CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】文字渦

2018-12-01 20:49:40 | 読書感想文とか読み物レビウー
文字渦  作:円城 塔

大好きな作家の一冊であります
新刊が出たと楽しみにして、ようやく手に入れたので
わくわく読んで、毎回のごとく、振り回されて満足したのでありました
この人は何を言ってるんだろうかと、
わかりやすく意味不明な言葉が羅列されていく楽しみが
またまた満喫できた一作だったと思うところ
とはいえ、ちゃんと順序だってというと
きわめて失礼なのだけれども、文字のあり方を歴史と混ぜつつ、
SFにしたり、推理小説にしたり、
さらには、文字を抽象概念といえばいいのか、形而上の何かに昇華していて
非常に面白かったのでありました
そういう考え方も、できないこともないこともない
そんな塩梅で、わくわくしたのでありました

秦の始皇帝が行った漢字の統一を紐解くにあたり、
文字というものがなんなのか
そこに意味を載せたり、音を載せたりするということは、
すなわち、ルビをふることと一緒であったり、
コンピュータにおける文字コードの問題とも同様であったりと
そんな発展をさせて物語が展開していく
その視点が素敵すぎるだろうと、感心しきりに読みふけったのでありました

まったく読めない字がいっぱいでてきて
どうやって作ってたんだろうかなと思ったけど、
これもまた、文字コードの話になったところで
やっとわかったわけでありますが、
おそらく、独自フォントというか、ある種の文字ジャックを行って
表示させていたんであろうとか、外字入力といえばいいか
ともかく、えらい手間といえばいいか、すごいことをしたものだなと
感心しきりだったのであります

しかし、書かれていた通り、
今となっては、文字というものは電子データとなった今、
鉛筆のかわりがPCであるというだけのことであって、
意味や、その存在にはなんら影響がないというのも
もっともなことだと思わされたりして、だから何がという答えなんぞ
あるはずもないけど、面白いことを思いついたような
思い知ったような気分にひたれて、非常に有意義な読書になったなんて
感じたのでありました

犬神家パロの話については、若干というか、相当に無理があるだろうと
つっこみを入れたくなってしまったのだけど、
探偵が、あまりにもそうだと言い切っていると
そういうものかなと、物語に押し切られたというか
ばかばかしさに笑ってしまったようにもなって
なんとも、楽しい読書となったのでありました

文字を淫するみたいな感じで、
ある種の愚弄ともとれる文字遊びが、言葉遊びを超えて楽しめる
よい一冊でありました