金足りなくなったら貸してくれよ♪」
「嫌!絶対貸さない!」

ナミはやっぱりケチだと思う。


それからもカレーをほおばりつつしゃべってて、食い終わったところへチョコレートフォンデュが運ばれて来た。
基本この店はカウンター受け取りらしいんだけど、フォンデュは準備に少し時間がかかるらしく、出来たら運んでもらえるよう約束してたんだ。

チョコレートフォンデュは俺、初めて食べるけど、2人分のわりには正直少ねーなと感じた。
固形燃料で温めてるつぼの中には、トロットロのチョコレートがたっぷり。
それは良い、けどつける用に、下の皿に円状に並んだフルーツ・パン・マシュマロは4つずつ、1人分としても足りねーだろ。
まーでも腹減ってたから文句は言わずに、ナミが教えてくれた通り、串にパインを刺し、液体チョコにつけて食ってみる。

「うまい!!」
「んまいv」

ミカンをチョコにつけてほおばったナミも同時に叫んだ。
フルーツとチョコって合うんだなー。
帰ったらフルーツ缶とチョコ買って来て、やり方おんなじに食ってみようか。

「売ってる板チョコを溶かして浸けたんじゃ、こんなに美味しくならないんじゃないかな?そもそもチョコは溶けたら油が分離して不味くなるのよ」
「じゃーこれはどーして溶かしてもうまいんだー?」
「生クリームが入ってるんじゃない?だから甘さ控え目でマイルドなのよ」
「ふーん。って事は家でこの味は食べられないわけかー」
「あ、でもそういえば此処の売り場でチョコフォンデュ売ってた!それ買ってけば家でも出来るわよ」
「そうか!よし買う!絶対買おう!」
「買うのは良いけど今は止めときなさい。荷物になるもの。ホテルにチェックインしてからね」
「解った…なーナミ、マシュマロもらって良いかー?」
「いいわよ。甘いから、私それ要らない」
「フランスパンももらって良いかー?」
「まァ…いいけど…」
「それからパインにキウイにバナナにモモにミカン――」
「全部食おうとすな!!2人分だって事解ってんの!?」

つける物を全部食べ終わっても、チョコはたっぷり残った。
もったいないから飲もうとしたら、ナミに「意地汚い真似しないで!」と止められた。
けど食い物を残すなんてバチ当たり、俺には許せねェ。
ギャーギャーもめてたら、店員がフランスパンのおかわりを持って来てくれた。
なんて親切な店だろう。
感謝して再びつけて食った、それでもまだ余る。
3回目のおかわりを頼もうとしたら、「いいかげんにしなさい!」とナミにはたかれた。

腹八分目って感じだけど、とりあえず落ち着いた。
片付いたテーブルの上で、ナミが場内の地図を広げる。

「今居るエリアは『ニュースタッド』って言って、アミューズメント館が集合してるんだって。テーマパークに来といて何も遊ばないんじゃそれこそ勿体無い。腹ごなしに次はアトラクション巡りしよ!」

ナミのこの言葉で、俺達の次の目的が決まった。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




席を立った俺達はチョコレートの滝の前で記念写真をとった後、店を出て近くのアトラクションに向った。
ところが途中でナミが「サンタハウス」に引っかかっちまった。
そこはサンタの家をイメージした場所らしく、時々サンタが来て一緒に記念写真をとれるらしい。
中にはお菓子やオモチャやぬいぐるみやプレゼントの箱がいっぱい飾られてて、ナミいわく「可愛くて乙女心がくすぐられちゃう」らしかった。
女って何でカワイイ物にこんな弱いんだ?
飾られてるお菓子が全部本物だったら、俺も心がくすぐられたかもしれない。
けどにせ物で、今はサンタも来ちゃ居ない、そんな場所に用は無ェ。
「まだ居たい」とだだをこねるナミを無理矢理引きずり、目の前でちょうど呼びこみしてた館の中に入ってった。

「ここって何するトコだ?」
「連れて来た人間が訊かないでよ!!」

薄暗いフロアではビデオ上映をやっていて、SF映画みたいなのを流してた。
まだブータレてるも、ナミが地図を広げて調べてくれる。

「『グランオデッセイ』だって。フューチャーキャストシステムで貴方も映画の登場人物になって活躍…」
「言ってる事全然解んねーよ!」
「つまり3Dスキャナで撮影した顔を映像の中にはめ込む事によって、映画の中で活躍してるように思わせるの――解る?」
「やっぱ解んねェ」
「仕組みは兎も角、私達が映画に登場するのよ!」
「えええ!?俺達がかァ~!?」

館内には俺達以外に30人位居て、A・B・C3つの組に分けられた。
俺とナミは真ん中のB組。
そうしてメインショーが始まるまでの間、館内での注意を見せられた。
声が小さくて聞えなかったけど、飲み食いするなとかカメラでとるなとか、けーたいは切っておけとか、そんな事を言ってたんだと思う。
時間が来たところで次のフロアに通され、証明写真をとるみたく顔のスキャンをされた。
入口で渡されたボーディングパスってのを機械に通し、数人でいっせいに鏡のボックスに顔をつっこむんだ。
この時面白い顔をするなって注意されて…言われるとかえってやりたくなるじゃねェか?
やりそうになったけど、ナミの圧力を背中に感じた俺は、けんめーにもたえた。
とり終ったら集合させられ、今度はプロローグ映像を見せられた。
時間が無いから、てっとり早くあらすじを理解させて、映画はクライマックスシーンだけ流すらしい。


『遥か未来、人類は地球環境を完璧に管理するシステムを作り上げた。
 しかしそれが原因で地球は人の住めない星に変り、やがて人類は生れ故郷を離れ、広大な宇宙へと散らばって行った。
 長い航海の末、人類は地球から遠く離れた惑星フロンティアに新たな文明を築く。

 そして長い時が過ぎ、地球が伝説の存在になった頃、彼らは謎の信号をキャッチした。
 信号は彼らが耳にした事の無い、地球からの音。
 祖先が乗っていた宇宙船ニモニック号を蘇らせ、故郷の地球を探す壮大な冒険が始まった。』


これは後でサイトで読んだあらすじだ。
プロローグが終わり、3組に分かれて入った映画館では、俺もナミも自分がどこにどんな役で登場してるか追っかけるのに夢中で、細かい話はさっぱり耳に入らなかった。
2人とも派手に戦闘する役についてたおかげで、意外と簡単に見つける事が出来た。
特に俺はいちいちアップになって目立つもんだから、顔が出る度にナミに爆笑された。

「性格までスキャンするなんて、優秀なコンピューターね!」
「…どうせなら船長役にしてくれりゃーいいんだ」
「充分主役級に目立ってるじゃない!観客のクセして欲掻いちゃ駄目よ!」

ふてくされた俺を楽しげに見ながらナミが笑う。
機嫌がすっかり良くなった事はうれしく、入って良かったなと感じた。


ネタバレになるけど地球からの謎のメッセージは「海の波の音」だった。
未来、地球から離れた人間達は、海を知らずに育ったって設定になっていたんだ。
ありきたりな話だけど、皆一緒に地球へ帰るラストは、ハッピーで良かったと思う。

エンディングが流れるシーンで、ニモニック号と同じ様に、他の星から旅立った元地球人達と出会った。
集合した宇宙船が1つに合体する、そこでフロアをしきるかべがスーッと上がり、映画館まで合体したのにはビックリした。
けどもっとビックリしたのは――

「ナミ…!!?」

――かべの向うの映画館に、もう1人ナミが居た事だ。


暗い映画館の中、俺達と同じ後ろの列に、もう1人のナミは座ってた。
隣で金髪のオールバック男が、驚いて立ち上がった俺を見て、もう1人のナミに話しかける。

「何、ルフィ?…どうしたの?」

もう1度名前を呼ぼうとした瞬間ライトがパッと点き、まばたきして見直した後には、ナミも隣の金髪男も消えて居なくなってた。





…ラブコメと見せかけSF、いやきっちりラブコメだけど。(汗)
パラレルワールドという訳で、ゾロもサンジも登場するんですよ。
毎度ワンパターンで済みません。(汗)
で、次回から漸く後半です。(汗)

写真はグランオデッセイ館、顔の濃い人と遊びに行くと楽しめるでしょう。
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君と一緒に(ルナミ編-その9-)

2009年12月16日 23時18分47秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】





泣いてるナミの頭にパラパラと降る枯れ葉が雪に見えた。
そっか、今は冬だったっけなと思い出したとたん、耳に聞えてたミンミン言うセミの声と、チリリンって鳴る風鈴の音が止み、代わりにドォンドォンって岸にぶち当たる波の音と、風でキンコン鳴るヨットの音がよみがえった。
高校1年の夏休みから、ナミと居る今へタイムスリップした気分だ。

