〇東京国立博物館 アジアギャラリー(東洋館)8室(中国の書画)特集『董其昌とその時代-明末清初の連綿趣味-』(2017年1月2日~2月26日)
正月早々に見てきたこの特集陳列(※記事)。会場で、京都・泉屋博屋館所蔵の『安晩帖』(八大山人/朱耷(しゅとう)筆)を見つけたときは、本当に声が出るほど驚いてしまった。展示替えがあるのかどうかが気になって、次の週末にも行ってみたのだが、同じ画面(山水画)が出ていたので、ずっとこのままかな、と諦めていた。
そうしたら、今週(1/25)、トーハク広報室のTwitterアカウントから「泉屋博古館所蔵の『安晩帖』は、現在、鳥の場面が展示されています」というつぶやきが写真つきで流れてきた。「この作品はなんと、泉屋博古館外で初出品となったものです。展示は東洋館8室にて、1月29日(日)まで、貴重な機会をお見逃しなく!」と続く。さすが、国立博物館の権威があると、こんな奇跡が可能になるのか(違う?)。
今日は幸い、東京で午後の仕事が終わったので、金曜の延長開館を利用して見てきた。展示室に入ると、まっすぐ『安晩帖』の入っている展示ケースに直行。先に見ていたお兄さんが、すっと気前よく場所を譲ってくれた。感謝。とうとう、自分の視界にホンモノの、あの片足立ちする鳥の絵があると思うと、何とも言えない感慨が込み上げてくる。
うつむく鳥の肩というか背中のあたりは、じわっと墨がにじんでいる。風の中で羽毛をふくらませているように見えるけれど、一筋ずつ描いたのではなくて、紙の繊維に沿って自然に墨が広がるのを利用しているようだ。宗達や若冲が使う「たらしこみ」とはちょっと違う。こんなぼんやりした輪郭の子は、日本の水墨画にはあまりいないような気がする。そもそもこの子は何の鳥だろう?と思って調べたら「叭々鳥」だった。若冲が描くと、スピード狂みたいに三角形になって落下してくるあの鳥である。
写真図版だとどうしても視点が正面に固定されるが、現物だと、離れてみたり近づいてみたりして、印象の差を楽しむことができる。右斜めからだと、鳥の後ろ姿を見ている感じ。左斜めに離れると、鳥の体がスリムにたよりなく見える。あと足元の岩の白黒のまだら具合とかすれ具合が好きになった。またいつか、再会できることを楽しみにしよう。
※参考:泉屋博古館 所蔵品紹介『安晩帖』
まだ閉館まで余裕があったので、特別展『春日大社 千年の至宝』も見てしまおうと思って平成館にまわった。そうしたら「17時以降は賛助会員(?)の方のみに開館しています」「1月から3月まで、特別展は夜間開館しておりません」と言われて、受付で止められてしまった。いまホームページの利用案内を確認したら、確かに「2016年3月~12月までの特別展開催期間中の毎週金曜日は総合文化展、特別展とも20:00まで開館します」とある。2017年1月以降、つまり『春日大社』展については夜間開館をしていないのだ。しかし、全くしていないのではなくて、少なくとも今日は、けっこうな人数の来館者が、特別な受付をして中に入って行った。あれはどういう資格者だったんだろう? ちょっと解せない。