○京都国立博物館 平常展示
http://www.kyohaku.go.jp/jp/index_top.html
特集陳列『館蔵品のはじまり』を見たあとは、隣室の12室(中国絵画)に進んだ。すぐ目に入ったのは、小ぶりな水墨山水画。おや今月は地味だな、と思って、後ろを振り返ったとたん、美麗な仏画、一見して朝鮮ものと分かる虎の図、そして何とも不思議な屏風が目に入った。
順に見ていこう。最初に水墨山水画が5点。いずれも「朝鮮時代(15~16世紀)」とある。そうか、今月は朝鮮絵画特集なんだ、と気づいた。解説に、描かれた嶺の形姿は「典型的な朝鮮山水画風」であるという。確かに、中国絵画の山水とちょっと違うような気もするが、よく飲み込めない。朝鮮山水画は北宋北方山水の影響を受けて成立したが、展示品の画風には、南宋の院体画様式が混入しているそうだ。また、朝鮮絵画と室町水墨画には密接な関係があるというのも気になるが、もっとたくさん見ないと、様式の親疎はよく分からないなあ。
それから高麗(13~14世紀)の仏画が4点。うち2点が摩利支天像というのは、京博にも『風林火山』ファンがいると見たな、私は。1点は二臂、1点は八臂の坐像。どちらも福徳円満な丸顔、華麗なローブ・デコルテをまとい、宝冠を頂き、王笏のような天扇を手にする。高麗王は外敵を払うため、たびたび摩利支天の修法を行ったそうだ。なお、画中にイノシシの姿はなかった。
隣に正伝寺の『虎図』。若冲の模写が、相国寺(水墨)とプライスコレクション(着色)に伝わることで著名な作品だが、その件の解説はなく、さりげなく展示されていた。背景がくすんだ灰色なので、虎の毛並みの黄色が強く印象に残る。
最後に李朝(19世紀)の『皇帝狩猟図』を描いた八曲屏風。伝統的な東洋絵画のコードからは完全に逸脱した民画の世界である。怪物と見まごう斑馬など、ちょっとスラブ風な感じがする。
続いて、11室(近世絵画)。兵庫県の真浄寺が所蔵する曾我蕭白の障壁画から、楼閣山水図・樹下人物図などを展示。楼閣山水図は、妙に立体的で遠近感が際立ち、逆に幻想的である。どこからか、アラビアンナイトの登場人物が現れそうな気がした。小品コーナーには、蕭白3点、蘆雪2点、若冲1点。蘆雪の仔犬は、ほんとにかわいいっ。可愛いんだけど、気を許すと何をしでかすか分からない、やんちゃな感じがよく出ている。応挙の仔犬より私は好き。
12室(絵巻)では『仏鬼軍絵巻』に笑った。仏菩薩の連合軍が地獄に攻め入り、衆生を救済するというもの。軍記物のパロディになっている。本文の読めるところを探して、一生懸命拾い読みしてみたが。お釈迦様が妙にはやり立っていたり、面白い。
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特集陳列『館蔵品のはじまり』を見たあとは、隣室の12室(中国絵画)に進んだ。すぐ目に入ったのは、小ぶりな水墨山水画。おや今月は地味だな、と思って、後ろを振り返ったとたん、美麗な仏画、一見して朝鮮ものと分かる虎の図、そして何とも不思議な屏風が目に入った。
順に見ていこう。最初に水墨山水画が5点。いずれも「朝鮮時代(15~16世紀)」とある。そうか、今月は朝鮮絵画特集なんだ、と気づいた。解説に、描かれた嶺の形姿は「典型的な朝鮮山水画風」であるという。確かに、中国絵画の山水とちょっと違うような気もするが、よく飲み込めない。朝鮮山水画は北宋北方山水の影響を受けて成立したが、展示品の画風には、南宋の院体画様式が混入しているそうだ。また、朝鮮絵画と室町水墨画には密接な関係があるというのも気になるが、もっとたくさん見ないと、様式の親疎はよく分からないなあ。
それから高麗(13~14世紀)の仏画が4点。うち2点が摩利支天像というのは、京博にも『風林火山』ファンがいると見たな、私は。1点は二臂、1点は八臂の坐像。どちらも福徳円満な丸顔、華麗なローブ・デコルテをまとい、宝冠を頂き、王笏のような天扇を手にする。高麗王は外敵を払うため、たびたび摩利支天の修法を行ったそうだ。なお、画中にイノシシの姿はなかった。
隣に正伝寺の『虎図』。若冲の模写が、相国寺(水墨)とプライスコレクション(着色)に伝わることで著名な作品だが、その件の解説はなく、さりげなく展示されていた。背景がくすんだ灰色なので、虎の毛並みの黄色が強く印象に残る。
最後に李朝(19世紀)の『皇帝狩猟図』を描いた八曲屏風。伝統的な東洋絵画のコードからは完全に逸脱した民画の世界である。怪物と見まごう斑馬など、ちょっとスラブ風な感じがする。
続いて、11室(近世絵画)。兵庫県の真浄寺が所蔵する曾我蕭白の障壁画から、楼閣山水図・樹下人物図などを展示。楼閣山水図は、妙に立体的で遠近感が際立ち、逆に幻想的である。どこからか、アラビアンナイトの登場人物が現れそうな気がした。小品コーナーには、蕭白3点、蘆雪2点、若冲1点。蘆雪の仔犬は、ほんとにかわいいっ。可愛いんだけど、気を許すと何をしでかすか分からない、やんちゃな感じがよく出ている。応挙の仔犬より私は好き。
12室(絵巻)では『仏鬼軍絵巻』に笑った。仏菩薩の連合軍が地獄に攻め入り、衆生を救済するというもの。軍記物のパロディになっている。本文の読めるところを探して、一生懸命拾い読みしてみたが。お釈迦様が妙にはやり立っていたり、面白い。