「ヨットに乗りたいなら自分1人で乗ればいいじゃない!!どうして私まで巻き込もうとするの!?」

周りの音と一緒にナミの声も耳に戻る。
泣きながら怒るナミは、ほおが真っ赤で口から白い息をいっぱい吐き出してて、田舎の灯油ストーブを連想してしまう。
そんな顔ずっと見てたくねー俺は、ナミのほおを両手でつかんで、むにっと横に引っぱった。
白い歯がむき出して、泣き顔がオタフク顔に変わる、と思ったら左から勢い付けて飛んで来た張り手にふっ飛ばされ、俺まで目から火花と一緒に涙が出た。

「何するかっ!!!」

灯油ストーブどころか石炭ストーブにモデルチェンジしたナミが怒鳴る。
怒りがマックス超えて涙は引っこんだらしい、その点では結果オーライ、ホッとして向き直った。

「俺独りで乗ったって意味無ェんだ…」

これ以上刺激しないよう、なるべく冷静に説得を試みる。

「…ナミも一緒に乗ってヨットの事知ってくんねェと困るんだよ。だって俺、卒業してヨットマンになったとしても、ナミが居なくちゃ世界1周出来る自信無ェし」
「1人で出来る自信が無いなら最初から目指すな!!」

ナミの指摘はなるほどもっともだと感心した。
けどあきらめる気はもーとー無い。

「俺はどーしてもシャンクスみてーに、ヨットで世界1周がしてェんだ!!
 その為にはナミの力が要るんだよ!!」

こぶし握って叫んだ俺の主張を、ナミは心からあきれた目で聞いている。
やれやれと言いたげに頭を振り、ため息吐いて、聞き終ったナミは、母ちゃんが子供に説教するようなせりふを口にした。

「ヨットヨットって高1の夏を過ぎて以来急に言い出して…その割にあんたヨット教室に通おうともせず、本を読んだりしてるばっかじゃない。そもそもヨットマンになるには先ずヨットを買わなくちゃ。そしてヨットを繋ぐ為の港を探して契約しなくちゃ…あんた、それだけで年間幾らかかるか知ってる?300万以上よ!そんな大金払い続けていけるの!?」
「家の庭につないどくのはダメか?」
「駄目に決まってるでしょーが!!犬猫とは違うって、常識的に考えなさいよ馬鹿者ォー!!」
「それでも俺は絶対ヨットマンになってやる!!!」

目の前のナミがガクンと頭をたれた。
今までで1番長く重いため息を吐く。

「……まったく…取り付く島も無いわね…」

この言葉はひょっとしたらヨットで世界1周にかけたシャレだったのかもしんねーけど、俺には意味がよく解らず、悩んでる内にゆっくり頭を起したナミは、意外にも晴れやかな笑顔を浮かべていた。

「いーわよ、勝手になさい。ヨットマンだろうがスーパーマンだろうが目指せば?但し私は付き合わない!」
「ダメだ!!お前も一緒に俺のヨットチームに入って、俺が世界1周出来るよう助けろ!!」
「何で私があんたの夢をサポートしなくちゃいけないのよ!?」
「だから言ったじゃねーか!!ナミが居なくちゃ俺の夢は叶えられねェんだって!!!」

そこまで叫んだところでナミは急にだまり、顔を赤くした。
やっと解ってくれたんだろうか?肩を抱いて下からそおっと目をのぞきこむ。
目が合ったとたん、ナミの顔からスッと赤味が消えて、くちびるが意地悪くゆがんだ。
解ってない、ナミはまだ解ってない。

「…そんなに自分の夢が大事なんだ…その為には私をとことん使おうって腹なんだ?」

クスクス笑いと一緒にもれた白い息が俺の顔にかかる、つかまれてる肩に指が食いこむ。

「方向オンチだもんねェ、あんた。私が居なくちゃ遭難するのは目に見えて明らかだわ…けど私の意志も夢も無視して、己の夢を果たすのに利用しようなんて、随分酷だと思わない?」

違う、そんな事考えてねェ!
俺はナミが好きなんだ!
だからナミと一緒にどこまでも行きたいんだ!
違う夢を持ってても、そばに居て欲しいんだ!
元々はお前だって同じ方角を目指してたじゃないか!
俺の進む航路を地図に書いて、示してくれたじゃないか!
母ちゃんと同じで海が大好きだって、俺知ってるのに!
どうすれば解ってもらえる!?何て言えば良い!?
抱きしめてキスしてSEXでもすれば、俺がお前を好きな気持ちを理解して、ついて来てくれるのか!?

「カナヅチのくせに…!あんたがヨットマンになって、世界1周出来る訳――

                                     ――ゴメン、出来るわ…あんたなら……」


『出来るわけが無い』、という言葉を、ナミは呑みこんだ。
代わりに『出来る』とつぎ、おだやかな顔に変る。
嵐を過ぎた海みたく、怒りの波が急激に静まった。
うるんだ真ん丸い目で、俺の目をじっと見つめる。

「…ゴメン…最低な事言おうとした…ゴメン…」
「……ナミ、俺、お前を利用しようなんて思ってねェ…」
「うん、解ってる…あんたがそんな奴じゃないって知ってるのに…どうかしてるんだ、私…」

ヨットがキンコンって、木琴に似た音を響かせる。
海を走る乗り物なのに、つながれたヨットは、さびしくて歌うのかもしれねェ。

それからしばらく2人してだまったまま抱き合ってた。
パラパラパラパラ枯れ葉の雪がかかる、波しぶきもかかってぬれる。
服も髪も体も、いいかげんしょっぱくなってるだろう。
ぬれた首筋から甘いオレンジの匂いがして、胸がドキドキ騒いだ。
何度も抱きしめて知ってるけど、ナミの体は驚くほど柔らけェ。
予定してたのとは違うけど、ここでプロポーズしちまおうか?

考えてたそこへ、係りのおっさんらしき奴が近付いて来て、困った顔で「済みませんが、そこは一般客立ち入り禁止区域なので、直ぐに移動して下さい」と言って来た。
怒られたんじゃしょうがない、ナミと2人慌ててさん橋を走り、おっさんが案内する通りに門をくぐって、一般客用の通行路に出た。
俺達が道に出たのを確認した後、おっさんは門を閉めて、さん橋入口側に建ってる見張り小屋(?)に引っこんだ。

残された俺達は、お互い気まずい顔して見つめ合った。
ナミが笑う、俺も照れ笑う。
と、突然俺の腕を持ったナミが、近くのバス停に引きずってった。
ちょうどそこへ幼稚園のバスみてーな、パステルグリーン色したバスが停まったんで、2人してパスポートを見せて乗りこむ。
1番前の2人席に並んで座ったところで、ナミが宣言するように言った。

「お腹がペコペコです!」
「俺もメチャクチャ腹へったァ!」

右に同じとばかりに、俺の腹の中に居る虫が、グゥ~!って鳴る。(あれ?右じゃねーか)

「当然よ!もう直正午になるもん!」

さっきの泣きべそがウソみたく、ナミはほがらかに笑った。

「折角の初めての旅行なんだし、喧嘩するのは止めよv」

けれど俺の耳には、その言葉にかくれた裏の声が、はっきり聞えてた。

石だたみをガタガタ進むバスの後ろで鐘の音色が響く。
音楽は、さっきバスの中でナミが見とれていた、教会の方から聞えた。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




バスから降りたナミはわき目もふらず、直ぐ横の建物の中へ入ってった。
牛乳びんを3本並べたような、茶色いレンガかべの建物だ。
何となくコーヒー牛乳が飲みたくなった。

ナミを追いかけてとびらを開ける、するとあったけー空気に乗って、チョコレートの甘~いにおいが漂って来た。
たちまち腹の虫がオーケストラ演奏を始める。
胃が空っぽになったのを感じて、俺は動くのも苦しくなった。

「ナミィ、俺もうダメだァ。腹減り過ぎて死ぬゥ~。何でもいいから食わせろォ~」
「私だってお腹減ってるのは同じよ!だから此処に連れて来たんじゃない!しっかり目を開けて見たら?店中あんたの好きな物だらけよ!」

ヨロヨロと肩にもたれかけた顔をペシリとはたかれる。
言われて、顔に貼りついた手の指のすき間から、じーっと奥までながめた。

…においからしてチョコ…チョコが有るよな…?チョコ売ってんのか!?

