goo blog サービス終了のお知らせ 

瀬戸際の暇人

今年も休みがちな予定(汗)

君と一緒に(ルナミ編―その4―)

2009年10月11日 15時20分10秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
前回の続きです。】




結局長崎空港に着陸するまで、飛行機はグラグラ揺れっ放しだった。
ジェットコースターに乗ってる気分で俺は楽しかったんだけど、ナミは顔面そーはく状態で死ぬほど恐かったらしい。
降りてもショックが治まらず、俺の腕をつかんだまま離さなかった。

「もう嫌だ!すっかりトラウマよ!暫く飛行機乗りたくない!」
「んな事言ったって、帰りにまた乗るんだろ?」
「それ思うと今から憂鬱だわ…嗚呼、東京まで電車でノンストップで行けたら良いのに…!」
「大丈夫だって!俺、運良いし♪一緒に居れば落ちねーさ!事実あんだけ揺れても落っこちなかったろ?」
「根拠無い慰めは止めて!地球に重力が働いてる限り、上に在る物体は下に落ちるのが自然の法則、即ち全ての飛行機は落ちて当り前の物なんだから!」
「まー無事に着いたんだし、良いじゃねーか」
「無事で済んだからこそ言える事よ!…ドリンクサービスも無いなんて経験…初めてだわ、私…」

涙目になったナミがつぶやく、それを聞いた俺ははたと思い出した。
機内サービスにもらうはずの飲物をもらってねェ事を!
揺れてて危ねーから配らねーとか何とか、着陸した時にアナウンスで謝ってたけど、だったら降りる時にカップに入れて渡しゃ良いじゃねーか。
サービスするつもりが有ったなら、根性入れてなしとげろよ!
ちきしょー、ちきしょー、ちきしょー!

「帰りの飛行機乗った時、行きで飲めなかった分合せて、倍は飲んでやる!!」
「まったくあんたはどうしてそんなに意地汚いの!!」

到着ロビーを通る途中で宣言した俺の頭を、ナミがバチィン!!と思い切り叩いた。

「普段飲めない、拘りのドリンクって訳でもないでしょォ!?」
「けどもらえるはずだった物がもらえねーと、すっげー損した気分になるじゃんか!」

じんわり痛む後頭部をさすりつつ、俺はナミに不平をこぼした。
2人であーだこーだ言い合いながら、足は自然と前に進む。
気が付いたら階段を下りてて、一緒に降りたはずの乗客の姿は、1人も居なくなってた。
しゃべってる間に追い抜かれちまったらしい。

白いトンネルみてーな通路に出たら、両側にハウステンボスのポスターがベタベタ貼ってあった。
ピカピカ光る建物にクリスマスツリー、その前で男と女が乾杯してる写真。
そうだ、今はクリスマスシーズンなんだ。
眠かったからうろ覚えだけど、羽田にもでっけークリスマスツリーが飾ってあったのを思い出す。
ポスターを見てる内に早く行きたくてウズウズした俺は、ナミの腕を取って引っ張り駆け足で1階に下りた。

「ちょ!急いだら危ないっ…!」

階段からこけそうになったナミが文句を飛ばす、けど早く連れて行きたいんだよ俺は。
下りた前には貼り紙された柱が建ってて、右へ行けば高速船乗場、左へ行けばバス乗場が有るって、矢印が書いてあった。
どっち使ってもハウステンボスへ行けるらしい。
右に折れて進もうとした所で、ナミが急に足を止めた。

「バスで行くって決めたじゃない!」

反動でのけぞった俺に、ナミが恐い顔して言った。

「第一、予約しなくちゃ乗れないのよ!」
「予約した方が確実なだけで、当日乗船券買ってもOKって出てただろ?」

行く前に2人で行き方をネットで調べたから、それはナミも承知してる。
折角だから俺は船で行こうって主張したんだ。
バスなら近所でも乗れるけど、船に乗るのはめったに出来ねーから。
けどナミは船は絶対嫌だってゆずらなかった。

「高速船だと片道2千円もかかるじゃない!バスだったら片道1,100円、断然お得だわ!」
「往復利用すんなら、帰りは1,600円になるらしいぞ――」
「400円割引するから何!?結局はバスを往復使った方が1,400円安いでしょ!」


はっきり言ってナミは超ケチだ。
でも嫌がってる理由はそれだけじゃない。


俺の顔につば飛ばす勢いで吠えたナミは、さっさと空港を出てバス乗場へ向っちまった。
へそを曲げたナミは面倒だからな、諦めて後を追おうとして、ふと右側に目をやる。
そこにはカステラとか角煮まんとか、美味そうなもんの名前を書いたのぼりを立ててる土産屋が並んでた。
寄りたくてつい足を止めて眺めてたら、外に出る自動ドアからナミの顔がのぞいて、「早く来なさい!!バス待ってんだからね!!」って怒鳴られた。
おっかねーんで急いで空港を出たら、ナミから「はい!」ってハウステンボスまでのキップを渡され、左奥に停まってたバスに連れて来られた。

俺が乗り込んだ所でちょうどドアが閉まり、バスが走り出す。
運転席の後ろに有った荷物置き場に、背負ってたリュックを置いた俺は、ナミと並んで左側後ろの窓際席に座った。
俺達以外には8人位しか客が居ねェ、正直少ねーと感じた。
1人1列独占出来るじゃんか。
「ハウステンボスって人気無ェーのかな?」ってナミに聞いたら、「そういう事を声に出して言わないの!」って、また頭を叩かれた。
ナミは直ぐに暴力ふるうから困る。

