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交付金事業、課題が山積 アイヌ新法1年 曖昧な認定基準/意向反映が不十分

2020-05-25 | アイヌ民族関連
北海道新聞 05/24 10:37

 アイヌ民族を法律で初めて先住民族と位置づけたアイヌ施策推進法が24日、施行1年となった。国はアイヌ政策推進交付金を創設し、道内各地で関連事業が動きだしている。ただ、国に認められない事業もあり、提案する自治体は手探りの状態だ。アイヌ民族の意向を十分反映しているのか不鮮明な事業が採択されるなど課題も浮き彫りとなってきた。専門家は交付金事業の決定にアイヌ民族が関与できる仕組みの整備など同法の運用を見直すよう訴えている。
■追加決定に望み
 日高管内平取町は4月、平取アイヌ協会などとの共同出資で町アイヌ文化振興公社を設立した。交付金を活用し、アイヌ工芸品の原材料となる植物を持続的に採取できるよう山林を育成する事業を行い、11人を新規に雇用した。平取アイヌ協会の木村英彦会長は「アイヌの伝統的な知識を生かし、次世代の経済的自立につなげたい」と期待する。
 ただ順風満帆ではない。町が公社の事務所かつ工芸家育成などアイヌ文化伝承の拠点として整備する計画の文化交流センターの実施設計への交付金支出に国は2月、待ったをかけた。
 センターは町が国に提出した交付金事業計画では総事業費約7億円で整備することが盛り込まれ、国も昨年度は基本設計への交付金を認めていた。その延長の実施設計費に交付金が認められず、川上満町長は「アイヌ文化の継承者を育て、雇用も生む。アイヌ民族の意向も踏まえ計画した」と国の意向を測りかねる。町は内閣官房の所管部署に改めてセンター整備の意義を説明しており、交付金の追加決定に望みをつなぐ。
 旭川市もアイヌ文化を紹介するガイド育成など8事業が「具体性がない」などとして交付金を認められず、各自治体はどういう事業が認められるか手探りだ。
 アイヌ民族の意向を踏まえたのか、評価が分かれる交付金事業も少なくない。
 胆振管内白老町に国が整備したアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」を訪れる外国人向けの電話医療通訳サービス(白老町)や、ウポポイと登別温泉などを結ぶバス運行(登別市)など一部事業は「アイヌ文化を単に観光資源とみなし、自治体が都合良く観光施策に利用している」「アイヌ民族の生活向上など課題解決につながるとは思えない」と冷ややかな見方がある。
■「大企業が利益」
 札幌市が2月の雪まつりで、大手広告代理店に約7300万円で委託したアイヌ文化発信行事も賛否がある。アイヌ料理の販売や伝統舞踊の披露のほか、アイヌ民族の少女が活躍する人気漫画との協力企画もあり、「アイヌの世界観を世界中から来る人に知ってもらえる」と前向きな評価もあった。一方、「『アイヌ』と名のつく交付金なのに大企業が利益を得て、効果が一過性の『打ち上げ花火』のようなイベントだ」と疑問視する声も漏れた。
 アイヌ問題に詳しい札幌大の本田優子教授は交付金事業について「法が掲げる『アイヌの人々の自発的意思の尊重』という理念を具体化する仕組みに欠ける。多数のアイヌ民族が加わった協議会で決める規定を設けたり、アイヌ民族と協議したかを交付金の審査基準に加えたりして、運用を改善することが必要だ」と提言している。
■差別許さぬ姿勢示して 北大アイヌ・先住民研究センター・北原准教授に聞く
 アイヌ民族で、北大アイヌ・先住民研究センターの北原モコットゥナシ准教授にアイヌ施策推進法を巡る現状と課題を聞いた。

 法律に差別禁止が明記されたのは、アイヌ民族への差別の存在を認め、根絶に取り組むべきだという国の意思表示です。実効性を持たせるため、どのような表現が差別に当たるのかを明らかにし、市民に啓発し、加害者には是正を求め、被害者の救済につなげていくことが不可欠です。
 無知や無関心もアイヌ民族を否定し、排除することにつながりかねません。「山に住んで狩りをする」「カムイ(神)と共に生きる」など過剰に神秘化する言葉や、「北海道は開拓者の大地だ」のように先住性を否定するような言葉は、アイヌ民族に不快感を与える「マイクロアグレッション(見えにくい攻撃)」になり得るものです。
 胆振管内白老町で開業予定のウポポイは多くの人が訪れる分、アイヌ民族を含む職員が差別的な言動にさらされる懸念もあります。国や運営主体のアイヌ民族文化財団は率先して偏見を解消する対策をとり、社会に差別を許さない姿勢を具体的に示すことが大切です。
 市民の取り組みも重要です。地方自治法は有権者の50分の1以上の署名があれば、市町村長に条例の制定を求めることができると定めています。人口5000人なら100人の署名で差別禁止条例の制定を求めることができます。市民活動の広がりを期待します。(斉藤千絵)
◆北原モコットゥナシ准教授のシは小さい字
<ことば>アイヌ施策推進法 「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」。アイヌ民族を初めて先住民族と明記し、誇りを持って生活できる社会の実現をうたう。交付金を設け、19年度は13市町(道内12)に計約6億5千万円、20年度は24市町(道内23)に計約15億6千万円の交付を決めた。本年度は最大約7億円まで追加決定もある。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/423770
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