たまんなくなってナミの手を握ったまま売り場に駆けよる。
チョコだチョコだ、店中いっぱいチョコだらけ。
チョコアイスにチョコクッキーにチョコケーキ、チョコドリンクなんてのまで有る!
どこのコーナーにもチョコが山積み、目移りした。

「うまほー!!食いてェ~~!!」
「言っておくけど駄目よ!此処に並んでるのは皆商品なんだから!買わない内に取って食べたら怒られちゃう!」

クッキーが並ぶショーケースに貼りついた俺の後ろから、ナミが苦笑いして念押しする。
そんな事、子供じゃねーんだから、言われなくたってしょーちしてるさ。
けど焼き立てクッキーのにおいが俺を誘惑する…あ~、クッキーってどうしてこんなに甘くて香ばしいにおいがするんだろォ~。
だんちょーの思いで誘惑を振り切り、立ち上がったら店員のおばさんと目が合った。
サンタ帽をかぶったおばさんは、なぜかおびえてるみてーに、引きつった笑いを浮かべてた。

「涎、いっぱい出てる!拭けば?」

すかさずスッと横から渡されたティッシュで、慌てて口をふく。
照れ笑いで「サンキュー」と返したら、「一緒に居て恥ずかしくなる真似しないで」と文句を言われた。

「『チョコレートハウス』って言う、チョコレート専門店なんだって。あんたが絶対気に入ると思って、連れて来てあげたの」

さすがナミだ、俺の事良く解ってる。
感心する俺の横で、ナミも目をキラキラさせて、クリスマスラッピングしてあるチョコを手に取った。
雪だるまの袋入りやら紅白ブーツ入りやら、クリスマス用の菓子って不思議とワクワクする。
中身は同じでも、紅白ブーツに入った菓子は数倍おいしく感じられるんだよな。
子供の頃を思い出してたら、一段と甘い良いにおいに鼻をくすぐられた。

引き寄せられるように側へ行って驚いた――ドロドロに溶けたチョコレートが、3段の滝になって流れてる。
売り場右のスペースに、とびらと向かい合って、ドーンとでっかくだ。

「すっげー、本物かァ!?」
「うん、本物みたいよ。横にそう説明書きが立ててあるし」


『高さ4.2mから流れ落ちるチョコレートは本物のチョコレートです。
 遠く熱帯の地にて収穫されたカカオ豆は幾多の行程を経てチョコレートハウスにやってきました。』


「私達の入って来た所って裏口だったみたいね。表口から入った客は、このチョコレートの滝に出迎えられビックリすると。思い切った演出だわー」

ドロドロのチョコだまりに指を近付ける。
すくってなめようとしたすんでに、ナミが肩にかけてるオレンジ色のエコバッグ(折りたたみ傘入り)が、俺の後ろ頭を襲った。

――ズパァーーン!!!!

「『お手を触れないでください』とも書いてあるでしょーが馬鹿者ォー!!!」
「痛ェェ!!!マジでバカになったら困るから止めろって!!!…触れて欲しくなきゃ、触れられないトコに飾ればいいじゃねーか!」
「だからこれは観るだけのディスプレィ!食べ物じゃないの!」
「チョコ食べなくてどーすんだよ!?はっきり言って俺腹減って限界なんだぞ!!早く何か食わせろ!!でねーと店中のチョコかたっぱしから食ってくかんなー!!」

なんかもう目が回って、うがーって暴れたい気分だ。
数分だってがまん出来ねェ、本気で手当たりしだいにむさぼり食っちまおうかと考えてた前で、ナミはニッコリ笑うとガイドみてーなしぐさで右手を案内した。

「空腹を待てないお客様にはこちら、飲食スペースが御座います♪」






…今、場内バスはニュースタッドに停まらないんだけど、話の都合上そういう設定にさせて下さい。(汗)

上の写真はチョコレートハウスのシンボル、チョコレートの滝。
チョコレートハウスについては、まったりさんのブログを御覧下さい。
チョコフォンデュ美味いよv
予約制だけど、数に余りが有れば、予約無しでも食べられるでしょう。

で、今夜はもう1話更新致します。(汗)
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君と一緒に(ルナミ編-その8-)

2009年11月20日 22時36分55秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】




ウソだ、やっぱり諦められなかった。

ナミが「海賊」を止めても、俺はちょくちょく海へ出かけた。
けど独りじゃ海へは出られない、ナミが居なくちゃボートもこげない俺は、海岸にしゃがみごんで海をボーっと眺めるしかなかった。

高校1年の夏休みに来た時も、やっぱりそんな風に海を前にしながら、夕陽が沈むまでたそがれてた。
したら砂に打ち寄せる波ん中に、ペットボトルがプカプカ浮いてるのを見つけたんだ。

本当の事を言えば、来た時からそこに在るのを知ってた。
でもそんな光景珍しくもないし、海を汚すなんて悪い奴が居るなーって、ちょっとムカついたりしたけど、昼間は特に関心持たずに放っておいたんだ。
それが日が落ちて、空が暗~くなって来ると、やけに気になりだした。
海に出てもすぐに波に押し返されて、砂の上をゴロゴロ転がってるペットボトルが、他人(人じゃねーけど)じゃなく思えて来たっつか。
よーするに同情しちまったんだと思う。
海に向って投げてやるつもりで拾い上げたら、中に紙が入ってるのに気が付いた。
ふた取って出してみたら、それは茶色く日に焼けてて、広げてみたら字が書いてあった。


『初めまして!
 俺の名前はシャンクス、今ヨットで世界一周の航海に挑戦しています。
 この手紙を拾って読んだ人は返事を下さい。』


これがシャンクスと出会うきっかけになった。

日本語と英語で書かれた手紙には、ボトルを流した日付と場所、それにシャンクスの家の住所と電話番号も書いてあった。
「ヨットでの世界一周」、その言葉に俺は聞き覚えが有る。
まだ海賊を夢見ていた8年前、ニュースで「ヨットに乗って世界一周に挑戦する男」が居る事を知った。
そいつは10年前にヨットで太平洋横断に成功したって聞き、俺はがぜん注目するようになった。
ところが期待を裏切り、そいつの冒険の旅はたった数日で失敗に終わっちまった。
マストが折れて引き返したと聞かされ、俺は心底ガッカリしたんだ。
次の年もそいつは世界一周に挑戦したけど、またもや数日でヨットが故障して失敗。
ちょうどナミの母ちゃんが死んじまった件も有って、俺はそいつの冒険に期待するのを止めちまった。

けど諦めてなかったんだ。
何度失敗しても挑戦し続けてる事を知った俺は、そのシャンクスって男に会いたくなった。
日付を確認したら約2年前…今度こそ世界一周は成功したんだろうか?
高校生になってバイトを始めてからは、TVや新聞を全然チェックしてなくて、情報にはうとくなっていた。
まーバイトを始める前から新聞はほとんど読まず、TVはもっぱらゲームに使用してたけど。

ともかく考えてたってらちがあかないんで、手紙に書いてあった番号に電話して、本人から直接話を聞く事にしたんだ。
何べんかかけてようやくつながった電話で、ペットボトル入りの手紙を拾ったと伝えたら、すっげー喜ばれて「家に遊びに来い」って誘われた。

意外にもヨットマンのシャンクスの家は、俺と同じ東京の海無し地区に在って、幸い電車1本で行く事が出来た。
けれどどーゆーわけかたどりつけなくて、けーたいで道順を聞きながら行ったのを覚えてる。
約束した時間を5時間過ぎて、目指すアパートの側まで来たら、赤毛で左目ん所に3本傷の有る男が、門によりかかってこっちを見てるのに気付いた。
「あ、こいつだな!」って、向うもすぐに判ったらしい。

「よく来たなー、方向オンチ!」

いきなり無礼なあいさつぶつけられたけど、シャンクスは笑顔で俺とあく手し、家ん中に招待してくれた。
麦茶を出してもらい、4じょう半の居間で向き合った俺は、早速「今度こそ世界一周は成功したのか」聞いた。
そしたらシャンクスは思わせぶりに、うつむいて「ハァ~~~…」と重いため息吐いてから――いきなりガバーッて抱き付いて、耳元で「成功したぞォ~~~~!!!」って叫んだもんで、こまくがジンジンおかしくなった。
そっからはもう機関銃みたくしゃべるのが止らない、俺はただ圧とうされてるだけだった。


二度も失敗してるからな、言葉通り三度目の正直で、これで失敗したら帰る港は無ェと、決死の覚悟で旅立ったもんよ。
三度世界一周に挑んでヨットハーバーを出航した時の見送りは、太平洋横断成功後に挑んだ時の約1/20…失った期待をまざまざ見せ付けられ、寂しく悔しく情けなく感じたさ。
それが成功して帰って来てみれば、出迎えは400倍に膨れ上がってるじゃねェか!
すっかり英雄扱いで、俺ァ魂消たぜ!
レースの賞金は手に入ったし、講演の依頼も来るようになって、やっと借金を返す目処が付いた。
遅かりながら人生のスタートラインに着けた気がするよ!


