黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『漱石の長襦袢』半藤末利子(文藝春秋)

2010-07-27 | 読了本(小説、エッセイ等)
悪妻との風評が流布された漱石の妻・鏡子の真実の姿、家庭人としての漱石の人物像、漱石門下の木曜会の人々への評価、夏目家の思い出話…等々、漱石の孫(長女・筆子の娘)として生まれた著者の、夏目家とその周囲の人々を描いたエッセイ。

親族だからこそ語れる、知られざる漱石の姿が興味深かったです…逆に漱石好きな人は読まない方がいいかも、ですが(笑)。
割と率直にずばずば書いてしまわれてますが、末利子さんのチャーミングな人柄が感じられて楽しめます。
ちなみに父が作家の松岡譲氏(漱石門下)、夫も作家の半藤一利氏。
松岡さんは、うちの隣の長岡市のご出身なので名前だけは知っていましたが、そのお名前を冠した賞があったのは初めて知りました(そして夫の半藤さんも、今地方紙の夕刊に連載されているインタビューによると、何気に長岡に縁のある方のようで…)。

<10/7/26,27>

『野川』長野まゆみ(河出書房新社)

2010-07-25 | 読了本(小説、エッセイ等)
夏。それまで華やかな仕事をしていた父の失業、そして両親の離婚により、都心から郊外のK市に引っ越した少年・井上音和。
あまり折り合いの良くない伯父の営むフォトスタジオで、働くことになった父と、野川の近くで二人暮しを始めることになった彼は、転校先の中学校で、変わり者の担任の教師・河合から、新聞部の部長にならないかと誘われる。
河合の言葉に刺激を受け、ある条件を出して、部長になることを引き受けた音和。
その新聞部では、伝書鳩を飼育していて……

両親の離婚で郊外に父と二人暮しをすることになった少年が、部活で伝書鳩と関わることにより、新たな視野や世界を意識するようになるお話。
教科書にでも載りそうなくらい、至極健全なお話でした……久々に(笑)。
読むなら、いまの季節が最適かも。

<10/7/25>

バイオレット@ドゥー

2010-07-24 | スイーツ
 暑さで崩れてしまったので、上から撮影(笑)。本来は円柱状です。
 バルサミコ酢を使ったムースの中に、カスタードクリームが入っています。
 バルサミコの風味がちょっと面白い感じ。
 上には、フランボワーズ、ブルーベリー、ピスタチオ。

 お菓子工房 ドゥー:新潟(長岡)

『光待つ場所へ』辻村深月(講談社)

2010-07-24 | 読了本(小説、エッセイ等)
T大学文学部に通う2年生・清水あやめは、感性を武器に絵を描いてきたという自負がある。
ところが、大学の一般教養の造詣表現の課題で、教授に優秀作品として絶賛を以って紹介されたのは、自分と同じ題材を映像化した…しかし自分のものよりもはるかに秀でた…法学部の田辺颯也の作品で、彼女は人生で初めての完全なる敗北感を味わう。
それ以来、その姿を見るたびに胸がしめつけられるような思いにかられたが、それは恋ではないと思っていた。
同じ大学内には、高校時代からの同級生・鷹野博嗣が通っているが、田辺は彼の友人。その関係で田辺を紹介されたあやめだったが……『しあわせのこみち』、
モデル事務所に所属するモデル、チハラトーコこと千原冬子。整った容姿だが、オタク系で売っている。
小さい頃からずっと嘘をつき続けてきたトーコ。しかし彼女の嘘にはポリシーがあった……自分が本当に望む願いや夢については口にしない。半分は人のための嘘……『チハラトーコの物語』、
中学校で行なわれる合唱コンクール。歌う事になっているのは課題曲と自由曲……天木が指揮することになっている二組では、課題曲として『大地讃頌』、自由曲は教師の提案により『樹氷の街』に決まったものの、伴奏の倉田梢の演奏は今ひとつなこともあり、練習は遅々として進まない。
そんな中、倉田の楽譜がゴミ箱に捨てられるというアクシデントが起き、自意識過剰気味ですぐに泣く彼女の言動を、影であざ笑っているクラスメイト・筒井美貴たちの仕業にも思えるが、自作自演だと看破する天木。
そんなある日、彼女が伴奏がうまく弾けない苛立ちから、練習中に教室を飛び出してしまう。秀人の彼女である、隣のクラスの少女・椿に急遽伴奏を頼み事なきを得る。しかし『樹氷の街』は難しく、ピアノを習っている彼女にも無理だし、別のクラスの彼女が引き受けることにも問題があるという。
そんな彼女と秀人から、同じクラスの目立たない少年・松永郁也がピアノの天才だと聞かされた天木。自由曲を彼に弾いてもらい、かつ倉田の指導も頼むことに……『樹氷の街』の3編収録。

