瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

君と一緒に(ルナミ編-その11-)

2009年12月28日 23時01分55秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】





「本当に居たんだって!」
「そんな事言われたって、私は見なかったもの!」

アトラクションが終った後、俺達は建物を出て、広場で休けいした。
広場の真ん中には、はだかの女達のちょーこくで飾った噴水が有って、その周りには休けいするのに良さげなパラソル付きのテーブルが、いくつか置いてあった。
テーブル席近くに、食い物飲物を売る店も出てる。
中でも興味を引かれたのは、バスのよーな電車のよーな形をした店(車?)だった。
売ってる食い物も、フライドポテトにホットドッグにクレープに、色々有ってうまそうだ。
ナミと俺はこの店で軽い食い物と飲物を買い、店前のテーブル席に持ち寄って、一休みする事にした。

食い終った俺は、さっきのアトラクション中に見た、「もう1人のナミ」について話した。
けれどナミは「見なかった」と言い張る、当然だ、ライトが点いて、俺が指を差した時には、消えて居なくなってたんだから。

映画館から出る前に、「もう1人のナミ」が座ってた席を調べてみたりもした。
ほら、幽霊が消えた跡はビッショリぬれてたって、よく聞くだろ?でもさわってみたら、別にぬれちゃいなかった。

「失礼ね!!じゃーあんたの見たそれは、私の生霊か何かだって言いたいわけ!?」

とたんにナミがフグみてーにほおをふくらまして怒鳴った。

「けど確かに見たんだぜェ?金髪をオールバックにした男と仲良くしゃべってやがってさ!」
「金髪でオールバックの男の幽霊なんて、私の知り合いには居りません!」

そう言うと心持ち不機嫌な顔でクレープをかじった。
ここらで話を引っこめた方が平和と知りつつも、納得のいかない俺は見たシーンを頭の中で何度も再生する。



エンディングが流れた所で左右のかべが上がり、3つに分かれたフロアが1つにつながってた事に気が付いた。
俺達が居た中央の1番後ろの席から見て、「もう1人のナミ」は右サイドの、通路をはさんだななめ前に、金髪オールバック男と並んで座ってた。
俺がナミの名前を叫んで立ち上がった事で、金髪オールバック男はこっちに気が付いたように思えた。
ナミが男に右肩をつつかれ、こっちを振り向こうとした次の瞬間ライトが点いて――まばたきしたら居なくなってた。



「月並みな答だけどさ、きっと暗くて見間違えたのよ」
「俺がナミの顔見間違えるか!!あれは確かにお前だった!!」
「そんな月並みに断定されてもねェ…じゃあ此処に居る私は偽者だとでも?」
「いや、どっちも本物にしか思えねーけど…ひょっとしたらドッペルゲンガーってヤツじゃね?」

話してる内に自信が無くなって来て口ごもる。
聞いてるナミもしまいには困ったような顔で笑い出した。

「…もしもドッペルゲンガーなら、遇わなくて良かったわ!自分自身と出くわしたら死ぬって言うし」
「えっ!?そうなのか!?何で!?」
「ドッペルゲンガーはその人の体から抜け出した魂で、本人の前に姿を現す事で死を知らせるって、昔から言い伝えられてるの!」
「って事は……ナミ!お前、もうすぐ死ぬのか!?」
「なに不吉な事言ってんのよ!!まだ花も恥らう年だってのに死んでたまるか!!」

広場中にナミのひときわかん高い声が響いた。
その声で、レンガにベタッとうずくまって日向ぼっこしてたハトの群れが、驚いていっせいに屋根の上へ飛んでく。
残ってたクレープを一口で食べ終えたナミは、包み紙をクシャクシャにつぶし、俺が出したゴミと一緒に、近くのゴミ箱へ捨てに行った。

「はー、美味しかったvクレープで600円も取るなんてボッタクリーなんて思ったけど、皮はモチモチ、甘いキャラメルソースに苦いエスプレッソコーヒーがアクセントを効かせてて、お値段納得の満足感だわv買って良かったーv」

戻って来たナミが、イスの上でうーんと伸びをしながら言う。
その顔はまるでキャットフードのCMに登場するネコそっくりだった。

「そんっなにうまいクレープだったのか?」
「うん!んまかったv」
「なら俺にも一口食わせてくれりゃー良かったのに!」

うらめしくつぶやいたら、すかさずナミにかみつかれた。

「あんたね、そーゆー事ヌカすなら、先ず自分から一口食べさせなさいよ!チョコフォンデュの時フルーツ2/3は奪っといて、今目の前でたこ焼にホットドッグにワッフルを食うわ食うわ…」
「あれ、ワッフルじゃなくて、モチで焼いた『モッフル』っつうらしいぞ」
「ああそっ!それで、その『モッフル』は美味しかったの?」
「うん!味はまんま焼モチだけど、うまかったぜv」
「あんたこそ偶には彼女に一口位分けてやるよな優しさ見せたらどぉなの!?今迄付き合って来た歴史の中で、私、あんたから食べ物貰った経験、1回も無いんだけど!」
「悪ィ悪ィ♪いつかまた今度な♪」

笑ってごまかす俺を許さず、ナミがつめ寄る。
厳しく刺さる視線を避けて顔を下に向けたその時、ナミの白いセーターの胸が目に入り思い出した。

「…そうだ、あのナミ、白いワンピース着てた…!」
「は???」

顔はそっくりそのままナミだったのに、少し違和感残った事が、ずっと気になってたんだ。

目の前のナミはオレンジ色の短いコートの下、白い毛のセーターに、赤と緑のチェックがらのミニスカートを着てる。

けど映画館で目撃したナミは、半そでの白いワンピースを着ていたように覚えてる。
それに髪をポニーテールにしてたような…。

「それこそ有得ない!あんたじゃあるまいし、冬に半袖着るほど私は変人じゃないわ!」
「でも確かに着てたんだ!」



隣の男の方はイスのかげにかくれて服までは判らなかった。
けどナミは俺のななめ前の位置に座ってて、通路をはさんでいたから、しょうがい物無く見れた。
暗くても白い服だったから、浮き上がって見えたんだ。

