毎日新聞 2011年10月9日 東京朝刊
◇住民投票まで凍結
【メキシコ市・國枝すみれ】南米ボリビアで、高速道路の建設計画がモラレス政権を揺さぶっている。道路は大きな経済効果をもたらすが、先住民の居住区を貫くため、先住民が反発している。ボリビア国民の6割は先住民。モラレス大統領自身、05年の大統領選に勝利して初の先住民大統領となり、先住民の権利拡大を進めてきただけに、高速道建設に伴う国益と、先住民の主張のどちらを優先するか、難しい判断を迫られた格好だ。
高速道は隣国のブラジルやペルー、チリと結ぶ計画だ。内陸国ボリビアにとり、ペルーなどの太平洋岸に抜ける高速道は悲願でもあり、流通面でも大きな経済効果が予測される。モラレス政権はブラジル政府の資金融資も受けて、自国内の高速道の整備に乗り出したい考えだ。
これに対し、道路が通過するボリビア北東部のベニ、コチャバンバ両県の先住民が居住区の環境破壊を理由に反対した。8月15日、約1500人がベニ県トリニダを出発、約400キロ先のラパスに向けて抗議のデモ行進を開始した。
デモ隊は9月24日、交渉のため訪れたチョケワンカ外相ら2人を拘束し、一緒に行進するよう強制した。「政府軍や警察、建設を支持する農民に襲われるのを防ぐためだ」と釈明したが、モラレス政権は「誘拐だ」と怒り、約1時間後に外相らが解放されるという騒動が起きた。
モラレス大統領は9月25日、警察にデモ隊の強制解散を指示。ベニ県内で数百人を拘束し、居住区に空輸しようとしたが、現地の先住民がデモ隊に同調して空港の滑走路を占拠し、妨害した。
こうした事態を受け、大統領の命令に反発するチャコン国防相、ジョレンティ内相が辞任。大統領は翌26日、拘束した先住民を釈放し、建設計画の一時凍結を発表。「計画を進めるかは住民投票の結果で決める」と述べた。住民投票の日時は未定で、デモ行進は今月に入って再開されており、情勢の先行きは不透明だ。
モラレス大統領は09年の大統領選で63%の高得票率で再選されたが、高速道を巡る住民との対立で今年9月の支持率は37%に低下している。
http://mainichi.jp/select/world/news/20111009ddm007030098000c.html
◇住民投票まで凍結
【メキシコ市・國枝すみれ】南米ボリビアで、高速道路の建設計画がモラレス政権を揺さぶっている。道路は大きな経済効果をもたらすが、先住民の居住区を貫くため、先住民が反発している。ボリビア国民の6割は先住民。モラレス大統領自身、05年の大統領選に勝利して初の先住民大統領となり、先住民の権利拡大を進めてきただけに、高速道建設に伴う国益と、先住民の主張のどちらを優先するか、難しい判断を迫られた格好だ。
高速道は隣国のブラジルやペルー、チリと結ぶ計画だ。内陸国ボリビアにとり、ペルーなどの太平洋岸に抜ける高速道は悲願でもあり、流通面でも大きな経済効果が予測される。モラレス政権はブラジル政府の資金融資も受けて、自国内の高速道の整備に乗り出したい考えだ。
これに対し、道路が通過するボリビア北東部のベニ、コチャバンバ両県の先住民が居住区の環境破壊を理由に反対した。8月15日、約1500人がベニ県トリニダを出発、約400キロ先のラパスに向けて抗議のデモ行進を開始した。
デモ隊は9月24日、交渉のため訪れたチョケワンカ外相ら2人を拘束し、一緒に行進するよう強制した。「政府軍や警察、建設を支持する農民に襲われるのを防ぐためだ」と釈明したが、モラレス政権は「誘拐だ」と怒り、約1時間後に外相らが解放されるという騒動が起きた。
モラレス大統領は9月25日、警察にデモ隊の強制解散を指示。ベニ県内で数百人を拘束し、居住区に空輸しようとしたが、現地の先住民がデモ隊に同調して空港の滑走路を占拠し、妨害した。
こうした事態を受け、大統領の命令に反発するチャコン国防相、ジョレンティ内相が辞任。大統領は翌26日、拘束した先住民を釈放し、建設計画の一時凍結を発表。「計画を進めるかは住民投票の結果で決める」と述べた。住民投票の日時は未定で、デモ行進は今月に入って再開されており、情勢の先行きは不透明だ。
モラレス大統領は09年の大統領選で63%の高得票率で再選されたが、高速道を巡る住民との対立で今年9月の支持率は37%に低下している。
http://mainichi.jp/select/world/news/20111009ddm007030098000c.html