三作とも既に発表されている作品のスピンオフの短編集。
『しあわせ~』は『冷たい校舎の時は止まる』、『チハラトーコ~』は『スロウハイツの神様』(名前が違いますが/笑)、『樹氷~』は『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『名前探しの放課後』にそれぞれ登場している人々が出ています。
読んでいなくてもあまり支障はないですが、読んでおいた方が楽しめることは確か。
自意識過剰(中身が伴っているいないに関わらず)なイタイ子たちの描写、というか心理の掘り下げ方の容赦なさが、さすがに辻村さん!という感じ(笑)。

<10/7/24>

『ジャージの二人』長嶋有(集英社)

2010-07-23 | 読了本(小説、エッセイ等)
毎年北軽井沢の山荘で夏を過ごす、カメラマンの父と飼い犬のハスキー犬・ミロに便乗して、五年ぶりに山荘にやってきた“僕”。現在失業中で小説家を目指しているが、原稿は全然書けていない上に、東京に残っている妻は、他の男に思いを寄せている。一方父は、二度の離婚の慰謝料の支払いに追われているが、夏には仕事をしない方針は崩さない。
亡き祖母が集めていた関係で、家にたくさんある古着から、小学校の名前の入ったジャージを身にまとい、ぐだぐだな夏を過ごす父子……“ジャージの二人”、
翌年の七月の終わり。再び山荘へ行く父子とともに僕の妻がついてきた。付き合っていた男に振られた為、別れたと語っていたのだが、まだあきらめきれてない様子。三泊だけして帰って行った彼女の後に、今度は僕の異母妹・花ちゃんがやってきて……“ジャージの三人”を収録。

ジャージで夏の数日間を過ごす父子の話。
特に事件らしい事件はなく、のほほんと田舎で避暑を過ごしているだけなのですが、それぞれにいろいろな問題を抱えていて、とりあえず小休止、というか嵐の前の静けさ的な雰囲気を感じます。

<10/7/23>

『探梅ノ家 居眠り磐音 江戸双紙』佐伯泰英(双葉社)

