瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

君と一緒に(ルナミ編-その12-)

2010年02月16日 22時57分50秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】





キララの出口までの通路は、模型を使った実験コーナー(?)になっていた。
1階から他の客に混じって下りて来た俺とナミは、外へ出る前に一通り観て行く事にした。
模型はハウステンボスの仕組みを解説する為に作ったらしく、話は難しくて理解出来なかったけど、すげー工夫をしているふんいきはつかめた。

コーナーにはハウステンボスのジオラマも展示されてて、初めて全体を立体的に知る事が出来た。
俺とナミがガラスのしきりに貼りついてる前で、ジオラマを照らすライトがだんだん赤く変ってく。
と思ったら今度はだんだん暗くなってって、代わりに模型の明りが点いた。
そしてまたライトがだんだん明るくなってく、朝が来たらしい。
「この街の1日を表現してるのね」と、ナミが感心したように言った。


しばらく遊んだ後、外へ出た。
目の前には運河が流れてる、とそこへ入口ゲートの側で見かけたカナルクルーザーが、ゆーっくり俺達を横切り、右岸に当たる手前でカーブした後、橋をくぐって行っちまった。

「良いなー…俺も乗りてェーなァー…」

船外に出てた乗客と目が合った俺は、うらやましくて、つい、つぶやいちまう。
ボーっと追いかけながら見送ってる内、気が付いたらナミの姿が見えなくなってた。
あわてて船がくぐってった橋の手前でナミの名を大声で呼ぶ、けど返事がどこからも聞こえない。
ひょっとして橋渡って別のエリアに1人で行っちまったのか!?
1歩渡りかけたその時、「こっち!」と後ろから声がかかった。
振り向いた俺の視線と、赤レンガの角からのぞいてたナミの視線が、1本につながる。
全身から力が一気に抜けるほどホッとした、直後腹ん中が怒りで一気にわき立った。




「おまえな!!気に食わないからって居なくなるなよ!!心配すんだろ!!」
「ゴメン、今は心から反省してる」
「いつも人の事ガキ扱いしといて、そっちの方がよっぽどガキみてーだぞ!!」
「そうね、大人気無い真似だったと、自分でも呆れちゃうわ」

赤レンガの角から続くレンガと石だたみの道をナミと歩いてく。
両わきにはレンガ造りの家がせーぜんと並んでてきれーだった。
通り過ぎるグループ客と、サンタ帽をかぶって掃除してる女が、歩きながら激しく言い合ってる俺達を、遠巻きに観察してる気配を感じた。
もっとも俺にしかられてるナミは、珍しくも素直に頭を下げている。
はたから見て、俺が一方的に責めてるだけに思えたろうな。
けど他人の目なんかどーでもいい、言われっ放しなんてナミらしくねェよ。
わめいてる内怒りは不安に変って、俺の声は次第に静かになってった。
ナミはまだションボリ頭をたれたままで居る。

「俺が船を見るだけでも許せないのか?」

ストレートに聞く、そのとたん、ナミの頭が水飲み鳥みたいに、勢い良く上がった。

「そうよ許せない!…だって、デート中に彼が他の女のコ見て、嫉妬しない彼女は居ないでしょ?」
「はっ???」

予測してなかった返しに、思わず言葉がつまる。

「女のコって…船だぜ!?」
「知らないの?英国では船の代名詞が『she』、女扱いされてる物なのよ。ちなみに海も英語で『sea』だから女、『母なる海』って言うでしょ?」
「だ…だいめいし??しーだから…女??何だァァァ???」

わざとらしくムクれたナミの顔が、舌をペロリと出した瞬間笑顔に変る。
俺はといえば意味が全く解らず、こんがらがった頭を抱えるばっか、ただナミに上手くはぐらかされた事だけは解った。
本音を吐かせなきゃケンカにもならねェ、一体どうすりゃ良いんだ?
悩んでる俺の気も知らずに、ナミはすぐ左横の建物の前で足を止めると、甘えた声で誘った。

「ここ、トリックアート館だって。入ってみようよ♪」
「トリックアート?」

ナミが指で差した家のかべには、はい登る男の絵が描いてある。
一瞬本当の人間と見間違えるほどリアルな絵だ。
興味をひかれた俺は、悩みをいったん頭の隅にどかし、ナミと一緒に中へと入ってった。

トリックアート、つまり「だまし絵」って事は知ってる。
中は美術館みたく、沢山の絵が展示してあった。
けどふつーの美術館みたいにすましてねーんだ。
向きを変えて見ると違う絵に化けたり、実は飛び出してたり、床に穴が開いてると思ったら無かったり、鏡かと思ったら違ったり。
俺とナミは色んな絵の前で写真をいっぱい撮った。
後でゾロ達に見せてだましてやるんだ。

2階のはじまで絵を見た後、トリックアート館を出て、今度は隣の「マジックミラーメイズ」に寄った。
白黒模様の迷路からウサギの足跡を追って、奥へ進んだそこは鏡の迷路。
まるで森がどこまでも続いていて、俺とナミが何人も居るみたいだ。
ジッと見てる内、背筋がゾクゾクして気持ち悪くなった。
昔から出口の見えない迷路って苦手なんだよな。

