〇山種美術館 開館50周年記念特別展 山種コレクション名品選III『日本画の教科書 京都編-栖鳳、松園から竹喬、平八郎へ-』(2016年12月10日~2017年2月5日)
会場に入って、まず迎えてくれるのは、竹内栖鳳の『斑猫』。京都の日本画といえば、やっぱりこの人だよな、と思う。肉付きの薄い背を向けて、体を曲げて、思わぬ青い目でこちらを見上げる姿。絵画の中の日本美人みたい。なお、モデルになった実際の斑猫の写真あり。近代日本画の猫と言ったら、この斑猫と菱田春草の黒猫が双璧かなあ、などと考える。
栖鳳は、このほか『晩烏』『みみづく』『鴨雛』など、トリ年にちなんで、鳥類を描いた作品が多いように思った。ウサギとかサルもたくさん描いているのに。『憩える車』と題して、農家の水車を縦長画面の半分くらいの大胆なアップで描き、その上にとまった青鷺(?)を描いた作品が好き。
栖鳳は優れた指導者で、画塾「竹杖会」の弟子に上村松園、西村五雲、橋本関雪らがおり、京都市立絵画専門学校の弟子に村上華岳、小野竹喬らがいる。なお絵画専門学校の同僚には都路華香、菊池芳文。これは、会場の小さなパネルに書いてあった説明をメモしてきた。山種美術館は、こうした説明パネルを目立たせないようにしているので、読まずに作品を鑑賞したい人の邪魔にならないし、読むといろいろ興味深いので、ありがたいと思っている。
西村五雲の『松鶴』は、長い首を胸の中につっこんで毛づくろいしている鶴の姿が、いかにもありそうで面白いなあと思った。土田麦僊『大原女』は、何度も見ていて、そんなに好きな作品ではなかったのだが、あ、これは「四曲一双」の屏風なんだ、ということに初めて気づいた。隣りの福田平八郎『桃と女』が六曲屏風だったので、画面の広さがぜんぜん違うということに気づいたのだ。このおおらかで躍動的な画面を構成するには、四曲でないと駄目だと思う。じゃあ、屏風でなく平面の大画面では?と考えると、右隻の大原女の前のめりな姿勢と、左隻の群竹の左に傾いた並びが交差する面白さが半減すると思う。
小野竹喬は『冬樹』と『沖の灯』の2点で、どちらも最晩年の作。写実とか抽象とかの言葉で語るのが面倒くさくなるくらい、色彩がまっすぐに美しくて好き。『沖の灯』は、ネットで検索すると、いくつか画像がヒットするが、色の印象が違いすぎる。これは本物を見ないと駄目。画面前方(下方)の魚の群れらしきもの、またたく星のような沖の灯、雲の垂れこめた暗い水平線、まだ桃色の夕映えの残る空、と順に目を移していく(この逆でも)のがいい。上村松篁も『千鳥』『春鳩』と鳥類シリーズだったが、女王様のような『白孔雀』が、いつ見てもすてき。上村松園の美人画はやや苦手なのだが、名作『砧』が出ていることを記録しておこう。
なお、日本画の絵具の原料や筆などを参考展示しているケースがあって、昨年末に見た目黒区美術館の『色の博物誌』を思い出した。
会場に入って、まず迎えてくれるのは、竹内栖鳳の『斑猫』。京都の日本画といえば、やっぱりこの人だよな、と思う。肉付きの薄い背を向けて、体を曲げて、思わぬ青い目でこちらを見上げる姿。絵画の中の日本美人みたい。なお、モデルになった実際の斑猫の写真あり。近代日本画の猫と言ったら、この斑猫と菱田春草の黒猫が双璧かなあ、などと考える。
栖鳳は、このほか『晩烏』『みみづく』『鴨雛』など、トリ年にちなんで、鳥類を描いた作品が多いように思った。ウサギとかサルもたくさん描いているのに。『憩える車』と題して、農家の水車を縦長画面の半分くらいの大胆なアップで描き、その上にとまった青鷺(?)を描いた作品が好き。
栖鳳は優れた指導者で、画塾「竹杖会」の弟子に上村松園、西村五雲、橋本関雪らがおり、京都市立絵画専門学校の弟子に村上華岳、小野竹喬らがいる。なお絵画専門学校の同僚には都路華香、菊池芳文。これは、会場の小さなパネルに書いてあった説明をメモしてきた。山種美術館は、こうした説明パネルを目立たせないようにしているので、読まずに作品を鑑賞したい人の邪魔にならないし、読むといろいろ興味深いので、ありがたいと思っている。
西村五雲の『松鶴』は、長い首を胸の中につっこんで毛づくろいしている鶴の姿が、いかにもありそうで面白いなあと思った。土田麦僊『大原女』は、何度も見ていて、そんなに好きな作品ではなかったのだが、あ、これは「四曲一双」の屏風なんだ、ということに初めて気づいた。隣りの福田平八郎『桃と女』が六曲屏風だったので、画面の広さがぜんぜん違うということに気づいたのだ。このおおらかで躍動的な画面を構成するには、四曲でないと駄目だと思う。じゃあ、屏風でなく平面の大画面では?と考えると、右隻の大原女の前のめりな姿勢と、左隻の群竹の左に傾いた並びが交差する面白さが半減すると思う。
小野竹喬は『冬樹』と『沖の灯』の2点で、どちらも最晩年の作。写実とか抽象とかの言葉で語るのが面倒くさくなるくらい、色彩がまっすぐに美しくて好き。『沖の灯』は、ネットで検索すると、いくつか画像がヒットするが、色の印象が違いすぎる。これは本物を見ないと駄目。画面前方(下方)の魚の群れらしきもの、またたく星のような沖の灯、雲の垂れこめた暗い水平線、まだ桃色の夕映えの残る空、と順に目を移していく(この逆でも)のがいい。上村松篁も『千鳥』『春鳩』と鳥類シリーズだったが、女王様のような『白孔雀』が、いつ見てもすてき。上村松園の美人画はやや苦手なのだが、名作『砧』が出ていることを記録しておこう。
なお、日本画の絵具の原料や筆などを参考展示しているケースがあって、昨年末に見た目黒区美術館の『色の博物誌』を思い出した。