めへへ 書感

本好きなヤギ似のワタシが 勝手な感想を綴った備忘録 (時々、他)♪

悲素(帚木 蓬生)

2016-03-12 21:02:30 | 本(普通) た・な・は行の作者

久しぶり~の 帚木先生(森山成彬 先生)の作品は、こちら でした。

なるほど、なるほど…
和歌山カレー事件、まるでノンフィクションではないか ? と思えるほど、リアリティーのある小説です。
やはり、お医者さんの書いた文章は 読み易い!(← 表現や語句が極めて適切で整っているため。)

毒物中毒に係る臨床と研究の権威 = 九大の沢井教授 が、和歌山県警への協力の下、度々の公判に至るまでの数年間の歩みが綴られている内容なので、医師チームと警察・検察側の ち密な証拠固め、
カレー事件の容疑者が 手を染めながら脱け出せなくなって行った、ヒ素入り飲食物の罪の歴史…、
これらが1歩1歩進展して行く過程ならではの ボリュームとなっているのは納得です。
しかし、読んでいて(さほど)苦にならないのは、ハハキギ先生の整った言い回しと 鋭い描写のおかげかと。

しかしながら、この容疑者(小林夫婦)の犯してきた毒盛りや保険金詐欺の罪の数と その犠牲者の数が あまりに多すぎて…、読者としても、“な…、長いーーー!” と感じるのは、スナオに否めません・・(爆)
そして、ヒ素を摂取した患者の症状が苦しくて悲惨な分、やっぱり ボリューム感を感じますねぇ…。

あ、…
今書いていて、ふと思ったのですが、このタイトルの(漢字の)由来って 「悲惨」から来ているのかしら… ??

ということで、これらの経緯があるからこそ、特に525ページからの 沢井センセイが涙に暮れたという、光山刑事からの書簡は胸に沁みます…。
この手紙を通して、帚木センセイが読者に伝えたかったことが 伝わってきます。
だから、この部分は とてもイイ演出だなぁ~と。

それから、もうひとつ、逆に対照的な観点からなのですが、小林容疑者にとっては “快感”の一つでしかないカレー事件、これが 「あぁ…、こういうことだったんだ…。」と思わずにいられないのが、やはり 光山刑事によって綴られたエピソードの1節(亡くなったご主人の仏壇の部屋の雨戸を開けない奥さま…)の描写です。
この辺りも、“ハハキギ節”が光っている部分ですね。

毒入りカレー事件は、1998年 でしたか…。
そうか…、今度の7月で 16年経つのですね。
ちょっと、この本 …、 もちろん(!)読むわけないが…、それ以前に なんで出版されたのかギモンですわ。
あわわわわ…
コメント
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