ひとしきり満足するまでしゃべりたおしたシャンクスは、俺の持って来た手紙入りペットボトルに気が付くと、手に取ってうれしそうに眺めた。

「燃えないゴミはマナーとして持ち帰るんだが…空になった飲料水のペットボトルが増えてく内、ふと思い付いてなァ。
 百数十個位流して、今迄12通返事を貰ったぜ。
 全てオーストラリアからで、日本からはお前1人だけ、それも約2年の時を越えて手に渡るたァ――ルフィ、お前とは運命の糸で結ばれてんのかもな」

ふたを取って手紙を抜く。
広げた手紙の文字を、なつかしそうに読んだ。

初めて会った俺に対し、シャンクスは遠りょ無く、航海の思い出を語った。

ビルかと思うほどでっかい波に襲われて、ヨットが引っくり返った事とか。
そうかと思うと風が吹かない日が続いて、海の真ん中で立ちおうじょうした事とか。
魚を釣ろうとしたけどあんまり獲れず、缶詰ばっか食べてた事とか。
でもクリスマスには、ちゃんとクリスマスケーキを作って食べた事とか。

30過ぎの大人なのに、シャンクスは子供っぽかった。
けどつらい体験を陽気にしゃべるシャンクスを、おれはとても好きになった。
聞き上手でもあったから、俺は自分が子供の頃「海賊」に憧れてたけれど、諦めるしかなかった事情まで、くわしく話してた。

「俺も昔海賊に憧れてたぜ。けど今の世の中には合わないからなァ」
「200カイリのかべを越えたら核ミサイル落とされるって聞いたけど、ヨットはねらわれなかったのか?」
「いきなり民間人にそんな物騒な物落す国は無ェよ。したら国際問題になっちまう。ま、確かに200海里の壁は有るが、基本海は地球人全ての宝だからな。他国の船でも航行の安全は守るように決められてんだ」
「じゃあ核ミサイルで撃たれるってのはウソなのか!?」
「いや、まあ、危ねェ国も中には有るけどな…そういう国には近付かないに越した事は無い。しかし『ミサイルに撃たれる』ってのは、多分無鉄砲なお前が海に飛び出そうとするのをセーブする目的で言ったんじゃねェの?」
「大人ってウソ吐きだー!!でもミサイルで撃たれねーんなら、安心して海賊になれるわけだ!」
「馬ァ鹿、止めとけ!四六時中衛星カメラが見張ってる今じゃ、海賊稼業は続かねェよ!自由に海を渡るならヨットマンになるのが1番!」

それを聞いて、俺の頭の中に道がひらけた。

俺の夢は自由に海を渡って世界中を冒険する事。

海賊として叶えられないなら、ヨットマンになればいい。

俺は座布団の上に正座し、たたみにおでこぶつけて、シャンクスに弟子にしてくれるよう頼んだ。
一瞬目を丸くした後、シャンクスは「だっはっはっはっ…!!」と、ごーかいに笑って言った。

「カナヅチのクセしてヨットマンになる気か!?」
「うるせー!海に落ちなきゃいいだけだ!」
「ほお、1度も落水せずに航海してみせると…」
「ああ!その上お前の記録より早く世界一周してみせる!」
「俺を越えるってのか?大きく出やがって…けど気に入った!弟子にしてやるよ!
 但し最低条件として、高校卒業してからだ!」

明日にでも押しかけて住みこもうと考えてたのを見透かされたらしい。
俺はぐうの音も出なくなって、その場にかたまっちまった。
そんな俺に向い、シャンクスはまるで父親みてェな事を話して聞かせた。

「お前がヨット乗りになりたいなら、集団生活を体験して人との絆を作れ。
 絆を作っとけば、海へ出ても独り切りで居なくて済む。
 航海は独りじゃ絶対に出来ない事なんだ」

4じょう半の居間には物がほとんど無かった。
置いてあったのはTVとせん風機とこたつと座布団、それに――
クーラーも無くてカーテンも無かったから、西日が射しこんでメチャクチャ暑かった。
首が風を求めてせん風機と一緒に動いてた位だ。

話し終えたシャンクスが、立ち上がって窓の横の柱に引っかかってた物を取りに行った。
手に持っていたのは古びた麦わら帽子。
それを俺の頭にポンとかぶせた。

「俺が初めて太平洋横断した時に被ってた物だ。
 貸しといてやるから、必ず返しに来い。
 待ってるからな!」



今年の10月、シャンクスは前回とは逆の、東回り単独無寄航世界一周に挑戦するため、5度目の航海に出た。
7年前と8年前の失敗のリベンジだ。
昨日電話をかけたら、南米大陸南端のホーン岬を無事通過したと聞かされた。






…どんな世界でもルフィはルフィ、きっと冒険してるだろうと思う。
次回はちゃんとハウステンボス戻るんで御安心を。(汗)
写真は普段観光丸の繋留されてるデ・ラウター桟橋と大村湾です。
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君と一緒に(ルナミ編-その7-)

2009年11月18日 21時56分23秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】




「『12/1~2月末日まで全便運休!但しクリスマス期間、および大晦日~正月期間は除く』、だって!…丁度ドックに入る時期に当たっちゃうなんて、ついてないわねェ~!」

ガランと空いたさん橋の入口に案内板を見付けたナミが、近寄ってそこに書いてある内容を読上げる。
「ついてない」と言いながら、耳に届く声は明るい。
そのせいで俺の気分はますます落ちこんだ。

「そうガッカリしないで…たとえドックに入れられてなくたって、こんだけ波が荒くちゃ出せやしないでしょ!完全に縁が無かったと思って、すっぱり諦めなさい!」

なぐさめてんだかダメ押ししてんだか判らない言葉が、ベンチでうずくまる俺の方へ近付いて来る。
すぐ側で聞えた所で頭を上げたら、右隣に座ったナミと目が合った。
続いてその茶色い目が、正面に広がる海の方を向く。
つられて俺も視線をそっちへ向けた。

ナミが言う通り、海はひどい荒れ模様だった。
海原が海坊主みたく盛上っては、雪崩みてーに崩れて白い泡に変わる。
港には大小のクルーザーがいくつもつながれてたけど、どれも振り子みたく揺れてて、流されやしねーかとヒヤヒヤした。

空は晴れてても、まるで台風だ。
雲が海から山の方へ次々飛ばされてく。
岸に並んだ旗がしめった風にあおられバタバタ鳴る音と、ザッパンザッパン港に打ち付ける波の音が、ケンカでもしてるみてーにうるさく響いた。

「ねー!何時までも此処に座り込んでたら体が塩漬けされちゃう!そろそろ正午だし、お昼食べに行こーよ!あんたもお腹空いたでしょ?――ほら!丁度後ろの建物、ホテルみたいよ!景気付けにあそこで豪華なランチにでもしよっか!?」

ボーっと海を見つめてる俺の肩を揺さぶりながら、ナミが後ろを指差す。
振り返ったそこには城みたく堂々とした赤レンガの建物が建っていた。
いつもの俺だったらナミから言われる前にオジャマしてっだろうけど、ぶっちゃけ今はどーでもいい。

肩を揺さぶるナミの手を、両手でギュッと握りしめる。

「ナミ…!」
「な――何よ!?…そんな…いきなりマジ顔して……」

面と向き合い見つめたナミの顔が、なぜか赤く変ってく。
不思議に思いつつも、俺は顔の間の距離をつめ、一大決心を伝えるよう、ゆっくり口を開いた。


「もう………帰ろうぜェーー…」


とたんに直前までうるんでたナミの目が点に変る。
目の前の体がビシッと音を立てて凍った気がした。
と思ったら、握った手がブルブル震え出した。
さすがに病気にでもかかったんじゃねーかって心配になる。
おでこに手を当てて熱を見るよりも早く、握ってなかった方のナミの手が、俺のほほ目がけてパンチを繰り出した。


――バキッッ!!!!


「来たばっかりで何ヌカシてんのよあんたはっっ!!!!」
「……だってヨットに乗れねェ帆船にも乗れねェここに用は無ェし…」
「とことん勝手で失礼な奴ねェ!!!船に乗れなくったって楽しめる事有るわよ、きっと!!――さ、行くわよ!!」

ナミはそう怒鳴ると、殴られたほほをさすってる俺の手を乱暴に引っ張って、元来た道を歩いてった。
風にも背中を押され、しぶしぶ引きずられてくも、鉄ゲタはいてるみてーに足が重い。

計画ではヨットに乗ってプロポーズするつもりだったんだ…。
なのにそれがパーになって、一体俺はどこで告白すりゃあいいんだ?

くのーしながら歩いてる内に、さっきバスの運転手のおっさんが紹介してくれたオモチャの帆船が飾ってある広場を、いつのまにか通り過ぎていた。
橋の上まで来た所で、ナミが足を止める。
振り返って真ん中辺りをマジマジ見てるんで、何か落としたのかと思い下を向く。
したら横にまっすぐみぞが走ってた、まるで真っ二つに切れてるみてェに――

「これって跳ね橋だわ…」
「跳ね橋??ひょっとしてバネじかけになってて、人が渡るとビヨンって跳ねるのか?」
「それじゃおっかなくて渡れないわ!…いい?見てて!」

クスクス笑い、俺の目の前で両手を水平に並べて寝かせる。

「人が通る時は普通の橋の状態。けど運河から海へ、或いは海から運河へ、船が通る時だけ、観音開きにパカァッと…」

説明しながら両手を90度に起して見せた。
そうか、なるほど!船が通れるように、運河をふさいでる橋を開くのか!
誰が考えたか知らねーけど、すげー発明だな!