空港から離れたバスは、長くてでっかい橋を通って行く。
両側には海が広がってて興奮した。
天気は思ってたよりかは悪くなく、雲のすき間から時々太陽が見えた。
ただ風が強くて波が荒いのは心配だ。
雲の流れが速ェ、目で追ってたら、隣でナミのふき出す声が聞えた。
不思議に思い振り向いた俺の顔を見て、ますます笑い転げる。

「海に挟まれた景色を眺めてたら、着陸する時のあんたの様子思い出しちゃって…あんたったら不謹慎にも、『やべェ!!墜落するぞ!!』って叫ぶんだもん…恥ずかしいやら、おかしいやら…」

その言葉を聞いて、俺の頭にも記憶がよみがえる。
雲の下に降りて街が見えて来て、海面近くまで下がって来たのに、ちっとも空港が見えて来ねェ。
それでなくてもガタガタ揺れてたから、俺はてっきり海に墜落すんのかと焦ったんだ。
実は長崎空港は海上に在る空港だって、着陸してからナミが教えてくれた。

「けどナミだって、あの時はマジんなって青ざめてたじゃねーか!」
「状況が状況だったもの、一瞬本気にした事は認めるわ。無事着陸出来て心からホッとしたなァ…もうあんなスリルは懲り懲りv」

ムキになって返した俺に、ナミは余裕のウインクを飛ばす。
その笑顔が憎らしいほど可愛くて、俺はそれ以上反撃出来なかった。


ナミはメチャクチャ可愛い、近くで見慣れてて意識し忘れる事も有るけど、TVに出るアイドルよりもずっと可愛いと思う。
クラスの奴らは女に興味を持ち出した頃、たいていがアイドルにはまったけど、俺にはナミが居たから全然はまれなかった。


でっけー橋を渡り切ったバスは、街の中を通って行った。
街って言っても高いビルなんて無い、村って呼んだ方が正解かもしんねェ。
田舎道(「カントリーロードって表現して」ってナミから怒られたけど、意味は変んねーよなァ?)をしばらく走った後、左側に海が広がった。
バスは海岸に沿って走ってく。
同じく海岸に沿って線路がしかれてて、1度だけバスを追い越してく電車を見た。
煙を吐き出してたから汽車だったのかもしれねーけど…ビックリしてナミに言ったら、「まだ電化されてない線なのね」って答えた。

「列車で海岸沿いを走って行くのも素敵だろうなァ…」

ナミがうっとりした顔でつぶやく。
同じ事を考えてた俺は、ナミを両手で思っ切し抱きしめた。

ナミは今でも海が好きで居る、それが解って、とっても嬉しかったんだ。

2人顔を見合わせ、にっこり笑う。

海は時々建物や木に隠されたけど、走ってる間中ずっと窓から見えてた。
かすんで空に溶けてる水平線を、俺は夢中で眺めてたけど、いつの間にかナミの肩に寄りかかって眠っちまってたらしい。
揺さぶられて起された時には、ハウステンボス駅が横に見えていて、バスは左に折れ曲り、橋を渡ろうとしてる所だった。

「到着する瞬間は、ちゃんと起きて、目に焼き付けたいでしょ?」

寝ぼけた目をゴシゴシこする俺の顔をのぞきこんでナミが笑う。
橋を渡ったバスは、また左に折れ曲って坂を上り、駐車場を抜けてバス停に到着した。
窓の向うには外国みたいな景色が広がってる。
青い屋根に赤茶色の壁したでっけー洋館を目にした俺は、停車するのを待たずに、誰よりも先に降りようと立ち上がった。






…大村線ハウステンボス~諫早間は未だ非電化だそうで、1度煙を吐きながら通る列車を見た時はかなり驚いた。(で、帰ってからネットで調べた訳だけど)
バスで行くにしろ船で行くにしろ、眺めは最高に良いです。
ただバスはハウステンボス直行ではなく、着く迄に3箇所の停留所に停まる。(降りる人、停留所で待ってる人が居なけりゃ通り過ぎる、但し川棚バスセンターって所だけは絶対停まる)
行きはともかく、帰りは疲れるから避けた方が無難。
けど船だと波が荒い時は欠航しちゃう事が有るんだよねえ。(汗)

クリスマスシーズンは中旬頃から混み始める(と思う)。
初旬で平日だと、ガラガラで哀しかった記憶が…けど今年は心配したファンが駆け付けたりして、例年より来場者が多い可能性は有る、てゆーかそうであって欲しい。(汗)
私はハウステンボスに行くなら絶対クリスマスシーズンだと考えて居るんだけどね。
間違い無く国内で最もイルミネーションが綺麗な場所ですよ。(観るポイントが多いから、混雑が分散するのも有難いし)

写真は08年クリスマスシーズンに行った頃、入国棟(陸路で来た場合の入口)を撮影した物。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

君と一緒に(ルナミ編―その3―)

2009年10月08日 22時40分40秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)





次の日目を覚ましたら、俺は羽田空港にワープしてた。
しかもいつの間にか両手におにぎりが乗っている。
乗ってるからには食わねーともったいねーから、意識がもーろーとしてる頭でモシャモシャ食う。
隣の席にはナミが居て、俺の顔を見ながら、ぶつくさ文句をこぼしてた。
高い声が耳の奥まで入って来るんだけど、眠くて何を言われてるんだかさっぱり解んねェ。
ボケッと顔をながめてたら、飯がのどにつまった。
ゲホゲホむせる俺の背中を叩きながら、ナミがコーヒー牛乳のパックをよこす。
飲んでる内にようやく頭がさえて来て、じょーきょーがつかめた気がした。