「『白黒模様』は表現としてあんまりじゃない?あれはチェス盤をイメージした柄なのよ」
「チェス?」
「ほら、『ふしぎの国のアリス』の…と言うより、続くシリーズ2作目の『鏡の国のアリス』のイメージなのね」

ナミからそう説明されても「ふしぎの国のアリス」しか知らねー俺には、さっぱり解らなかった。
「ふしぎの国」だって、ナミから聞かされた「ウサギを追って変な国に迷いこんじまうアリス」ってあらすじしか知らねェ。
なんか女向きってイメージがして、読む気がしねーんだよなァ。

「女の子向けなのは確かね。だってあの作品は、作者のルイス・キャロルが愛するアリス・リドルの為に、彼女を主人公にして書いた物語だと言われてるもの」

進む度に頭をゴチゴチ鏡にぶつける俺は、いいかげん不機嫌モードになっていた。
イライラから「女向け」と突き放す俺にかまわず、ナミは笑顔で「アリス」の説明を続ける。

「『アリス』のモデルになったと言われてるアリス・リドルとキャロルは、年が20も離れてたらしいけど、キャロルは本気でアリスを愛していて、まだ少女だった彼女にプロポーズをしたって噂まで残されてるの」
「よーするにロリコンか!」

ズバリな俺の言葉にナミが苦笑う。
苦笑った後、鏡の中に続く森に向き直って、更に話を続けた。

「…でも自分の思い描いた空想世界で、好きな女の子を遊ばせるキャロルは、相当ロマンチストだったんだと思うわ。
 作品を書いた時のキャロルの気持ちとしては、こうだったのかも――僕の世界には君が居る」


――ぼくの世界には君が要る、頭の中で勝手に変かんした言葉に、心臓がドキリと跳ねた。


鏡に映ったナミの顔はうっとり夢見る乙女で、ふだん姉の顔を見慣れてる俺には新鮮だ。
果てしなく続く鏡の森の中、重なり合って映る俺とナミ。
無性に抱きしめたくなり、背後から忍び寄った所で、鏡の中の目と合った。
パッとナミが振り返る、あせって後ろ向きで離れた俺は、足をすべらせななめ後ろの鏡に頭を激突させちまった。

「痛ェェ~!!!」

悲鳴と一緒にゴチーン!!という衝撃音が迷路にこだまする。
反動で起した頭が今度はななめ前の鏡に激突した。
再び迷路にこだまする俺の悲鳴と衝撃音。
すると側の鏡の中にウサギがボワワンと現れ、「やったね♪ぼくを見つけたから、今日は良い事が有るよ♪」という、のー天気な声が響いた。

どこがだよ!??

悲劇はくり返されるもんで、またもや反らせた頭が後ろの鏡にぶつかり、起した頭が前の鏡にぶつかる。

ゴチーン!!ゴチーン!!ゴチーン!!ゴチーン…!!

「痛っっ!!痛っっ!!痛てっっ!!痛てェ~~…!!」

まるで鏡地獄、痛みの無限スパイラルじゃねーか。
見かねたナミが笑いながら止めてくれるまで、俺の悲鳴と衝撃音は迷路内にひっきり無くこだましていた。




ミラーハウスを脱出する頃、俺の頭にはコブが10個位出来てた気がする。
後1つ体験してないアトラクションが有ったけど、疲れた俺達はバスに乗って泊まるホテルに向かう事にした。
ニュースタッドに降りて最初に寄ったチョコレートハウスの前に戻る。
来た時は腹が限界まで減ってて気が付かなかったけど、店の前に立ち並んだ木には赤くて小さな実がどっさり生っていた。(ナミは気が付いてたらしい)

「食えんのかな?」
「解らないけど…多分無理じゃない?美味しかったらこんなに生るまで放っておかないもの」
「なんだ。美味くねーんなら興味ねーや!」
「まったく浪漫の無い奴め!綺麗なんだから良いじゃない!緑の葉っぱに赤い実、まるでクリスマスツリーみたいだわ♪」

そう言ってうっとりながめるナミの言う通り、緑と赤がくっきり浮立って見える木は、クリスマスツリーのイメージぴったりだった。
弱々しくなった日の光が、冬なのに緑色にしげった葉を透かして、石だたみに影を作ってる。
腕時計を確認したら、とうにチェックインの3時を過ぎていた。







…写真は話の中に出したチョコレートハウス前の「クリスマスの樹」。
正式名はクロガネモチだそうだけど、毎年クリスマスシーズンが来ると赤い実を付けるので、そう呼びたくなってしまう。


いや~~~…本編の展開が凄過ぎて気分が重いったら。(汗)
一方でくっだらねー話を考えたくて仕方なく。
なんかまだ信じられなくて泣けんです。
戦争編が終って色々はっきりしてから、涙が零れ落ちるかも…。
もう今迄のルフィじゃなくなるんだろうなぁと思うと切ない。

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