CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】折りたたみ北京

2018-12-04 20:57:29 | 読書感想文とか読み物レビウー
折りたたみ北京  作:ケン・リュウ

作としたけども、実際は編者であって、作者は7人の中国人SF作家であります
いずれもSF短編なわけでありますが、なかなか読み応えがあって
非常に面白く読めたのでありました

SFへの素養や、知識が不足しているので、
ただただ漫然と楽しむだけに終わってしまったのが
ややもったいないと、自分の読書ながらに思うのだけども、
想像を科学で補うといった感じで、
いかにも夢のあるSF世界が広がっていて
非常に面白いと感じたのでありました
中国のSFというわけなんだが、どこが中国っぽいかと
そのあたりについて、そもそもほかのSF知らないからなぁと
思わずつぶやいてしまいたくなる感じだったのだけど、
先日読んだ円城塔が、完全にこの手だとわかって、
自分はSFというものが好きなんだなと
唐突に披瀝される物理や化学の知識が楽しくて仕方ないと
情報処理めいたないようも含めて、大満足だったのでありました

いくつも短編があって、どれもこれも
ディストピアめいた香りもあるけど、そんなに絶望しない内容なのが意外で、
どこかに救いといえばいいのか、何か明るいものが見えるようだというのが
ステキなところでありました
いくつも面白い短編があったけども、「円」という題名の、
秦の始皇帝を題材にとって、暗殺者のケイカとのやりとりを
数学に置き換えて見せるというのが、凄い面白くて、
電卓とはこういうものだったのかと改めて教えられたようで
非常に満足度が高かったのでありました

そうかと思えば、表題作である「折りたたみ北京」も
近未来的な都市の描写でありながら、そこに住む人たちの人間性といえばいいのか、
ドラマともいえる物語それこれが、いかにも人間くさくて、
また体制のようでもあるのかと、中国っぽさだけではなく
万国に通ずる息苦しさなんかも味わえて趣深い内容でありました
言葉を封じられていく物語もあって、
これはあまりにも中国を風刺しすぎているようにも思えて
ちょっと慄いてしまったのだけども、
着想として面白いなと感じるばかりであった

そんなわけで、SFって面白いんだなと
今年はよくよくSF小説をいっぱい読んだ年だったと
思い返したりしながら、年末に向けてよい読書だったと
メモっておくのでありました