そうだ、俺、これからナミと旅行すんだっけ。
そんでプロポーズすんだっけ。

だからナミと一緒に羽田空港行って…けどおかしいな?その前にモノレールとか乗ったはずなのに、ちっとも記憶が無ェぞ。
朝起きて着替えて飯食って家出た覚えも無ェ。
昨夜ゾロと別れた後、持ってく荷物をカバンにつめた覚えすら無ェ。
流石に焦って「カバン!!」と叫んだ俺の反対側を、ナミが不機嫌な顔で指差した。
見れば隣の席に俺愛用の赤いリュックが置いてある。
開けて中を確認したら、財布から着替えまで、全部つめてあった。

「御主人様の旅の仕度は全てこの私が整えておきましたわ」
「そうかーありがとうな、ナミ!助かったぜ!」
「屈託無く笑って言うな!!高校生にもなって人に荷作りして貰うなんて、恥を知りなさい!!」

素直に礼を言ったのに、ナミは短いオレンジの髪を逆立てて怒る。
脳天にかまされたチョップのおかげで、俺の頭はますますはっきりした。
つまりナミは俺に面倒かけさせられた事に腹を立てて、不機嫌で居たわけか。
合点がいってひざを叩く俺の横で、ナミはなおも小言を続ける。

「…自分から『当日は早朝4時起きだぞ!絶対遅刻すんなよ!』なんて念押ししといて、暗い内からお弁当作って迎えに行ってみれば、荷物を準備した様子すら無く、布団の上で寝こけてんだもの。
 赤ん坊の頃からの付き合いで知り尽くしてた積りだったけど、此処までずぼらで世話が焼ける奴だとは知らなかったわ!
 私はあんたのママじゃないっつーの!」
「ところでナミ、俺まだ朝メシ食ってねーんだけど」
「今あんたが貪り食ってた握り飯は幻覚かァー!?」

ナミのかん高い声がロビーに響いて、周りに座ってた大勢の奴らが、こっちに注目した。
ばつが悪くなったのか、ナミが大人しく座り直す。
その時ちょうど飛行機に乗れってアナウンスが流れた。
ロビーに居た奴らがいっせいに立ち上がって並ぶ、俺達もカバンを持って並んだ。
と、俺の前に並んで立ってたナミが、急に振り返って言った。

「あんたと結婚する女は苦労するわね」

クスクス笑って言った言葉に、俺は何だかすげー腹が立った。


他人事みたいに言ってんじゃねェ。
苦労すんのはおまえだぞ。
「ママじゃない」っつって、母ちゃんみてーな態度すんな。


言い返そうとしたけど、後ろから押されたせいで、思いついた言葉は飲みこんじまった。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「俺、窓際な!」

飛行機に乗った俺は、前に立ってるナミを押しのけて、窓際の席を確保した。

「別に取りゃしないわよ!」

俺の主張を聞いたナミが、ため息吐いて笑う。
構わずに、のぞき穴みたく小せェ窓にはりついて、外の景色をながめる。
夜だった空にはいつの間にか太陽が昇ってた。
滑走路から飛立ってく、俺達が乗ってるのとそっくりなジェット。
後少ししたらこのジェット機も飛立つんだ。
待ち切れなくって「ワクワクすんな♪」っつって、ナミに同意を求めようと振り向いたら、隣に置いてたリュックが消えてて、代りにナミが座ってた。
自分のカバンと一緒に、ナミが上のたなにしまってくれたらしい。
お礼を言おうとした俺の顔をジロリにらんで、ナミが皮肉っぽくつぶやいた。

「…こういう時、躾の行き届いた男なら、女性に窓際の席を譲って、鞄を仕舞って下さる配慮を見せるんだけどなァ」
「なんだ、おまえも窓際の席に座りたかったのか?だったらジャンケンして決めよーぜ!」
「そうじゃなくって、も少し大人の男らしくエスコートして欲しいってェの――」

言い合ってたそこにスチュワーデスが来て、シートベルトを締めるよう注意された。
2人して慌てて締める。
確認したスチュワーデスが去った後、ナミはもう1度ため息を吐いて笑った。

「ま、いいか。ルフィにそんな気配りされたら、鳥肌が立っちゃうもん」
「なら始めから言うなよ!第一エスコートなんてコート俺知らねーぞ!ペチコートの親せきか!?」
「だけどさ、言いたくなるじゃない?初めての2人っきりの旅行なのよ。彼女として少しは甘えさせてv」

俺の肩にもたれかかってナミが言う。
オレンジみたいな良いにおいがするほほは、赤く染まってた。
きっと俺の顔も赤くなってる。
胸ん中じわじわ嬉しさがこみ上げて来て、ナミの手をギュッと握った。
ナミの円くて茶色い瞳を見つめ、「しししっ♪」と声に出して笑う。
ナミもにっこり俺に笑い返した。


――『男』としてじゃなく、『弟』みたいな感覚で付き合ってんのかもしれねェぞ?


違うぞ、サンジ、俺達愛し合ってる。
だからずっと一緒に生きてくんだ。
俺にはナミが必要だからな。



ゴゴゴゴッってものすごい振動が伝わって、ついにジェット機が飛立つ。

一気に雲の上まで上昇した所で、機体は安定したみたいだった。
「すげェ、今日は快晴だ!」って言ったら、「雲の上だもん。当り前でしょ」ってナミに返された。
そうか当り前か、って事はパイロットは青空を人より沢山見てるんだなーって思ったら、うらやましくなった。

すっきりまぶしい青空の下、白い雲がずーっと広がってる。
まるで雪原だ、スキーが出来たら楽しいだろうな。
いや雪原だけじゃなく、海の波にも似て見えるぞ。
そういや「雲海」って言葉をどこかで聞いたっけ。

