日本の財政が破綻寸前であることは、かなり以前から言われている。今や、世界で最悪である。いろいろな指標でそれを確認できるが、著者はまず政府債務残高の対GDP比に、次いで単年度の財政赤字の対GDP比が重要であるという。前者では日本の財政は200%を超えようとしている。アメリカ97.6%、イギリス90.0%、ドイツ86.9%、フランス98.6%などとくらべても桁違いに高い。EUでやはり財政危機に落ちいってるギリシャでさえ165.1%である。後者でも日本の数字は悪い。この指標で日本は8.9%だが、アメリカ10.0%、イギリス9.4%、ドイツ1.2%、フランス5.7%である。
借金の実額もあがっている。それによると財務省理財局の推計では11年末現在の国の借金総額は954兆4180億円、主計局の推計では12年度当初予算ベースの国の長期債務残高は737兆円(13年3月末)であるという。ものすごい額である。癌は国債の発行に他ならない。国の借金である国債発行額は毎年百数十兆円の規模である。
このような事態に直面しながら、日本財政がまだもちこたえている根拠として、巷間では日本は円を発行できるので国債の償還能力に問題がない、経常収支が黒字基調である、日本は先進国なのでデフォルトは起こりようがない、世界最大の貯金過超国である、この豊富な個人金融資産で国債がほとんど国内で消化されている、などを列挙し、ただちに危険水域に入るわけではないと指摘してきたが、著者はそれらひとつひとつの要因が危うくなってきていることを示し、問題の深刻さを喚起している。
さらに、EU各国の財政危機、ロシア、アルゼンチンのデフォルトおよびアジア通貨危機、アメリカでの国際の格下げの衝撃(2011年8月)との関連のなかで、当該問題を考察し、その行き着く先を展望している。
このままいくと日本の財政は破綻する。時間の問題である。それは7,8年後から10年後というのが著者の予測である(p。226)。その根拠は、「国債など政府債務を国内貯蓄でまかなえるかどうかは、一応個人金融資産1471兆円をベースに考えてよく、まだ317兆円も余裕があるわけだ。問題は、この数字が十分に大きいのかそうでないのか、と言うことである」が(p.157)、2021年には政府債務が個人金融資産を食いつぶすからである(p.226)。
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