見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

信濃路紀行:須坂、豪商の館・田中本家

2007-11-25 23:32:15 | 行ったもの(美術館・見仏)
○豪商の館・信州須坂 田中本家 企画展『コドモノ世界-ぼくの玩具、私の宝もの』

http://www.tanakahonke.org/

 週末、「風林火山」のイベントに合わせて、信州に行こうと思い立った。長野市周辺には、何度か行ったことがある。上田、小諸、別所温泉、松代、小布施にも行った。1ヵ所くらい新しい町を訪ねてみようと思い、須坂に立ち寄ることにした。

 いちおう「蔵の町」で売っているらしいが、駅の周辺を歩いてみた限りでは、あまり風情のある町並みは残っていない。ちょっと期待外れだな、と思いながら、上記の博物館に向かった。田中家は、江戸中期以降、代々須坂藩の御用達を勤めた豪商で、広壮な屋敷と庭園のほか、衣裳、漆器、陶磁器、文書などが豊富に残されている。陶磁器には文化財級の逸品もあるらしい。

 現在の企画展示は「大正から昭和にかけての玩具」だというので、あまり期待していなかったら、これが意外と面白かった。いちばん楽しいのは「大正~昭和の初め」のおもちゃ。色もデザインも無国籍で楽天的な明るさを感じさせる。とりわけ融通無碍なポーズをとるセルロイド人形のなまめかしさ。ブリキのおもちゃの、無駄をそぎ落としたモダンな造形。本物の技術を応用したアコーディオンもどきや活動写真もどきのおもちゃもあった。なお、欧米製品の模倣から出発し、のちには輸出用の玩具を作っていた日本アルプス社の水野工場は、今も上田市内に現存するらしい。

 展示品は、いずれも田中家の子どもたちが実際に遊んだもので、このほか、田中家の子どもたちの作文、通信簿、夏休みの絵日記(漢字や計算の練習帖と一体になっている)、お母さんの(?)手作りっぽい洋服やエプロンなどが一緒に展示されている。

 さらに彼ら(大正時代の子どもだった姉弟)より1代前に当たるのだろうか、明治生まれのお嬢さんの持ちものには、ガラスのおはじき、婚礼の着物、櫛・笄(こうがい)、洋風の化粧道具もあった。彼女は養子を迎えて、87歳までこの須坂の田中家に住んだという。そんな人生もあったんだなあ。でも、けっこう新しい文化や技術が入り込んでいる様子なので、「土地に縛られた一生」という暗さは感じられない。

 展示の最後には、ガンダムロボットやリカちゃん人形も。当代、あるいはそのお子さんたちの思い出の品だろう。ところどころに配された子どもたちのスナップ写真が展示品に生気を吹き込んでいるように思えた。
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