「なァ、ナミ!雲が広がってる景色って、海にも見えねェ!?」

窓にはりついたまま、ナミに声をかける。
ナミは隣で音楽を聴きながら、乗る前に借りた経済新聞を読んでた。

空の上にポッカリ浮んでる半月に気付く。
太陽が昇ってるのに、月も昇ってるって、なんか不思議だよなー。
昼と夜がくっ付いた空の下、真っ白い雲の海が広がってる。
空想の中で俺は雲の波にヨットを浮べ、風を受けて走ってた。

「楽しいだろうなー…空は海と同じで果てしないから、どこまでも行けるし…」

「ね、ねェ、ルフィ!真下を見て!富士山よ!」

想像の海を冒険してた俺を、ナミの声がさえぎった。
後ろから肩越しに、ナミが真下を指差してる。
見下ろしたそこには、雲の海から頭を突き出してる白い山が在った。

「ホントだ!富士山だ!上から見ると口開けてるみてェだな!」
「噴火口を見下ろすなんて、飛行機に乗らなきゃ出来ない、新鮮な体験よねェ!富士山に積ってる雪と雲が続いて、見分けが付かないのも面白い♪」

肩にかぶさった姿勢のまま、ナミが俺の目を見て話し続ける。

「富士山上空は気流が強くて、国内で最も危険なフライト区域なんだって。この飛行機も揺れるかも…」

直後まるでねらいすましたみてーに、飛行機がストーンと下に落ちた。
墜落まではしねーけど、一瞬無重力を味わって、俺でもヒヤッとした。
ナミが背中に思い切りしがみつく。
どうせなら前に回って欲しいと、おしく感じた。
アナウンスで機長が「今日は風が強くて揺れるけど、安全に問題は有りません~」とか何とかしゃべる。
下に見える雲が段々とぶ厚くなってくように感じられた。
長崎は天気が悪いんだろうか?天気予報を見て来なかったから判んねーや。
海が荒れてたらヨットに乗る計画がオジャンになっちまう。
揺れる度にナミにしがみつかれて嬉しい反面、俺の胸には不安が雲みたくどんどん広がってった。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

君と一緒に(ルナミ編―その2―)

2009年09月23日 21時43分39秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)





サンジが酔いつぶれた所で、俺達の忘年会はお開きになった。
バイクで来てたウソップは店を出てそのまま家に直帰、自動的にサンジを送る役目は俺とゾロに任された。

俺とゾロは帰り道同じ方向で、カラオケ店から歩いて行ける距離だけど、サンジの家は逆方向で、電車に乗って1駅行った先に在る。
元からグルグル巻いてる眉毛みたく、目をグルグル回しちまったサンジに、ゾロはブツブツ文句を言いつつも、肩を貸して引きずって歩いた。
一緒に肩を貸して引きずって歩く俺は、文句を聞いてて「酔いつぶしたのはゾロじゃん」って言いたくなったけど、めんどくさいんで黙っておいた。

行きに通った時にぎやかだった商店街は、帰る時には全部店じまいしてて真っ暗だった。
サンジを間に引きずる俺達の他誰も通ってない、なのにクリスマスソングはガンガンうるさく響いてる。
店の人がスイッチ切るの忘れちまったんだろうか?
俺達しか居ないのに一生けんめー楽しく盛上げてる音楽が、何だかむなしくてさびしく感じられた。

それから駅に着いて電車に乗って、また少し歩いてサンジを家に届けた俺とゾロは、来た道を戻って逆方面の電車に乗り、元居たカラオケ店の在る通りに辿り着いた。
そこから数m一緒に歩いて十字路に出た所で、「またな」っつって別れようとした俺をゾロは引き止め、コンビニでビールを4本買った後、近所の公園に誘った。

そこは俺が小さいころ「汽車ぽっぽ公園」と呼んでたとこで、階段でつながれた上と下、その内の上の遊び場にはデゴイチに似た機関車が飾ってある。
小さいころはその機関車の中に入って遊べるようになってたのに(もちろん走りはしなかったけど)、久し振りに来てみたら金網で囲まれててがっかりした。
見回したら砂場の周りも金網で囲ってあったり、大好きだった箱ブランコが無くなってたりしてるのにも気が付き、俺はがっかりを通り越して腹が立った。
自分の大事な場所を荒らされた気がしてムカついたんだ。
そんな俺に向い、ゾロは「きっと変な大人が隠れないように、野良猫なんかに糞をされないように、子供が怪我しないようにする為の措置だろうよ」って冷静に言った。

「時が経っても変らない物なんて何処にも無ェさ」

ゾロはしゃべりながら入口近くのベンチに座り、全然納得出来なくて金網ん中閉じこめられてる機関車をにらんでた俺を呼んだ。

「飲み足りなかったし…訊きてェ事も有ったしな」

プシッと鳴らして缶を開ける。
足を組んで座った横に、俺も同じポーズで座った。
間に置いてあった缶の内の1本に手を伸ばす。
したらゾロが無言で手の平を差し出した。
おごりと思ったのに違ったらしい。
納得いかなかったけど、旅行前に戦って疲れたくなかったから、大人しく払ってやった。

しばらく並んでビールをゴクゴク飲む。
一際寒くて強い風が、俺とゾロの足下にたまってた枯れ葉を吹き飛ばした。

公園には桜といちょうの木が植えられてる。
真っ白な外灯の光に照らされてるいちょうは、黄色く色付き始めたばっかだったけど、桜はすっかりハゲてさびしくなっていた。
一月前まではこんなに寒くなかったし、こんなに静かじゃなかったのになーなんて考えてたら、ゾロからとーとつに聞かれた。

「旅行って何時行くんだ?」
「明日」

答えたとたん、ゾロがビールをブッ!とふき出した。
そんなにウケる事言ったっけか?

