CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】ミシンと金魚

2022-07-25 21:05:37 | 読書感想文とか読み物レビウー
ミシンと金魚  作:永井みみ

芥川賞っぽい小説だった
読んで欝々としてしまったというか、
個人的にはとても悲しい気持ちになってしまったというか
ある意味感動させられた小説であった

主人公が痴呆の入ってきたお年寄りで、
その過去と現在を拙い言葉で繕っていくという作りが
もう、これだけで泣けてしまうのが悲しい(俺が)

痴呆によって新しいことはちっとも覚えていないのに、
古いことは覚えている、そして、つらかったことを覚えているという
その流れからの「みっちゃん」という呼称のいわれが悲しすぎて辛かった
また、おかれた状況と、そこから示唆される未来の絶望というか、
ああ、自分の老後もやがて、こういうものとしてやってくる可能性があるのかと
これまた、すさまじい絶望を覚えさせられるようで
休みの日に読む本じゃねぇなと思ってしまったのである
なんで土曜日に読んだ俺

ネタバレになってしまうけども、
みっちゃんと呼ばれる人というのが結構ミソで、
これが呼称でしかなく、複数人の人を十把一絡げでそう呼んでいるというのが
ギミックとして衝撃的だったというか、
世の中そういう風にとらえるようになっていくし、事実そうなのかもなと
これまた悲しい事実を突きつけられたようで、
ともかく読んで絶望していくばかりでありました
また、その呼称のいわれによって、その呼び方による思いというのが
一つも語られていないのに、優しさとか後悔とか、
そういうものがごたまぜになった純粋の気持ちの発露に見えるのが
もう泣かずにおられないといった感じだった

ラストシーンもとても悲しい終わりとして描かれるんだが、
それでなくても、その前に示唆された内容から、ゆくゆくはこんなことになるだろう
そう思わされるところ、そのための息子の嫁の存在、そのキャラクタ、
わずかに見せた優しさという、利己的な欺瞞みたいなのを主人公が痴呆というフィルターを通してみているというのが
まぁなんというか、悲しすぎてたまらんなと思ったのである

休みに読んで後悔したが、いい物語だったと思うのであった