2010-07-22 | 読了本(小説、エッセイ等)
師走に入り、寒気が増したある日。棒手振りの銀平が売りに来た秋刀魚を安く買い、長屋中で焼く中、今津屋の宮松が坂崎磐音を呼びにきた。老分の由蔵が麹町の御用に供をして欲しいという。しかしすっかり秋刀魚臭くなってしまった彼は、先に横山町の湯屋加賀大湯へ。そこで吉祥天の彫り物を背負った白髪の老人に出会う。
その後由蔵から向かう船の中で、数日中に鎌倉まで旅をして欲しいと告げられる。もうすぐ三回忌を迎えるお艶を弔うべく、今津屋吉右衛門の代参で鎌倉の建長寺に行くための供をして欲しいというのだった。
御用を終え、今津屋で夕餉を馳走になった磐音は、今晩は雪も降ったということで泊まることにし、鎌倉へは明々後日の早朝発つことに。
幸せな気分でで眠りについた磐音だったが、半鐘の音で目が覚める。幸い今津屋には被害がなさそうだったが、火元付近を調べる為に出かけた磐音は、南町の笹塚孫一たちに出会う。火事は何とか治まりそうだったが、定廻り同心・木下一郎太が元大坂町の衣装屋で押し込みがあったと告げる。そこには“黒頭巾参上”という文字が残されており、先に板橋宿、内藤新宿で起きた黒頭巾ではないかと疑うが、手口がかなり違う。唯一残った奉公人の少女・おはま曰く、賊は「吉祥天の親方より稼ぎがいい」と言っていたというのだが……“第一章 吉祥天の親方”、
朝七つ、鎌倉へ向け、出発した磐音と由蔵。建長寺での代参としての役目を終えると、寺の外に宿を取っているという由蔵は、お艶の兄・赤木儀左衛門と待ち合わせをしていると告げた。さらに小田原城下の脇本陣の主、小清水屋右七とその二人の娘・お香奈とお佐紀も一緒である。三回忌を終えるまでは後添えを貰わないといっていた吉右衛門だったが、由蔵と儀左衛門は気を揉んでおり、密かにお香奈を後添え候補として選んでいたのだが、先に磐音に品定めさせる為に同行させたのだった。
ところが翌朝、お香奈が失踪。どうやら彼女は、藩改革派に属している近習・大塚左門が会合の場所として小清水屋を使っていたことから知り合い、恋仲になっていたらしい。
彼らを追って大塚所縁の寺に出かけた磐音たちだったが、あいにく出立してしまった後だった。そしてそんな大塚たちを追う藩士たちもやって来たというのだが……“第二章 水仙坂の姉妹”、
お香奈の件で、お佐紀と共に行動していた磐音は、むしろ彼女の方こそ今津屋の後添えに相応しいのでは、と由蔵たちに提案。お佐紀自身からも見合いする了承も得て、江戸へ帰ってきた磐音と由蔵。
あとは吉右衛門に話をどう切り出すべきか、と悩んでいると、すでにおこんの口から露見した後で、無事見合いの席を設ける運びとなった。
その後、鎌倉の土産を持って品川柳次郎の家を訪ねた磐音は、母・幾代からこの三日ばかり家に戻っていないと告げられる。上方からの船の荷下ろしの仕事を請け負っていたらしいのだが、何かの騒動に巻き込まれているのではないかと、竹村武左衛門と共に捜索に乗り出すことに……“第三章 師走の騒ぎ”、
大晦日を明後日に控えた佐々木道場にやってきた磐音。
そこには新たに門弟に加わったばかりの若い二人…土佐高知藩山内家の家臣・重富利次郎と旗本松平喜内の次男・松平辰平が火花を散らしていた。住み込み師範の本多鐘四郎曰く、まるで軍鶏の喧嘩。しかも辰平は無謀にも磐音に挑み、叩きのめされる始末。
そんな辰平には池内大吾をはじめとする悪い仲間がおり、そんな奴等が道場までやってきて辰平を誘い出そうとするものの、鐘四郎と磐音に叩き出された。
明けて、安政五年。
おこんと共に湯島天神に初詣に行った磐音は、娘と一緒にいる辰平を見るが、四日の朝、辰平は道場に姿を現さなかった。仲間の旗本・三浦光次郎に訊くと、甘酒屋ふじくらの娘・おうめだという……“第四章 二羽の軍鶏”、
正月九日。先の約束で御殿医・桂川国瑞の、白梅屋敷と呼ばれる別宅に招かれた、磐音と織田桜子と中川淳庵。
料理人の親吉は、国瑞とともに長崎にいたこともあり南蛮料理を覚えていて、面々は彼の作る天ぷらに舌鼓を打つ。
ところがその帰り、黒衣の七福神の面をかぶった一団が、彼らの前に立ちふさがった。事なきを得るも、誰を狙った襲撃だったのかは謎。
翌日、馳走になった南蛮料理について語る磐音の言葉に釣られ、興味を持ったおこんと由蔵は、見合いの席でお佐紀をもてなす料理として天ぷらを出せないかと、親吉の手を借りるべく、磐音とともに桂川家に赴いた。
そこで、国瑞から朝、“七福神参りご用心”と書かれた御籤のような紙が置かれていた話を聞かされる。七福神参りとは
桂川家初代が始めた恒例行事で、正月十一日に桂川家の後継が七福神を祀る場所を回るのだという。
その供をする磐音に、おこんも一緒に行くと言い出して……“第五章 白梅屋敷のお姫様”を収録。

シリーズ第十二弾。吉右衛門さんに後添えを迎えよう大作戦が主?…というか全体的に恋愛話が多めでした(笑)。
おこんにも密かに縁談話が持ち上がっているようなので、気になるところ。

<10/7/22>