「そうじゃねェよ!!だったらこんな所で寛いでる場合じゃねェだろ!!何故直ぐに帰らねェ!?」
「ゾロが公園で飲み直そうって俺を誘ったから」
「ああそうか、なら仕方…無くねェ!!んなら断って帰れ!!もう準備は終わったのか!?明日の朝は何時に起きるんだ!?」
「いや、全っっ然してねェ。そして明日は早朝4時起きだ」
「堂々と答えんな!!少しは焦れよ!!」
「ゾロが焦ったってしょーがねーだろ」
「そらそうだが……まァ、確かに俺が行く訳じゃねェしな…」
「準備ったってせいぜい財布と替えの下着だけ持ってきゃ良いだけじゃん。失くしちゃいけねーチケットなんかは、とっくにナミに渡してあるしな。5分もかかんねーで終わるさ!」
「何処へ行こうってんだ?」
「長崎の『ハウステンボス』ってテーマパーク」
「あ~あのオランダそっくりって言う……」

そこでゾロは苦笑いに似た、あいまいな顔をしてみせた。
初めて行くとこだし俺もよく知んねーけど、笑われんのはしんがいだ。
顔をムスッとさせた俺に向い、ゾロがフォローするよう聞いた。

「何故そこを選んだんだ?」

たずねられた俺は、手の中で缶をクルクル回しながら、下を向いて答えた。

「…今年の夏結婚した兄ちゃんが、彼女連れてった時、『ムード良かったぞ』って言ってたからさ…。
 『海の側だから、船に乗れて、ヨットにも乗れるぞ』って……」
「…船に……ヨットか……」
「それ聞いてナミ誘ったら、すっげー行きたがったし…。
 花がきれーな場所だって評判聞いてて、ナミも前から1度行ってみたかったらしい…」
「……ふうん……」

そこで再び2人同時に黙っちまった。
公園に俺達以外の影は見えず、外の道路を時々走ってく車の音だけが響く。
さっさと缶を空けちまったゾロは、両手でひねりつぶしてから、後ろに有ったゴミ箱に放りこんだ。
そうして新しい缶に手を伸ばして、またグビグビ飲み出す。
それを見て俺も急いで飲み切り、つぶした缶をゴミ箱目がけて放り投げ、もう1本取ろうとした。

けれどゾロの手が先に缶を取上げちまった。
また「払え」って事なのかと思い、しぶしぶ小銭を財布から取り出そうとした俺の顔の前で、ゾロの手がヒラヒラゆれる。

「ハネムーンを控えてる身なんだろ?飲み過ぎは禁物だぜ」

不意打ちでぶつけられた「ハネムーン」という言葉に、今度は俺がブッ!とふき出した。
冷たい空っ風に吹かれてるのに、顔が急速にほてって熱くなるのを感じる。
ニヤニヤ笑ってこっちを見てるゾロの顔を、俺はジロリとにらみつけた。



ゾロ・ウソップ・サンジとは、今のバイトで知り合ったけど、直ぐにいきとーごーした。
特にゾロとは無死二塁――あれ?何か違うな――とにかくそんな感じの親友になった。
仏頂面して無口な奴だけど、不思議とウマっつうかノリが合った。
「類稀なる方向オンチ同士、引き合う赤い糸でも見えたんだろうよ」なんて、サンジはしっけーな事ヌカシてたけど、初対面の時から俺はゾロの言いたい事が解ったし、ゾロには俺の言いたい事が解ったらしい。

けれどそんなゾロでも、この時の俺の気持ちは、聞かなきゃ解らなかったみたいだ。



「しかしマジでプロポーズする気か?おめェ高校卒業したら、直ぐにシャンクス追い駆けて、ヨットで太平洋横断するって言ってたろ?結婚後即嫁さん放ってく積りか?それ知って首を縦に振る女は居ないだろ」

「シャンクス」ってのはヨットで太平洋横断と世界一周に成功した男の名前で、俺がこの世で1番尊敬してる海洋冒険家だ。
それから十年後、今は東回り単独無寄航世界一周に挑戦してる。
出会った時、シャンクスにサインしてもらった麦わら帽子は、俺の大事な宝物だ。
高校卒業後は弟子になる約束を交わしていた。

「…断られっかな?」

カラオケ店でのサンジの言葉を思い出して不安になる。

「普通の女なら、断るだろうな」
「ショックだなー、断られたら……」

ゾロからそくとーされちまい、俺の背中から力が抜ける。
ズルズル背もたれをズッてく内、自然と夜空を見上げる形になった。
風に吹かれて晴れた雲のすき間から、星が光って見える。
1番明るく光る星、あれは北極星だろうか?

「…今すぐ結婚してくれって意味じゃねーんだ。そこに居て俺が戻るのを待っててほしいんだよ」
「『帰る港になってくれ』ってか?」
「違う!灯台だ!」
「大して変んねェだろ」
「違う!全っ然違う!」

振り向いた時には、ゾロは早くも3本目のビールを空けていた。
空になった缶を後ろにポイポイ放り投げてく。
前に向き直る途中で俺と目が合ったゾロは、兄ちゃんみたいな顔で笑って言った。

「ま、てめェの選んだ女なら普通じゃねェだろうし、大どんでん返しも有り得るんじゃねェの?」

それから立ち上がって、1人さっさと帰るそぶりを見せた。
門の手前で足を止めたゾロが、ニヤニヤ笑いを浮かべて振り返る。

「もう1つ、忘れちゃなんねェもん、思い付いたぞ!」
「何だ?」
「ゴムだ!旅先でも売ってるだろうが、念の為に持ってけ!――帰ったら初Hの感想を聴かせろよ!」
「1番はそれじゃねェ!!プロポーズが最重要だ!!」
「はは、顔が赤いぜ17歳!」

