千の天使がバスケットボールする

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21世紀の潮流「アフリカ ゼロ年」

2005-07-13 23:26:11 | Nonsense
アフリカは遠い国である。地理的にも、人種、文化、民族、あらゆる点から遠い遠い国だった。だから私にとってはユーミンが歌う「夢の国 アフリカへ」でしかなかった。そんな遠い国に興味がなかった私が、遅ればせながらアフリカの現状を知ったのは、98年ノーベル経済学賞を受賞したインド出身、現在ハーバード大学に勤務しているアマルティア・セン(Amartya Sen)の貧困と経済をテーマにした著書による。
1994年アフリカのルワンダで、ツチ族とフツ族の対立が、80万人もの大量虐殺をうんだ。戦争とは違った民族対立によるこのような大量虐殺は、あまりにも信じ難いショッキングな出来事である。それから10年、NHKで「21世紀の潮流」-アフリカ ゼロ年という特集で、アフリカの貧困や飢餓、病気、内戦に苦しむ現状を4回にわたって放映される。その初回は「今世紀最悪の人権侵害」と国連アナン総長に弾劾されているスーダンのダルフール紛争だ。

20年もの間、スーダンではイスラム系の北部政府軍とキリスト系の南部の反政府勢力が内戦を続けていた。南部のアフリカ系黒人は、スーダン政府が自分たちを差別していると感じている。確かに同じカラードだが、北部のアラブ系の血をひく端整な顔立ちと、南部の黒人とは容貌があきらかに違っている。また90年代に入ると、油田をめぐって利害関係も対立してくる。油田をめぐって先進国の思惑もからみ、結局なにも手をうたなかった。経済制裁も、特にここ10年政府と一緒に石油開発を推進している中国は、この国の石油輸出額60%を占めることから、虐殺もあくまでも”内戦”と位置付け認めなかった。

しかし今年1月、内戦が終結。対立していた政府軍と反政府勢力が暫定政府をつくり、油田もわけあうという和平合意にこぎつけた。ようやくスーダンも貧困から脱却するという希望の兆しがみえてきた時に、ダルフール地方の黒人が平等な扱いを求めて空港施設を攻撃したことを発火点に、ダルフールでの虐殺がはじまったのである。
ある日突然、ヘリコプターで数千人近いアラブ系民兵ジャンジャウィード(アラブ語で「武器をもった馬に乗る人」という意味)が武器を手にやってきて、1000近い黒人を襲撃したのである。次々と家を焼き払い、学校、病院に火を放ち、男性は殺戮し、女性は陵辱した。その犠牲者の数は、10万人を超える。小学校で勉強中だった少女の黒コゲの遺体が、この虐殺が逃げるまもなく無差別に行われたことを物語る。

5000人ものジャンジャウィードを集結する力のあるリーダーのひとり、ティジャニ・ガドルは、こう語る。「黒人からとられたものをとり戻すだけだ。」その強いまなざしには、なんら罪の意識も感じられなく、あくまでも”正当防衛”を主張する。

対応の遅れる国連などの国際社会のなか、停戦協定の必要と住民の安全の確保を任務としてたちあがったのが、AU「アフリカ連合」である。自分たちでアフリカの紛争を解決したい、そう決意する3000人の兵士たちが、平和維持活動に努力している。彼らはひとつひとつ紛争の痛ましい痕跡を記録し、解決への糸口を探している。

スーダン政府はこの事件への関与は認めていないが、事実は違う。国際社会への協力を求めても、白人ひとりを派遣するのに、8万5000人の犠牲者が必要だといわれる。つまり白人ひとりにつきアフリカ人8万5000人が、命の価値である。私たち国際人として、なにが求められ、なにをしなければならないのか、そのあまりにも重い課題をつきつけられた番組だった。

AUのジーン・カズラ副長官のことばが響く。
「世界はパートナーとして協力しあうべきだ。紛争はグローバルな問題だ」
アフリカは遠い国ではない。

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10 コメント

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長いコメント歓迎です^^ (樹衣子)
2005-08-03 23:57:26
エイズのお話は、第4回の最終回です。3・4はまだビデオを観ていないのですが、結局すべての紛争、アフリカ問題の最大の犠牲者はこどもたちです。おそらくこの世に生まれる前からAIDEに罹患しているこどもが、次々と生まれているでしょう。それがどうしても、感情的に苦しいです。



>エイズ治療のコピー薬を知的所有権の侵害として訴え

治療薬は、すでに先進国で開発資金を大きく上回る利益をあげていると聞いております。ですからアフリカでは、もっと安価で売っても会社にとっても、ダメージはないはずです。資本主義社会における行き過ぎた利潤追求、つまりyutaさまのおっしゃるグロバリゼーションの問題にも重なるかと思いますが、それがこの土地の人々をむしばんでいます。

そして確かに今にはじまったことでない・・。
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Unknown (yuta)
2005-08-03 01:27:21
こんばんわ。たびたびのお邪魔恐縮です。

