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移民を追い出しても米国経済は大丈夫なのか? トランプ政策を検証する(1) - 塚崎公義

2016-12-07 | 先住民族関連
BLOGOS-2016年12月06日 19:43
 ドナルド・トランプ氏(トランプ次期米国大統領。以下同様)は、移民に対して強硬な発言を繰り返しています。選挙が終わってから、若干のトーンダウンは見せていますが、移民に厳しい政権運営が行われる事は確実です。そうした中で、「移民が可哀想だ」という感情論はさておき、「米国経済を支えている移民を追い返してしまって米国経済は大丈夫か?」という疑問を持つ人も多いようです。筆者は大丈夫だと思っていますが、今回は米国経済と移民の関係について考えてみましょう。
最下層の仕事は移民が担当
 米国は、移民の国です。最初に到着した移民が先住民族を駆逐して土地の支配者となり、アフリカから黒人を連れて来て奴隷にしました。自分たちがやりたくない3K労働(キツイ、キタナイ、キケン)を押し付けるためです。奴隷が禁止されると、今度は新しく移民として入国した人々に3K労働を押し付けたのでしょう。それでも貧しい祖国にいるよりは、豊かな米国で3K労働に従事する方がマシだったので、多くの人々が次々と移民として入国して来たのでしょう。
 こうして、「先に入国した移民が、後から入国した移民を自分より下に置くことで、少しずつ国内の地位が上昇していく」というシステムが成り立っているのでしょう。
 余談ですが、そうして豊かに暮らしていた白人の中流階級が、グローバリゼーションによって生活の安定を脅かされている事に危機感を感じ、グローバリゼーションに反対しているトランプ候補に投票したのだと言われています。
 グローバリゼーションは、移民として入国してもいない中国人やメキシコ人が安い給料で作った製品が、自分たちの仕事を奪うようになったということで、白人の不満の源となったはずです。だからこそ中国製品に高関税をかけるといった主張に白人たちが共感したのでしょう。
 いま一つは、移民が多すぎて、3K労働だけでなく、自分たちの仕事にまで参入して来て自分たちの仕事を奪っている、と考えているのでしょう。だから、移民を追い返すというトランプ候補の主張が支持されたのでしょう。
本音と建前の落差に疲れている白人たち
 もちろん、「白人は有色人種より先に移民してきたのだから偉いのだ」などと表立って言う人は少ないでしょうが、世の中には、本音と建前があります。建前はともかく、本音ではそう思っている人々が、自分たちの生活レベルが下がって来た時に、後から来た移民に仕事を奪われている事に怒りを感じることは自然なことなのでしょう。
 余談ですが、建前を追求し過ぎて「ポリコレ」を追求し過ぎたために、米国人が息苦しさを感じ、これがトランプ候補勝利の一因となった、という指摘があるほど、最近の米国では建前が重視されているようです。ちなみに、ポリコレとは、ポリティカル・コレクトネスの略で、たとえばメリークリスマスと言うと非キリスト教徒が傷つくので、「シーズンズ・グリーティング(季節の御挨拶)」と言うべき、といったことです。
 しかし、米国では、ほんの数十年前までは、公然と人種差別が行なわれていたわけです。だからこそポリコレが必要だとされているのでしょう。ポリコレを強調しすぎるくらいでないと、様々な差別が公然と行われかねないから、という事なのでしょう。これを裏から見れば、建前とは別に本音が厳然と存在している、という事になります。人種差別についても、人々の意識としても実態としても、存在していると想像されます。
 そこで以下では、ポリコレを忘れて、「米国政府や米国人の本音」を筆者なりに想像してみます。筆者自身が「移民には3K労働が相応しい」と考えているわけではありませんので、誤解のないように御願い致します。
違法移民と適法移民の区別が重要
 移民は、米国経済にとって必要です。白人たちも、それは充分理解しているはずです。新しく流入する移民が全くいなければ、3K労働の担い手が不足してしまうからです。したがって、一定数の新規移民が合法的に流入して来ることは、コンセンサスとなっているはずです。
 問題は、違法に入国してくる移民です。これは、米国政府が必要と考えている3K労働者の数に上乗せして流入して来る人々だからです。この人々は、招かれざる人々なのですから、メキシコとの間に壁を作って流入を阻止する事は「望ましい」ことです。すでに入国している不法移民も、追い返す事が「正しい」ことです。なぜならば、彼等は違法入国者であり、米国が必要としていない人々だからです。
 米国で3K労働に従事する労働者が足りないのであれば、違法移民の一部を合法化すれば良いのですが、そうでない限りは追い返せば良いのです。
 本稿の冒頭で、「米国経済を支えている移民を追い返してしまって米国経済は大丈夫か?」という疑問を持つ人も多いようです、と記しました。そうした人々には、合法的な移民と違法な移民を明確に区別して考えていただければ幸いです。
日本は3K労働者不足を移民で補うべからず
 日本の入国管理政策は、「高度な人材は積極的に受け入れるが、単純労働者は受け入れない」ということを基本としています。そこには3K労働は移民に任せよう、という発想はありません。むしろ、移民が流入して単純労働者として安い賃金で3K労働に従事すると、日本人の雇用が失われてしまう、という事が懸念されているわけです。
 そうした中で、介護労働者が不足しているため、外国人を介護労働者として受け入れようという人が増えてきました。労働者として受け入れて、仕事をやめたら帰国してもらうのか、移民として日本に移り住んでもらうのか、という点は論者によって区々ですが、本稿ではそこは置いておきましょう。
 日本では最近まで、介護労働者だけが不足していました。それならば、介護労働者の待遇を改善して、一般の失業者が介護に従事するようにするべきでしょう。「財政赤字を減らすために介護報酬を低く抑え、それによって介護労働者の賃金が低く抑えられている」ことが原因ならば、選択肢は二つしかありません。「もっと税金等を投入して、介護労働者の待遇を改善する」「介護労働者不足なので、介護サービスを半減する。しっかり介護して欲しいなら、自費で介護師を雇うべし」の二つです。
 最近になり、少子高齢化と景気回復の影響で、全般的に労働力が不足して来ました。「それならば、幅広く外国人労働力を活用しよう」という論者も多いようですが、これも感心しません。労働力が不足してきたからこそ、ようやく失業者が減り、非正規労働者の待遇が改善してワーキング・プアがマトモに暮らせるようになったのです。これからは、省力化投資が増えて、日本経済の効率性が高まっていくと期待されます。
 ここで外国人労働力を導入して労働力不足が解消してしまったら、せっかく減った失業者が増え、ワーキング・プアの生活が再び悪化し、せっかく期待された日本経済の効率化も進まないでしょう。
 ちなみに、「技能実習生」といった名目で実態としての単純労働者が流入している、実際には不法滞在している外国人が単純労働に従事しているケースも多い、といった話も耳にしますが、筆者は詳しくないので、その点についての言及は控えておきます。
 企業にとっては、失業者が増えて非正規労働力が安価に雇えることは都合が良いかも知れませんが、それは決して日本経済全体にとって望ましいことではない、ということなのです。充分気をつけたいものです。
http://blogos.com/article/200939/
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