黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『隈取絵師』平茂寛(朝日新聞出版)

2012-07-19 | 読了本(小説、エッセイ等)
十五年前から津山藩の御抱絵師として召し抱えられている、絵師・鍬形恵斎紹真。
文化六年。江戸鳥瞰図も完成に近づいた二月、白河少将こと前の老中・松平定信に呼び出された。定信の屋敷に賊が押し入り、彼の所蔵する絵画をごっそり盗まれたのだという。
数年前、定信の依頼で、江戸谷中の感応寺の天井裏に忍び込み、大奥の最高実力者の老女・高崎の乱行の証拠絵を描いた恵斎。しかしその実態を暴こうとした矢先、定信は辞職することとなり、それを糾弾することができないままであった。
盗まれた絵の中に、その証拠絵も含まれており…『近世職人尽絵詞』という絵巻の下巻の中に巻き込んであった…、どうやら盗ませたのは、絵画に並々ならぬ執着を持つ、恵斎の主君である津山藩第七代藩主・松平越後守康孝であるという。
折りしも、先月、城の本丸御殿から出火し燃えてしまっていたことからその再建の機に乗じ、津山に乗り込み、件の絵を密かに奪還してくるようにと圧力をかける定信。
御抱絵師ではあるもののずっと江戸におり、一度も津山の城下にすら入ったことのない恵斎だったが、何とか江戸留守居役を丸めこみ、津山へと向かう。
しかし狩野派の美貌の女絵師・如慶は、元町絵師である彼の存在が気に入らず、排除しようと粉本(模写)対決を挑んできて……

第2回朝日時代小説大賞受賞作。
鍬形恵斎は実在の絵師で、スカイツリーに展示されているという『江戸一目図』(描かれている風景が似ているらしい)の作者だとか。
個人的には消えた絵の行方云々よりも、粉本対決のあたりが楽しかったかな~。騙し騙されな応酬のところとか。

<12/7/18,19>