見もの・読みもの日記

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関西週末旅行11月編:特別展・風林火山(大阪歴博)

2007-11-09 22:01:56 | 行ったもの(美術館・見仏)
○大阪歴史博物館 第26回 NHK大河ドラマ特別展『風林火山-信玄・謙信、そして伝説の軍師-』

http://www.mus-his.city.osaka.jp/index.html

 病膏肓に入ると言うべきか。この展覧会、どうしても見たくて大阪まで行ってしまった。NHK大河ドラマの連動企画であることは承知である。番組宣伝のパネル写真とかでごまかされたら嫌だな、と思っていたが、さにあらず、なかなか見応えのある展示だった。

 会場の冒頭には、山本勘助の実在を証拠づけた(とされる)「市河文書」が展示されている。武田信玄が市河藤若に宛てた書簡で「猶山本菅助口上有るべく候。恐々謹言」と結ばれている。10/28放送の『風林火山』でも、さりげなく触れられていた。おおーこれがホンモノかー。ドラマと歴史と目の前の資料が渾然と結びつき、不思議な気分である。信濃の地頭職であった市河家の文書が、北海道釧路市の指定文化財になっているということを初めて知った。歴史って面白いなあ。

 ほか、文書類は国宝の「上杉文書」から「謙信公御年譜」(江戸時代)など数件。信玄の書状や願文も複数。私は、戦国武将の花押って基本的に「書き判」だと思っていたので、版刻したものを墨で押印する「花押型(かおうがた)」の存在を知らなかった。初めて見たが、中国文人の用いる印鑑に比べると、実に素朴で、実用一点張りである。

 文物では、上杉神社に伝わる「馬上杯」を楽しみにしていた。酒飲みの景虎(謙信)愛用の品で、見てきた人の話では「極彩色の小花模様の酒杯」だという。どんな贅沢品かと思ったら、何のことはない、中国物産展でよく見るような七宝焼きだった(水色に小花・唐草模様、内側は金)。しかし、エキゾチックである。明からの舶載品。『狩野永徳展』でも触れたが、近世初期に流行した異国趣味(中国趣味)の反映なのだろうか。

 それから、私は今回初めて、刀剣の魅力を知ってしまった。原美濃入道所持と伝える刀の、ずしりと黒光りする刃がやたら美しかったのである。日本刀って、もっと白々と光るものだと思っていたのに。上杉の『姫鶴一文字』もよかった。

 また、信玄と謙信の物語が後世に与えた影響を物語る、屏風・錦絵・軍学書などの資料も面白かった。徳川家康が甲州武田軍学を好んだことは知っていたが、宇佐美氏の子孫が紀州徳川家に仕えて越後流軍学を称揚したことは初耳だった。ふーん。紀州徳川家って、常にどこか本家にライバル意識を持っているようで面白い。

 『甲陽軍艦』は5セット出ていた。最古の版本「片仮名付訓無刊記十行本」(元和~寛永初年頃)は丹表紙が美しく、意外なことに書体は光悦風の優美なものだった。武将たちの肖像画、大判の城図・合戦図(東北大の狩野文庫から大量に出陳)も興味深かった。あと、途中に観光PRコーナーがあり、Gackt謙信のポスターに見惚れてしまった。眼福。
コメント
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