以前書かせて頂きました米モトローラによるバーテックス スタンダード(以下VS社)の株式公開買付ですが、当初の期限(12月26日)から来年1月15日に延長されることになりました。ソースはこちら。
簡単に説明すると今回の公開買付でVS社がモトローラ傘下に入った場合、通信機部門のシェアが各国の独禁法に抵触する可能性があることから、モトローラが米国・EU・中国で独禁法関連の届け出を行ったのですが、その届け出の事実を公開買付の趣意書に追記する必要が生じ、投資家に周知するために期限が延期されています(これは法令に従った正当な手続きです)。
これだけですと単なる手続き上の話だけなんですが、実はもっと深刻な問題を抱えている模様です。12月25日までに公開買付に応じたのは約123万株で、モトローラが買い付けたい株数の最低目標である348万株に対しわずか35%程度にしかなっていないようです。モトローラは348万株以上の株が集まらないと公開買付を中止することにしていますので、このまま12/26に期限を迎えると公開買付は失敗だった可能性が高いです。
公開買付の期間を延期し、その間に何とかモトローラの買付に応じて貰うよう大株主の説得を行うのではないかと思われます。どうもこっちの方がホンネくさいですね。
「何で株主が公開買付に応じないか」ということなんですが、これは1株2,214円という買付価格が安すぎることが理由ではないかと思われます。本年3月末時点でのVS社の1株あたりの資産価値(土地や建物、工場の設備やソフトウェア等を全てお金に換算した場合の金額)は約2,288円です。公開買付の価格は過去5年間の株価よりも高い価格なんですが、資産価値で評価すれば買い叩かれている感じがします。これが各株主に二の足を踏ませているのではないかと考えられます。
前回公開買付の記事の最後に「VS社の企業価値を考えたら安いと思う」と一文書き添えましたが、各株主さんも同じように考えていたようですね。裏を返せばVS社の株は市場で正当に評価されず割安のまま放置されていたってことなんでしょうね。
今回買付価格の変更はないそうですから、予定通り348万株以上を集められるかは黄信号が灯っているのではないかと思います。
日本で今回のような友好的な公開買付が失敗するケースは珍しいんですが、どうなりますやら。また新しい情報が出ましたらご紹介します。