第一回の内容についても拝見させていただきました。ペトロニウスさんとのやりとりの内容もあわせて大変勉強になりました。ありがとうございました。

いま「アフリカ ゼロ年」のエイズの回を見たのですが、これは第三回の再放送だったのでしょうか。エイズ治療のコピー薬を知的所有権の侵害として訴え4年も裁判を長引かせる先進国の傲慢に憤りを覚えました。「グロバリゼーションの問題は、強いものがルールを決めてしまう傾向がある」とどなたかが発言していましたが、全くそのとおりですね。ただ、グロバリゼーションが叫ばれる以前から、アフリカは先進諸国の犠牲でした…。

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難民キャンプのこどもたちの笑顔が救いです (樹衣子)
2005-07-18 15:57:56
いつも真摯で鋭いコメントをありがとうございます。

拙い自分の覚書程度の感覚ではじめたマイナーなブログだったのですが、こうして鋭くスマッシュされますともっと先、もっと奥まで考えざるをえない義務感?、それも想定していなかった嬉しい副作用です。



さて、「贈与」というのはことばのあやで、自立を支援するための先進国から提供すべきものという表現でしたね。

上記のコメントを読み、また瀬島龍三氏を思い出しました。敗戦後、インドネシアにお金と技術を貸して、インフラ設備に貢献したのも瀬島さんだったと思います。そこに至る事情や”やり方”はどうであれ、また伊藤忠商事に莫大な利益をもたらすという目的もありますが、国際貢献したことにはかわらないと思います。



またご指摘のとおり、経済封鎖もペナルティも実質もっと悪い方へ転がる転機になります。闇にまぎれるばかり。

けれども国民を見殺しにしたスーダン政府に対して、はっきり国際的に裁く意味あいも必要かと思います。世界のルールというものを、教育する意味もあります。まあ、それも裏で政府と商人がつながっていたら効果ないかもしれませんが。。。
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アフリカの現実 (ペトロニウス)
2005-07-17 22:18:06
>実に暗澹とした気持ちになります。



僕は、あまりアフリカのことは考えないようにしています。というのは、考えると解決方法もなくやりきれないからです。



ただ、自分が社会に力を持つ人間になったら、最もすべき戦いは、アフリカの近代化だと思っています。苦しいですが、アジアはなんとか軌道に乗りつつあります。中東も南米も、まぁ、ギリギリ何とかというところです。アフリカだけが、あまりにも悲惨なほど部族社会から抜けられていません。



それと「贈与」は、開発経済学と自立化における最大テーマですが、僕の言う贈与は、単純にお金ではありません。資本主義のテイクオフに必要な全基礎インフラです。もちろん本当に必要なのは、統一意識を持ったナショナリズムによる動機が前提ですが、それ以外の全てです。





公共施設(とりわけ港湾・ダム・産業道路・鉄道・学校などなど)

それに伴うすべての官僚機構の整備・教育システム





等などです。アジアがなぜ近代化が早かったのかは、単純で、欧米と日本の植民地時代に、インフラの徹底的な投資がなされたこと、そもそもアジア1000年の教育体系のレベルの高さがそれを支えたからです。



しかし、このどれもアフリカにはありません。





・・・・それに経済封鎖やペナルティは、実はほとんど意味がありません。あれは、グローバル経済と産業と市場がリンク近代社会にのみ有効な政策であって、北朝鮮のような孤立経済圏やアフリカのような市場すらない社会では、ほとんど意味がないのです。現地の人が苦しむだけです。ましてや、アフリカはロウマテリアル(原材料)の宝庫で、世界中の石油メジャーや鉱物メジャーの暗躍の土地でもあります。だから、封鎖しても、かならず金は裏から流れます。それも武器として。。。。。





書いていて、辛くなってきました。
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解決には遠いです (樹衣子)
2005-07-17 21:22:22
本当に苦しい話です。

ペトロニウスさまのコメントを読み、考え込んでしまいました。実に暗澹とした気持ちになります。

現実的な解決策ですが、

>軍事支配権を行使できる調停者は、帝国アメリカでしかありえません

おっしゃるとおりにヒト、モノ、カネすべての資源が豊富で力のあるアメリカが主導して、力による民族紛争をおさえることが今となっては即効性がありそうです。けれどもその前にあきらかなルール違反に対しては、ペナルティを課し、経済援助封鎖をすべきだったでしょう。そして何よりも根本的な解決には時間がかかるけれど、教育が必要です。

南北問題の経済格差の解決に関しては、もう少々考えるお時間をください。”贈与”は、結局経済的”自立”をむしばむだけだと思うのです。



*番組放映時間がかわったようで、次回は23日(土)午後9時から

http://www.ontvjapan.com/genre/detail.php3?hsid=200507230031030&tikicd=0002&keyword=
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解決への現実的な提案 (ペトロニウス)
2005-07-17 00:17:37
重い話です。中東からのテロも、テロすらできない悲惨なアフリカの現実も、実際には国際的な独占・寡占資本主義が、いわゆる帝国主義政策によって収奪を繰り返し、そもそもナショナルな意識の弱かった地域に、民族主義と国際多国間貿易なんてものを押し付けたがゆえにはじまったものです。原因は、明らかにヨーロッパと資本主義なんです。