「隣に架かってる橋も、多分同じ様に跳ね起きると思うわ。バスで通った時、信号と遮断機が見えたから、不思議に思ってたんだけど…船が通る時を考えての物だったのね」
「へー!」

チラッと隣の橋を見て、視線を前に戻した瞬間、俺の目の中にナミの後ろの景色が飛びこんだ。

「――ヨットだ…!」

橋向うに広がる海、その海と街を分けて、石積みの護岸が左側にまっすぐ続いてる。
護岸近くには沢山のヨットがけいりゅうされていた。

「マリーナだ!!」

胸がドクンと鳴ったのを合図に俺はかけ出した。

「あ!そうだルフィ!!オレンジ広場のツリーの前で写真撮ってよ!!あんなにおっきくて綺麗なツリー、ノジコにも見せてあげたいな…!」

ナミが俺を引き止めようと逆方向に腕を引っ張る。
けどそれにはかまわず、護岸を下りてヨットの側まで走った。

ヨットが列組んでこんなに沢山!
全部で何そう有る?10…20…30…40そう以上有るんじゃねェか!?
ヨット同士がこすれて出してんのか、ハーモニカみてェな音色が聞える。
フォン…フォン…って、知らなかった、ヨットって歌うんだな!
あー、ピンて伸びた白いマストに帆を張って、今すぐにでも航海してェ!

「止しなさいルフィ!!此処って一般客立ち入り禁止区域だろうし…そのヨット、きっと個人の物よ!!」

しゃがみこんでヨットをペタペタさわってる後ろから、恐い顔したナミに肩を強くつかまれた。
自然、首を後ろにそらせて見上げる形になった俺は、口をとがらして言い返した。

「解ってるさ、そんな事!けどさわる位いいじゃねーか減るもんじゃなし!今日はこの荒天じゃしょうがねェって、とっくに諦めてる。でも俺達後2日居るしな!」

そこでいったん区切り、立ち上がってニカッと笑顔を向けた。

「明日か明後日には風も落ち着くだろうし、そしたら今度こそ一緒に乗ろうぜ♪」

とたんにナミが口をつぐんだ。
何か言いたげに口をモゴモゴ動かしてはいるけど、うつむいたまましゃべろうとしない。
風が吹き鳴らすヨットの歌と、波が激しく岸にぶち当たる音が、耳にはっきり響いて聞えた。


「………嫌よ」


数分置いてから、ナミがポツリとつぶやいた。
ゆっくり持上げた顔は、今にも泣き出しそうに震えてる。
それを見た俺は息が止まり、何もしゃべれなくなった。

口を開いたナミが、少し裏返った声でしゃべり出す。
声はだんだん早く大きく、叫びに変わってった。

「…知ってるくせに…私が船嫌いだって!知ってるくせに、どうして無理矢理乗せようとするの!?私は船になんか絶対に乗らない…!!」

真ん丸に見開いた目から、涙がボロボロこぼれ落ちる。
そんなナミの泣き顔と後ろの海とが重なって、俺の胸に苦い思い出がよみがえった。




子供の頃、俺は「海賊」になるのが夢だった。

何でかは解らない、いつからかも解らない。
けどきっかけは俺の家の前に住んでたナミの家族に有ると思う。

ナミの母ちゃんは元海上自衛隊員だった。
そのナミの母ちゃんは、俺の「海賊になりたい」って夢を聞き、真面目な顔して「今の世の中じゃ難しいね」と言った。

「今は世知辛くて、陸と同じ様に、海の多くも国の物にされてる。『陸から二百海里は自分達の国の領土』って国連で決められてて、自由に海を航海出来ないのさ」
「ええ!?海なのに『領土』なのか!?むじゅんしてるじゃねーか!!」
「『領水』って言うんだよ。実際に今でも海賊は居るけど、見付かったらただじゃ済まない。核保有国の海を侵犯したら、手が滑った振りして核ミサイルぶっ放され、あの世行きかも…」
「ちきしょー!!なんて夢の無い世の中なんだ!!」

子供相手にシビアな現実を説くナミの母ちゃんは海が大好きで、夏休みには決まって海に連れてってくれた。
海で俺はナミと、ナミの姉ちゃんのノジコと、俺の兄ちゃんのエースとで、海賊ごっこをして遊んだ。
その内ノジコとエースは大きくなって、相手をしてくれなくなったけど、ナミはずっと俺につきあって海賊で居続けた。

ナミも母ちゃんと同じ位海が大好きで、ボートをこぐのが上手かった。
俺がこぐと何でか思った方に進まないのに、ナミがこぐとどんな方角にも思いのまま進めた。
ナミは地図を描くのも上手かったから、宝探しをして遊んだりもした。
無人島までボートをこいで行った時は、ナミの母ちゃんに激しくせっかんされた。
それでもへこたれず、俺達の航海はどんどん本格的になって行った。

10歳の夏休みの日も、俺達は無人島を目指した。
ところが途中まではおだやかだった波が突然荒れ出し、乗ってたボートが転ぷくしちまった。
実は俺はカナヅチで泳げなかったんだ。
水を沢山呑んでむせる俺を、ナミはおぶって必死で戻ろうとした。
そこへナミの母ちゃんが泳いで助けに来てくれた。
鬼みてーにおっかない顔してたけど、あの時覚えた安心は今でも忘れず胸に刻んでる。

「さ、帰るよ!」

そう言って手を伸ばし、ナミに代って俺をおぶろうとした時だ。
真っ黒な山みたいにでっかい波に襲われた。


そっから先は覚えてない。
目が覚めたらナミと一緒に病院に居て、ナミの母ちゃんの姿は見えなくなってた。


強風や潮流の影響を受けて、複数の方向から波がぶつかり合い、5mもの高さの波が突発的に起きる事が有るらしい。
ナミの母ちゃんはそれに呑まれて死んじまった。
俺とナミも呑まれたけど、ショックで気絶して、あまり水を呑まずに済んだから、助かったらしい。
ナミの母ちゃんは呑まれても気絶せず、俺達を助けようと必死で波に抗ったんだろう。
「ライフセーバーに任せろと引き止めたのに聞かなかった…冷静さを欠き、泳いで助けに行くなんて、元海上自衛隊員らしからぬ失態だけど、それだけお前達を愛していた証だ」と、残されたナミの父ちゃんは葬式で話した。


それからナミは船に乗るどころか、海へ行く事も嫌がるようになり、俺は「海賊」になる夢を諦めた。






…欝になる〆方して御免。(汗)
大丈夫、次回から明るくなるから大丈夫です。(汗)
今回の写真は高速船から撮った夕景で、キャラの心象風景をイメージした物って事で…。(汗)
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君と一緒に(ルナミ編―その6―)

2009年10月21日 20時29分11秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】




運転手のおっさんは、俺とナミの他に、もう1人客を乗せた所で、バスの扉を閉めた。
カメラと三脚を抱えて乗りこんだおっさんが、俺達の右隣の先頭席に座る。
まるでカメラマンが持ってるような本格的なカメラで、ナミと一緒にマジマジ見詰めちまった。
一眼レフってヤツか?詳しく知らねーから判んねーけど、ひょっとして本物のカメラマンじゃねーかって、ナミとヒソヒソ声で話し合った。
そういや中に入って会った奴ら、そろってカメラを持ち歩いてたな、それもたいてい三脚付きで。

「何処見ても絵になる風景だもの。そりゃ撮りたくなるわ」

窓から外を眺めたナミが、納得したように言う。
運転手のおっさんが「発車します」と言って、バスが走り出したのと同時に、ガタガタものすごい揺れた。
震度で表すなら5ぐれェか?腹ん中まで震えて、あんまり乗り心地良くねーなと思った。

「石畳の上を走ってるから仕方ないのよ」

そう言うナミの顔も苦笑ってる。
道は色違いで2種類、灰色の石だたみは車道、赤いレンガの道は歩道らしかった。(そうじゃないかって降りた後にナミが話したんだ)

「やっぱ船が良かったなー。船だったらこんな乗り心地悪くなかっただろうし…」
「いつまでもブータレてんじゃない!――ほら、外見て!紅葉がとっても綺麗よ!」

ぐちをこぼす俺の機嫌を治そうとしてか、ナミが窓の外を指差して明るく笑う。
車道をはさんで続く木は、赤や黄色に染まって、確かにきれーだった。
葉っぱじゃなく、まるで花が咲いてるように見える。
頭ん中に自然と「もみじ」って歌が流れた。
紅葉林の左向うに、運河をはさんで、風車と花畑が見える。
俺達が中に入ったばかりの時、見つけた景色だ。
風車は花畑の中3台並んで建ってて、十字の羽根をゆっくり回転さしてる。
近くで見てみてーなー、ナミは花畑を見たがってたし…ヨットに乗った後で寄ろうとこうほに入れておく。
振り返って後ろに座ってるナミを見たら、同じく後で見に来ようと考えてか、開いた地図にペンで○を付けていた。

