経済学説史の本となると、決まったパターンがあって、ケネー、スミス、リカードからはじめて一方でマルクスへ、他方でマーシャル、ピグー、そしていろいろあってケインズで終わるものが多い。ケインズ以降は、モノグラフ的にフリードマン、サプライサイダーなどが扱われるが、つながりがよくわからないまま学説史の趣はなくなってくる。
しかし、この本は、ケインズからはじまって現代にいたる経済学の学説史であって、よくもわるくもケインズが起点になって、系譜がみとおせる。ありがたい本である。
ケインズから、サミュエルソン、ガルブレイス、ミンスキー、フリードマン、ベッカー、ボズナー、ルーカス、ハイエク、ポランニー、ドラッカー、クルーグマン、シラー、スティグリッツと続く。どの経済学者にも、生まれ、学歴、学問上の系譜、理論の概要がコンパクトに叙述されている。
要点が冒頭に掲げられているのもよい。たとえば、サミュエルソンについては、「サミュエルソンは大学院時代にケインズ経済学に出会い、アメリカを代表するケインズ経済学者となるが、彼の経済学の根底にあったのは新古典派の経済学だった。やがて、インフレと不況の同時進行とシカゴ学派の台頭によって、主導的地位を奪われることになる」とある。ミンスキーについては、「ケインズ経済学と新古典派の結合が進むなか、ミンスキーはケインズ経済学の核心である金融の不安定性と不確実性を繰り返し指摘し続けた。彼は政策を提言するよりは資本主義の脆弱性を強調したが、その主張は最近まで傍流にとどまっていた」とある。
現代の経済学の潮流を俯瞰するには便利な本である。
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