goo blog サービス終了のお知らせ 
goo

夏目漱石の美術世界

 静岡県立美術館で「夏目漱石の美術世界」を見た。
 今回の旅行の一番のお目当てであっただけに楽しみにして行った。


 
 実に多くの美術作品が展示されていた。中には、ちょっとこじつけが過ぎるだろう、と思いたくなるようなものもあったが、漱石が古今東西の芸術に造形が深いのを再確認させてくれる見応えのある作品展だった。

 ただ、初期の作品に関係する美術作品は数多く展示されていたのに比べ、後期の作品群に典拠する絵画が数少なかったのには興味を引かれた。それは、自らのあふれんばかりの教養をちりばめた初期の衒学的な漱石が、次第に人間の内奥に迫っていく小説家へと深化していった過程を示しているように思ったからである。

 この作品展で一番私の心を捕らえたのは、やはり若冲だった。と言うよりも、「鶴図」の横に並べられていた、この絵を評した「草枕」の一節に唸らされたと言った方がいいかもしれない。



『横を向く。床とこにかかっている若冲の鶴の図が目につく。これは商売柄だけに、部屋に這入った時、すでに逸品と認めた。若冲の図は大抵精緻な彩色ものが多いが、この鶴は世間に気兼ねなしの一筆がきで、一本足ですらりと立った上に、卵形の胴がふわっと乗っかっている様子は、はなはだ吾意を得て、飄逸の趣おもむきは、長い嘴のさきまで籠っている』


 こんな文書けたらいいなあ・・。
 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )