嵐山光三郎の『文人悪食』を読みました。
この本は明治から昭和にかけて活躍した作家たちを、食の観点から見直した文学史です。どんな物を食べ、どんなこだわりがあり、どんな店に行ったのか。また、その食にまつわるエピソードをしっかり掘り下げた労作です。元編集者にして作家となった嵐山光三郎の面目躍如たる作品です。
僕は去年高1の現代文を担当して、久しぶりに明治から昭和にかけての文学史も教えました。その関係で、この時代はもう一度調べ直したのですが、いやはやこの本を読むとこの時代の作家のめちゃくちゃぶりがよく伺えます。酒が入ると誰彼かまわずケンカをふっかけた中原中也や、その中原中也に絡まれて避けていた太宰治のエピソードはとんでもないです。
熱海の料理旅館で豪遊してお金がなくなり、友人の檀一雄を呼んだけれど、持って来たお金で足りなくなり、檀一雄を人質において菊池寛にお金を借りに東京に戻りました。ところが、いつまで待っても太宰治から連絡がありません。10日後に旅館の主人と一緒に檀一雄が東京に戻ると、太宰治は井伏鱒二と将棋をさしていたそうです。そんな太宰治がこの頃書いたのが、親友のために命を張ったあの名作『走れメロス』でした。
ここのところ昔読んだエッセイを再読しています。懐かしいのはもちろんですが、すっかり内容を忘れているのにも愕然とします。