イリーナさんのベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏の第6回目です。32曲の全曲達成もまじかです。
空色の薄手のセーターに、グレーのスカートで登場したイリーナさん。
今回のメインは ≪ハンマークラヴィア≫です。スケールの大きい、演奏家にとっては技巧を求められるとともに、精神を働かせて演奏しなければなりません。難曲中の難曲です。ベートーベンは身近な人にこの曲で「ピアニストに少し働いてもらいましょう。この曲は50年ぐらい理解されないでしょう」ともらしていたそうです。19世紀のピアニストもこの曲を弾く人はまれで、例外的にリスト、ビューローなどが弾いていた程度だそうです。
最初から左手の10度のジャンプがあります。ファンファーレのように聴こえます。3楽章はソナタ形式の緩叙楽章です。第4楽章はトリルが使われ、晩年のベートーベンの新しい大切な表現手段でした。≪ハンマークラヴィア≫の 演奏時間は、繰り返しの部分をカットして、約40分。
ソナタ10番は明るい、ソフトな感じの作品です。1楽章は展開部で中身が濃くて複雑です。2楽章はマーチ風の変奏曲で、これはベートーベンの新しい試みだそうです。終りのほうにハイドンを思わせる部分があります。伝統にのっとりながら、オリジナリティをうちだした作品です。3楽章はリズムに特徴があります。ユーモラスなところなど。
ソナタ15番の田園と言うのはベートーベンがつけたものではありません。12,13,14番と実験的なソナタでしたが、この15番はグランドソナタとでもいうべき完成度の高い作品です。わたしはこの曲の1楽章のメロディがとくに好きですね。
◆ ピアノ・ソナタ 第10番 ト長調 op.14-2 (1799年頃?)
Piano Sonata No.10 in G major, op14 No.2
Ⅰ Allegro
Ⅱ Andante
Ⅲ Scherzo. Allegro assai
◆ ピアノ・ソナタ 第15番 ニ長調 op.28 (≪田園≫) (1801年)
Piano Sonata No.15 in D major, op28
Ⅰ Allegro
Ⅱ Andante
Ⅲ Scherzo. Allegro vivace
Ⅳ Rondo. Allegro ma non tropp
◆ ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 op.106 ≪ハンマークラヴィア≫ (1817/18年)
Piano Sonata No.29 in B-flat major, op106 "Hammerklavier"
Ⅰ Allegro
Ⅱ Scherzo. Assai vivace
Ⅲ Adajio sostenuto. Appasionato e con molto sentimento
Ⅳ Largo-Allegro risoluto
演奏後、デジタルカメラで一緒に写真にはいっていただきました。上記画像は、ハンマークラヴィア演奏直後のイリーナさんです。