「もういいじゃない、居たら居たで!世界には自分のそっくりさんが3人は居るって言うしさ!そんな事より残らずアトラクションを制覇して、パスポート代分元取らなきゃ!」

立ち上がったナミに話を打ち切られ、俺はしゃくぜんとしないながらも、言う通りに次のアトラクションへ向った。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




次に体験したのは「グラン・オデッセイ」館の隣に建つ「フライト・オブ・ワンダー」だ。
ガイドに書いてあった紹介によると、「小さな魔女と一緒に空を飛び、北風の城に棲む悪い魔女を倒す」ってアトラクションらしかった。
ここのテーマパークで唯一のライドだって言うから、俺はてっきりジェットコースターみたく、ものすげースピードで飛ぶもんだと思いこんでた。
でなきゃホラーハウスみてーにおっかねーふんいきを体験するタイプかなって。
けどその期待は裏切られた。
はっきり言って女のガキ向け、メリーゴーラウンドが回る夢いっぱいの世界を、キラキラ光るライドに乗って旅するだけだ。
それでもナミはけっこー恐かったらしい。

「だってガタゴト揺れるし、何故か私達しか乗ってなかったし」
「それってこのアトラクションが古いのと、人気が無いのが理由じゃね?」
「パッと炎に包まれるシーンなんか、急直下するんじゃないかって、思わず身構えちゃった」
「落ちたら楽しかったろうになー」
「嫌よ!そんなスリル!」

とか言ってナミは大人気無く震えてたけど、俺の要望としては、もうちっとスピード感が欲しかった。



続いてその隣のポセイドン…じゃなくって、「ホライゾン・アドベンチャー・プラス」ってのを体験しようと思ったけど、これはナミに断固きょひされた。
「800tもの本物の水が客席を呑み込む」って売り文句を聞かされ、本気で顔色を失っちまった。
俺としてはアトラクションの中で最も楽しみにしてた物だったから、内心すっげ残念に感じた。
でもここに来たのはナミと一緒に楽しむ為だからな。
ナミが楽しめないなら行かなくていい、って言ったら、「ヨットもそんな風にあっさり諦めてくれれば良いのに」なんて、皮肉っぽく笑われた。



気を取り直して奥の離れた所に建ってたキラキラ?……え~と……「キララ」か!――そこへ向った。
サンタ帽かぶってとびらの前に立ってた女に聞いたら、「中へ案内するまで5分ほどお待ち下さい」と言われて少し待たされた。

ただ待ってるのも退くつだから、建物左横のスペースに在ったミニ遊園地で遊ぶかとナミを誘ったら、流石に小さい子向けで恥ずかしいと断られた。
でもガキが遊んでるの見てると、けっこー面白そうなんだけどな、ミニ機関車とかミニジェットとかミニ観覧車とか、童心に帰って遊ぶのも楽しいんじゃねーかって思うけど。

そんな事考えてる内にとびらが開いて中に案内され、俺達以外にも客が何人か集まって来た。
通された広間は暗くて、床とイスが透明だった。
ガラス製らしくツルツルすべる、俺とナミはおっかなびっくり、真ん中列中央のイスに座った。
正面にはでっかいスクリーン、ここで映画を見せるらしい。
開始時間が来た所でアニメが始まり、登場した博士とマスコットみてーな月が、月の誕生や地球におよぼす影きょーについて説明してくれた。
月のおかげで地球の文明が発展してく様子を早送りしたり、もしも月が無ければ世界はどうなるかを見せたり。
それによると月が無ければ地球はすごいスピードで回転し、怪獣が激突をくり返すスリルいっぱいの世界になるらしい。
それならそれで楽しそうだから別に良いかとつぶやいたら、隣のナミに「馬鹿ね!そんな世界だったらあんたは生れてないのよ!」としかられた。

途中でカーテンが開いて左右のかべもスクリーンになり、それがガラスの床に映って反射して、ますます迫力を感じられた。
津波に襲われるシーンでは、ナミの体がビクンて震えるのが解ったから、俺は少しでも安心するように肩を抱いてやった。



波に呑まれたのは俺もだけど、そのせいで母ちゃんを失くしたナミは、よけいに傷が深いんだ。
解ってて連れて来て、ヨットに乗せようとするのは、自分でも残こくだと思う。
思ってもナミに海を嫌って欲しくない、いやナミが海を嫌うはず無いんだ。
だってナミの名前は、あの海が好きだった母ちゃんが、「運命の波に負けるな」って意味で付けたものだから。



クライマックスは天井までオープンして、客席は海に包まれた。
イルカやクジラが泳ぐ宇宙の向うに、月と地球が浮んだ所で映画は終った。







…これで今年の連載分は最後だと思う…いや正月中に後1話位書きたいけど。(どうかな~)(汗)

「フライト・オブ・ワンダー」、プロデュースした人の思惑を外れて、ホラーな楽しみ方が出来るような。
独りで乗ると、あれ、マジで恐いですぜ。(笑)

ルフィの言う電車のよーなバスのよーな店はナッシュマルクト、詳しくはまったりさんの記事で。

そして写真は巨大万華鏡的アミューズメント、kirara館で御座います。
アミューズメント施設の中では個人的に1番気に入っている。

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