ただ、もう既に原因を論じても始まらない。もちろん、人間的に言えば、原因を作った国が、自国を犠牲にして南に援助すればいいのでしょうが、そんなことは、できっこありません。パワーポリテクスとはそういうものです。



原因を論じても意味がないのならば、現実的な処方です。現実問題を言えば、アフリカや中東の部族による憎しみを解決する方法は、部族の利害を圧倒的な軍事力で封殺するしかありえません。そして、論理的に考えてしまえば、現在の地球上で圧倒的軍事力で、うそ臭くはあるが『それなりの説得力を持って』軍事支配権を行使できる調停者は、帝国アメリカでしかありえません。



法の歴史を紐解けば、部族間対立や共同体の対立は、「目には目を」のハムラビ法典で、殺し合いどちらかがなくなるまで殺しあうしか解決は出来ません。それ以外の方法は、近代法による調停ですが、近代法は、圧倒的な武力・警察力による実力の行使を前提としています。法自体に逆らう人間への、絶対的な軍事力の行使があって初めて、近代法は効力を持ちます。



・・・・・そうするとあのうそ臭いコソボやソマリア・イラクへの米軍の出動は、正統性を持ってしまうのです。たとえ、それが米国のみの利益が目的でも、部族同士の皆殺し対立よりは、まだましです。まぁそんな利益もないので、早晩に米国はそれらの地域を見捨てますが。



でも、それも解決には程遠い。しかもあきらかに正しくない。。。



**********



最終的に、南への経済格差に発展する不平等は、



①先進国の贈与(一気に国民の生活水準を半分まで落とすほどの)







②南北連合国同士の最終戦争



以外には、極論ですが解決はないと思います。そう考えると、アフリカ問題は、全世界の最重要課題なのですね。



でも、少しでも解決に近づくまでに、まだ当分かかりそうです。苦しい話です。





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ヒロコさまへ (樹衣子)
2005-07-16 21:29:09
4回シリーズのこのスペシャルの2回めが、明日放映されます。

http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/tv/news/20050701dde012200026000c.html

当ブログの拙い文章を読むよりも、実際番組をご覧になった方がはるかに内容を深く感じられると思います。同居人の方が変な夢にうなされるということですが、AUがショッキングな写真を記録し公表しているのは、やはり国際的な理解と支援、後世の人々に歴史的な大きな教訓を残したいからだと思います。ですからあえて、私もなるべくなら使いたくない残酷な単語で、表現しました。

それから1:85000については、このような事件はあきらかに国連総会で採択したジェノサイド条約(Genocide Convention)集団殺害罪の防止および処罰に関する条約に違反しています。それにも関わらず中国の見解のように”内戦”と位置付けるのは、利権がからんでいるからです。他国のひとりの命よりも自国の経済利益が優先されている、それも含めてこの国では同じ人間なのに、あまりにも、本当にあまりにも命が軽視されています。

ところで、裁判員制度の勉強会はすすんでらっしゃいますか。私も死刑制度には、反対です。
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1:85000 (ヒロコ)
2005-07-16 11:27:39
同じ番組を観た同居人は、焼き尽くされた村に一匹だけ取り残された仔馬が鳴いている場面だったと言っております。しばらく変な夢ばかりみているようです。

それと、白人一人に対して85000人のアフリカ人の価値という現実が・・・言葉も出ないとも言っておりました。

ありがとうございます。このような記事は貴重です。
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経済が発展しているのに貧困がなくらない (樹衣子)
2005-07-16 09:35:13
なつかしいですか。私が読んだのは、「貧困の克服―アジア発展の鍵は何か 」です。

アマルティア・センに関しては、前年のノーベル経済学賞の内容がロバート・マートン、マイロン・ショールズによる金融工学の象徴ともいえるオプションの評価モデル「ブラック・ショールズ方程式」だったから、あまりにも両者がかけ離れているので特に印象に残っています。ノーベルの遺族は、経済学賞を認めておらず正確には「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞」です。私は経済学は、社会”科学”だと考えます。さらに社会科学であるべきだとも思っていたのですが、インド出身で貧困のメカニズムを研究するアマルティア・センの受賞(評価)には、なんのための経済学かということを改めて考えさせられました。

話しはそれるかもしれませんが、ペトロニウスさまは米原万理さんのお父様が裕福な資産家出身にもかかわらず、ある政党の党員で清貧な生活をおくっているというお話しをブログで話されていましたよね。本当の育ちの良い方には、時々そういう行動をする方がいらっしゃいます。貧富の差がすさまじいインド出身のアマルティア・センも、それに近い上流階級出身ではないかと思っています。
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なつかしい。 (ペトロニウス)
2005-07-16 03:32:31
アマルティア・センすごくなつかしいです。
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