内田百閒の『御馳走帖』を読みました。
先日書店に行ったら中公文庫から内田百閒の著作が何点か復刻されているのを発見しました。さっそく『御馳走帖』を手に入れて読みました。御馳走とありますが、戦時中の物が無かった時代の随筆を中心に、貧乏生活の中で何とか都合をつけて手に入れたお酒や御馳走の話が中心です。それに御馳走とつけるのは、内田百閒らしい偏屈というか諧謔です。
夏目漱石の弟子で、頑固親父で知られる内田百閒は、黒澤明の映画『まあだだよ』のモデルとなった作家です。彼と教え子たちとの交友を描いた作品ですが、この御馳走帖でも、彼を慕う教え子や編集者、同僚などがたくさん出て来ます。健康を害して徴兵されなかった同僚が、彼に飲んでもらおうと、連日寒空の下に並んでお酒の配給のくじを引に行ったという話などは感動しました。
僕が内田百閒を気に入って読んでいたのは学生時代で、当時あった旺文社文庫で揃えていました。この中公文庫版も旧仮名遣いで発行されていて嬉しかったです。とはいえ、自分が百閒先生と同年代の親父になっていることに愕然としてゐるのである。
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