並木が切れ、橋の上を通ったバスは、「ニュースタッド」って言うバス停に停まった。
そこで何人か客を乗せた後、運転手のおっさんは、さっき俺とナミが話してたのを聞いてたらしく、ここの道がどうして石だたみとレンガで出来ているのか、理由を説明してくれた。
なんでも「水はけを良くする為」らしい。

「お客さん達は何処から来たんですか?」

気さくな笑い声でおっさんに聞かれ、俺とナミは声をそろえて答えた。

「「東京」」

俺達の答えを聞いたおっさんが、運転しながらうなずく。

「都会の道はアスファルトだから水はけが悪いでしょう。
 大雨降ったら直ぐに水溜りが出来て困るんじゃないですか?
 この街では雨水は石畳や煉瓦の溝から滲み込むから、水溜りが出来難いんですよ」

「そうか、吸水性が優れてるって理由で、煉瓦を使ってるのね!」
「なんかよく解んねーけど、『不思議道』ってかいしゃくで良いのか?」
「解らない事を全て『不思議』の一言で片付けようとすんじゃない!」

「てい!」と叫んでナミが俺の後ろ頭にチョップを入れる。
振り返った俺は仕返しにナミの頭をグシャグシャにかき混ぜてやった。
じゃれてる内にバスは運河がクロスしてる上を越えてく。
そっから先は赤レンガのかべに白い窓の建物が続いた。

「ビネガースタッド」って所でまたバスが停まる。

「ビネンスタッドですよ、お客さん」

…運転手のおっさんがそー呼んだ橋の上でバスが停まり、俺達と一緒に初めから乗ってたカメラマンのおっさんが降りてった。
歩いてくのを目で追ってったら、広場にポツンと建ってる白い石造りの教会の前で立ち止まり、三脚を立てた。
彫刻が沢山されててきれーな教会だ、青い屋根の上には鋭くとがった飾りが何本も付いてる。
今まで見て来た中で1番こってる気がする、カメラマンがひ写体に選んだのにも納得いった。
教会の正面下にはでっかい花時計、右隣には教会と背比べしてるような超でっけークリスマスツリーが立ってた。

「此処は場内中央に位置する『アレキサンダー広場』。本日の夕方5時50分からは、この教会の前で光の街の点灯式が行われる予定です」

すかさず運転手のおっさんがガイドする。

「綺麗な教会…vおっきなクリスマスツリー…v素敵ねー…v」

窓から外を眺めるナミの目が、あんのじょううっとりうるんでた。

「ね、此処で降りてかない?」

俺の首に腕を巻きつけ、甘えた声で言う。
その言葉を聞いた俺は、嫌な顔を向けて断った。

「何言ってんだバカ!まず『パラディ』へ行くって約束したろ!?」
「私は約束した覚え無いし、どんな所か聞いてもいないわ!一体その『パラディ』って何なの!?レストラン!?アトラクション!?」

巻きついた腕にグッと力がこめられる、細ばった目でにらまれた俺は、正面に向き直ってそらとぼけた。

「……マリンレジャー受付だ」
「マリンレジャー??」
「…うう海釣りとか出来るらしい…」
「釣り?テーマパークまで来て釣りしようってェの??」

追求が厳しくなってくのにしたがい、ナミの腕がグッグッグッてしめられてく。
圧力に負けそうになった俺は、腕を振り払って怒鳴った。

「着く前からうるさく聞くなよ!!行けば解るだろ!!俺が1番楽しみにしてる所だ!!だまって地図で場所確認しとけ!!」

俺の態度に面食らったナミの顔が、みるみるすさまじくブータレてく。
それでも俺の言った通りに地図を開くと、だまってパラディの位置を確認した。

広場をつっきったバスが停まる、空いた右側席の窓からのぞいたら、入口からも見えた、茶色い高い塔が建っていた。
間近で見るとすっげー迫力、きっとここで1番高い建物だろう、3段ロケットみたく細長くてスリムでカックイー。
「ドムトールン」って名前の塔で、高さは105m有るって運転手のおっさんが教えてくれた。
てっぺんに昇ったら、このハウステンボスだけでなく、海まで見渡せるかも。

「勿論見渡せますよ。5階は展望台になってて、パスポートで入る事が出来ます」
「なーナミ!ヨッ…パラディ行った後でさァ!ここ昇ってみよーぜ!なっ!?」

陽気に話をふってもナミはつーんとすましたまま、地図から頭を上げようとしない。
やべーな、完全に機嫌を悪くしちまってる…。
何となく険悪なムードの俺達を横目に、途中から乗って来た年寄り夫婦と女達がゾロゾロ降りて行き、バスに残ってるのは俺とナミ2人だけになった。

「…お客さん、どうしますか?此処過ぎると終点のスパーケンブルグですが……」

運転手のおっさんが振り返ってたずねる、俺達のやりとりをずっと聞いてて心配になったらしい。
ナミの顔をこっそりうかがった後で、俺は「かまわねーから行ってくれ」って頼んだ。

バスが走り出す、信号機が建ってる橋を渡った所から、左側に海が広がった。
それを見たとたん、俺の胸が一気にわき立つ。
おっさんが「此処はオレンジ広場、夜8時45分から花火ショーの会場になります」と教えてくれた。
名前を聞いて、てっきりオレンジが生った木が沢山植えられてるのかと思いワクワクしたけど、植えられてたのはリボンが飾ってあるクリスマスツリー1本だけでガッカリした。
けどそのツリーの後ろ――港にけい留してある木造帆船を見つけた瞬間、俺の胸は海を見た時以上に熱くわき立った。

「おっさん!!あれっ!!あの船!!乗れんのか!?乗って良いんだろ!?」
「ああ、あの帆船は『デ・リーフデ号』って言う、此処のシンボル船でして、残念ながら乗る事は出来ません」

興奮して立ち上がり指差した俺に、おっさんがのんびりと答える。
「乗れない」の一言に、俺の高まった胸は一気にしぼんだ。

「『デ・リーフデ号』って、日蘭交流の切っ掛けになった船?」

今まで無視して地図をガン見してたナミが顔を上げて聞く。
おっさんはナミの質問にうなずくと、得意気に説明し出した。

「そう、16世紀、日本に初めて漂着したオランダの帆船を、忠実に復元した物ですよ。乗れはしないけど、ステージとして役立ってくれてる、大事な船なんですよ」
「なんだ!乗れねーんなら用無しだ!」
「だからそーいう身も蓋もない事言うなってェーの!!」

怒ったナミが俺の頭をポカリと殴る。
けど間違った事言ってねェから謝らねェ、帆船は海を渡る為に在る乗り物だ。
海を渡らなけりゃ、ただのオモチャじゃねーか。
ガッカリはしたけど、俺の胸にはまだ希望が残ってた。

幕末の帆船「観光丸」、それを忠実に復元した船が、ここに在るって調べがついてる。
こっちは遊らん船で、ちゃんと乗る事が出来て、海を走るって聞いた。
パラディと同じスパ…ゲッティに似た名前の場所に在るって事も調べてある。
ヨットクルーズの次に俺が楽しみにしてたものだ。
待ち切れなくてウズウズしてる俺の気も知らず、バスは左手にレンガの家(?)が建ち並ぶ通りをゆっくり走り、紅葉の続く坂が見えた手前でようやく停まった。

「はい、お待たせしました~!此処が終点スパ――」

おっさんが言い終わるのも待たずに、ナミの手をつかんでダッシュで降りる。

「ナミ!!ヨッ――パラディはどっちだ!?右か左か前か後ろか!?」
「み…右…お土産屋さんが並んでる間を抜けて前の辺り…」

俺の迫力に気圧されてか、ナミは素直に場所を答えた。
つないでる手を引っ張って、言われた通りに土産屋の間を抜けてく。
潮の香りをふくんだ風が顔に当たる、確かにこの道から海に出られるらしい。
ぶち当たった建物の看板に、イルカが描いてあるのが目に入った。
看板名の頭が「P」――ここがパラディだな!
俺はわき目もふらずに中へ飛びこみ、奥のカウンターに居た女をつかまえ、「すいませんヨット2人乗せてください!!」って頼んだ。




