千の天使がバスケットボールする

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クリントン前大統領の「マイライフ」

2005-02-13 16:33:12 | Book
「共和党員のようないい暮らしをしたかったら、民主党に投票しよう」

そんなジョークが好きな私は、もし米国籍だったら民主党員になっていただろう。
前大統領で民主党員ビル・クリントンの自伝「マイライフ」の自伝は上(アメリカンドリーム)、下(アメリカンドリーム)あわせて、なんと1500ページを超える。

なんという饒舌な男なのだろう。

これが実際、私が図書館でこの2冊を手にしたときのその重さの感想なのだが、小学生時代は確かにそのおしゃびりによって成績をさげられたくらい、口から先に生まれてきた男。
けれどもこの本の厚さは、モニカ・ルウィンスキーのスキャンダルに興味がいくような御仁の期待を裏切るクリントンの政治家としての旺盛な活動をなによりも語っているのである。

ばくち好きの母親が3回も結婚歴のある男性と結婚し、妊娠中に相手のセールスマンの交通事故死によってクリントンは生まれたときから生物上の父親を知らない。クリントンという苗字の養父の家庭内暴力という生育歴をもちながらも、最後まで彼を憎むことなく愛情をもって理解しようという姿に、彼の政治家としての人柄があらわれている。そして、はじめは裕福なエリート家庭出身のような印象を与える彼が、中産階級出身ながらどのように大統領まで登りつめたかというアメリカンドリームまでの物語が上。そして下は自らまいたスキャンダル、冤罪ともいえるホワイト・ウォーター事件に翻弄されながら大統領として奮闘する、世界政治と米国経済の史実である。

オリンピックと同じ年に開催される米国の大統領選挙は、大きなお祭りである。そして映画「インディペンデント・デイ」のような各国のリーダーシップと舵取りをする地球号の船長の役割をになう人物を選ぶイベントといっても過言ではない。
国民健康保険制度の確立、中絶問題、銃規制法案、雇用問題、人種問題、教育、次から次へと溢れる事件や問題に精力的に対処し、貧しいものや救済を必要としているものたちへを支援する。その一方で中近東和平問題、コソボ、セルビア、人種問題、エイズ、テロ、宗教対立、IRA、北朝鮮、核実験、(こんなにも世界中のあちこちで大量の人々が無残な死を迎え、捨てられているのかと自分の無知を恥じるかぎりだが)米国の大統領として堂々とふるまい、手腕を発揮していく。どこかの国の総理大臣とは違うのある。
また時に一人の男性として家庭を語り、ユーモアを交えて語る彼の話は、充分おもしろい。そして莫大な金額を使ったマスコミを媒体とする中傷合戦、利益団体の圧力、すべてを宗教に委ねて判断する人々、根強い人種差別、そんな米国の”自由”のうらに存在する醜い面もみえてくる。政治家としての評価はいずれ歴史がくだすだろうが、政治家としての品格はともかくとして、すぐれた政治家だったと賞賛を贈りたいのが私の読後感だ。

多くの写真も掲載されているが、私のもっとも興味をひいたのが↓の写真だ。これは結婚式のときのツーショット写真だが、通常とは逆で花嫁が花婿の肩をくみ、理知的で落ち着いた花嫁を若くハンサムな花婿が喜びにあふれんばかりの表情でみあげている。
なんだかあまりにも有名なこの夫婦の関係を象徴している写真ではないか。
(自伝も「リビング・ヒストリー」の方がお薦め。ワシントン政治の滑稽な縮図がみえてくる。これもアメリカだよ。。。)