千の天使がバスケットボールする

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「アメリカSEX革命」  CBSレポートより

2005-11-06 23:17:38 | Nonsense
金曜日、深夜のCBSレポートは、毎回アメリカの様々な顔を見せてくれる。
数年前テレビのニュース番組で、エンブレムのついたブレザーにチェックのスカートという、典型的な一昔前の名門校の制服を着た女子高校生が、「結婚するまで、処女を守るの」と笑顔でこたえていた。ナチュラルな長い金髪と可愛い笑顔が、育ちのよさをただよわせて好ましくうつるものの、ブッシュ政権の保守回帰が、こうした未成年の思想にまで侵蝕しているという印象ももった。そうした保守回帰が、選挙戦での共和党ブッシュ大統領支持とからみあったキリスト教右派の、お金と宗教のからんだからくりである事実の一端を報道していたのが、先週のCBSの「アメリカSEX革命」。(レポーターはPlege記者)

米国では、1980年代半ばから、性病やエイズ感染症の予防から、ティーンエイジャーに性交渉の時は、避妊具(コンドーム)を使用するように指導をしていた。ところが、ブッシュ政権発足5年前から、政府はコンドームの使用に否定的な立場をとるようになった。その中心的な役割を担っているのが、「シルバーリング・シング」というキリスト教右派の宗教団体が主宰する純潔教育プログラムである。連邦政府と州政府は、数年間で100万$以上の資金をこの団体に提出して、奨励している。

ジョニー・パッティング神父は、1996年から「SEXは夫婦がするもの。シルバーの指輪をはめることによって、純潔を守ることを誓おう」と禁欲の美徳を説き、純潔を提唱している。ティーンエイジャーたちを集めて、Tシャツ姿でダンスや歌をおりまぜながら、3時間半もかけて説得すると、75%の参加者が、最終的に指輪をはめて「純潔の誓い」をたてる。指輪という常に肌身離さず身につけるアクセサリー、周囲の注目も集めいかにも高校生の関心をひきそうなデザインのアクセサリーを利用したのも効果をあげているのだろう。

このような純潔プログラムを奨めようと、連邦政府は1億6700万$の予算を計上。但し、この助成金の支給をえた団体は、コンドームの効果を訴えることはできない。マイナス面だけを強調するように義務づけられている。「シルバーリング・シング」でも、「コンドームを使っても、妊娠、性感染症、エイズは防げない。大人は君たちを騙している。コンドームは、病気はもちろん、精神も守ってくれない。安全だと思うのは誤りである。」と、会場にきたこどもたちにひとつの固定観念をすりこんでいく。
神父は、「30年の歳月と54億ドルの国家予算をつぎこんだ、”セイフティ・SEX”という教えが、アメリカのみならず他の国にどのような影響を与えたのか。」と、自らの活動への信念は揺るぎない。

しかし、こうした純潔教育の一貫であるコンドームを否定する教えに異議を唱えるのが、コロンビア大学のピーター・ビヤマン教授だ。彼は4700万ドルを投資し、2万人以上の若者の性行動と健康の調査プロジェクトを実施した。こうした純潔教育の効果として、初体験が18ヶ月遅れるメリットはあるものの、結局88%の若者が誓いを破り、初体験でのコンドームの使用比率が30%低く、後々影響を与えていると批判する。なにしろ、彼等は避妊具の使い方も、買い方も知らないのである。そして誓いをたてた者ほど、アナルSEXなどのリスクの高い性行動に走りがちであるという。周辺行為や、オーラルSEXは、性行為の範囲にはいらないという言い訳がつくからだ。

大統領補佐官担当、クロード・アレック氏は、政府が純潔教育を推奨する理由として、「性感染症や妊娠を完全に防ぐには、禁欲しかない」と断言する。その結果、1980年代では、純潔教育はわずか2%の学校でしか実施されていなかったが、現在では1/3の800万人の生徒が受講する。ジュージア州ユニオングローブ高校では、連邦政府から400万$の助成金をえて、「最善の選択」という純潔教育のプログラムを行っている。婚前交渉による精神的被害について、罪悪感から自己嫌悪に陥り、鬱病になると説明し、ここでもコンドームを使用の失敗例を強調し、生徒のコンドームの使い方の質問には答えない。何故ならば、郡の指導方針で、コンドームは正しく使えば安全で効果があることを教えるのが、禁じられているからだ。

コンドームは、現在のところ女性にとって最も安全で有効な避妊具だと思う。にも関わらず、それを禁じることは避妊そのもの、妊娠中絶さえも禁じる肉体の主権が誰にあるのかという疑問をもたざるをえないキリスト教右派の力を感じる。そこに見えるのは、力とお金にものをいわせて国すらも動かす宗教の圧政である。それは最高裁判事の選択にまで及び、結局ブッシュ大統領もキリスト教右派の束縛から逃れることができない。米国は建国の歴史も浅く、人種のサラダボールである多様性から、宗教という精神的なつながりにすがる姿というのもわからなくもないが、正しい情報を与えられずに、一方的な思想だけを植え付けられたこどもたちの行方に影を落とす懸念を禁じえない。確かに性モラルの低下には、問題がある。けれども源氏物語だけでなく、ロミオとジュリエットが出会ってベッドをともにしたのは、16歳と14歳だった。近代では、生物として生殖に適した年齢と、結婚年齢が乖離しているところに、そもそも押し付けられた純潔教育には無理がある。

連邦最高裁判所では、宗教団体の布教活動を支持するために、税金を使うことは違法だと判断している。ホワイト・ハウスでは、宗教意外の別な活動を行えば問題ない、信仰とは直接関係ないメッセージが別に設けている場があれば、助成金を与えても違法でないとしている。この法解釈が妥当か否かは、現在法廷で審議中である。
純潔プログラムを煙幕に、参加するこどもたちを利用して、自分たちの宗教や文化をおしつけるキリスト教右派。非科学的でおしつけがましい彼等の教えを聞きたくないと思う私は、不遜だろうか。