「済みません。本日は生憎の強風の為、運休する事に決まったんですよ」

「え?え?えええ~~~~~~~~~~~…!!!!!」

店員の女からしょうげきの事実を知らされ、俺のひざからガクーンと力が抜ける。
床にくずれ落ちるのと同時に、カウンターに引っかかってた爪が、ガリガリ音を立てた。

「……か…風が弱まったら…?そしたら乗せてくれんだろ…?」

それでも望みを捨て切れず、カウンターをはい登って聞く。
けれど女は気の毒そうに笑いつつ、きっぱり非情に言い切った。

「いえ、天気予報で強風波浪注意報が発表された以上、本日は終日運休する予定でいます」

追い討ち食らった俺のひざから再び力が抜けて、カウンターから滑り落ちる。
セミに似たポーズで動かなくなった俺を見て哀れに思ったのか、女はフォローするようにヨットクルーズに代るものを勧めて来た。

「宜しかったら『ナイトカヌー』は如何ですか?海ではなく運河を廻る物ですが、街のイルミネーション輝くこの時期、光の彩が水面に映って、それはもうロマンチックですよv2人艇で3千円、時間は夜8時10分~か9時10分~のどちらか。初心者でもコーチが指導に付きますので安心して――」
「いえ、結構です!船なんかで廻らず、足で廻りますので!…失礼しました!」

女が宣伝チラシを見せながら説明するのをさえぎり、ナミは座りこんだままの俺を引きずって店から出た。
その時だ――俺の頭に一筋の希望の光が灯った。

「そうだ!!観光丸!!大型の帆船なら、ちょっとやそっとの強風にも負けず走れるだろ!?ヨットがダメならそっち乗せてくれよ!!」

「…観光丸ですか?……済みません、それも生憎……」

言い難そうな面して、女がカウンターから出て来る。
店を出て俺達の隣に立ち、指で差した先には、海上に伸びたさん橋しか見当たらなかった。






…書き出すまですっかり忘れてたんですが、12月~2月迄、観光丸は運休しちゃうんですよ。(但しクリスマス期間、大晦日~1/3迄は除く)
この先どうなるのか書いてる人間にも不明なまま次回に続きます。(汗)

んでこの記事でも書いたように、現在場内スポーツ系の受付は、「アクティビティセンター」に変更しとります。
いや「パラディ」って店名は引き継いでんですけどね、この話に出て来るパラディは旧パラディです。(ややこしい言い方で御免)
自分、まだ「アクティビティセンター」を利用した事無いんで、一応リアリティを重んじて、旧パラディの方をモデルにしたという。(汗)
そんな訳で実際に行かれる予定の方は、受付場所をお間違えになりませんように。(汗)
ヨットクルーズは~1/9迄、ふくちゃんのブログに体験した時のレポが上がってますよ。
サンセットクルーズを何時か体験してみたい。
(→http://www.huistenbosch.co.jp/transport/detail/5080.html)

場内バスは乗客が少ない時など、タクシー並にリクエストに応じて、停車してくれる場合も有り。
行き先を訊かれた時にでも、目的をついでに話しておくと、良い事有るかもしれませんよ。
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君と一緒に(ルナミ編―その5―)

2009年10月15日 17時37分45秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】



「着いたァーー!!!!」

バスから1番に降りた俺は、両手を挙げて思っ切し叫んだ。
ふと耳ん中にクリスマスソングが流れて来る。
音楽のする方をたどって見たら、そこには白字で多分「ハウステンボス」って書いてある、赤茶色の建物が在った。
多分って言うのは、英語で書いてあったせいで、読めなかったからだ。(後でナミから「あれはオランダ語よ!」ってツッコまれた)
建物の真ん中にはトンネルみてーな穴が掘られてて、穴の両側には門松みてーにクリスマスツリーが飾ってある。
壁に刺さってる2本の旗が、強い風にあおられてバタバタ音を立ててた。
バスの窓から見えたでっけー建物は、トンネルの向こう側に見える。
きっとあれが「ハウステンボス」への入口だ、前のトンネルは関所みてーなもんで、くぐる人間をあらためる場所なんだろう。
入り方に悩んでた俺の頭に、突然――ゴォーン!!!って重い衝撃が走った。

「い痛ェェ~!!!」

目の前で花火が散ったほど痛くて、思わずうずくまる。
振り返ったそこには恐い顔して旅行カバンを抱えたナミが立っていた。

「おまえな!!頭ばっかり狙うなよ!!しかもカバンの角で!!のーみそはトウフみてーに柔らかいから、いたわんなきゃいけねーってTVで言ってたぞ!!」
「あんたの脳味噌はス××ジだから大丈夫!そんな事より――停車するのを待たずに、しかも前に座ってる人を差し置いて降りようとすな!!あんたのせいで連れの私が白い目で見られて謝る破目になったんだからね!!」

大声で抗議した俺よりさらに恐ろしい怒鳴り声でナミが迫る、俺も負けずに歯を食いしばって迫った。
そやってしばらくにらめっこしてたけど、先に降参したのは俺の方だった。

「ゴメンなさい!」
「解れば良し!」

おじぎして謝った俺を見て、ナミが満足そうにうなずく。
しゃくにさわったけど、よく考えればナミの言ってる事は正しい、だから納得した。

「…ところで何処から入れば良いんだろ?周りに建物がポコポコ在って、どれがどれやら…」

周りをキョロキョロ見回しながらナミがつぶやく。
俺は目星を付けといた中がトンネルになってる建物を、自信満々指差して教えた。

「あの関所をくぐって、向うのでっけー建物から入るみてーだぞ!」
「関所!?テーマパークに入るのに関所通るの!?」
「最近テロとか起きててぶっそーだからな!きっとトンネルん中で持ち物を厳しく取り締まられるんだ!」
「えーーー……」

せっかく教えてやったのに、ナミは疑わしそうな目でいる。
けどカバンを肩にかけ直すと、俺の指差した通りにトンネルへ向ってった。
その後に俺もついてく、くぐる所でナミは振り返って言った。

「関所かはさて置き、前の人達に付いて行けば良いと思うわ」

ナミから説明を聞いた俺は成る程と思った。
トンネルの中には俺達と一緒のバスに乗って来て、俺達より後に降りたけど、俺達より先にくぐって行った、家族連れと女のグループの姿が見える。
やっぱりナミは頭が良いなと感心した。



てっきり厳しい取調べを受けると思ったのに、トンネルの中では何も無かった。
ただトイレやコインロッカーが有ったり、壁にクリスマスのポスターが貼ってあるだけだ。
真ん中辺りに右へ折れ曲る道が在って、横にズラッと窓が………何だ?あそこ??

「どうやらあそこがパスポートの発券所みたいね」

足を止めてズラッと窓の並ぶコーナーを見たナミが言う。

「え!?って事は、あそこが入口か!?」
「傍の角に案内所みたいなのが在るし、多分そうじゃない?」

そういやT○Rに在るパスポート発券所によく似てる。

「なァ、コインロッカー有るんなら、荷物置いてこねェ?このままじゃ回りにくいぞ」
「んー…そうねェー……」

俺の言葉を聞いたナミが、数秒無口になって考えこむ。
そうしてから再びトンネルの出口を目指して歩いて行った。

「え?コインロッカーに荷物置いてかねーの?このまま進んだって、トンネル通過するだけじゃね?入口はここなんだろ?」
「だって前の人達…」

話しながら、俺の方を振り返る。

「荷物持ったままトンネル抜けてくじゃない?
 旅行会社から貰った説明書の中に、『場内ホテル宿泊者は、入場前に場内ホテル受付で荷物を渡せば、宿泊するホテルに送って貰える』って書いてあったんだけど…
 空港から一緒に来たって事は、前の人達も私達と同じ遠方からの観光客で、ホテルに宿泊する訳でしょ。
 だから後付いてけば、その場内ホテル受付とやらに連れてって貰えると思って」

言われてみれば前の奴らも大荷物抱えてんのに、コインロッカーに預けてかない。
そうか、空港から一緒に来たって事は、俺達とは仲間なんだ。
やっぱりナミは頭が良いなと、俺は再度感心した。

トンネルを抜けると、目の前にはバスの窓から見た、青い屋根で赤茶色のでっけー建物が横向きにそそりたってた。
近くで見るとますますでっかくて迫力だなァ~。
ハゲた木と外灯ときれーな花だんが、その建物への道しるべみてーに、左右に並んで続いてる。
と、俺達の前歩いてた奴らは――

「あそこに入ってったわね。ええと…『場内ホテル受付』――此処だわ!」

トンネル抜けて直ぐ左横に在った店(?)の看板を確認したナミが、明るい声で叫んだ。
ドアを開けて入ってみる、中にはナミが言った通り、俺達の先を歩いてた奴らが集合してた。
中の店員が次々荷物を受け取ってく、そうか、あいつらに渡せば良いんだな。
一緒に後ろでやりとりを見ていたナミは、俺に貴重品を持ち出してから、荷物を預けるようにって注意した。
ナミも俺も小型のバッグに貴重品をつめて、残りは店員の女に預けた。
受け取った女は「チェックインまでに御宿泊予定のホテルにお運びします」って笑顔で約束してくれた。
親切なやつだなー。
それからナミは女からの説明を聞いて、ここのカウンターでパスポートを買い、場内地図やイベント情報なんかを手に入れた。
ようやく冒険の準備が整ったァーって気分で外に出る。

