く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

〈奈良市写真美術館〉 アン⋅ジュン「『重力へ』方向と座標」展

2024年05月16日 | 美術

【開館以来初の外国人アーティストによる個展】

 入江泰吉記念奈良市写真美術館(高畑町)で、韓国出身の女性写真家Ahn Jun(アン⋅ジュン)の個展が開かれている。タイトルは「『重力へ』方向と座標」。1992年の開館から約32年たつが、外国人アーティストによる個展の開催は今回が初めて。6月30日まで。

 会場にはアメリカで撮影した代表作「Self-Portrait(セルフ⋅ポートレイト)」と韓国帰国後の「One Life(ワン⋅ライフ)」の二つのシリーズを中心に70点ほどが並ぶ。いずれもアン自身がプリントした大型作品ばかりだ。その中にはまるで合成写真と見まがうものも多い。

 「Self-Portrait 」は20代のとき2008~13年の作品で、アン自身が被写体となって高層ビルから眼下を見下ろす。細身の彼女がビルの縁から飛び立つような作品は構図的にも衝撃的だ。窓枠を跨いだり、角の縁石に座り込んだり「危ない!」と思わせる作品も多く含まれる。

 その写真集の推薦帯にこうあった。「素足になり、まだ見ぬ世界へ飛び立つ その開放的な姿態によって彼女は鑑賞者を虚空の端へ誘う」。ただ鑑賞者が高所恐怖症だとしたら、身がすくんでとても見てられないかもしれない。

 ニューヨークから帰国後、モチーフは一変する。「One Life 」シリーズの主役は果物のリンゴ。まるで静止画のように風景の中に溶け込む。空中に静止したリンゴの姿に、一瞬の輝きやはかなさ、刹那的な時の移ろいなど様々な思いを込めたのだろう。その発想自体に異才ぶりがうかがえる。(下の写真は作品の部分)

 撮影地は韓国をはじめ日本、中東、英国など。シャッター速度とともに、気になるのがリンゴの動き。勝手に空から降ってくるわけがないし。では、どこから? 彼女が自ら投げて撮ったこともあれば、同行した夫君や祖父母など家族の協力もあったそうだ。

 アンは米国から帰国後、石や水、火、風など自然界の根源的なものにも目を向けた。会場には怒涛が聞こえてきそうな荒波、メラメラと激しく燃え上がる炎などの作品も展示されている。

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