CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】博士の愛した数式

2017-10-17 20:40:07 | 読書感想文とか読み物レビウー
博士の愛した数式  作:小川 洋子

ああ、なんという読後感だ、喪失といったらいいのか、
こんな物悲しい気持ちを抱くことになるとは…
そんな演劇調で嘆きたくなるような、
美しく優しい物語なのに、とても悲しい結末(のように見える)お話でした
実際は哀しいことなんてないのかもしれないが、
私にはどうにも哀しかったのであります
同じ作者のチェスの話を読んだときと同じような感情なんだけども
こっちはもっとずっと、哀しいと思えてならないのである
穏やかな、おても静かな物語なのに
どうしてこんなに哀しいのかしらと感じてならない

そんなセンチメンタルな物語だったのでありますが、
奇妙な数学者である博士と、
その宅へと勤めることになった家政婦とその息子、
そして、博士の義理の姉
この少ない登場人物たちが、過ごす日常を描いていたのでありますが
博士は、昔事故にあった影響で記憶が80分しか残らないと
そういうとても哀しいことになっていて、
その事故以前の記憶しか蓄積されていないと
そんなお話なのであります

そのうち、阪神タイガースが関わってくるのでありますが
これがまた、記憶が止まっているため、
いつまでも大エース江夏であって、
この江夏をめぐってまた、お話があると
まぁそういうことだったのであります

そこかしこで、数学、数字にまつわるエピソードも交えつつ
不可思議な関係が続いていくという感じで、
明らかに浮世離れしている物語なんだけども
とても心地よいというか、当たり前のようにも感ぜられて
ただただ、読み進めてしまうのでありました

いくつかの謎でもないが、記憶をめぐるものが現れたり消えたりして、
そこから、最後のシーンの意味を考えたりすると
なんというか、また哀しい気持ちになったり
ある種それが幸せなのかもしれないとも思ったり
残酷なような、美しいような、
語られないもしかしてを裏読みして楽しんだのであります

でもやっぱり、哀しい物語だったと
私は思うのだ