起き上がって怒鳴る俺を置き去りにし、ゾロは冷やかしながら公園を出て行った。
後ろ向きで手を振り離れてく背中を、同じく手を振って見送った俺は、また背もたれをズッてベンチの上あお向けになった。

さっき見た星は、まだ同じ位置で光ってる。
俺は頬に当たる風が冷たいと感じるまで、そこにジッとして居た。




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

君と一緒に(ルナミ編―その1―)

2009年09月16日 22時34分09秒 | 君と一緒に(ワンピ長編)
「俺さァ、今度彼女と一緒に旅行するんだ!
 そんでそこでプロポーズしようと思ってる!」

12月初め、コンビニで一緒にバイトしてる4人で、ちょっと気の早い忘年会をする事にした。
場所はとあるカラオケ店で、延長に次ぐ延長を重ねて盛り上がり、いいかげん帰るか~という声が出だしたころ、俺は思い切って重大発表をした。
それを聞いたとたん、隣で分厚い曲リストをめくっては指をはさんでたサンジと、その真向いで黙々とビールをピッチャーで飲んでいたゾロが、ものすごい勢いでこっちを振向いた。
続いてTV隣の席陣取って必要ねーのにこぶしを回しながら「いい日旅立ち」を歌ってたウソップが、マイクを口に当てたまま「こいつ死亡フラグ立てやがったァァァ!!!」と絶叫した。
叫びを聞きあっけに取られたのか、俺に何かを言いかけてたゾロとサンジが、口を開けたままの顔で固まっちまった。
エコーが完全に静まるまで、俺達4人は顔を見合わせ黙っていた。





                            【君と一緒に】
                         ―打ち上げろ!(ルナミ編)―





「…『死亡フラグ』ってどういう意味だよ?」

まだ耳の奥にさっきのウソップの絶叫がつまってる気がして、両指で耳をほじくりながらウソップに聞く。
「死亡」ってくらいだから良い意味じゃない事は察せたんで、聞く前からムッとした顔でにらみ付けてやった。
そんな俺を正面からおちょくるように、ウソップが説明する。

「ドラマなんかで観るだろォ~?『今度恋人にプロポーズするんだ』っつった直後に死んじまう奴がよォ~。今度今度とのたまう奴に『今度』と言う名の機会は訪れない、これ鉄則のお約束パターンなんだよ!」
「ウソップ、喧しいからマイク離して喋れ」
「お、悪ィ、つい手と同化しちまってた!」

隣からゾロに注意されたウソップが、マイクのスイッチを切りテーブルに置く。
そうして腕組み足を組み替え、さらにブツブツとよく解んねェ文句をつぶやいた。

「時は師走…クリスマスに正月という、2大お目出度イベントを控える時期に…おまえって奴は不吉なフラグを立ててくれるぜ…」
「バカかてめェ?『今度』って言ったぐれーで死ぬかよ!フィクションと現実こんどーしやがってはっずかしー!」
「いやいや、死にそうにねェ奴ほど、案外コロッと逝っちまうもんで…わっからんぜェ~?」
「死んでたまるかっ!!人に『死ぬ』なんて言う奴のが先に死ぬんだからなァ!!」
「小学生並の屁理屈捏ねんな!てめェに17歳ハイティーンとしてのプライドは無ェのかよ!?」

「待て待て2人共!今は争ってる場合じゃねェ!」

つばを飛ばしつつケンカをおっ始めた俺とウソップの間に、サンジがちゅうさいに入った。
俺達が黙った所で、サンジは脱いだジャケットの胸ポケットを探り、たばこを1本取り出して口にくわえる。
すかさずサンジの正面に座るゾロが、渋い顔で非難した。

「おい、屋内で煙草吸うなっつったろ!」
「るせェな、吸わなきゃ冷静に話せそうにねェんだよ!」

問答無用で立ち昇った煙が、クルクル回るミラーボールの光を反射する。
プラネタリウムみたく紫色に薄暗い部屋の中、TVに映ったジャイアンが俺達の代りに歌を熱唱していた。
「明らかに歌が上手くなっている」だァ?歌の上手いジャイアンなんてジャイアンじゃねーだろ!
そんな事を考えつつチラッと腕時計を見たら、残り時間後30分。
せっかくカラオケしに来たのに、歌わなくて良いんだろうか?

「なー、誰も歌わねーの?だったら俺、歌って良いか?」

どうも空気が重くて居心地悪かったんで、笑顔でたずねてみた。
サンジの前に置いてある曲リストを取ろうと手を伸ばす。
けどそれを阻止するように、サンジの手がリストを押さえた。
綱引き状態のまま、しばらく無言でにらみ合う。

「……なんだよ、歌わせろよ。室料もったいねーじゃん」
「歌いたけりゃ、こっちの質問に答えろ。ルフィ……てめェ…彼女が居るのか?」

テーブルの上の黒いプラスチック製の灰皿でたばこをもみ消した後、サンジは再び俺と向き合いすごんだ。
顔左半分金髪で隠れて1つ目しか見えないのに、両目でにらまれる以上の眼力を感じる。
なんでそんな険悪ムードを漂わせてるのか解んなかったけど、聞かれた俺は素直に答えた。

「うん、居る!」

直後、サンジの顔がクシャミを我慢してるブルドックみたくゆがんだ。
押さえてるリストを伝って、体がブルブル震えてるのが判る。
風邪でも引いたのかと心配になり、額に手を当てようとしたら、乱暴に振り払われた。

