時事通信社 2016年12月17日 04時38分 (2016年12月17日 23時57分 更新)
北方四島は手付かずの豊かな自然が残り、アイヌ文化の歴史を知る上でも重要な意味を持つ。しかし、領土問題の影響で調査や保全は十分進んでおらず、研究者らは渡航制限の緩和など交流拡大を期待する。
ロシア側研究者と合同で動植物の分布調査を続けているNPO法人「北の海の動物センター」代表の大泰司紀之さん(76)によると、北方四島は流氷の南限域に当たり、サケやカニなど豊かな海洋資源とそれをえさにする海鳥や海獣類、ヒグマなどの貴重な生態系が保たれている。専門家の査証(ビザ)なし渡航が許可された1999年までは、研究者も立ち入れない「秘境」だったという。
大泰司さんは「交流が進んだとはいえ、期間や機材の制限も多い。自由に調査できるようになれば冬場の生態系など新たな研究ができる」と話す。「鉱山などの経済開発や密漁、乱獲の影響は十分情報が得られておらず、早急な調査と保全が必要だ」と強調。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産になっている「知床」の範囲を北方領土周辺まで広げる運動に賛意を示し、「日ロ双方の専門家で適切に管理できる体制構築が望ましい」と期待した。
アイヌ民族に伝わる言語や文化に詳しい北海道大アイヌ・先住民研究センター准教授の丹菊逸治さん(46)は「四島の名前からも分かるように、アイヌとの関わりは深い」と話す。明治以降の開拓で北海道東部などに移住させられ、終戦時点のアイヌの島民はわずかだが、子孫や交易で訪れていた人などゆかりを持つ人は多いという。
ただ、文化人類学の分野で日ロの共同調査は行われた例がなく、研究は思うように進んでいない。丹菊さんは「アイヌ文化は居住地と切り離せない。一緒に現地に行かないと分からなかったり、明かしてもらえなかったりすることも多い」と話す。
ビザなし交流は、終戦前に島を離れた人は対象外とされ、渡航制限が調査の妨げとなっている。「世代を重ねる中で失われる文化もある」と危機感を募らせる丹菊さん。「すぐの返還は難しくても、アイヌが自由に先祖の土地を訪れられる日が早く来るよう願っている」と訴えた。
http://www.excite.co.jp/News/politics_g/20161217/Jiji_20161217X053.html
北方四島は手付かずの豊かな自然が残り、アイヌ文化の歴史を知る上でも重要な意味を持つ。しかし、領土問題の影響で調査や保全は十分進んでおらず、研究者らは渡航制限の緩和など交流拡大を期待する。
ロシア側研究者と合同で動植物の分布調査を続けているNPO法人「北の海の動物センター」代表の大泰司紀之さん(76)によると、北方四島は流氷の南限域に当たり、サケやカニなど豊かな海洋資源とそれをえさにする海鳥や海獣類、ヒグマなどの貴重な生態系が保たれている。専門家の査証(ビザ)なし渡航が許可された1999年までは、研究者も立ち入れない「秘境」だったという。
大泰司さんは「交流が進んだとはいえ、期間や機材の制限も多い。自由に調査できるようになれば冬場の生態系など新たな研究ができる」と話す。「鉱山などの経済開発や密漁、乱獲の影響は十分情報が得られておらず、早急な調査と保全が必要だ」と強調。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産になっている「知床」の範囲を北方領土周辺まで広げる運動に賛意を示し、「日ロ双方の専門家で適切に管理できる体制構築が望ましい」と期待した。
アイヌ民族に伝わる言語や文化に詳しい北海道大アイヌ・先住民研究センター准教授の丹菊逸治さん(46)は「四島の名前からも分かるように、アイヌとの関わりは深い」と話す。明治以降の開拓で北海道東部などに移住させられ、終戦時点のアイヌの島民はわずかだが、子孫や交易で訪れていた人などゆかりを持つ人は多いという。
ただ、文化人類学の分野で日ロの共同調査は行われた例がなく、研究は思うように進んでいない。丹菊さんは「アイヌ文化は居住地と切り離せない。一緒に現地に行かないと分からなかったり、明かしてもらえなかったりすることも多い」と話す。
ビザなし交流は、終戦前に島を離れた人は対象外とされ、渡航制限が調査の妨げとなっている。「世代を重ねる中で失われる文化もある」と危機感を募らせる丹菊さん。「すぐの返還は難しくても、アイヌが自由に先祖の土地を訪れられる日が早く来るよう願っている」と訴えた。
http://www.excite.co.jp/News/politics_g/20161217/Jiji_20161217X053.html