「けどそーするとこのオモチャの城みてーな建物は一体何なんだ??」

やたら目立って建ってるから、てっきりこれが入口かと思ったのに。
俺の疑問を聞いたナミが、場内地図を開いて確認してくれた。

「えーと…ハウステンボスジェイアール全日空……ホテルだって」
「ホテルゥ!?なんだ、ただのホテルか」
「気になるんだったら、ちょっと寄ってみる?」

ホテルって判ってガッカリしたものの、俺が未だ興味をひかれてるのを察して、ナミがにこやかに誘う。
正直中がどんな風になってるのかすっげー気になった。
きっと外とおんなじくらい、きれーで立派な造りになってんだ。
でっけークリスマスツリーとか飾ってあるんだろうな。
けど風がどんどん強くなって来てる、空は明るいけど、トンネルの上一列に並んだ旗が、うるせェくらい鳴ってる。

早く行かなきゃヨットに乗れなくなるかも――不安になった俺は、ナミの手を握り、トンネルへ駆け戻った。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「ひょー、すげー!!超オランダだァ!!」

川向こうの花畑が広がる岸に、風車が回ってるのを見つけた俺は、感心して大声を出した。

「だからそういう明け透けな感想は止めてってば!」

隣からナミがペン!と俺の後ろ頭を叩いて非難する。
痛くはなかったけど、さっきからポンポン叩かれ通しで、いいかげん腹にすえかねてた俺は、しかめっ面作って抗議した。

「おまえこそ他人の頭をカスタネット代わりにすんのは止せよ!そーゆーのがクセ付くと、結婚した時『ディービー』とか言って、問題にされるんだからな!」
「あんた、意味解らずに言ってるでしょ?」
「しっけーだな、おまえ!それぐらい俺だってTV見て知ってるさ!」
「じゃあ『DV』って略さず正式名で答えてみせて!」
「えーとディービー…『DB』だから……ド、ドラゴンボールか??」
「違う!!『DV』でドメスティック・バイオレンスよ!!やっぱり解ってないじゃない!!」
「そーそれ!ダメなバイオレンス!!つまりやっちゃいけない暴力って意味だろ!?」
「暴力にやって良いものなんて無いでしょうが…まったく…」

ナミがため息吐いて頭を抱えちまう。

「あんたってば馬鹿な上に正直なんだもん…隣で気まずい思いしてる私の事も少しは考えてよ」
「別にけなしてるわけじゃねーよ!本物のオランダみてーにきれーだって、ほめてんじゃねーか!」
「だからそれちっともフォローになってないってばもー!」

頭を抱えたナミが、ますます抱えて、うずくまっちまった。
正真正めい本気でほめてんのに…川向こうに見える景色は、写真で見たオランダとそっくりに、きれーでのどかだった。
花いっぱい咲いてる岸の向うには、オモチャみてーに可愛い家が続いてて、あっちも良い眺めだと思った。
まるで絵葉書だ、絵になる景色って、こーいうのを言うんだろうな。
うっとり眺めてた俺の前を、屋根付きの船がゆっくり過ぎてった。

「お!ナミ!船だぞ!!屋形船かな!?」

こーふんして指差す、船は風車が回る花畑の方から、オモチャの家が建ち並んでるエリアを横切るように進んでった。
確か園内には「カナルクルザー」って言う、運河を回る遊らん船が有るって、ここのサイトに紹介されてたっけ。
きっとあれがその「カナルクルーザー」だ、って事は乗れるんだ!
花畑の方から来たって事は、その近くに船着場が在るんだろう、推理した俺はナミを引っ張って連れてこうとしたけど、先にナミに腕を引っ張られて急がされた。

「もう、直ぐに引っ掛かって立ち止まるんだから!」

そう言うナミの顔は怒ってるみてーに恐ェ。
入口ゲート先のクリスマスツリーの前で写真を撮ろうと足を止めたり、跳ね橋渡った所の城の前で写真を撮ろうと足を止めたのはナミじゃねーか。
その後城の向うに風車の回る花畑を見つけ、俺を呼んではしゃいだのもナミじゃねーか。
と言ってやりたかったけど、先を急ぐ事には俺も賛成だったんで、だまって城ん中へ引きずられてった。



城をくぐったとたん、中に居た女に「いらっしゃいませ♪」と声をかけられた。
中は入口同様トンネルになってて、中世の王様女王様のカッコしてる熊のぬいぐるみ達やら、イカス甲冑像やら槍やら、巨大熊のぬいぐるみやらが置いてあった。
「わー、可愛いv」と早速ナミがカメラで熊のぬいぐるみを撮りまくる。
場内でやってるイベントについての案内板も、通路に沿って続いてる。
城ん中に居た女が、「このナイアンローデ城は中世オランダの古城を再現した物で、館内はテディベアの博物館になっています」と笑顔で説明してくれた。
ふーんそうか、だから熊のぬいぐるみが飾ってあるんだな、けど城は強そうな造りなのに、なんかミスマッチに感じちまうな。
女はさらに博物館に寄ってかないかって誘ったけど、俺はぬいぐるみなんかに興味無ェ。
それより甲冑かぶらせてくれって頼んだら怒られるだろうか?(ナミに)
けど今は何よりヨットだ!博物館に寄ってこうとせがむナミを引きずり、俺は先を急いだ。
トンネルの出口そばに座ってる、サンタコートを着た巨大熊ぬいぐるみには、ナミだけでなく俺も誘惑されかけたけど、死に物狂いで振り切って外へ出た。



城を出た先は道がいくつも分かれててまた悩んだ。
一体どっちへ行けば良いんだ!?一瞬頭がふっとーしかけたけど、左の橋向うにチラって風車と花畑が見えたんで、左の道を選んで行った。

橋の上から河を見下ろす、そこにはさっき見たのと同じ船が停まってた。
乗りこむ人の列も見える、行列は花畑の対岸に在る建物から伸びていた。
橋の下、右の建物が乗船場なんだろう。
橋を戻って行列につこうとした俺のパーカーのフードをナミがつかむ。
首が絞まった俺の口から「ぐえっ!!」ってうめき声が出た。

「何すんだよ!?首が絞まって死ぬじゃねーか!!」

フードをつかんで無理矢理俺の足を止めたナミは、また恐い顔をしていた。
さっきからこいつ、何怒ってやがんだ??

「…何処行く積りなの?」

低い声でナミがたずねる、俺は素直に行き先を告げた。

「スパ…スパ…スパゲッティ??」
「………スパーケンブルグってエリア?」
「そーそのスパゲッティ!!」
「だったらバスに乗って行った方が早いみたいよv」

にっこり笑って乗船場の右の道を指す、そこには停留所が在って、ナミの髪と同じ色したバスが停まってた。
ちなみに乗船場の裏には貸し自転車屋が在るみたいで、自転車に乗った奴らがそこから続々と走ってった。

「え?でもよー、船に乗って行った方が楽しいじゃん。きれーな花畑も見れそーだし…おまえ花見たいって言ってたろ?」
「船だと途中で降りなきゃいけないの!!バスじゃなきゃ、あんたの言うスパゲッティとやらに停まんないのよ!!!」

迫力有る笑顔でまくしたてたナミは、有無を言わせず俺をバスまで引きずってった。






…何度も行ってて慣れてるから鈍くなってるけど、陸路からのハウステンボスへの入口って、初めて来た人には判り難いだろうなぁと思う。
入国棟に「入口」って表示は有るし、ゲートまでは何となく行けるだろうけど。
場内ホテルに宿泊する場合、「場内ホテル受付」に荷物を預ければ、ホテルまで送って貰えるよ~と言われても、一体それが何処に在るのか惑うんではないかと。
極めて目立つハウステンボスジェイアール全日空ホテルが、輪をかけて惑乱させてる気がする。
目立つからつい引き寄せられちゃうんですよ。(笑)
話の中でナミが「人に付いてけば良い」って後付いてくけど、もしもその客が全日空ホテルに泊まる客なら、一緒に全日空ホテルのフロントまで連れてかれる破目になる。(そこで案内を受けられるだろうけど)
初めて行く人にとっては海路からの方がスムーズ・インだろうな~と書きながら思ったのでした。

03年迄は専門のガイドブックが出てたけど、今は長崎ガイドとくっ付いてるからなぁ。
まぁ此処に限らず、大抵のテーマパークって、初めての人には判り難い入口になってる気がする。
T○Lが雛形作ったから…あそこの様に毎日行列が出来てるなら判り易いけど、行列が出来てない所は判り難くなるのは仕方ない訳で。

写真は去年のクリスマスシーズン、ゲートを過ぎて目の前広がる庭園に飾られてた、エントランスツリー。
多分今年のクリスマスシーズンにも飾られるだろう。
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