「17歳高校生のクセして彼女持ちだァァ!?しかも一緒に旅行してプロポーズだァァ!?十年…いや百年…いや千年…いや一万年早ェよ!!!」
「そんなに長い事経ったら俺も相手も死んじまってプロポーズ出来ねーじゃん」
「うるせうるせうるせェェェ!!!…クソォアアア!!!19歳大学生の俺が未だ清らかな体で日夜真実の愛を求めているというのに、今日びの高校生ときたら…!」

わめきながらサンジが頭をグシャグシャかきむしる。
そこへゾロがあざけるようにボソリとつぶやいた。

「童貞」
「黙れ緑のヒヨコ頭!!!俺は恋愛に崇高な憧れを抱いてるが故に、相手が中々見付からないで居るだけだ!!!」

プッツンしたサンジが怒鳴って返す。
しかし今の一言はそーとー効いたらしく、目尻には涙がたまっていた。

「プロポーズって、『ナミ』さんにだろ?おまえより1つ上で、幼馴染の…」

俺の横でヘビみたく体をくねらせ独りで遊んでるサンジを無視して、今度はウソップが聞いて来た。

「おう、決まってんじゃんか!」
「……ふーん…」

サンジほどじゃないけど、ウソップの態度からも面白くなさげなにおいを感じて、首を傾げた俺はふと気がついた。
俺とウソップは学校は違うけど、同じ高2で17歳、先を越された気がして面白くねーんだ。
そこまで考えついて、サンジの様子が変なのにも納得が行った。
ちなみにサンジは俺より2つ上、ゾロは先月誕生日を迎えたばかりの20歳、2人とも大学生だ。
そういやサンジの奴、ウソップに彼女が出来たって聞いた時も、ブッチン切れて暴れたっけなー。

「小坊がそのまんま高校入ったよな形のクセして、そこまでススンデルとはねェー」

俺の前でカルピスサワーをグビ飲みし、笑ってしゃべる声にはトゲが有る。
「ススンデル」の意味が今一理解出来なかったんで聞いてみた。

「だって一緒に旅行するよな仲なんだろ?って事は既にAとか…Bとか…Cとか……」

段々と声が小さくなってって、しまいにはゴニョゴニョとしか聞き取れなかったけど、大体の事は解った。
つまりナミとHしたのか、暗に聞いてるらしかったので答えてやる。

「俺とナミ、まだ何にもしてねーぞ」
「は?」

したらウソップの顔がモアイになって固まっちまった。
視線を左にズラしたら、ゾロまで同じ顔で固まっちまってる。
ダブルモアイだ、後998体位集めて並べたら、イースター島みたくそーかんだろうなーと思った。

「…何もしてねェって…ひょっとしてキスもか?」
「ああ、してねェ」
「…そ…それで一緒に旅行して…プロポーズをすると…?」
「そうだ、悪ィか?」
「悪ィかって…ああ貴方、事には順序ってもんが…!」

ウソップから質問を受けてる最中に、サンジが「ククククク…!」なんて笑いながら、ビヨンと起き上がりこぼしみたく起き上がった。
ゾロが「気色悪ィな!」と文句を飛ばす、俺も同感だった。
けれどサンジは遠巻きで居る俺達にかまわず、腕を組んで気色悪ィ笑いを止めない。
と、いきなりクワッて開いた右目が、俺の顔を真直ぐにらみ付けた。

「ウソップ、てめェの言った通り、こいつの告白は死亡フラグで当りだぜ!」

その言い方にすこぶる悪意を感じた俺は、負けねーぐらいすごんで聞いた。

「何で俺が死ぬんだよ?」
「物理的に死ぬって意味じゃねェ。精神的な死――即ち『失恋』するって言ってんだよ!」

さっきまでの暗黒落ち込みモードがウソだったみたく、サンジは俺に対して活き活きとせせら笑った。

「しかしよー、一緒に旅行すんのをOKしたって事は、プロポーズを受容れるかはさて置き、HはOKと解釈して良いんじゃねェ?」

火花を散らす俺とサンジの間にウソップが割り込む。
どうもウソップにとっては、俺のプロポーズが成功するかより、俺の初Hが成功するかが大問題らしい。
ゾロはといえば、口をはさみこそしないけれど、興味はシンシンらしく、大好きなビールをピッチャーに半分残したまま、ジッと話に耳を傾けている。
残り時間も少ないってのに、全員歌いもしないで、俺の恋の行方をさかなに激論し合った。
ウソップの「HはOKと解釈して良い」の発言を受けたサンジが不敵に笑う。

「一緒に旅行するのをOKしたって、体までは許してくんねェかもしれんだろ」
「一晩一緒の部屋に泊まって『何もしないで』ってか?そりゃねェぜ!」

自分が彼女と旅行して、言われた所を想像でもしたのか、ウソップが理不尽だとうったえた。
そんなウソップや俺に向い、サンジが年上風を吹かして解説する。

「そこが女性心理の難しい所でな。一旦は恋人に身を委ねる覚悟で来たものの、いざ初夜を迎えて一つ布団の上並んだ枕を見ている内に、『果たしてこの人と契る事が真の運命かしら?自分で自分の気持ちが解らない。嗚呼、お母さァ~ん!』と不安が募って拒んでしまうのはまま有る事」
「と、過去に拒まれた経験者は語っている」
「喧しいんだよクソッタレェェ!!!」

ゾロから茶々を入れられ怒鳴ったものの、直ぐにサンジは俺の方に向き直って話を続けた。

「おまえの彼女、1つ上で幼馴染だって?」
「おう、俺の家の前に住んでて、赤ん坊の頃から見知った顔だ」
「そこまで近しい付き合いだと、『男』としてじゃなく、『弟』みたいな感覚で付き合ってるかもしれねェぞ?」

