読売新聞 2024/07/03 05:00
衣装や刺繍 制作に生かす
台湾の先住民・ 平埔へいほ 族の青年組織が6月25~27日、天理大付属天理参考館(天理市)を訪れ、同館が収蔵する平埔族の民族衣装や 刺繍ししゅう 作品の調査をした。伝統文化を再興しようと、先祖が残した刺繍を学び、新たな制作に結びつけるのが目的という。(関口和哉)
これまでに復元した民族衣装を身に着けるメンバー(天理市で)
平埔族 天理参考館で調査
平埔族は、台湾西部の平野部に暮らしていた先住民グループの総称。17世紀後半以降、大陸から移住してきた漢民族の影響を受け、独自の言語や生活文化が大きく変容し、ほとんど失われてしまったという。
台湾では1980年代からの民主化に伴い、先住民の伝統文化を保護するようになり、平埔族の人々もわずかに残った言語や習慣、生活文化を通して、自らの帰属意識を探ろうとする動きを活発にしている。
同館は台湾人収集家の20世紀前半のコレクションを中心に、衣装や装飾品、生活用具など約330点を1960~82年に収集。日台屈指の収蔵数を誇る。
2011年に図録を作成し、13年には台湾で開かれた展覧会で一部が展示されたことなどから、台湾でも大規模な収蔵品の存在が知られるようになり、今回の調査につながった。
来日したのは、平埔族のうちマカタオ族とタイヴォアン族の25~43歳の刺繍工芸職人ら男女計5人。滞在した3日間、午前9時から午後4時まで、自分たちに関連する収蔵品約150点について、一つ一つ写真を撮ったり、素材や色、技法などを調べたりした。
刺繍は絹糸や麻糸を使って花や動物、幾何学の文様をあしらっており、カラフルな色遣い。断片だが、衣装のどの位置の装飾なのか、わかる状態だという。
一行の代表、 陳以箴ちんいしん さん(33)は「私たちの集落にも刺繍は20~30点しか残っていない。保存状態がよく、これほど豊富な資料が得られたのは幸い。今後一つ一つどの民族のものかも調べ、伝統文化の復元につなげたい」と語る。
天理参考館の早坂文吉学芸員は「具体的な成果はまだ聞いていないが、一定の成果があったようで喜ばしい。館の資料が活用され、文化の復興に貢献できるのは光栄だ」と話している。
https://www.yomiuri.co.jp/local/nara/news/20240703-OYTNT50027/