清水俊二『映画字幕の作り方教えます』文藝春秋、1988年
字幕の作成過程はこうです。
まず「シャシン(フィルム)」が到着します。「ツーカン(通関)」を通過すると,「ハコガキ[セリフを選ぶこと]」のための「シシャ(試写)」,「ガイトー(該当)[修正とか処理を加えないと税関を通関しない場面]」があると「ラボ[現像所などの工場]」で「ボカシ」を入れます。
「ハコガキ」が済むと「スパット[スーパー字幕をフィルムのどこからどかまで入れるかを決めること]」にまわし,「デルマド[セリフの始めと終わりの印]」をフィルムに書きこんで,「シャク[セリフの長さ]」をはかり,「リスト[スパッとされたセリフの長さを1巻ごとにわけたリスト]」をつくるのです。「リスト」がきて字幕作成の実際に入り,「ヨミアワセ[セリフの意味、口調のチェック]」に入ります。訂正を重ねて「ケッテーコー(決定稿)」ができます。
これを「カキヤ(書き屋)さん」にまわし,字幕カードに書き,「ヤキコミ[フィルムへのセリフの焼き込み]」。校正を経て「ショゴウ(初号)」が完成。
以上です。隠語を使って的確に説明されています(pp.115-122)。
昭和6年から50余年,2000本の字幕を手がけた著者の「字幕スーパー」人生。この世界では,教えるのは無理で,とにかく字幕作成の練習を重ねるしか上達の術はないとか。(とすると、本の題がおかしいのでは?)
随所に練習用のテキストがあり,模範解答があります。字幕作成は翻訳ではないこと,誤訳を指摘することの愚かしさがよくわかりました。
最後にシビアな話しがありました。「フルメタル・ジャケット」事件です。オリバー・ストーン監督が,一流の字幕ライターである戸田奈津子さんが作成した「字幕」に異議を申し立て(英語が適切に訳されていない、と),別の人があたって落着したことがあったとか。しかし、ピンチヒッターの字幕は、一般向けにはわかりにくいものになってしまいました。「Aクラスのスーパー字幕ライターの仕事が一監督の”芸術的良心”によって拒否されたのである。・・・・私たち字幕屋はこの事をきちんと頭に入れておくべきである」と(p.436)。著者の了解がこれです。
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