俺が見ている前で、唇の端がクイッと持ち上がる。
内心そーいう不安を感じてなくもなかったんで、俺はことさらムキになって反論した。

「違う!ちゃんと俺が中学卒業する時に、『付き合おう』つって付き合ってんだからな!」
「まァ~、親友として陰ながら応援はしといてやるけどよ。フラレても切れて彼女を無理矢理押し倒したりすんなよ?
 大体てめェ、あからさまに泥縄なんだよ!
 プロポーズするなら社会人として身を立てられるような技術を持てよ!
 そしてマイホーム購入の為の貯金を始めろよ!
 そこへ行くと俺なんか実家は一流レストランだし、料理の腕も将来有望と謳われてるし、遊んでるように見えて貯金は万3桁まで届いてるし、身奇麗にして社交的かつ女性を楽しませる話術を日々研究してるし――」
「すげェなーサンジ!けどそんなに努力してて、何で彼女出来ねーんだ?」
「余計なお世話だクソッタレェェ!!!!」

心底不思議に思って質問しただけなのに、サンジにとってはちめいしょーだったらしい。
頭上に出現したブラックホールの重みに沈没しちまった。
悪ィ事言っちまったなーと済まなく思ってたら、その頭が直ぐにムクリと持ち上がる。
忙しい奴だ。
復活したサンジがキョロキョロと俺達の顔を見回す。
こっちが理由をたずねる前に、サンジの方が先に口を開いた。

「…さっきからどうも違和感持ってたんだが……ゾロ、ウソップ、おまえらルフィの彼女の事、知ってたのか?」
「ああ、前に写真見せて貰ったからな」
「俺なんか、カヤも合せて4人でWデートして、直に会ってまでいるぞ!」
「どうして俺だけ仲間外れにすんだよ!?紹介しろっっ!!今直ぐに!!」
「そうやって暴れるのが目に見えてたから、話すらして貰えなかったんじゃねェの?」
「緑のヒヨコは人語を喋らず黙っとれェェ!!!」

俺に代って真実を告げてくれたゾロにサンジがほえる。
言われた八つ当たりもこみか、サンジは俺のえり首を乱暴に掴むと、ヤクザっぽくドスを効かせた声でナミの写真を要求した。

「写メとか持ってんだろ!?命が惜しくば大人しく見せやがれ…!」
「持ってねーよ!!見せてほしかったら今度持って来てやっから待ってろ!」
「んだとてめェ…!?大事な彼女の写真を肌身離さず持ってなくて、よくそれで『付き合ってる』なんてヌカセるなァァ!!」
「あ、俺持ってるぞ!前にWデートした時、4人で撮った写真!」

よせば良いのにウソップが手を挙げる。
肩がけカバンから取り出したケータイを、サンジは光の速さでキャッチし、ピクチャ画面を開いた。

「その中の3番目の…そうそれ、4人並んでるヤツ。右端ルフィの隣に居る女が、噂の『ナミさん』だ!」

おせっかいなウソップが横に付いてマメマメしくガイドする。
その間サンジはじぃっっと穴の開くほど写真を見つめていた。

「……この…オレンジ色の髪の、極めて可愛らしいレディが『ナミさん』か…?」
「まーカヤには負けるけど、結構可愛い顔してるだろ?」
「……こここの…型崩れしていない豊かなバスト、きゅっとしまった蜂腰、逆ハート型のヒップラインと、美少女モデル真蒼の完璧プロポーションなレディが、ルフィの彼女……」
「んーそこは悔しいがカヤ負けちまってるな。デートしたのは夏だったから、尚更目立って判ったけど、すんげー巨乳だったぜェー!だがしかし胸は大きけりゃ良いってもんじゃねェ!!そう思わないかい?サンジ君!」

ウソップから能天気に同意を求められるも、サンジは無言で写真を見つめたままだ。
その内ブルブル体が震え出したのに気づき、俺の胸に嫌な予感が走った。
横に立ってるウソップも、俺の前に座ってるゾロも、同じく感じたらしい。
俺達3人の注目を集めたサンジが、地をはうような声を出した。

「……駄目だ…駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ…!結婚なんて許さねェ!プロポーズだァ!?とんでもねェよ!PTAと教育委員会は何してやがるんだ!おい誰か文科省に電話しろ!高校生の不純異性交遊許すべからず、一刻も早い指導が待たれる…!」
「この野郎…また発作起こしやがった!――ウソップ!アルコール度数の高い酒じゃんじゃん注文しろ!酔い潰して黙らせる!」
「えええ!?注文すんのはいいけど誰が払うんだよ!?」
「勿論この顔面ハーフサイズの男に払わせるに決まってんだろ!!いいから早く注文しろ!」

暴れるサンジの手足をゾロと俺とで押さえてる間に、ウソップがメニューを見ながら適当に注文する。
カクテルにサワーにウィスキー水割にビールに焼酎に日本酒…テーブルは瞬く内にグラスにせんきょされた。
それから俺達はサンジの口をこじ開け、手当たり次第に注ぎこみ、ついでにおつまみプレートに残ってたチーズポップコーンもブチこんだ。

「ハイハイ♪そんじゃ忘年会らしく行ってみよー♪
 サンジ君のっ♪ちょっと良いとっこ見ってみったいっ♪
 あ、イッキ♪イッキ♪イッキ♪イッキ♪…」
「離ぜ離ぜ離ぜェェェ!!!!結婚なんべばべっが!!!―ゲフッ!!――結婚ばんべ…お兄ばん絶対許ばべェがんばァァ~~~~~!!!!」

ウソップの音頭に乗って次々グラスを空けてくも、サンジはしぶとく叫び続け、酔いつぶれて静止したのは終了時刻を30分過ぎたころだった。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする