○朝日カルチャー講座『国際政治 日本・朝鮮半島・アメリカ 2007』(講師:李鐘元=イ・ジョンウォン)
2007年を振り返る1日集中企画。経済情勢(野口旭)、国内政治(星浩)、国際政治(李鐘元)の3本立てだったが、最後の1コマだけ聴きに行った。
冒頭、「今年の漢字は『偽』に決まりましたが」と講師。もし今年の国際政治を漢字1字で表すとしたら、それは「躓(つまずき)」ではないか、という。これ、上手いなあ~。ほんとにそうだ。泥沼化するアメリカのイラク統治。日本では安倍総理の突然の辞任。韓国では盧武鉉政権の終焉(12/19の選挙で、100%与野党交代といわれている)。
しかし「躓(つまずき)」の反面には、予想を裏切る急速な進展もあった。米朝接近はその1例である。昨年10/9の核実験のあと(当然ではあるが)日本政府もマスコミも、北朝鮮に対する危機感に駆り立てられ、強硬姿勢を強めた。一方で、この直後から、米朝関係は嘘のような進展を見せる。講師は明言を避けつつも、北朝鮮の核実験が、外交交渉の可能性を引き出す方策だった可能性を匂わせた。外交というのは、20年30年経って、さまざまな文書が公開されるまでは、真実が分からないものらしい。
このアメリカの政策転換を読みきれなかったことが、安倍政権の躓きの大きな原因になった。というか、講師によれば、常にアメリカは多面的な布石を打っているのだが、日本(政府および国民)にはそれが見えていないという。そうなのだ。日本人は、自分たちに都合のいい世界しか見ていないと私も思う。たとえば、多くの日本人の予想と思い込みに反して、韓国の大統領選挙では、対北政策は全く論点になっておらず、南北の経済交流は、もはや「日常化」しているという。玄武岩氏の『統一コリア』(光文社新書 2007)でも紹介されていた光景だ。
また、近年、アメリカ国内ではアジア系住民の発言力が増しているという。1960年代に増加したアジア系移民の2世/1.5世たちが、アメリカのオピニオン・リーダーに育ちつつあるのだ(最大勢力は韓国系だろう)。この情況も、日本人と日本政府には十分見えていないのではないかと思う。
私自身、熱心に国際政治をウォッチしているわけではないので、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の台頭による世界の多極化、上海協力機構(中国・ロシア+中央アジア諸国)や南米国家共同体、南南協力など、新たな地域連合の出現を興味深く聞いた。しかし、どうして日本は相変わらず、こういう地域共同体を主宰できないのかなあ。やっぱり内田樹さんの『街場の中国論』(ミシマ社 2007)が言うように「華夷秩序の端っこ」になじんだ国には、宗主国的な振る舞いは無理なのだろうか。
さて、2008年には米朝国交回復があるかもしれない。賭け事みたいな予想には何の意味もないが、東北アジアの安定強化の期待を込めて、私は「ある」に1票。
2007年を振り返る1日集中企画。経済情勢(野口旭)、国内政治(星浩)、国際政治(李鐘元)の3本立てだったが、最後の1コマだけ聴きに行った。
冒頭、「今年の漢字は『偽』に決まりましたが」と講師。もし今年の国際政治を漢字1字で表すとしたら、それは「躓(つまずき)」ではないか、という。これ、上手いなあ~。ほんとにそうだ。泥沼化するアメリカのイラク統治。日本では安倍総理の突然の辞任。韓国では盧武鉉政権の終焉(12/19の選挙で、100%与野党交代といわれている)。
しかし「躓(つまずき)」の反面には、予想を裏切る急速な進展もあった。米朝接近はその1例である。昨年10/9の核実験のあと(当然ではあるが)日本政府もマスコミも、北朝鮮に対する危機感に駆り立てられ、強硬姿勢を強めた。一方で、この直後から、米朝関係は嘘のような進展を見せる。講師は明言を避けつつも、北朝鮮の核実験が、外交交渉の可能性を引き出す方策だった可能性を匂わせた。外交というのは、20年30年経って、さまざまな文書が公開されるまでは、真実が分からないものらしい。
このアメリカの政策転換を読みきれなかったことが、安倍政権の躓きの大きな原因になった。というか、講師によれば、常にアメリカは多面的な布石を打っているのだが、日本(政府および国民)にはそれが見えていないという。そうなのだ。日本人は、自分たちに都合のいい世界しか見ていないと私も思う。たとえば、多くの日本人の予想と思い込みに反して、韓国の大統領選挙では、対北政策は全く論点になっておらず、南北の経済交流は、もはや「日常化」しているという。玄武岩氏の『統一コリア』(光文社新書 2007)でも紹介されていた光景だ。
また、近年、アメリカ国内ではアジア系住民の発言力が増しているという。1960年代に増加したアジア系移民の2世/1.5世たちが、アメリカのオピニオン・リーダーに育ちつつあるのだ(最大勢力は韓国系だろう)。この情況も、日本人と日本政府には十分見えていないのではないかと思う。
私自身、熱心に国際政治をウォッチしているわけではないので、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の台頭による世界の多極化、上海協力機構(中国・ロシア+中央アジア諸国)や南米国家共同体、南南協力など、新たな地域連合の出現を興味深く聞いた。しかし、どうして日本は相変わらず、こういう地域共同体を主宰できないのかなあ。やっぱり内田樹さんの『街場の中国論』(ミシマ社 2007)が言うように「華夷秩序の端っこ」になじんだ国には、宗主国的な振る舞いは無理なのだろうか。
さて、2008年には米朝国交回復があるかもしれない。賭け事みたいな予想には何の意味もないが、東北アジアの安定強化の期待を込めて、私は「ある」に1票。