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「サイボーグ技術が人類を変える」NHK立花隆 最前線報道

2005-11-13 12:33:06 | Nonsense


この画像を見て、また実際NHK番組でこの肉体の一部に組み込まれた機械が機能するのを確認して、驚きの声をあげるのは、レポーターの立花隆さんだけではないだろう。以前、弊ブログでもとりあげた池谷裕二さんの「進化しすぎた脳」を読んでいる者としては、科学への驚きよりも既に人間に応用されて実用化されているリアルな現場報告に、科学のスピードの速さに不安ととまどいになるのだが。

5年前から技術者と科学者を結んだ神経工学の分野が、急成長している。その最前線をレポートしたこの番組は、活字よりもわかりやすく、立花隆さんらしい選択と率直な感想をおりまぜた必見の番組であろう。

①脳の信号を利用するサイボーグ技術

電気技師であるジュシー・サリバン(58歳・画像左上)さんは、4年前に高圧電気ボルトに感電して、両腕をなくすという事故にあった。その後世界初のサイボーグ手術をシカゴのリハビリテーション研究所で受け、脳から腕に伝わる信号を大胸筋に誘導して、コンピューターが読み取り、考えるだけで義手が動くようになった。立花さんがサリバンさんのチップの埋められた胸を軽く押すと、腕時計をはめている部分をさわられた感触がするといい、さらに少し上の部分をさわると、そこはひじをさわられた感じと笑顔で応える。サリバンさんの腕は人工の機械だが、自分の腕が甦ってきた感じがするそうだ。

これらの驚異的な技術は、人間の脳からでる電気信号を読み取る技術が進歩したために、可能になった。
もう一人、22年前視力を失ったイエンス・ナウマンさん(画像左下)は、3年前にドーベル研究所で人工眼の手術を受けた。めがねにつけられたビデオカメラからの画像を直接脳に変換して送り込むのである。電圧をたちあげ、脳を振っているとやがて光りの点が見えてくるようになる。現在、この装置の開発者が亡くなったために機械の老朽化のメンテナンスができず、以前は100あった光りの窓が、6つしかないそうだ。私たちが見えている風景に比較にならないくらい乏しい窓にも関わらず、こどもの顔が見たくて手術を受けたナウマンさんは、光りが見えるのは喜びであると明確に語る。彼はまた、ピアノでショパン演奏を楽しむ。

現在、世界で20以上の機関で研究され、医療福祉から産業への応用もされている。筑波大学システム情報工学の研究室では、ロボットースーツが来年実用化される見込みである。このスーツを着用すれば、私だって軽々とGacktさんを持ち上げることができる。「取材すればするほど不思議」と立花さんはとまどいをみせる。

②脳は機械に合わせて進化する

やはり7年前、事故にあい腕を失ったKさん(画像右上)が、義手を使うようになった。最初に義手をつけた時は、脳もとまどいを見せ様々な場所で活動をしていたのだが、一ヶ月自分の手である感触の訓練をしたら、脳はピンポイントで手を動かす部分だけを活動するようになった。MRIで検査をしているKさんと電磁波で故障の恐れがあるために離れた位置にある腕が、研究者の指を動かしてくださいという指示どおりに動くのは、理屈ではわかっていてもやはり奇妙な感覚を覚える。いずれ考えるだけで、遠方にある自分の義手やロボットのからだを動かすようになるかもしれない。

次に9歳の人工内耳をつけた少年Y君が紹介された。音がコンピューターで電気信号に変換された後、聴覚神経に直接流れて聴こえるようになる。はじめは、ギシギシと不快な音もしたようだが、現在は人工内耳によって殆ど健康な人と同じように聴きとれるようだ。3人に1人が人工内耳をうめこんでいるが、ひとりひとりのコンピューターの調節と長期間の訓練が欠かせない。自ら進んでヴァイオリンを習いはじめて「きらきら星」を演奏するこの少年に、私はやはり感動せざるをえない。

③脳が機械で調整される

パーキンソン病やジストニア病に苦しむ人たちへの対処療法としての、脳深部刺激療法(DBS)。これは、脳に電極を刺して電気刺激を持続的に加える治療法である。病気の原因である脳の必要な対象部分のみに電気信号で刺激を与えて、症状を抑える療法だ。ドナルド・リトルドさん(51歳)が実践してくれたのだが、電気をきると、その時点での症状が5分後には顕著に表れる。これは鬱病患者にも応用されていて、悲しみを感じる中枢であるCg25の部分を刺激すると、患者は明るく前向きで積極性がでてくる。人間の精神に幻想をみたい立花さんは、「こんな療法で精神がかわるとは、人間について考え直さなければならない。」

④脳が全ての機械と直結した

「進化しすぎた脳」で最も私が興味をもった実験が、ラットを使った実験の映像で確認できた。脳とコンピューターを直結して考えるだけで動かすという「脳コンピューターサイエンス」その先に見えるのは、薔薇色の世の中なのか。この番組の最後をしめくくるにふさわしい内容は、医療福祉でも産業への応用でもなく、軍事利用であろう。米国国防総省(DARPA)では、考えるだけで動く兵器やより優秀な兵士を視野にいれ、こうしたサイボーグ開発をする研究所に高額な研究資金を援助している。科学の進歩に、人類の真の叡智が結びつくのが困難であることを、私たちは知っている。だからこそ「この技術をどう利用するのか、話し合える時間はあと数年しかない」と、グリーリー教授は警鐘を鳴らしている。

「この技術の可能性は、悪用されたらとんでもないことになる。人類に進化をもたらす究極的な科学なのか、許されざる人体改造なのか」
そう番組の冒頭で語る立花さんと同様に、ヒトは何処へ向かっているのか、私たちもその先をともに考える必要があるのではないだろうか。

■詳細はここへ NHK サイ

ちなみに、再放送もあるそうです。百聞は一見にしかず。見逃した方は、是非ご覧になって感じてください。