千の天使がバスケットボールする

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トルコEU加盟への遠い橋

2005-11-10 23:33:41 | Nonsense
トルコの欧州連合(EU)加盟交渉が始まった。1987年欧州共同体(EC)に加盟を申請して依頼、20年に及ぶ悲願である。
人口7000万、中東最大の国トルコの、カリスマ的人気を誇るエルドアン首相は、この国家の繁栄をかけた交渉のために、すべての政策をコントールしているが、その道のりは困難である。予備審査の段階で、人権関係だけでも死刑廃止を含めて、14の国内法を改正する必要があった。ところが、ここへきて加盟への大きな壁としてたちはだかったのが、1915年当時のオスマントルコが、東部に居住していたアルメニア人を約150万人もの大量虐殺を行ったとする歴史である。

これに対するトルコ政府の公式見解では、伝染病と飢餓で数万人程度のアルメニア人が亡くなったが、”トルコ人による虐殺はなかった”としている。どちらが正しい事実なのか。2001年フランスのシラク大統領は、アルメニア人の主張を受けとめ、トルコ人による虐殺を歴史的事実として認める法律を公布。続いて、ロシア、ベルギー、イタリアなどの10数カ国が公式に認知。米国では、1990年に上院で4月24日を「アルメニア人大量虐殺を記憶する日」とする法案を通過させる。(但し、その後大統領の拒否により公式認定はされていない。)昨年、サンフランシスコの裁判所では、虐殺されたアルメニア人の遺族に対して、合計2000万ドルに及ぶ保険金を支払うよう保険会社に命ずる判決がおりた。つまり先進国では、論議されない日本を除いて、事実無根と非難するトルコよりも、論調はアルメニアよりなのである。

トルコの否定にも関わらず、長期にわたる虐殺の歴史を記憶し知らしめたのは、九州よりも小さな地域に居住している390万人のアルメニア人だけでなく、それ以上の民族が世界中に流浪の果てにいついた地域で絆を結び、音楽界のカラヤンのように専門性の高い職業、政治の分野で成功して影響力をもった実績にもよる。それは人口に比率して、驚異的な数である。そして彼らは、多くの肉親や友人を虐殺によって失われた記憶を数世代に渡って継承し続け、ネットワークを世界中に広めて”認知”させたのである。

トルコの安い人件費と豊富な労働力の魅力から、トヨタ自動車をはじめとして、日本企業も多く進出して親密関係にある。しかもEU加盟が実現すれば、対輸出関税の平均14%の関税が撤廃されることを考えると、この地は生産拠点として好ましい。それらを視野に入れて、昨年5月9日トルコと日本の共同事業である、全長13.7kmのボスポラス海峡横断鉄道トンネルの竣工式が催された。
「トルコ人の19世紀以来の夢がここに実る時がきた。この海峡トンネルは、我が国にとって重要なだけでなく、世紀のプロジェクト」と万感をこめて、エルドアン首相は語った。

ヨーロッパとトルコを結ぶ架け橋となるべく、ボスポラス・トンネルの開通は09年の予定である。しかし、両国と民族が事実を見つめ、謝罪によって過去の歴史を清算して、和解という架け橋を結ぶ日がやってくるには、その道のりは難しく遠いであろう。

トルコのEU加盟に関するG&A